2009年05月31日

住宅ローン シミュレーション結果を見て俺は興味無くなったわ

低金利の今が住宅やマンション購入のチャンスという話、最近よく聞くんだけど実際のところ住宅の額面金額を一括で支払うなんてなかなかない話で、大抵の人は住宅ローンで分割支払いする事になると思う。俺も将来、何かのきっかけで自分の家やマンションを購入する時の参考として、エクセルで住宅ローン支払いのシミュレーションをやってみた。



loan_simulation.jpg
上記が、固定利率3%で2000万円の住宅ローンを組み、2009年1月から月10万円(元利均等返済)の支払いをした場合のローン残高シミュレーション結果である。(2000万円じゃ都心のマンションは絶対無理だろうけど……)

余談だけど、最近であればフラット35とか、政府の住宅ローン減税なんかを使えばかなり低い利率でローンが組めるんだけど、とりあえずフラット35を参考に今の標準的な金利で固定利率を約3%としてみた。ちなみに、変動金利で減税を上手く組み合わせると、今は1%くらいの金利でいけそうなんだってね。

話を戻そう。さて、上記の表を見ると、住宅ローンを全部返済するまでに23年程度かかる事がわかる。しかも総支払額が2776万円という事で、最初の額面2000万円と比べると返済利率がかなりきいてるわけですよ。この値段だけみれば、何か凄い損したような気持ちにもなるんだけど、そこは「一括支払いの安さ」と「分割支払いでの負担軽減」を天秤にかけることになるわけなんだよね。

インフレになるのがわかっていれば、むしろ分割支払いしたくなるのだけど、世界の景気動向と日本国内の経済動向を考えれば、今後しばらくはデフレの心配をしなければいけないわけで、そうなるとなるべく一括支払うか、あるいは頭金をたくさん払いたい状況ではあるよね。
俺の感覚だと、わずか3%でこれだけ余分に払うのなら、一括で支払うか、一生賃貸マンションでもいいような気がしてきたよ……。(泣)


ちなみに、住宅ローン金利って、何に連動して上がったり下がったりしてるのかというと、変動金利は短期プライムレート、固定金利は長期プライムレートに連動してるらしい。過去のプライムレートは以下の日銀のHPに掲載されてるんだけど、バブルの頃に短期プライムレートが8%を超えてた事実が今となっては信じられないよなぁ……。

【長・短期プライムレート(主要行)の推移】
http://www.boj.or.jp/type/stat/dlong/fin_stat/rate/prime.htm




【おまけの変動金利考察】
ちなみに、変動金利の場合はいろいろと複雑なルールがあるらしく、金利が安いという理由だけで、制度を良く知らない人が変動金利を選ぶと後々非常に困ることになりそうなんだよね。俺が変動金利を勉強して、すぐに気づいた落とし穴は以下の通り。

@金利変動があっても月々の返済額は5年間変わらない。
基本的に変動金利は、半年毎に金利が見直される。ところが、金利が上がろうが下がろうが月々の返済額は最初の設定から5年間は変えられないわけですよ。金利が下がっている時はいいけど、金利が急に上昇したりした場合、下手すると金利上昇分の利子の支払いでいっぱいいっぱいになり、全然ローン残高が減らない事態が起こりうるわけだ。
銀行通帳だけ見れば、引き落とし金額が変わらないためにローン残高が減らない事に気づかない人もいるんじゃないかなぁ……。

A5年後の月々返済額は当初の設定の1.25倍まで
変動金利の場合は、5年毎に月々の返済額を再計算するわけだけど、再計算後の返済額は前返済額の1.25倍までとなっている。例えば、毎月10万円ローン返済していたのに金利上昇でローン残高が思ったより減らなくて、5年後に月々の返済額を再計算したら15万円だったとする。この時、次の5年間は月々15万円支払うのではなく12.5万円しか支払えないわけですよ。これも、銀行通帳見てるだけだとローン残高が減らないのに気づかないわけですよ。逆に、何でまたこんな1.25倍の上限ルールがあるんだかよくわからないのだが……。

Bローン最終月に残り金額を一括返済
Aを考えると、場合によっては最終月に相応のローン残高が残る可能性があるのだけど、当然支払期限を延期することはできないので、ローン返済の最終月には一括で全ローン残高を返済しなければならない。ぎりぎりでローン返済してる人にとっては、最終月の一括返済は非常にリスキーかもしれない。


まぁ、いずれにしても金利が下がってる分には心配しなくていいのだけど、金利上昇の局面を考えた場合でキツキツなローン返済を考えている人にとっては、絶対に固定金利の方をオススメしたい。
目の前の低い金利に釣られて変動金利を選ぶ人はくれぐれも要注意!
posted by きらっち at 21:42| Comment(2) | TrackBack(1) | 経済

2009年05月30日

廃棄弁当を企業価値向上につなげたいのだろうけど……

【コンビニ店主「見切り販売」の動き 販売期限前に値引き】(5/6)
http://www.asahi.com/business/update/0506/TKY200905050171.html

【弁当値引き制限、セブンイレブンに排除命令へ 公取委】(5/29)
http://www.asahi.com/national/update/0528/TKY200905280360.html

まぁセブンイレブンだけではないけど、「どこのコンビニもお弁当の値下げ販売なんてしてないのは何故なんだ?」とは思ってたんだけど、単純に本社側が嫌がっているだけなのか。

よく考えてみるとお弁当の値下げ販売は、ユーザにとっては弁当が安くなるので嬉しい。販売店側も廃棄料を考えれば値下げ販売で売り切るほうが得。となると、コンビニ本社のみが嫌がっているわけですよ。もちろん「常に新鮮な商品だけを売っているというイメージが崩れかねない」「競合他店との価格競争に発展しかねない」という説明こそしているけど、彼らの本音は違うところにあると思う。

確かに今のシステムの場合は、売れ残ったお弁当の数に関係なく販売店に卸した分だけ本社側の利益があがり、売れ残ったお弁当は加盟店負担で廃棄しなければならないので、本社側は売れ残りリスクを全て加盟店に押し付けているわけですよ。ところが、本社側もそこは何とかしたいとは思っているらしく、↓こんな取り組みをやってたわけですよ。

【“一石三鳥”のエコフィード認証制度 2008年度からスタート】
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/080127/biz0801271741002-n1.htm


さて、こういう記事を見ると俺はちょっと考えてしまうわけですよ。「値引き販売でお弁当を売り切る」のと「廃棄弁当をエコフィードにする」のと、果たしてどちらが合理的なんだろうか?

おそらく本社側が値引き販売を嫌がる本音は、彼らはすでにエコフィードに相当の投資をしてしまったわけで、廃棄弁当によるビジネスモデルをこれから実行に移そうとしてたんじゃないかな?そんな矢先に、公正取引委員会からイチャモンつけられたわけなので、本社側はどうやって販売店に、値引き販売よりもエコフィードの方にインセンティブを持たせようとするのか興味深い。

確かに企業価値としては、値引き販売でお弁当を売り切るよりも、エコフィードの方が環境負荷低減のアピールにもつながるわけだし、本社側の計算もわからなくはないけど、逆に販売店側から見るとそんなもん知ったこっちゃないわけだよな。(笑)



ところで、コンビニでのお弁当値引き販売が始まると、従業員(バイト)の学生とかも非常に困る事になるんじゃないの?(笑)むしろ廃棄お弁当がなくなることによって、店舗によってはバイト人員の確保ができなくなるんじゃないかと、俺は心配している。
posted by きらっち at 16:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事

2009年05月29日

来たるGMショック CDS発動でどうなる?!

【GM破綻、米政府「容認」 事前調整型で新提案】
http://www.asahi.com/car/news/TKY200905280378.html

やはり、GMもクライスラーと同様に、チャプター11行きですな。仮に今後債権者との調整がつくにせよ、新生GMが上手く行く保証はどこにも無いわけで、実際のところはまだまだ先行きの長い問題になるとは思う。
それよりGM破綻によるGMショックの影響の大きさが心配だわ。


GM社債を持っている投資家は、GM対象で340億ドルのCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を持っているらしい。さて、このCDSと言われる金融派生商品はこれから来るであろうGMショックで、リーマンショック以上の影響を及ぼすだろうと思われるので、今のうちに説明しておこう。

実際の例として、「CDSを売ったAIG」と「CDSを買った投資家」で考えてみる。CDSは、買った投資家が4半期毎にAIGへ一定の保険料を支払うものなんだけど、その代わり対象にしている会社が潰れると、AIGが投資家に相応額を支払う仕組みを持つ金融派生商品なんだ。つまりCDSという商品は、

○対象になっている会社が潰れれば、投資家が儲かりAIGが損をする。
○対象になっている会社が潰れなければ、AIGが儲かり投資家が損をする。

という仕組みになっているわけだ。もしGMが潰れた時にAIGが投資家へ支払う金額は、ISDA(国際スワップデリバティブ協会)で行われるオークションで決定する。また、4半期毎にAIGへ支払う保険料は金融工学の手法を用いて決められる。もちろん、CDSは株券や債券等と同様に他人に売る事もできる。


【「破産の方が得」 GM交渉期限切れ 債権者の思惑】
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090527/biz0905272303021-n1.htm

