2009年09月29日

男女別競技において両性具有者をどうするか?

【「セメンヤは両性具有」豪紙報道 男女の生殖器持つ】
http://www.asahi.com/sports/update/0911/TKY200909110251.html

スポーツ界だと競技も記録も男女別なので、この金メダルの扱いは非常に難しいだろうね。というか、メダルの剥奪とかどうとかの前に、今後セメンヤ選手はどちらの性別で競技を続けなければいけないのでしょうか?

「セメンヤ選手は両性具有だが、今まで通り女性として競技を続けるべき」
という事であっても、ホルモンバランスの影響で、セメンヤ選手が他の女性選手と比較して有利になるわけなので、公平な競争にはならないかもしれません。

「セメンヤ選手は両性具有なので、男性として競技を続けるべき」
という事であれば、セメンヤ選手に関してはいいのですが、逆パターン(男性だと思っていたら両性具有だった)の場合はどう考えたらいいのでしょうか?この場合、ホルモン的には男性として競技を続けるのは不利になるかもしれません。


という事で、逆パターン(男性だと思っていたら両性具有だった)を考慮すると、これはどのように落とし所を探るのか非常に難しそうです。「両性具有者の記録は参考記録にしかしない」とバッサリできるのであれば簡単かもしれませんが、感情論で考えると「じゃあセメンヤ選手の記録の意義は何なのか?」という事になりかねません。

もちろん、私はどのような決定が望ましいか確たる意見があるわけではありませんが、これは十人十色でいろいろな考え方があると思うので、久しぶりに投票にかけたいと思います。下記の選択肢に捉われることなく、皆様の意見をお聞かせください。



まぁ何はともあれ、一番辛い思いをしているのはセメンヤ選手本人だと思いますが、この問題の結論が出る11月の世界陸上選手権の理事会に注目です。



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posted by きらっち at 23:52| Comment(2) | TrackBack(1) | 時事

2009年09月28日

血液型の遺伝学と特殊血液型

そういえば最近「科学」カテゴリーのエントリーを書いていなかったと思い、今日は急遽「血液型」について書こうと思った次第。

さて、血液型は2つの遺伝子によって以下の規則で決定される。
O×O→O型
A×O,A×A→A型
B×O,B×B→B型
A×B→AB型
この2つの遺伝子はそれぞれ両親から一つずつ受け取るので、例えばA×O(A型)とB×O(B型)の両親からは、O×O(O型)の子供が生まれる事もあり得るわけだ。この辺は、血液型の遺伝に関する基本的な基礎知識が無いと、生まれてきた子供の血液型で揉める事がありそうだよね。(笑)

そして輸血についてだけど、「A型→A型」というように同型の血液で輸血するのが基本ではあるのだけど、生物学的には「O型→A型,B型,AB型」「A型→AB型」「B型→AB型」への輸血も可能なんだよね。なので、O型血液は全ての血液型への輸血が可能であり、AB型は全ての血液型からの輸血が可能なんですよ。ただし、Rh因子が合わないといけないので、日本だと緊急時以外に型違いの輸血は行われないわけです。


さて、基礎知識はこれくらいにしておいて、今日は特殊な血液型「シスAB型」と「ボンベイ型」について説明しましょう。

まずは「シスAB型」だけど、通常のAB型はA×Bの組み合わせだったよね。ところが、極々まれに「シスAB因子」を持つ人がいるわけですよ。この「シスAB因子」を持つ人は、もう一つの因子が何であれAB型になってしまうわけです。つまり、「シスAB因子」による遺伝規則だと

(シスAB)×A→AB型
(シスAB)×B→AB型
(シスAB)×O→AB型

という事になり、通常のAB型とはまったく違う遺伝規則を持つわけです。ちなみに、この「シスAB因子」によるAB型は、日本だと全AB型のうちで1万人に1人くらいの割合でいるらしく、中でも四国地方に多いとどこかの医学書で読んだ記憶があります。
ちなみに「シスAB因子」を持つ人は因子が特別なだけであって、血液型としてはAB型であるので輸血に関しても通常のAB型と同様の扱いになります。


