先日、アメリカと韓国の2009年第2四半期の経済成長率が発表されました。日本は8月17日に発表なので、まだ2週間近く時間がある事より、今日は先に韓国とアメリカの経済成長率について深堀してみたいと思います。
【米4-6月期GDP、大幅改善=下期のプラス成長観測強まる】
http://www.gci-klug.jp/masutani/2009/08/03/006310.php
さて、アメリカのGDPですが、とりあえず2009年Q1の経済成長率が6.4%減(年率換算)となり「アウチ!」ですまない状態でしたが、2009年Q2では、1.0%減(年率換算)まで収まりました。次の第3四半期ではついにプラス成長に戻せるのか非常に気になります。
それではアメリカGDPの個別項目について見ていきましょう。まず最終民間消費ですが、何だかんだ言いつつ2009年Q2減少幅は小さかったのではないでしょうか?そもそも、最終民間消費支出の最盛期は2007年Q4でしたが、そこと比較しても2009年Q2はわずか2.0%減にしかなっていないわけです。
ちなみに、日本の最終民間消費支出は2009年Q1時点で、最盛期から2.7%減なわけですが、「何でリーマンショックの震源国よりも日本の方がダメージが大きいんだ?」と、ちょっと恨みたくなるようなところです。(笑)
アメリカで深刻なのは、民間住宅ですな。2007年と比較したら半減してるので、サブプライム問題の根が相当深い事を示唆しているのかもしれません。確かに、減少幅は前期よりも縮小しているものの、減少の止まるのがいつになるのかわかりません。
そして、民間企業設備投資も2009年Q2の減少幅は縮小しました。民間在庫変動の値を察するに、アメリカでは在庫をどんどんさばいている状態が続いていて、そのうち在庫が少なくなり再び生産を始める事になるでしょうから、もしかすると民間企業設備投資はこれで底を打つかもしれません。
ところで政府最終消費支出の方ですが、確か2月に成立した景気対策法でアメリカは7820億ドルの支出を決めたと思うのですが、この予算の執行を考えればもう少し政府最終消費支出の額は大きくても良さそうな気がするのだけど、意外にも2009年Q2は大きな伸びを示さなかった事がわかります。
【米景気対策、700億ドルを既に支出 財務次官補】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090804AT2N0302404082009.htmlと思ってたら、ちょうど↑の今日の記事で、7月末時点で700億ドルしか支出されていない事がわかりました。近いうちに2000億ドル程度が支出されるそうなので、2009年Q3は、政府支出の増加により経済成長率の増加が期待できそうです。
ただ政府採取消費支出に対する一抹の不安は、カリフォルニア州みたいに財政破綻寸前で支出を絞っている州や地方自治体が多数あるという事でしょうか?この辺の事情はよくわかりませんが、今後しっかり調べてみたいところではあるなぁ……。
最後に純輸出の方ですが、2009年Q2で赤字幅がまだ狭まっています。製造業の衰退したアメリカが貿易黒字に転換するとは思えませんが、どこまで貿易赤字幅を縮小させられるのか非常に気になるところではあります。
【韓国 4−6月期のGDP、前期比2.3%成長】
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=118396
そして、俺の予想とは裏腹に韓国の快進撃が続いております。韓国の2009年Q2の経済成長率は、年率換算で何と9.5%!さて、それじゃ韓国経済回復の要因は何なのでしょうか?
まず、目が行ってしまうのが純輸出。韓国は輸出よりも輸入の減少幅が大きい「縮小型黒字」になっていた影響もあり、2009年Q1とQ2の純輸出額が非常に大きくなったのがわかる。韓国は現在も引き続きウォンレートが安定しているし、まだまだ純輸出額が増えるかもしれないなぁ。しっかし、こういう海外の需要が一斉に減少したにもかかわらず「輸出で勝負」という外需依存の博打経済が今のところ成功しているわけだ。
【韓国の1〜6月の経常収支黒字217ドルで過去最大】
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=118545【韓国の1〜6月、資本収支が7770億円黒字 投資マネー回帰】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090729AT2M2902H29072009.htmlしかしながら、心配なのが上記の記事。通常、経常収支と資本収支の両方で黒字なのは非常に喜ばしい事なのだけど、韓国経済の好調であるのが数字であらわれているわけですよ。にもかかわらず、ここ数ヶ月は1$=1200ウォン台で安定しているわけで、これは近いうちにウォン高に振れそうな気配が濃厚。(あるいはすでにウォン売りドル買い介入してるのかな?むしろ米国債をたくさん買える方が韓国にとっては好都合のような気が。)
いずれにしても、ウォン高は韓国製品の価格競争力が落ちるわけで、輸出に大きなダメージを与えることになるかもしれない。
【Q3経済成長率が急落の見通し、0%台の可能性も】
http://tinyurl.com/nbuqpq【起死回生の韓国経済、「点滴」外せばダブル・ディップ?】
http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=020000&biid=2009072974128ただ、どうやら韓国経済の大躍進は純輸出の増加だけではなく、政府の景気対策も大きく寄与しているらしいのが、↑の記事からわかる。ちなみに韓国の場合、政府最終消費支出に公的固定資本形成が含まれていないため、主に建設投資に政府支出分が加算されていると思われる。そういう事を踏まえた上で、↑の記事を見てみよう。
記事を読むと、韓国政府の景気対策効果が切れる2009年Q3には韓国経済の息切れが予想されているらしい。ここから推測できる事としては、おそらく建設投資が横ばいなのは、韓国政府の公共事業による加算分が大きいという事で、Q3にはここの項目が大きく減少する可能性があるわけだ。
幸い最終民間消費支出に関しては、もう少しでリーマンショック以前の水準に回復しそうだけど、設備投資の回復にはまだまだ時間がかかりそうだなぁ。何とか、ウォン高や建設投資急減の前に設備投資が回復して欲しいのだが……。
というわけで、とりあえず今日の時点ではアメリカと韓国の2009年Q2のGDPを見てみました。アメリカは景気対策法の支出にいよいよ火がついてきたので、2009年Q3の経済成長率期待できそうです。
また、韓国の方も政府の景気対策効果が切れても輸出の方がまだ踏ん張れそうなので、2009年Q3の経済成長率は何とかプラスが維持できるのではないでしょうか?(外需依存度はますます上がりそうな気がしますが……。)
それでは後日に、日本やバルト3国のGDPがどうなったかもお伝えする予定です。
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