さて、CDSの仕組みはそんなところにして、何故GMの債務削減交渉が不調なのかを説明しよう。まずGMは、債権者に対してGM社債額の9割を削減させる代わりに、10%のGM株(その後、新提案として25%)と交換する案を提示していた。
つまり今後GMの経営が上手く行けば、削減したGM社債の額面よりも
GM株価が高くなるわけだけど、債権者の方は今後のGM株価に期待するよりも、GMを破産させてCDSの方でAIGからお金を支払われる方が得だと思ってるわけですな。まさに上記の記事通り「破産の方が得」と債権者は思ってるんでしょう。



ちなみに、GM対象のCDSはGM債権者以外でもたくさんに人が所有している。GM対象のCDSがどの程度発行されているのかわからないけど、リーマンブラザーズ対象のCDS発行金額よりも10倍以上あると見られていて、GMが破綻したらCDS発行元(実際はAIGのみでなく、様々な金融機関)がどれだけ損するのか想像がつかないわけですよ。
ちなみに、リーマンブラザーズ対象のCDSでは、↓の清算が行われれて、1000億ドル(10兆円)単位のお金が動くことになったわけだ。(実際は、債券との相殺分もあってもっと少ないだろうけど。)

【リーマンのCDS清算値は8.625%に、推定保証支払い額は3650億ドル】
http://www.worldtimes.co.jp/news/bus/kiji/2008-10-13T221735Z_01_NOOTR_RTRMDNC_0_JAPAN-342666-1.html

おそらくAIGは、金融再生法を使ってアメリカ国民の税金からCDS支払いの原資を出させるつもりだろうけど、ざくっと見積もってこの10倍以上もGM対象のCDSが発行されてる前提で、清算価値をどのくらいで想定してるんだろうか?



市場はGM破綻を織り込み済みとはいえ、金融や実体経済に多大な影響があると思われる。果たして、GMショックがリーマンショック以上の影響が出てくるのかどうか、今後の動きを注視したい。
posted by きらっち at 05:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月27日

中国狙いのプチバブルか?

【鉄鉱石、前年度より33%値下げ 新日鉄と英大手が合意】
http://www.asahi.com/business/update/0526/TKY200905260302.html

【自動車用鋼材、1割超下げ 新日鉄とトヨタ合意】
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090527AT1C2600B26052009.html

鉄鉱石が安くなるらしい。しかし、面白いもので鉄鋼の原料になる鉄鉱石は33%の値下げにもかかわらず、自動車用の鉄鋼は1割超下げにしかならないんだね。新日鉄で鉄鉱石を加工してトヨタに卸すのだろうけど、こりゃボロイ儲けになるんだろうなぁ……。(笑)
果たして、自動車を購入する俺達にはどれだけ値下げが利いてくるのだろうか?何せ自動車もいろいろな部品からできているので、鉄鉱石が33%安くなったところでほとんど最終価格には影響がないのかもしれない……。

ところで鉄鉱石価格が下落したって事は、おそらく鉄鋼生産量が落ちているからだと思うんだけど、実際に世界の鉄鋼生産の現状をちょっと調べてみた。



world_crude-steel_prodauction.jpg
上記グラフが、2008年1月からの世界の粗鋼生産量をあらわしている。リーマンショック前は1億2千万トン程度の生産があったのに、物の数ヶ月で8千万トンにまで生産量が急減。そりゃ最盛期の2/3まで生産量が落ちれば甚大な影響があるだろうなぁ。
一応、12月で生産量の底を抜けたみたいで、今は一進一退の状態で緩やかな回復をしているところみたい。このタイミングで鉄鉱石の値段が落ちる影響をどう考えて良いのかわからないけど、少なくとも鉄鉱石を輸出してる資源国(オーストラリア、ブラジル、インド等)は相当痛いんじゃないの?オーストラリアドルも、ブラジルレアルも、インドルピーもここ1,2カ月で通貨価値を10%〜20%程度上げている事から、そろそろ反転下落の時期なのかもしれない。



【中国 4月鉄鉱石輸入 3カ月連続最高】
http://www.business-i.jp/news/bb-page/news/200905140037a.nwc

【中国、鉄鋼を緊急減産 各社に政府命令「余剰生産能力3割」】
http://www.nikkei.co.jp/china/news/index.aspx?n=AS2M15014%2018052009

そして中国も今回は相当損したよね。鉄鉱石価格が高い時期にたくさん輸入してしまい、鉄鉱石価格の下落時に鉄鋼の減産命令が出たわけなので、かなり悔しい思いをしているのではないだろうか?おそらく中国は、鉄鉱石も鉄鋼もかなりの在庫を抱えてしまっただろうから、しばらくは在庫処理に勤しむ事になるだろうな。



ちょっと気になるのは、他の資源の値下げ動向なんだよな。金にしても、石油にしても、一部の資源で、ここ最近の価格が急騰しているものがあるので、「ひょっとしたら一部資源がプチバブルになっている可能性があるんじゃないか?」と思ってるんだけど、実際のところ果たしてどうだろうか?

リーマンショックで世界の投資家が資金を一旦引き上げたわけだけど、その資金が再びどこに向かったのか非常に興味深い。
posted by きらっち at 21:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月26日

日本経済の凄さの一つ

【対外純資産残高:世界一守る 07年比9.9%減】
http://mainichi.jp/select/biz/news/20090526dde007020059000c.html

今日は、財務省から平成20年末時点での対外資産負債残高が発表された。資産から負債を引いた対外純資産は、前年比で10%程度減少したとの事だけど、2007年末の時点で1$=110円、2008年末の時点で1$=90円程度であったわけで、ドルの価値が20%程度落ちた事を考慮すれば、「むしろ、よく-10%で収まったな」と俺なんかは思ってしまう。

とりあえず、今日はここ10年間の対外資産・対外負債の推移を見ながら、今後の日本がどのように対外純資産を増やしていけばいいか考察したい。



oj_assets_liability.jpg
上記が、日本の平成11年〜平成20年までの対外資産負債残高である。平成11年では、対外資産,対外負債が308兆円,223兆円であったが、平成20年では、519兆円,294兆円と対外資産と対外負債が順調に増えている事がわかる。なお、国際収支での「資産」は「日本人の海外資産購入額」で、「負債」は「外国人の日本資産購入額」の事である。

日本は世界一の対外純資産を維持し続けて、なおかつその純資産額も増え続けている。これが、ここ10年間日本の景気がそこまで良くなかったにもかかわらず円高が進んだ一因である事が推測される。
また、平成20年に関してはリーマンショックがきっかけで「円高により日本の対外資産が目減りした」&「外国人が日本の株を売り払った」というのが主な理由で、対外資産額も対外負債額も大幅に減少してしまったのだろう。いずれ世界金融がリーマンショック前の状態に戻れば、再び外国人が日本の株を買い出して、対外負債額もまた増えてくると思われる。

ここで問題にしたいのは、日本人が購入する対外資産についてなんですよ。というのも、本ブログで再三書いているように、長期的に見れば間違いなく円高ドル安&円高ユーロ安の流れは止められないと俺は思っているので、下手に対外資産を持つと価値が目減りするわけだ。なので、ずっと日本に住むつもりであれば、外貨預金とか外国株/外国債券はオススメできない。
おそらく、日本の証券会社とか銀行もそう思っているわけなので、今後は対外資産の「証券投資」は大きくは伸びないような気がする。一方で、海外会社の経営権獲得のための株購入に該当する「直接投資」は、今後かなりの伸びが期待できるんじゃないかな?いやいや、円高の大きなメリットは海外会社の買収ですよ。(笑)今後は、「直接投資」をどんどん増やして行く事が円高に沿ったビジネスモデルになるのではないでしょうか?


ところで、やはり為替レートに着目している人はたくさんいるみたいで、平成20年末の負債項目の中の現・預金が増えているのがわかるよね。これ、間違いなく外国人による外貨預金ですよ。自分の国の通貨価値が落ちると思って円で貯金してるわけだ。一方、資産の方の現・預金が減っているわけで、外貨預金していて円高を怖がる日本人がたくさんいるって事だよね。

そして、公的部門の純資産も順調に増え続けてるのに違和感を覚えない?「あんなに国債発行してるのに、何で純資産がプラスなの?」と思う人もいるのではないだろうか?日本政府の借金は対外的のものではなく、ほぼ全てが国内(日本人)からの借金なんですよ。つまり日本国債の所有者が日本人って事は、国債を投売りされる心配は無いわけで、当分の間は日本が破綻することはないと思うよ。


ちなみに上記記事によると、対外純資産2位は中国らしい。数年のうちに中国の対外純資産は日本を抜くかもしれないけど、いずれ中国も過少評価されてる元のレートを見直す時が来るわけで、その時は一体どれだけ元高になることやら……。
posted by きらっち at 22:55| Comment(0) | TrackBack(2) | 経済

2009年05月25日

北朝鮮は相当追い詰められてるな……

【北朝鮮核実験の威力…前回の数倍以上、技術高度化との見方】
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080115-899562/news/20090525-OYT1T00583.htm

【北朝鮮が短距離ミサイル3発発射、核実験に続き】
http://tinyurl.com/pvpjck

【北朝鮮への追加制裁焦点に 26日、緊急安保理会合】
http://www.asahi.com/international/update/0525/TKY200905250240.html

さすがに、中国もロシアも北朝鮮をかばいきれないでしょ?これが初めての核実験ってわけじゃないし、近いうちに国連安保理による制裁決議に入るんじゃないかな?さすがに軍事展開はまだだろうけど、国連加盟している全ての国による経済制裁くらいは確実のような……。



【金総書記、盧武鉉・前韓国大統領の遺族に哀悼の意=北朝鮮メディア】
http://jp.reuters.com/article/foreignExchNews/idJPnTK837701020090525

しかも、韓国の盧武鉉前大統領の自殺で哀悼の意を表明した途端にこれですよ。盧武鉉前大統領の自殺については、まだわかっていない事もあるだろうけど、親北朝鮮の象徴的な人がいなくなる事で、北朝鮮はますます孤立を深める懸念があるんじゃないかな?
これで中国やロシアに見放されたら北朝鮮に相手してくれる大国も無くなっちゃうだろうし、将軍様も体調悪そうだし、軍部が暴走しなければいいのだが……。



それにしても北朝鮮は、今日一日で核実験やったしミサイルも飛ばしたわけだし、やりすぎにも程があるよなぁ。もっとも、彼らはこれ以上切るカードが無くなってしまったわけで、残り時間もある程度見えてきたような感じがする。

次は、数ヵ月後くらいに再び核実験と、ハワイ沖を狙ったテポドン2発射の同日実行ってところでしょうか?
posted by きらっち at 20:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治

さすがに0点は言いすぎじゃない?