そして次は「ボンベイ型」ですが、これは非常に珍しい血液型です。ただ、ボンベイ型は、ABOの遺伝因子と違う遺伝因子で決定されるので説明が非常に難しいのです。つまり、ABO因子とは別に、Hh因子というものがあって、これも両親から一つずつ受け取るわけです。H×HやH×hであれば通常の血液型と見なせますが、h×hになるとボンベイ型となります。(ただ、ボンベイ型だとしてもABO因子が無いわけでないので、ボンベイ型のA型とかボンベイ型のO型というような血液型になります。)
ちなみに、あえて通常のA型とボンベイ型のA型の例を出すと以下の通りです。

H×H×A×O→通常のA型(AH型)
H×h×A×O→通常のA型(AH型)
h×h×A×O→ボンベイ型のA型(Ah型)

このように、通常のABO因子以外にHh因子まで関係するので、因子レベルと考えると非常にややこしいのですが、抗原レベルで考えると非常にわかりやすいので、こちらの方で説明しましょう。抗原レベルでの血液型の決定は、赤血球の表面にある抗原の有無で決まります。

blood-type.jpg
↑に、通常時とボンベイ型の場合の抗原による血液型の違いを図に示します。H×HやH×hの時(いわゆる通常の血液)では、全ての血液型においてH抗原がくっついています。ただし、A型の人はH抗原の下にA抗原、B型の人にはH抗原の下にB抗原、AB型の人にはH抗原の下にA抗原とB抗原がついています。
しかしながら、h×h(ボンベイ型)の血液にはH抗原が存在しません。通常の血液型検査では、H抗原にくっついているA抗原とB抗原の存在を調べていて、以下のように血液型を判断します。
H抗原の下にA抗原がある→A型
H抗原の下にB抗原がある→B型
H抗原の下にA抗原もB抗原がある→AB型
それ以外→O型
ところが、ボンベイ型の人にはそもそもH抗原が無いために、上記の部類では「それ以外」という事になり常にO型と判定されますが、実際はH抗原が無くてもA抗原やB抗原を持っている可能性があるわけで、ボンベイ型の人は詳細な検査が必要になります。

ちなみに、ボンベイ型の人から通常型への輸血は以下の通り可能になりますが、
「Oh型→AH型,BH型,ABH型」「Ah型→ABH型」「Bh型→ABH型」
通常型の人からボンベイ型の人への輸血はできない上に、ボンベイ型の人からボンベイ型の人への以下の輸血しかできません。
「Oh型→Ah型,Bh型,ABh型」「Ah型→ABh型」「Bh型→ABh型」

という事でボンベイ型の人は、輸血という意味では非常に過酷な運命を背負っています。ボンベイ型は、世界的にも100万人に1人くらいの割合でしかいないため、おそらく日本には数百人もいないでしょう。下手すると、数十人くらいしかいないのではないでしょうか?
特にOh型(ボンベイ型のO型)で生まれた人にとっては、Oh型(ボンベイ型のO型)からしか輸血ができないため、普段から血液を貯蔵しなければならないので、大変なんだろうなぁ……。



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posted by きらっち at 03:25| Comment(1) | TrackBack(1) | 科学

2009年09月26日

ウィルコムの誤算

【ウィルコムが私的整理 金融機関との調整難航も】
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200909250078a.nwc

ウィルコムユーザの俺にとって非常に気になるニュースではあるのだけど、おそらく次世代PHSサービス開始を止めて既存のPHSサービスに絞るのならば、資金繰りはしばらく大丈夫だとは思うけど、そうすると大量のユーザがイーモバイル辺りに流出しそうだよなぁ……。
という事で、今日はウィルコムの誤算をバランスシートを追いながら類推してみよう。


willcom_balance-sheet.jpg
↑がウィルコムのここ最近のバランスシートなんだけど、昨日のエントリーのアイフルと同じく資産(=負債+自己資本)が減少しています。という事で、ポイントを絞って考察してみます。

【ポイント@:「流動負債」の割合が増加】
2006年Q1では「固定負債」(1年以上返済義務が無い)が約1400億円で、「流動負債」(1年以内に返済義務がある)が約500億円だったのに対して、2009年Q1では「固定負債」1000億円で、「流動負債」が700億円となっている。つまり、すぐに返済義務のある借金の割合が高くなっているわけで、資金繰りが上手く行っていない事がわかる。