【定額給付金はゼロ点 クルーグマン教授、与謝野財務相と対談】
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090525AT3S2401624052009.html

ははは、0点ですか。(笑)確かに、権威ある人がこんな事を言うと、「やっぱり定額給付金は効果がないのかな?」と思ってしまうのが、庶民の心情かもしれないけど、俺個人は決して0点とは思っていない。

クルーグマン教授が何に基づいて0点と判断したかわからないけど、定額給付金でどれだけ市場にお金が回ったかを考えると、おそらく半額以上が貯蓄に回ったのだと思う。おそらく、クルーグマン教授はこの点で評価して0点をつけたのだと思う。(ちなみに前回の地域振興券の時は、4割が貯蓄で6割が消費に回ったという報道がある。)


ただ、定額給付金の良いところは、給付後すぐに効果があらわれるわけで、これは他の景気刺激手段(公共事業や各種減税)よりも明らかに早いわけですよ。
公共事業にしたって、政府の補正予算が国会を通った後、実際に各省庁が予算執行に動くまでに相応の時間がかかるし、事業開始後すぐに全額お金が会社の方に振り込まれるわけではないしね。

しかも、今回のリーマンショックに起因する不況は、誰も想定しなかった程の物凄いペースで景気の坂を転がり落ちていったわけで、「とにかくすぐに効果の出る景気刺激策が必要だ」という事になれば、一つの手段として「定額給付金」というのもアリだったのではないでしょうか?
もっとも、定額給付金を盛り込んだ生活対策の閣議決定が2008年10月30日、国会を通ったのが2009年1月27日なわけで、何でこんな緊急事態にもかかわらず3ヶ月も時間が必要だったのか、そこら辺に関して自民党も民主党もよく考えてもらいたいのですが……。


個人的に景気刺激の「コストパフォーマンス」という意味では、定額給付金よりも各地域で発行されているプレミアム商品券の方が、(スピード的にも)よっぽど良いのではないかと思っているのだけど、↓の記事の通り、やはり制度の網をくぐって本来の趣旨と違う使い方をする奴が出て来るんだよなぁ。これも、各自治体の税金が原資になってるのに……。

【働かずとも…「地域商品券」抜け穴でボロ儲け方法!?】
http://www.zakzak.co.jp/top/200905/t2009051801_all.html



【おまけの考察】
ところで、外国製品や外国サービスを控えて自国製品や自国サービスを優遇する事を「保護主義」と言って、各国の批判対象になるわけじゃない?
ところが、プレミアム商品券なんてのはつまるところ、各自治体が自治体間での保護主義を進める施策なんだよね。国家間では非難の対象だけど、自治体間であれば何の問題にならないのだから不思議なもんだよなぁ……。
posted by きらっち at 19:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月23日

空気で放電 新型燃料電池

【新しい構造の高性能「リチウム−空気電池」を開発】
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2009/pr20090224/pr20090224.html

2月の時点での話なんだけど、これ凄い発明だよなぁ。空気(酸素)で放電する電池なんて、そもそもの発想が思いつかないもんな。


とりあえず、今の段階で大容量化が実現できているので、後は@「安全対策」とA「常時放電をどれだけ抑えられるか」だろうと思うんだよな。

@について、多少化学をかじった人ならば知っていると思うけど、負極にリチウム金属、正極に電解液(水)を使っているので、仮にこのリチウム−空気電池を数十kg搭載した電気自動車が事故等によりリチウム金属と水が接触してしまうと、リチウムが真っ赤な火柱を立てながら燃えて、しかも化学反応で発生した水素に引火して爆発が起きるわけだ。(笑)

そしてAについて、このリチウム-空気電池の放電メカニズムであれば、酸素があるだけどんどん放電反応が進むので、車が止まっている時には放電を止めさせる(酸素の供給を遮断させる)仕組みを作らないと、せっかくの大電気容量が無駄に消費されてしまうわけだ。

この@とAを解決するのには、まだ時間がかかりそうな気がするけど、確かに「負極のカセットパッケージ化」「正極の水は交換」という形であれば、電池切れの時でも長時間の充電作業抜きで現在のガソリンスタンドでも対応できるわけだし、非常に有望な技術なのかもしれない。



ただ、産総研のプレスリリースを見ていてちょっと気になるのは、

「空気極の基準で大容量化(正極放電容量50000mAh/g)を達成した 」
「空気極の質量=(多孔質炭素+触媒+バインダー)」

と書いてある。つまり、この正極側の大電気容量を使い切ろうと思ったら、負極側のリチウム金属もたくさん積まないといけないわけだ。当然、空気極の質量よりも負極側のリチウム金属の質量の方が重いわけで、電池全体の重さで見た場合の単位重量辺り電気容量は、そこまで桁違いに変わるわけではないのでは?

おそらく今回の発明の真の意義は、
@放電が進めば進むほど放電効率の落ちていた事を防ぐ事ができた。
A今までネックだった正極側の大容量化に成功した。
Bカセットパッケージ化が容易で、既存のガソリンスタンドでも取り扱い可能
というところなんじゃないかと思った次第。



とは言え、確かに非常にインパクトのある発明であることには変わらないと思う。日本は、電気自動車の分野で世界市場の覇権を握れる可能性があるだけに、一刻も早く研究段階から実用化段階に移行して欲しい。
posted by きらっち at 08:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学

2009年05月21日

天気予報 的中率だけで予報性能を判断していいのか?

この前、電車で隣に座ったおばちゃん二人組が、「昔と違って最近の天気予報の的中率は高くなったよねぇ」という事を話題にしていた。確かに俺が小さい頃の天気予報なんて、ちょくちょく外れてたような気がするんだけど、最近の天気予報は次の日くらいの予報であればまず外れる事はない。

普通、天気予報の性能指標として「的中率」を思い浮かべる人がほとんどだと思うのだけど、実際のところ「的中率」は天気予報の性能を議論する上で良い指標とはいえない。今日は、その辺のところを条件付確率を使って考察していこう。



entropy_forcast.jpg
さて、今2つの天気予報システムAとBがある。AはC市の天気予報、BはD市の天気予報を管轄しているのだけど、1年間分の実際の天気と予報結果を確率として表にまとめたものが上記の画像である。(実際の結果ではなく、あくまで例ね)
ここでは話を単純化して、「晴れ」か「雨」の2種類の予報をするとしよう。表の中の数字はそれぞれの場合の確率を表していて、Aシステムにおいては、

予報が晴れで実際も晴れた確率(@)は0.64
予報が晴れで実際は雨だった確率(A)は0.16
予報が雨で実際は晴れた確率(B)は0.16
予報が雨で実際も雨だった確率(C)は0.04

とする。また、Bシステムにおいては、

予報が晴れで実際も晴れた確率(D)は0.3
予報が晴れで実際は雨だった確率(E)は0.2
予報が雨で実際は晴れた確率(F)は0.2
予報が雨で実際も雨だった確率(G)は0.3

とする。さて、皆様は「A、Bのどちらの天気予報システムが優れているか?」をこの表を見ただけでどう判断しますかね?ちなみに的中率を考えてみると、

「Aの的中率」=@+C=0.68(68%)
「Bの的中率」=D+G=0.60(60%)

であるので、「Aの方が予測システムとしては性能が良さそう」と、考えられなくもない。

ところが、すでに目の付け所の良い人は気づいていると思うけど、C市の実際に晴れた日の確率(@+B)と、実際に雨だった日の確率(A+C)は、それぞれ0.8と0.2であるのに対して、D市の実際に晴れた日の確率(D+F)と、実際に雨だった日の確率(E+G)は、それぞれ0.5と0.5である。よって、「この2例を同じ的中率という指標で比較するのは不公平ではないか?」と考える人が出てくるわけですよ。


それでは、条件付確率で考えてみよう。まずAの場合、

予報が晴れだった条件の下で
実際に晴れた確率(H)=@/(@+A)=0.8。

一方、予報が晴れだった条件の下で
実際は雨だった確率(I)=A/(@+A)=0.2。

予報が雨だった条件の下で
実際は晴れだった確率(J)=B/(B+C)=0.8。

一方、予報が雨だった条件の下で
実際に雨だった確率(K)=C/(B+C)=0.2。

そしてBの場合、

予報が晴れだった条件の下で
実際に晴れた確率(L)=D/(D+E)=0.6。

一方、予報が晴れだった条件の下で
実際は雨だった確率(M)=E/(D+E)=0.4。

予報が雨だった条件の下で
実際は晴れだった確率(N)=F/(F+G)=0.4。

一方、予報が晴れだった条件の下で
実際に雨だった確率(O)=G/(F+G)=0.6。


さて、ここまで来ればAの天気予報システムが相当に胡散臭い事がわかる。というのも、Aでは晴れと予報して実際に晴れる確率(H)は0.8と高いのだけど、もともと実際の天気が晴れである確率(@+B)は0.8なので、晴れと予報したところでその条件付確率に変化がない。

一方、Bの方はというと、Bで晴れと予報して実際に晴れる確率(L)は0.6であるけれど、もともと実際の天気が晴れである確率(D+F)は0.5であることより、晴れと予報する効果が10%程度の条件付確率上昇という形であらわれるのがわかる。


タネを明かすとAの天気予報システムは、実際の天気にまったく無関係で、常に晴れを0.8、雨を0.2の確率で出力するだけのインチキシステムである。一方、Bの天気予報システムは予報によって条件付確率が上昇することから、きちんとした予報効果のあるシステムであるわけだ。
このように、予測とか予報の性能指標として「的中率」で全て判断するのが適切ではない事がわかるだろう。


ちなみに、この場合の予報性能指標としてどういう指標が最も適切かというと、「実際の天気」と「予報した天気」の「相互情報量」じゃないかと思うのだが、これについては「情報理論」という大学で習う応用数学の分野の話になるので、興味のある方は勉強してはいかがでしょうか?(条件付確率が出来れば高校生でも理解可能な分野だと思われる)
なお、「情報理論」については、エントロピーの話やデータ圧縮の話をするときに必ず話題になるところなので、いずれこのブログにでも書く機会が出てくるだろう。


※ちなみに、俺は気象庁職員ではないので悪しからず。(笑)



【おまけの一言】
本エントリーで書きたかったもう一つの事は、「物事を一つの指標のみで判断しない方が良い」って事なんだ。物事が複雑になればなるほど、全体の評価を一つの指標で表すのは非常に難しくなるのは直感的にもわかる。
例えば、日本経済の調子を貿易黒字だけで判断できるかというと、とてもそんな事ないわけで、「貿易赤字→もう日本経済はダメだ」みたいな話は非常に短絡的だと思うんだよな。

しかも今回みたいに、そもそもの指標が適切でなければその後の判断が大きく変わりかねないわけで、自分の職場とかでもこの手の指標の設定ミスがあるんじゃないかと、ちょっと不安になるわ。(笑)
posted by きらっち at 21:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 科学

2009年05月20日

民間最終消費に見る心配性な民族性

【09年1―3月期GDP、15.2%減、過去最大の減少幅、内閣府】
http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20090520/154027/

今日、日本の2009年第1四半期(1月〜3月)の経済成長率が発表された。経済成長率であるGDPの前期比は-4.0%(年率換算で15.2%)となり、2期続けてとんでもない数字を日本ははじき出してしまったわけだ。前期は、外需に足を引っ張られていたけど、今期は内外需ともにGDP大幅ダウンに寄与してしまったとの事。

これまた面白いもので、金融に力を入れていたアメリカやイギリスよりも、ドイツや日本みたいな物作り国の方が経済成長率においてはダメージを受けてるんだよね。

という事で、今日はGDPの内訳に関する詳細データを公表した日本・アメリカ・韓国の第一四半期のGDPを見て、この3カ国が今後どうなるか考察してみたいと思う。



japan-us-korea_gdp.jpg
まず、この3国の2009年第1四半期のGDP内訳を上記の画像に示す。ここでは、それぞれの国ができるだけ同じ土台で比較できるように日米に関しては、
「GDP」=「民間最終消費」+「政府最終消費」+「住宅投資」+「設備投資」+「在庫増加」+「純輸出」
とする。なお、日本とアメリカに関して政府最終消費には公的固定資本形成(公共事業費)が含まれる。
韓国においては、公的固定資本形成は建設投資に含まれ、
「GDP」=「民間最終消費」+「政府最終消費」+「建設投資」+「設備投資」+「在庫増加」+「純輸出」
とする。このため、画像右のGDP各項目は日本とアメリカに適用され、韓国は画像左の各項目に従うものとする。また、3カ国全てに関して、在庫増加には民間部門・公的部門どちらも含んでいる。

「前期比」は、各項目別の前期比となっていて、寄与率はGDPの前期比のうちどの程度その項目が寄与しているかを表している。例えば、上記画像で日本の民間最終消費の寄与率が-0.6%だけど、これはGDP-4.0%のうち、民間最終需要が-0.6%分の減少を担っているという意味である。これらを踏まえた上で各国を分析してみよう。


【日本について】
とりあえず、GDP-4.0%のうち足を引っ張った大きな要因は「設備投資」と「純輸出」である事がわかる。まぁ、2008年第4四半期でも純輸出で足を引っ張っていたんだけど、海外の需要減はまだまだ続きそうなので、しばらくは輸出に期待できないと思われる。一方、輸出に比べて輸入の減少が緩やかなのも、純輸出が足を引っ張る要因になっている事がわかる。日本は高い物や付加価値のある物(自動車、機械、電気機器関係)を主な輸出品(※先の3項目で全輸出額の60%を占める)としている一方、日々の生活に必要な物(燃料や食料品)の輸入割合(※先の2項目で全輸入額の40%を占める)が高い。よって、今後も輸入額の急激な減少は見込めないので、純輸出の寄与率が大きく回復に向かうのはしばらくないような気がする。
(※:JETROのHP資料より http://www.jetro.go.jp/world/japan/stats/trade/excel/gaikyo2008.xls )

設備投資に関しては、関連する種々の指標(機械受注や鉱工業指数)
に下げ止まりの数字が見えてきたものもあるので、次の四半期は回復するんじゃないかな?そういえば次の四半期は、2008年度の2次補正が実行に移されるので政府最終消費が増えるだろうし、住宅ローン減税が開始されて住宅投資を後押しするし、高速道路1000円での観光効果や定額給付金等で民間最終消費にもかなり期待は持てそうなんだよな。上手くいけば、来期は一気にプラス成長になると思うんだけど、一番の不安要因は民間最終消費の中で大きな割合を占めている家計消費。マスコミが「日本経済はもうダメだ!」と炊きつけて、家計消費の回復を遅らせないかが心配だよ。(笑)


【アメリカについて】
この国の凄さは、やはりGDPの7割を占めている民間最終消費だと実感する。他の内需項目は全てマイナスであるにもかかわらず、民間最終消費が底割れを防ぐために頑張っている姿が浮き彫りになっているよね。リーマンショックから一季節が過ぎて、すぐに前期比プラスに戻せるアメリカ人の消費性に感心するよ。
サブプライムバブルに起因して、住宅投資が本調子に戻るのはもう少しかかると思うんだけど、アメリカの景気対策法(2年で7000億ドル)の実行で設備投資をどこまで取り戻せるんだろう?ちなみに、7000億ドルのうち3000億ドルが減税に当てられるので、やはり民間最終消費がアメリカのGDPを引っ張る事になるのが濃厚のような気がする。

そして、面白いのが純輸出。純輸出の寄与率増減がプラスに転じているのは、輸出が増えたからではなくて、輸出以上に輸入が急減して貿易赤字幅が縮小しているからである。そして、在庫増加も0.7%の寄与率が減少した。これは、在庫が減っていて今まで生産を止めてた商品が再び生産が始まるものがあるかもしれないという事で、来期のGDPにはプラスの影響があると思われる。

ただしアメリカは、今年に入ってから失業率が7.6%(1月)→8.9%(4月)に急増している。このまま失業率が増え続ければ、直接民間最終消費に響くし、デフレスパイラルに突入すれば失業率の増大と景気後退の悪循環から抜け出せなくなる。GMの行方にもよるけど、当面はここ数ヶ月がアメリカ経済(つまりは世界経済)の勝負どころだと思うんだよな。ここでGMが潰れて再生の見込みが立たなくなったり、アメリカの景気が息切れしたりすると、それこそ世界経済の二番底が来そうだよなぁ……。



【韓国について】
実は、韓国のGDP内訳が一番興味深い。というのも、韓国は昨年9月以降「デフォルトするんじゃないか?」とあれだけ言われていて、2008年の第4四半期の経済成長率は年率換算で-20%と、シャレにならない数字が出てたにもかかわらず、今期のGDPはまさかのプラス。「おぉ、韓国復活か?!」と思ってよく詳細を見てみると、「輸入激減による純輸出の寄与率増1.54%」と「在庫増加の寄与率減-2.24%」が非常に目を引くところ。
どういう事かと言うと、韓国は昨年、(特に)リーマンショック以降に急速にウォンが暴落してしまった。この時、海外の人から見れば韓国からの輸出品は安くなる。一方、韓国の人から見れば輸出品を作るために輸入する原材料は高くなる。よって、韓国の会社は原材料の輸入を抑えて、既存の在庫品をとにかく輸出してたのではないだろうか?ここ数ヶ月、韓国の輸入減による貿易黒字拡大はそういう意味で合点がいく。もしそうだとすると、近いうちに韓国は在庫が尽きて輸入を大幅に増やすときが来るはずで、この時に外貨が十分になければウォンをドルに変えなければならないので、ウォン安が進むんじゃないかなと思う。さらに、ドルに変えた分ウォンの消費が抑えられるために、民間消費支出と設備投資が減少するのではないかと俺は予想する。来期(4月〜6月)か来々期(7月〜9月)辺りになれば縮小成長も終わるだろうから、この頃が韓国の正念場になるんじゃないだろうか?