【ポイントA:売掛金・未収入金が2008年Q3から減少】
売掛金・未収入金とは、すぐに手に入る事が決まっているけれど、まだ手にしていないお金の事。まぁ、おそらくこのほとんどは加入者からの通話/通信料で、まだ引き落とされていない分だとは思うけど、これが減少しているという事は、そもそもユーザーから徴収している利用料が少なくなっているという事であるので、これは非常にまずい。
おそらく2008年の3月から始まった「新つなぎ放題」で、今までヘビーユーザーだった人がこのプランに乗り換えたからだと思われる。1万3千円だった定額通信料が4000円くらいになったんだから、そりゃ相当ウィルコムには痛かったんだろうなぁ……。

【ポイントB:「自己資本」が増加の一途】
「株主資本」が一途に増加していますが、これは手元の資金確保のための一環だと思います。「社債」や「借入金」に頼るよりも、返済の必要の無い株を発行する方がウィルコムにとって都合が良いですから。
ただ、2006年以降はウィルコムの加入者数の伸び悩んで低迷する中、2009年Q1に一気に「株主資本」を40億円程度増やしています。このペースが保てればまだしも、既存の株主の意向もあるし、なかなか難しいでしょう。

【ポイントC:「1年以内期限到来固定負債」の増加】
2008年Q3と2009年Q1で、「1年以内期限到来固定負債」が850億円ずつ増加しています。これは、次世代PHSの基地局を作るために調達したものでしょう。本来であれば、「社債」や「長期借入金」で資金調達するべきでしょう。ただ、これらは返済義務が1年以上のもので、ある程度信用が無いと使えない手段です。ところが、ウィルコムはここ最近調子が良くなかったため、「短期社債」か「短期借入金」に頼らざるを得なかったのでしょう。事実、「長期借入金」は減少の一途を辿っています。

ちなみに、アイフルの場合は本業である貸金業の「営業貸付金」の減少が資産額の急減する主要因でしたが、ウィルコムの方は「有形固定資産」の減少が資産減少の主要因です。これはどういう事かというと、おそらくウィルコムは数年前に現PHSサービスの全国展開を図るために大量の基地局を作ったわけです。ところが、この基地局は減価償却によって年々価値が落ちるわけで、この減価償却部分が資産減少の主要因なのでしょう。


無線通信の業界では、今年の2月にWiMAX通信サービス(下り40Mbps)が始まり、あと1年程度でLTE(下り数十Mbps)も始まります。ウィルコムの次世代PHSは20Mbpsを売りにしていますが、果たして新たな基地局への多大な投資分を、加入者増によって取り戻せるのでしょうか?
そんな中、俺の住んでいる地域は間違いなく次世代PHSの基地局整備が大幅に遅れる事になるだろうから、俺は年末にDOCOMOに移る予定です。ウィルコムさん、申し訳ない!



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posted by きらっち at 23:47| Comment(2) | TrackBack(0) | 経済

2009年09月25日

消費者金融会社が借金で困るとは

【アイフル:私的整理 消費者金融、苦境浮き彫り 業界再編の観測も】
http://mainichi.jp/select/biz/news/20090919ddm008020082000c.html

という事で、昨日の予告通りに今日はアイフルのバランスシートを見てみます。本当であれば、損益計算書も一緒に出したかったのだけど、そこまで考察する時間がなかったので、とりあえずバランスシートだけ。


とりあえず本ブログでは、何回かいろんな会社のバランスシートを出していますが、復習の意味でおさらいしておきましょう。

@:バランスシートは、「資産の部」「負債の部」「純資産の部(事自己資本)」の3つからできていて、「資産=負債+自己資本」となっている。

A:「資産」とは、会社が所有している物の額(原則として、買った時点での値段で評価)

B:「負債」とは、会社がいずれ誰かに返さないといけない物の額

C:「自己資本」とは、会社が返さなくてもいい元手の額。

D:@の関係式から、「資産が増える」ということは、「負債が増える」or「自己資本が増える」という事と等価である。

俺は会計学を勉強したことがないので、最初はDがよく理解できなかったのだけど、いくつか例を出すとこういう事なんですよ。

【例1 会社が総額100万円の株を発行して、株で得たお金を貯金した】
この場合、「自己資本」の「資本金」に100万円が計上される。と同時に、「資産」の「現金及び預金」にも100万円が計上される。

【例2 ディーラーに20万円の支払手形を払って、中古車を購入した】
この場合、「負債」の「支払手形」に20万円が計上される。と同時に、「資産」の「有形固定資産」にも20万円が計上される。

というような感じで、バランスシート上では「資産が増える」と同時に「負債や自己資本が増える」ことになる。ちなみに例2の場合で車を売ったディーラーの方は、「資産」の「受取手形」に20万円が計上され、同じく「資産」の「商品」で20万円が差し引きになる。この時、+20万円と-20万円で相殺してしまうので、「資産」の合計額に変化はなく、「負債」「自己資本」も変化がないので、「資産=負債+自己資本」の関係は崩れない。
このように単純に物を売っただけでは資産が増えるわけではありません。この辺り、会計用語でいう「資産」は、一般用語でいう「資産」とはちょっと資質が違うかもしれません。


aiful_balance-sheet.jpg
さてそれでは、↑がアイフルのバランスシートになります。これを見てみると、確かにアイフルの経営状況は良くないことがわかります。

【ポイント1:「資産」「負債」が減少している】
「資産=負債+自己資本」から、自己資本が変わらないのなら「資産」も「負債」も減少するのは当然なのですが、2008年Q1では2兆円あった「資産」が、2009年Q2では1兆5000億円となっています。「資産」が減少するという事は、つまりは会社の収入源がなくなっている事を表していて、非常に危険だと思います。

【ポイント2:「資産」の「現金及び預金」が半分以下になった】
2008年Q1では2300億円程度あった「現金及び預金」が、2009年Q2では1050億円程度に減少しました。これは資金繰りが上手く行かない事を示唆しています。

【ポイント3:「借入金」と「社債」の返済や償還が重荷になっている】
2009年Q2では、「負債」の「1年内償還予定の社債」「1年内返済予定の長期借入金」が3000億円以上あります。ここに、短期借入金が1000億円あるわけで、アイフルは1年以内に4000億円以上の借金を何とかしないといけないわけです。しかも、2009年Q2はコマーシャルペーパー(CP)を発行しませんでしたが、これでアイフルが決定的にヤバイと印象付けてしまったのでしょう。よほど利回りを大きくしないと、誰もアイフルのCPを買ってくれないという事だと思いますが、仮に高い利回りのCPを発行してもその利回りの支払いですら首を絞める状況である事を、アイフルは認めてしまったわけです。

【ポイント4:本業の貸金業がピンチ】
さて、一方で「資産」で一番額の大きい項目「営業貸付金」を見てみましょう。これは、アイフルがお客さんに貸し付けているお金ですが、2008年Q1では1600億円程度だったものが、2009年Q2では1180億円と激減しています。つまり、アイフルは消費者金融会社でありながら、「資産」の70%程度を占める貸金事業が上手くいっていないわけです。


アイフルはこの状況で、借入金を返済して、社債を償還できるのでしょうか?まだ「現金及び預金」が1000億円あるとは言え、本業の貸金事業の縮小傾向が止まらないので、遅かれ早かれ資金繰りがおっつかなくなるでしょう。

しかし、消費者金融会社が借入金の返済や社債の償還で苦しむとは、何とも皮肉な話ではあります。やはりいろいろな意味で、金融系の会社にとってリーマンショックの影響は非常に大きかったのでしょう。



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2009年09月24日

休みが続くと更新が止まり申し訳ない!

政権交代の余波で、補正予算の執行停止や官僚記者会見の見合わせ等々があり、来週以降いよいよ仕事の方が忙しくなりそうです。そんな中、シルバーウィークはまったりしすぎて、全然更新しなくて申し訳ありませんでした。(謝)


【日航社長、公的資金注入を国交相に要請 産業再生法で】
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090924AT1D2404524092009.html

【アイフルの今期予想、3100億円の赤字に 初の無配、正社員を半減】
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090924AT2C2400424092009.html

【ウィルコム、事業再生手続き入りを発表 PHSサービス継続】
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090924AT1D2400O24092009.html

ただシルバーウィークの最中に、ウィルコムやアイフルが事業再生手続きをしてしまい、さらに今日になってJALが公的資金を申請と、大手の企業でも元々業績の芳しくなかったところはそろそろ限界が近づいてきてるんですかね?