2009年第1四半期の韓国は、縮小成長の戦略が上手く行き過ぎたような感じがするんだよね。もちろん、韓国政府の経済対策が始まっているので政府最終支出と建設投資で持ちこたえている側面もあるのだが、予想外に民間最終支出もプラスだったので、これには正直びっくりしている。



という事で、俺の来期の経済成長率(年率換算値)をざっくりと予想すると、「日本は急回復」「アメリカは若干の回復」「韓国は横ばいか若干の悪化」ってところじゃないでしょうか?
しっかしアメリカも韓国も、自国に構造的な経済問題を抱えているにもかかわらず、民間最終消費がプラスなんだよね。「日本人がどれだけ心配性なのか」という事を表しているデータかもしれません。(笑)
posted by きらっち at 22:12| Comment(8) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月19日

「ふるさと雇用再生特別交付金」「緊急雇用創出事業」 注目の独自地方事業!

【ふるさと雇用再生特別交付金及び緊急雇用創出事業について】
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/chiiki-koyou3/index.html

昨年度の補正予算で、「ふるさと雇用再生特別交付金」と「緊急雇用創出事業基金」という2つの基金が創設されたのを、みなさんはご存知でしょうか?この2つの基金は、地域の実情や創意工夫に基づいて、地方の雇用取り組みを支援するために設けられたものなんだ。上記2つの基金で総額4000億円(平成23年度末まで)のものなんだけど、国からの制約を受けずに地方が自由に使えるものであるので「一体、地方からどんな事業が出てくるのかな?」と思ってたんだけど、上記の厚生労働省のページが先日公開されて、各県の自治体がどんな事業をやっているかが辿れるようになった。

今日は自分の仕事の関係でこのページをつらつら見てたんだけど、「まさにその自治体ならでは!」の事業がいくつか目に付いたので、このうち4つの事業を紹介する。



○新品種の開発を目指す野生きのこの採取事業(北海道)
何かこの事業名だけを見ると、「この事業は、きのこ採りするだけで給料貰えるのか?!」と思ってしまうのだけど、事業説明を見たら「きのこの新品種の採取・探索調査、各種データ採取・整理」となっている。この説明だけだと、具体的には何するのかよくわからないけど、2ヶ月間の事業で3人の雇用を考えているみたい。
これで雇用された人は、好きなだけきのこ持って帰れるんじゃないの?!(笑)

○ブラックバス密放流防止事業(山梨県富士五湖町)
なるほど、富士五湖はブラックバスの密放流で困っているわけか。と思ったら、事業概要には「ブラックバス密放流防止パトロール、湖畔清掃等」と書いてあって、2人の雇用を考えているらしい。2人であれだけ広い湖を全て監視するのは非常に厳しいので、おそらくメインの仕事は湖畔清掃の方になるんじゃないかと思うのだが、いずれにしても観光収入の大事な町なんだろうから、確かに湖畔清掃も大事な仕事になると思う。

○化石クリーニング事業(熊本県御船町)
これ、最初に見たら「何の事業っ?!」って思わない?(笑)事業概要を見てみると、町がやっている恐竜博物館( http://www.mifunemuseum.jp/ )で化石クリーニング(岩石除去・破損箇所の修復)を行うもので、2人の雇用を考えているらしい。
これ、裏を返せばこういう機会が無い限り破損箇所修復の予算すら取れないって事なので、地方自治体の財政事情は相当に厳しいと推測できる。是非とも、クリーニングを成功させて来場者を増やして欲しい。

○ウェルかめ!MINAMI ふるさとイメージアップ支援事業(徳島県美波町)
これも時事ネタで良いねぇ。次期、NHKのテレビ小説「ウェルかめ」の舞台になっている徳島県美波町の事業で、「海岸・河川等の清掃や維持補修、側溝掃除や町有施設の維持管理のための作業」という名目で8人の雇用を考えているらしい。確かに「ウェルかめ」が始まる10月以降は観光効果が見込めるので、美波町の予算からじゃなくこの基金を使って清掃員を雇うというのは、良いアイデアかもしれない。



確かにいろいろな事業例を見ると、その地域の特徴に応じた事業がたくさんある。もちろん自治体の行う事業が全て成功するとは限らないのだけど、こうやってそれぞれの裁量で事業を決められるってのは、自治体の人にとってはありがたい事なんじゃないだろうか?(「めんどくさい仕事が増えて嫌だなぁ」とか「中途半端に裁量権が増えてもしょうがない」という人もいるかもしれないけど。)

きっと地方分権の流れは止まらないと思われるので、今後もこの手の交付金や基金が増えるような気がするけど、地方公務員の方々は自分のやりたい事業ができるので、やる気が上がるのではないだろうか?一方で、仕事も予算も減らされるであろう今後の国家公務員の方は、やる気が削がれる一方なのかもしれないなぁ……。

今日はそんな事を考えながら、上記の厚生労働省のHPからうちの職場に関連する事業の抽出作業をしておりました。
posted by きらっち at 19:25| Comment(1) | TrackBack(0) | 仕事

2009年05月17日

高速道路1000円の経済効果は?!

【高速道路料金:1000円 自民、拡大で争鳴 「夏休みすべて」「航空運賃も」】
http://mainichi.jp/life/today/news/20090516ddm005020007000c.html

【上限1000円実施後のGW、交通量は約1.3倍、渋滞回数は2倍に】
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20090507_168102.html

高速道路1000円にしたことによる正確な経済効果が算出されないうちから、あんまり次の計画を先走りしすぎない方がいいと思うんだけどなぁ。というのも、1000円に値下げして今年のGWの交通量は1.3倍になったわけでしょ?この数字が大きいのか小さいのかよくわからないので何とも言えないけど、ただ、高速道路の通行収入不足分は税金で穴埋めする事はすでに決まっているわけだ。問題は税金投入額(2年で5000億円)と、高速道路1000円になった事による鉄道や旅客機等の経済損失よりも、経済効果が大きいかどうかだよね。そこで、まずはそれぞれ高速道路、鉄道、旅客機のGWの利用統計(昨年比)を調べたんだけど、

高速道路 30%増(約2275万台→約2950万台)
鉄道 6%減(約493万人→約464万人)
旅客機 国際線4.3%増(約40.3万人→約42万人) 
      国内線0.7%増(約211.5万人→約213万人)

という事でした。なお、高速道路は4月25日〜5月6日、鉄道は4月26日〜5月6日、旅客機は4月28日〜5月6日で統計を取っている。そして、上記の数字は以下のサイトで算出した値である。

【ゴールデンウィーク時期の高速道路における交通状況(速報)【NEXCO東日本版】】
http://www.e-nexco.co.jp/pressroom/press_release/head_office/h21/0507/

【ゴールデンウィーク期間(4/25〜5/6)の高速道路の交通状況(速報)【中日本版】】
http://www.c-nexco.co.jp/info/others/090507140756_2.html

【NEXCO西日本管内ゴールデンウィーク期間における高速道路の交通状況(速報)】
http://corp.w-nexco.co.jp/corporate/release/hq/h21/0507b/

【航空・鉄道各社が2009年ゴールデンウィークの利用者状況を発表】
http://journal.mycom.co.jp/news/2009/05/08/024/index.html



さて、鉄道と旅客機は移動人数そのものを表しているけど、高速道路の場合は、あくまで観測地点の台数を合計しているわけで、重複して観測されてる車もあるし、観測地点に引っかからない車もあっただろうし、トラック等の仕事用の車もカウントされてるし、しかも一台辺りに何人乗っているかもわからないので、あくまで目安にしかならないけど、少なくとも675万台も交通量が増えたわけだ。この675万台は往復分でカウントされているだろうから、純粋に増えた分は340万台程度だろうか?

仮に1台3人乗っていて、外出先で1人1万円消費するとすれば、340万台の増加分で1020億円分の経済効果があったって事になる。(実際は重複分のカウントを省く必要や、1台当たりに何人が乗っているかで、数字が違ってくるだろうけど)
同じく鉄道の場合も、同様に計算すれば15億円程度の経済損失があったわけで、実は高速道路1000円はそれなりに効果があったと推測できそうな気もするなぁ……。2年で5000億円の経済効果を引き出せるかどうかはまだはっきりわからないけど、少なくとも鉄道利用者の減った分の経済損失は軽く取り返してそう。




実は俺も、高速道路1000円で恩恵を受けているのだけど、夏休みも全日1000円で行けるなら、またどこかに旅行するかなぁ……。
posted by きらっち at 22:42| Comment(0) | TrackBack(1) | 時事

2009年05月16日

投票できないサポーター

【民主党新代表に鳩山氏、岡田氏に29票差】
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090516-OYT1T00476.htm

新代表の鳩山(弟)さんは、両院議員総会の選挙で決まったものだけど、「もともと民主党の総裁選って一般人も投票できなかったっけ?」と思って調べてたら、↓こんなページを発見。

【あなたも民主党に参加してみませんか?】
http://www.dpj.or.jp/sub_link/volunteer/index.html

これを見ると、「民主党の党員」「サポーター」が"代表選挙で投票することができます"と書いてある。まぁ今回は、小沢さんが突然辞任して任期満了していないので、"正規の代表選挙ではない"という位置づけなのかな?
でもよくよく調べてみると、「サポーター」の制度ができたのが2000年で、2002年の代表選挙を最後にその後一回もサポーターが代表選挙に参加した実績がないわけでしょ?(その後、無投票再選を除いて4回代表選挙があったにもかかわらず)しかも、サポーターになるためには年間2000円の会費がかかるわけなので、「これじゃ詐欺じゃないか?」と怒っている人達もいるんじゃないのかな?(笑)衆議院選挙が近くて、実質政権のかかった選挙になるにもかかわらず、党の顔を決める投票ができない上に2000円だけ消えていくのであれば、俺だったら文句を言いたくなるけどな。(笑)

一方の自民党の総裁選は、一般の人や党員の直接投票ができないので、これもこれで「どうかな?」とは思うけどね。
結局、どこの党も自分達の論理で党首を決めたいって事ですよ。(笑)
posted by きらっち at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治

2009年05月15日

結局日本が買うのかよ?!

【中国が“米国債離れ”か…オバマ大統領、財政再建訴える】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20090515-OYT1T00313.htm

【中国 純輸出激減の誤算】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/29097565.html

「米国債の一番のお得意様は、今年2月より貿易黒字が急減中」と先日の↑のエントリーで書いたわけだけど、貿易は国際通貨(ドル)で決済してるんだから、貿易黒字が減少すればそりゃ中国も米国債も買わなくなるよね。って事で、「米国債の利回りがぼちぼち上がっているのではないだろうか?」と思い、2008年8月からの日々の米国債利回りを調べたみた。


us-treasury200808-200905.jpg
上記が2008年8月(リーマンショック前)から2009年5月までの、それぞれの米国債利回りをあらわしている。これを見れば、いつリーマンショックが起きたか一目瞭然!短期の米国債の利回りが急激に落ちた時期がまさにリーマンショックが起こった時ですよ。とはいえ、長期米国債の利回りはそこまで落ちたわけではないところを見ると、利回りが落ちた直接の要因は政策金利を下げた事だと思うけどね。実際にアメリカの政策金利は、2008年8月に2%だったのが12月で0.5%まで落ちてるんだ。

リーマンショック後、世界の投資家が資金を引き上げたのだけど、他の金融商品を買うよりは、相対的に安全な米国債に結局は人気が集まり、米国債の利回りは年末にかけて落ち続けた。ところが2009年になって潮目が変わったのか、今度は利回りが上がり始めたわけでアメリカも焦ったと思う。しかも、2月に入って中国の貿易黒字が急減したので、今までみたいに中国が米国債を購入し続ける事に期待ができないわけだけど、3月半ばくらいに何故か長期国債の利回りが急減した時期があるんだよね……。これは何故だろう?どこかの誰が米国債を大量に購入したのか、はたまた大量の米国債の償還期限を迎えたのか?


【米国債 果たしてどこまで売りさばける?】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/28518176.html

いずれにしてもアメリカは、米国債を売り続けないと財源の確保ができない。↑のエントリーでも書いたけど、ここ最近は1週間で1兆円近くの米国債を発行してきたわけで、利回りがちょっとでも高くなるだけで、アメリカ政府は相当の財政負担を強いられる事になる。

当然、今後下落するドル建ての米国債を中国や日本が買い続ける事に難色を示すのは間違いない(それでも日本が米国債を買い続ける可能性もあるけど)。アメリカが本当になりふり構わずに財源を確保しようとするなら、円建て米国債しか手はないんじゃないのかなぁ……。円建て米国債なら円高も阻止できるだろうし、輸出企業にとっても悪い話じゃないでしょ?いやぁ、そのうち経団連あたりが円建て米国債についていろいろ言ってきそうな気もするなぁ……。(笑)

一方で元建て米国債は、半固定為替レートと中国体制をネックになるので、実現性としてはかなり低いような気がする。中国が「ドル/元の完全変動相場で構わない」というなら話は別だけど、今の水準から比較して超元高になるのが見えているので、中国は絶対にやりたがらないだろうな。



まぁ、まだ致命的な利回りではないので、しばらくは大丈夫だと思うけど、今後も米国債を発行するしかないアメリカはどうやって乗り切るつもりなのだろうか?!
posted by きらっち at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月14日

日本は輸出依存国じゃないのになぁ……

【経常黒字半減 日本成長戦略描けず】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20090514-OYT8T00334.htm

この記事だけ読んでしまうと、「日本経済はもうダメか?」と思えるのだけど、この記事は「国際収支」(日本と外国とのお金のやり取り)の視点で考察しているに過ぎず、日本経済全体の視点に立っていないところを留意する必要がある。

それでは日本経済全体の視点で見た場合、日本はどういう成長戦略を描けれるのだろうか?ということで、今日はGDPに着目し日本経済の行く末を考察する。


まず、GDP(Gross Domestic Product)(国内総生産)について説明しよう。GDPとは、国内で産出された付加価値額の合計の事で、平たく言えば日本がどれだけお金を稼げたかを表す指標である。GDPはいろいろな定義式があるのだけど、一般的に以下の式で表される。

「GDP」=「民間最終消費支出」+「民間住宅投資」+「民間企業設備投資」+「在庫変動」+「政府最終消費支出」+「公的固定資本形成」+「純輸出」

ここで、「公的固定資本形成」は何だかよくわからない単語ではあるのだが、一言で書くと「政府の公共事業費」の事である。さて、それではここ数年の日本の名目GDPの推移を見ていこう。


japan_1994-2008GDP.jpg
上記が1994年〜2008年の日本の名目GDPとその内訳である。実はこの統計を読むと、一般的な日本人の思い浮かべる「日本のビジネスモデル」が実際は随分異なっている事に気づかされるだろう。

まず、最近の日本のGDPは、概ね500兆円くらいで推移している。そのうちの60%程度が「民間最終消費支出」で構成されていて、日本の経済活動の主役が、一般家計を含めた民間部門である事がわかる。

ちょっと話が脇道にそれるが、政府が支出する項目「政府最終支出」と「公的固定資本形成」を見てみよう。「政府最終支出」は年々増加しているけど、「公的固定資本形成」は逆に年々減ってきているのがわかるだろう。ところが両者を足した値について調べると、ほとんど変化のない事がわかる。
公共事業が年々減ってきているという事実は皆さんわかっているとは思うけど、それを踏まえた上で、この事実をどう取れば良いのだろうか?それは、みなさん自身で考えていただきたい。(笑)


japan_2007-2008GDPchart.jpg
それでは話を戻そう。上記は2007年と2008年の名目GDP内訳を円グラフで示したものである。2007年はリーマンショック前で、日本の貿易が正常だった頃。2008年はリーマンショックが起こり、輸出産業が壊滅的な打撃を受けた後のものと認識して欲しい。

この円グラフから「あれ?」と思った人がいるだろう。そう、GDPに対する純輸出(貿易収支)の割合は、2007年でさえわずか1.67%でしかないわけだ。つまり、GDPのうち98.33%は日本の内需で構成されている事になる。
一般の日本人は、「日本は貿易で稼ぐ国なんだ」というイメージを
強く持っているのだろうけど、実はリーマンショックの起こる前の年ですら、貿易黒字がGDPに占める割合はわずか1.67%に過ぎないわけですよ。


それを踏まえた上で、最初にあげた読売新聞の記事を読んでみると、「そもそも日本の成長戦略は輸出にあるわけじゃないんじゃないの?」と気づけるわけですよ。GDPが示す日本の成長戦略は、明らかに内需(特に民間最終消費支出)を刺激することであって、外需の方ではないことがわかる。

とはいうものの、輸出製品を作るための設備投資等々は内需分にカウントされるため、実際のところはGDPの中でどれだけ外需関係の物が含まれているかわからない。ただ、「純輸出」ではなく日本の「輸出」のGDP比が16%程度(韓国、中国、ドイツが40%程度)である事から、他の「貿易国」と言われる国と比較すると、外需の落ち込みで内需を下振れさせる影響力は全然小さいと推測できる。
(この辺については、また後日に詳細を書く予定)


読売新聞だけじゃないけど、日本経済全体の行方を書きたければ、それなりの指標を持ち出して議論して欲しいのだけど、国際収支だけで日本経済全体の話をしないで欲しいよなぁ。(笑)
国際収支だけで日本経済を語るということは、「日本経済は完全に外国依存です」と認めてるようなものだけど、実はそうじゃないんですよ。



【おまけの考察】
上記の読売新聞記事では、「所得収支も2008年度は減少に転じてしまった」と書いてあるけど、そもそもGDPには所得収支がカウントされていなくて、帳簿外収入の状態なわけですよ。もし、この所得収支をカウントしたら、10兆円以上が収支としてカウントされるため、もはやその国全体の経済力をあらわす指標として所得収支を無視するわけにはいかないんじゃないかなぁ……。ということで、今後は世界中でGDPに取得収支を含んだGNI(Gross National Income)(国民総所得)を使う方が、日本にとっては有利に働くような気がする。
ただし、外資依存で成長している国には不利に働くので、果たしてGNIが、全世界でGDPに取って代われる指標になるのかどうかは微妙かもしれない。
posted by きらっち at 22:17| Comment(3) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月13日

日立製作所 膿出し決算?!