という事で、明日(場合によっては、明後日と明々後日も)は上記の3社のここ数四半期分の連結財務諸表や損益計算書を分析してみたい思います。

さらに、2009年Q2のバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の「GDP」「国際収支」等々が出揃ったみたいなので、来週はこれも分析してみたいと思います。



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2009年09月18日

排出量取引と環境税

【排出量取引、11年度導入目指す 小沢環境相】
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090917AT2G1700117092009.html

【4年以内に環境税…小沢環境相】
http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20090917-OYT1T00498.htm

新与党は、90年度比で25%減というかなり無謀な計画を立てちゃうらしいので、排出量取引も環境税も導入したくなるでしょうなぁ。(笑)果たしてこの先、新与党の思い描いているシナリオ通りに話が進むんでしょうか?産業界から、凄い猛反発が出そうな気もするけどなぁ……。
さて、今日は排出量取引の仕組みを説明して、環境税との比較を考察してみます。

「排出量取引」「環境税」共に、二酸化炭素の排出を抑える事を目的としていますが、そのアプローチの仕方が異なっているので、まずは簡単でわかりやすい「環境税」の方を説明しましょう。これは、「二酸化炭素を排出した量に応じて、税金を課金する」という方式です。そして、政府は徴収した環境税で環境対策に利用する事により、二酸化炭素の排出総量を抑える事を目的としています。

CO2-trade.jpg
一方の「排出量取引」の方は↑に概要を図示しましたが、予め各会社に期限と削減目標を決めておきます。すると、期限後に排出削減の目標値を達成できた会社と達成できない会社が出てきます。目標値よりも二酸化炭素排出を削減できた会社は、その余剰分を排出量取引所に目標値をクリアできなかった会社に売りつけて、より利益を得ることができるというシステムです。一方で、目標値をクリアできない会社はオーバーした排出量分を、目標値をクリアできた会社から購入するので損益を出してしまいます。


つまり、簡単に言えば「環境税は"みんなで負担"」で、「排出量取引は"削減に成功した会社が儲かって、失敗した会社が損をする"」という事です。今の連立与党の立ち位置からすると、「みんなで負担する環境税を導入するかな?」と思ったのですが、まさか「排出量取引」まで導入するとは思いませんでした。
「排出量取引」が成功するかどうかは、「それぞれの会社(あるいは産業)に対する削減目標値をどのように設定するか」にかかっています。あまりに無茶な目標値を立ててしまうと誰もクリアできなくなるし、あまりに甘い目標値を立てると全員がクリアしてしまいます。しかも、二酸化炭素の排出削減が容易な産業、容易ではない産業があるため、一律的に削減目標値を決めるのは産業間で不公平を生んでしまいます。その辺りが排出量取引の課題ではあるのですが、競争原理が働くために各会社で二酸化炭素排出削減に対して積極的に考えるようになるとは思います。

一方で、環境税の方は税収として政府に入ってくるために、エコカーとか環境に良い製品等々に対する補助金の原資にできるメリットがあります。あとは、環境税の徴収は法人税に上乗せしてしまえばいいので、すでに税を徴収する仕組みはできています。日本の場合、「排出量取引」をやろうとすると既存の仕組みがまったくないので、排出量取引所(市場)を作ってずっと運用しなくてはいけません。そうすると、誰がどのくらい費用負担をするのかが問題となってきます。

あと、「排出量取引」の場合は会社間による二酸化炭素削減競争によるお金のやり取りにしかなりませんので、国民個人レベルには直接は関係しません。しかし「環境税」であれば、税収を原資にエコカー補助とかエコポイント等の政策を恒常的に続けることができるので、最終民間消費に結びつける事ができて国民個人レベルに直接関係することになってきます。

とりあえず、今までのポイントをまとめると以下のような感じになります。

○排出量取引のポイント
1.民間会社が主体的にCO2削減を考えるようになる
2.それぞれの会社の削減目標量を決定する際の公平性をどう確保するか?
3.排出量取引所(市場)を作ったり運用する費用は、誰がどう負担するか?
4.国民個人レベルには直接関係しない。

○環境税のポイント
1.政府の税収になるので、環境政策の恒常的な財源となる。
2.環境税の税徴収は容易。
3.国民個人レベルに直接関係する。


しかし、「排出量取引」「環境税」のどちらもやろうとすると、産業界にとってはかなりの負担になる話で、本当に実現可能なのか心配です。



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posted by きらっち at 06:54| Comment(0) | TrackBack(1) | 時事

2009年09月16日

投票結果〜その5〜

【自由度の高さが過失割合を難しくする例】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/31998444.html