【日立今期予想 4期連続赤字 改革加速も見えぬ再建シナリオ】
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200905130022a.nwc

営業赤字が7800億円って、これまた凄い話になってるけど、このうち2000億円程度は営業外損失で一時的な損失なわけで、実際のところの日立の経営状態はどうなんだろう?という事で、今日は日立の2001年度〜2008年度までのバランスシートと部門毎の営業利益率に着目して考察したい。


hitachi_balance-sheets.jpg
まずは、上記のバランスシートから見ていこう。上記は2001年から2008年までのバランスシートの推移を示したものである。このバランスシートを見ると、日立は2003年度に「有形固定資産」が激減してるし、2002年度に「退職給付債務」「その他の包括損益」が激増していた事がわかる。おそらくこの時期は、失われた10年の末期であるため、工場等の不動産の売却し、年金運用損失の穴埋めを行い、さらに従業員のリストラで大なたを振るったものと推測できる。

2003年度〜2007年度にかけては資金繰りの大きな変化は読み取れないけれど、2008年になって、いくつかの大きな変化があらわれた。

@「現金及び現金等価物」が突然増加
「その他流動資産」が同じオーダーで減少しているところを見ると、リーマンショックを機に危ない金融商品とか有価証券等々を売り払って、使い勝手の良い現金に換金したのではないかと推測できる。そもそも資金繰りが悪くなると、一番使い勝手の良い現金に換えるのは、経営の常套手段でもあるしね。

A「資本」が急激に減少
この1年間で資本が1兆円以上も減少していて、この結果2008年度の自己資本率は11.2%となった。銀行とか証券会社みたいに、キャッシュフローのある金融関連会社なら自己資本率が数%ってのは珍しくないけど、大手の総合電機メーカーであれば、自己資本率11.2%っていうのは結構低いと思われる。もっとも、バランスシートと会社の発表を見る限り今回の資本減少の大きなの要因は、「為替差益」「リストラ費用」っぽいので、今年度はある程度持ち直すんじゃないのかな?
ちょっと心配なのが、(上記の画像には詳細がでていないけど)「その他の包括利益累計額」の中の「年金債務調整額」が4000億円の損失を計上している事。年金運用でとんでもない事になっていなければいいのだけど……。

B「短期借入金」が激増
短期借入金は毎年コンスタントに1兆円〜1.1兆円の範囲内で計上してたのに、2008年度だけ突然1.5兆円に増えているので、資金繰りが上手くいっていない事を強く示唆していると思われる。

さらに、ここ数年間を通して気になるのが、失われた10年から抜けた2004年度以降も「棚卸資産」(在庫)が増え続けていること。通常、景気が良くなれば在庫が減ってもおかしくないのに、日立の場合は在庫が増え続けているのに疑問を感じる。幹部は「景気の良いうちに在庫を減らせ」と、指示しなかったのだろうか?

いずれにしても、日立は今後何らかの手段で資金調達すると思うんだけど、どういう選択を取るのか、俺的には非常に興味深い。公的資金を受けるとなると自由な経営が出来なくなるし、株の増資なんかをしたら協力的でない株主が増える可能性があるし、社債を発行するにしてもこのバランスシートじゃ利回りが気になるところだし、どの方法も一長一短があるからなぁ……。



hitachi_segment-rate.jpg
さて、全体的な話はこれくらいにして、日立の部門別の営業利益率を見ていこう。上記のグラフは、2001年からの日立の各部門営業利益率を表している。「営業利益率=営業利益/売上高」なわけだが、これを見ると日立の足を引っ張っているのは、「デジタルメディア・民生機器」部門であるのがはっきりわかる。長期的に営業利益率が落ち続けていて、まだ底が見えない段階なので、この部門の再生は非常に大変なような気がするなぁ。俺的には、この部門が何故ずば抜けて儲けが得られないのかわからないのだけど、何が原因なんだろう?

一方で光の見えるのは、「情報通信システム」部門である事がわかる。収益率の高いこの部門に、ある程度社内投資を集約した方が良いのではないかと思うのだけど、いかんせん日立って「全ての分野を満遍なく着実に」ってイメージじゃない?そこは、ライバルの東芝とは違うので「分野を絞って一点突破!」みたいな発想が日立にできるどうか……。



おそらく、内部留保金をこれだけ取り崩し、通期損失が7800億円になるなんてしばらくないとは思うけど、こういう機会に一気に膿を出すほうが長期的には日立にとっては良いような気がする。すでに今年度での復活は厳しいような感じもするけど、来年度以降に期待したい。
posted by きらっち at 19:20| Comment(0) | TrackBack(1) | 経済

2009年05月12日

中国 純輸出激減の誤算

【中国、4月の輸出22.6%減 成長けん引の外需低迷】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090512AT2M1201P12052009.html

【中国貿易統計こうみる:輸出が予想以上に減少】
http://jp.reuters.com/article/economicIndicatorsAndComments/idJPnJS847220320090512

記事のタイトルだけ読むと、あたかも中国の輸出額が減っているように見えるけど、22.6%減っていうのは前月比ではなく「前年同月比」なんだよね。こちらとしては、あくまで輸出額そのものを発表して欲しいのだけど、何故か中国が表に出す数字は「前年同月比」なんだよね。
という事で、さっき中国税関総署のHPを読み漁り、何とか輸出額と輸入額そのもののデータを探してきたので、これを見て最近の中国の貿易動向について考察してみよう。


china_trade.jpg
上記のグラフが、2008年1月から2009年4月の中国の輸出額・輸入額・純輸出額(輸出額-輸入額)を示したものである。中国の税関が発表している数字なので、ここでの輸出は「物」の輸出のみで「サービス」の輸出は含まれていないのだろうけど、中国貿易の参考にはなるだろう。
さて、これを見ると中国は、昨年9月のリーマンショックまでは順調に輸出・輸入・純輸出の全てが増えていたことがわかる。特に、純輸出(貿易黒字)が増えていた事で外貨準備高が激増する主要因だったと推定される。

ところが、昨年9月のリーマンショックを機に輸出と輸入が激減。面白いことに、輸入の方の減り方が急だったので、輸出が激減したにもかかわらず純輸出(貿易黒字)が過去最高を記録するという縮小成長の状態が4ヶ月ほど続く。しかし今年の2月に入って輸入減が止まり、しかも中国では旧正月と重なって生産と輸出が落ち込んだ事があり、純輸出が辛うじてマイナスを免れる状態にまで落ち込んでしまう。3月と4月になり輸出額は1月水準まで戻したものの、V字型のような輸出回復にはならなさそうな気配が濃厚。2月の旧正月要因を取り除けば、中国の輸出はL字型回復を辿ってるっぽいな。

中国は今後、輸出回復局面に向かうとすれば、輸出より前に原材料を輸入を増加させなければならないため、ここ数ヶ月は純輸出額も低迷するものと思われる。これにより、外貨準備高も今までのように激増しないために、中国は短期的に米国債を買い支えられなくなるんじゃないのかな?



中国はGDPに対して純輸出が9.3%(2007年統計 http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/stat_01/ )を占めているので、今の状況は悶絶モノだと思う。しかも今年の2月から純輸出が激減していて、もう数ヶ月はこの状況が続く事が濃厚。この純輸出激減はGDPを相当に押し下げる要因になるはずで、よほど内需を刺激しない限り、中国政府の掲げる2009年経済成長率の目標8%は、かなり厳しいとしか思えないけどなぁ……。
posted by きらっち at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月11日

フィアットは自動車業界の救世主になれるのか?

【伊フィアット、自動車再編「台風の目」に】
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20090510AT1D0900C09052009.html

【攻めるフィアット、異色のCEO 再建の経験が自信の源】
http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY200905090269.html

クライスラーを買収したフィアットが、矢継ぎ早に新たな買収と提携を打ち出している。GMの欧州部門やGM子会社でドイツのオペルまで念頭に置いているらしい。わずか自動車販売200万台の会社が、一気に600万台のシェアまで伸ばせるんだから、チャンスと言えばチャンスなんだろうけど、フィアットはそれだけ買収できる資金力があるんだろうか?
という事で、今日はフィアットのバランスシートを調べてみたので、これでフィアットの財政事情を垣間見てみよう。


FIAT_balance-sheet.jpg
さて、上記がフィアットのバランスシートである。この表は、2005年〜2008年のバランスシートをおっかけたものである。これを見ると、2005年〜2006年にかけて一気に資産/負債・資本が激増しており、この時期フィアットに大事件があったものと推測される。「一体、何があったんだ?」と思って調べたら、以下の出来事があったわけね。

【フィアットとGMが和解 2100億円支払いで】
http://www.47news.jp/CN/200502/CN2005021401000054.html

これを機に、フィアットはGMとの違約金を投資につぎ込んでいた事が、2006年の資産の投資を見ることでわかる。さらに、同時期に「非流動財務負債」と「流動財務負債」も激増したところを見ると、GMとの違約金をキャッシュフロー源として、投資だけではなく新車開発とか本業にも力を入れてたんじゃないかな?

そして驚くべきが、2006年〜2008年にかけて、利益剰余金が10倍になったこと。さらに、この数年間で自己資本も着々と増えているわけだし、企業の業績としては確かに良好に見えなくはない。ただし、それでも2008年の利益剰余金が30億ユーロ(4000億円)程度なので、いくら格安とはいえ、クライスラーだけでなく、GM欧州部門やオペルを自前の資金だけじゃ買収できないような気がするんだけど、どうするつもりなんだろう?EUの融資や政府保証の枠があるとはいえ、この買収劇が非常に危険な賭けに見えるのは俺だけか?

そして若干気になるのが、2008年は流動負債額が流動資産額を上回っていてフィアットの資金繰りが悪化している兆候が見えるんだよなぁ。2006年は、GMの違約金という後ろ盾で流動負債が激増したのは納得できるけど、2008年は、流動資産の方が激減してるのが気になる。そして、2008年に何故流動財務資産が急に0になったんだろうか……。

もう一つ致命的に気になる点が、「現金・現金等価物」の少なさ。これは、2005年〜2008年を通して少ないのだが、フィアットくらいの規模の会社なのに50万ユーロ(6600万円)しかないのに驚き!つまり、全資産(156億ユーロ)に占める現金・現金等価物のパーセンテージは、わずか0.03%に過ぎないわけで、これは一体どういう事?そもそも欧米の会社は日本とは商習慣も違うので、このくらいの数字が当たり前なんだろうか?ちなみに、トヨタの場合は全資産29兆円に対して、現金・現金等価物は2.44兆円ということで、8.4%程度は確保している。(2008年のトヨタ決算報告より http://www.toyota.co.jp/jp/ir/financial_results/2009/year_end/yousi.pdf )


こうやって、フィアットのバランスシートを見ていると「本当にクライスラーもGM欧州部門もドイツのオペルも買収できるのか?!」と疑問を持たざるを得ない。自動車需要が急減する中、他社の買収によって、これ以上生産能力を増やす勝算はどこにあるんだろうか?一方の日本の自動車業界は嵐が過ぎ去るのをひたすら我慢して待つ戦略を取っているわけで、果たしてどちらの戦略が正解であるか数年後にはわかるだろう。
これまた今後の展開が非常に興味深い。
posted by きらっち at 19:44| Comment(8) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月09日

ご当地B級グルメ 真の勝者は?!

実は俺、日経トレンディーを定期購読してるんだけど、6月号の特集記事は「B級グルメ大戦争」という事で、読んでいて非常に面白かった。

B-1グランプリで一躍全国区に躍り出た「富士宮やきそば」や「厚木シロコロ・ホルモン」等々、地元に年間10億円単位の経済効果をもたらした物もあり、今後もしばらくご当地B級グルメは続くのではないだろうか?

さて、俺が実際に食べたことがあってオススメしたいものは、以下である。


【駒ヶ根ソースカツ丼(長野県)】
http://www.komacci.or.jp/katsu/

駒ヶ根のソースカツ丼は、ご飯の上にキャベツとカツを乗せていて、特製の味噌ベースのソースをかけるもの。免許合宿に駒ヶ根の自動車学校に行ったんだけど、よく一人で食べに行ったなぁ……。


【姫路おでん(兵庫県)】
http://himejioden.jp/

姫路に出張に行った時に食べたんだけど、最初は「何で姫路でおでん?」と思ったよ。ただ、生姜醤油につけるのが斬新でなかなか美味しかった記憶がある。


【新潟イタリアン(新潟県)】
http://www.mikazuki-go.com/index2.html

これ、ちょっと一言でどんな料理かを説明するのは難しい。近い食べ物でいうと、焼きうどんになるのかな?やきそば系のご当地グルメの中でも異彩を放つ一品。


【今治やきとり(愛媛県)】
http://www.city.imabari.ehime.jp/shoukou/yakitori.html

通常、やきとりは串に刺さって焼くイメージがあるんだけど、今治のやきとりは鉄板で焼き上げるもの。鳥皮が一番メジャー。焼き上げた鳥皮に、それぞれのお店独自のタレをつける。



あと、日経トレンディの記事を見て興味が出たのが以下の物である。

【十和田バラ焼き(青森県)】
http://www.asahi.com/food/news/TKY200811270053.html

【金沢ハントンライス】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B9

【佐世保バーガー】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E4%B8%96%E4%BF%9D%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%BC

佐世保バーガーは、すでに東京でブレイクしてしてしまった感があるものの、俺はまだ食べたことないんだよなぁ……。




最近ご当地グルメブームに乗じて、それぞれの自治体でご当地グルメ品の開発をしてるところもあると言うけれど、まずは地元で成功してから全国区にデビューして欲しいんだよなぁ。そもそも、「富士宮やきそば」も「厚木シロコロ・ホルモン」も、すでに地元で食べられてきた物なんだよね。観光客効果は主に土日や長期の休みにしか見込めないので、平日にも地元の人に食べられるような物じゃないと、長期的には安定した経済効果にはならないと思うんだよなぁ。

俺の住んでいる近くの町で、町おこしのために開発している○○コロッケなんて見ていると、あまり地元の支持が無いのに東京に進出して大丈夫なのかと、ちょっと心配になる。
posted by きらっち at 16:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年05月08日

テロメア 不老不死の近道

【Dr.中川のがんから死生をみつめる:/1 人間も自然の一部】
http://mainichi.jp/life/health/nakagawa/news/20090407ddm013070162000c.html

【Dr.中川のがんから死生をみつめる:/2 命に限りある理由】
http://mainichi.jp/life/health/nakagawa/news/20090414ddm013070105000c.html

【Dr.中川のがんから死生をみつめる:/3 不老不死の細胞】
http://mainichi.jp/life/health/nakagawa/news/20090421ddm013070140000c.html

【Dr.中川のがんから死生をみつめる:/4 コピーミスの功罪】
http://mainichi.jp/life/health/nakagawa/news/20090428ddm013070157000c.html

【Dr.中川のがんから死生をみつめる:/5 限界ある細胞分裂】
http://mainichi.jp/life/health/nakagawa/news/20090505ddm013070141000c.html

たまたまGWの外出先で見た毎日新聞で、「Dr.中川のがんから死生をみつめる」というシリーズコラムを読んだのだけど、なかなかこのコラムが興味深い。がん細胞は通常の細胞と違って、何回でも細胞分裂ができる事は広く知られているとは思うけど、

○俺みたいな20代の成人男性でも、がん細胞が日々5000個程度作られていて、その全てが免疫細胞によって駆逐されている事。

○ソメイヨシノは全てクローン植物であり、種子ができないため自力繁殖ができない事。

○脳や心臓の細胞は、生後は細胞分裂しないため減り続ける事。

等々、一般の人にはなかなか知られていない事がいろいろ書かれている。今のところ、シリーズは第5回まで連載されてるのだけど、話の展開からすると来週はテロメアの話になりそうなので、中川先生よりも先にテロメアについて書いておこうかなと思った次第。(笑)大学時代に、テロメアに関する授業を取っていたので、当時の記憶を思い返し、久しぶりに当時の講義ノートを見ながら執筆するか。



さて、テロメアとは細胞中のDNAの末端部分の事を言う。DNAは、二重螺旋形で鎖状塩基配列を構成して、その両サイドにテロメアという物質が位置している。下の画像のように、このテロメアは細胞分裂時にその一部が切り取られるために、細胞分裂のたびにどんどん短くなるわけだ。
teromea.jpg
このテロメアが無くなるとそれ以上の細胞分裂が行われなくなるため、細胞は死んでしまう。つまり、テロメアは細胞レベルでの寿命をつかさどる物質であり、現在精力的に研究が進められているところらしい。
ちなみに、人間のテロメアは大体50回の細胞分裂分程度の量を確保しているらしく、もし病気や事故で死ななかったとすれば、細胞レベルでは120歳くらいまで生きれるとの事。

もう一つ細胞レベルの寿命に関係する大事な物質として、活性酸素があげられる。活性酸素は、日常の俺達の呼吸時に何らかの原因で生成されるらしいのだけど、この活性酸素が体内に取り込まれたときに遺伝子を傷つけるらしい。遺伝子が傷つけられると、細胞分裂時に通常よりも多くのテロメアを消費するので、「テロメアの量」と「活性酸素」が寿命や老化をほぼ決定しているのではないかと推定されている。

「寿命」という個人差すら、こうやって科学的に説明がつくんだから、すごい世の中になったよなぁ……。



【おまけの考察】

人間の臓器細胞は部位毎に分裂能力が違うらしく、それぞれ以下のように決まっている。

@脳神経、心臓、手足の筋肉の細胞
→これらの細胞は、生後は細胞分裂しないため減り続けるのみ。

A精子や卵子の細胞
→テロメアを再生する能力を持っていて、何回分裂してもテロメアはなくならない。だから、生まれてくる子供の細胞は50回分裂できる。

B血液細胞
→常に消耗と再生をくり返している細胞は、テロメアの消費量を他の細胞より少なくできるらしく、分裂回数が50回よりも全然多いらしい。

Cその他の細胞
→先にも書いたとおり、50回の細胞分裂が終われば死んでいくので、自然に細胞数が減少し臓器の老化が進む。

ちなみに、がん細胞は「テロメアが減らない悪性細胞」なんだけど、A〜Cの箇所のがん(卵巣がん、血液がん(白血病等)、肝臓がん、胃がん等々)は良く聞くじゃん?だけど@の箇所のがん(脳がんとか心臓がん)って聞かないよね。これは、そもそも脳や心臓では細胞分裂しないので、がん細胞が入ってきてもまったく影響を受けないからとの事。


さらに、以前話題になったクローン羊のドリーは、もともと6歳の成羊体細胞を元に作られたわけで、生まれたばかりと言っても細胞レベルでは6歳の羊だったんだよね。その後の研究で、やはりドリーの細胞中のテロメアは同じ歳の通常の羊よりも20%少なかったらしく、今のクローン技術でクローンを生産したとしても、オリジナルよりは寿命が短くなるデメリットの存在がある事がわかったわけだ。


今までの話からすると、不老不死の研究としては

1.テロメアを再生する手法
2.テロメアの消費を著しく抑える手法

の2つのスタンスがあるように思える。それこそ、上記のAとBの細胞から将来何らかのヒントが得られるかもしれない。いやぁ、この手の研究も面白そうだよなぁ……。
posted by きらっち at 20:15| Comment(3) | TrackBack(4) | 科学