先日、↑上記のエントリーで「お客が自ら焼いて「レアの一歩手前」で肉を食べたらO-157にかかってしまった。 この場合、あなたはどう思いますか?」の投票をしてたのですが、その結果は以下の通りになりました。

1件 (お店の過失)0:10(お客の過失)
3件 (お店の過失)2:8(お客の過失)
2件 (お店の過失)4:6(お客の過失)
3件 (お店の過失)5:5(お客の過失)
2件 (お店の過失)6:4(お客の過失)
7件 (お店の過失)8:2(お客の過失)
8件 (お店の過失)10:0(お客の過失)

お客が自分で焼くスタイルを採用していたペッパーランチですが、「レア未満の焼き加減で食べた人の責任をどこまで考えるか?」という意図で投票をかけたものでした。

当初自分では、半分程度「10:0」になるかなと思っていたものの、結果は意外にも、全26件のうち「10:0」は8件ということで、多かれ少なかれ多少の過失がお客にもあると思った方が過半数を占めました。
さて、主なコメントを見てみましょう。
「(お店の過失)10:0(お客の過失)」 : O−157が肉に入っている時点で過失以前の問題。はっきり言って犯罪レベル。 (男性/40代/長野)
確かに、このコメントももっともだと思います。ただ可能性として、ひょっとするとペッパーランチ以外でもO-157の付着した肉を仕入れているお店もあるかもしれなくて、店側の加熱調理によってO-157を殺菌するので、お客に対しては被害の出ていないお店も存在するかもしれません。個人的には、そこそこありそうな気もしますが。
そういうお店は○で、ペッパーランチが×だとすると、それこそ違いは「お客に焼かせて、お客の判断で食べさせているかどうか」なんですよね。


「(お店の過失)8:2(お客の過失)」 : 料理店である以上、食中毒を起こさない最低限の指導をするべき (男性/20代/大阪)
「(お店の過失)10:0(お客の過失)」 : 危険性を周知徹底しなかった時点で店の責任 (男性/50代/神奈川)
そして、周知徹底や指導をするべきというご意見もありました。これも、まったくその通りだと思います。個人的には、このポイントでお店の過失割合がかなり高くなるような気がします。そして面白いもので、このお二人はほぼ同じことを指摘しているにもかかわらず、過失割合に違いが出ているんですねぇ。


「(お店の過失)5:5(お客の過失)」 : 火を通していないものを食べるのは自己責任が伴うが、食材の衛生管理は飲食店の最低限の義務なのでこの辺で (男性/30代/大阪)
「(お店の過失)6:4(お客の過失)」 : お客の判断で生焼けで食べるんだから、お店の責任だけじゃないでしょ? (男性/30代/東京)
「(お店の過失)8:2(お客の過失)」 : お客がレア未満で焼いて食べた物でお腹こわしても、100%お店の責任にされるのはおかしくね? (男性/20代/群馬)
と、こちらのコメントは、お客の方にも何かしらの過失はあるとの指摘。確かに、これも一理あるような気がします。これも、同じような指摘だけれども、三人とも全員過失割合が違うので面白いですね。
ただ、これでお客の過失を認めてしまうと、焼肉店とかBBQとかいろんな事例にひっかかてくるような気もしますねぇ……。


あと気がついたのは、年齢が高くなるとお店の過失割合の高い傾向が出てるんですよね。もっとも母集団の数が、わずか26名という少ない数字で、しかも年齢まで申告していただけた方が8名しかいないので、確かな傾向かどうかは不明ですが……。ただ、素直に考えると若年層の方が「自己責任」という概念を強く持っているのかもしれません。


というところで、この投票に対する「私の選ぶベストオブコメント」は↓です。
「(お店の過失)8:2(お客の過失)」 : 店が悪いのは言うまでもないが、客もファミレスの肉は粗悪品という事を認識してちゃんと焼かなきゃ
このコメントも真理をついていますな。お客からすると、たとえ国産の食材と言えども、調理前はどういう保存状況に置かれていたのかまったくわからないしねぇ。ましてや、ファミレスで出てくる食材なんて品質管理の徹底されていない外国産がほとんどでしょうし。



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posted by きらっち at 21:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 投票結果

2009年09月15日

明日よりしばらく野党へ

【谷垣元財務相、自民総裁選出馬を正式表明】
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090915-OYT1T00745.htm

谷垣さん、増税論者なので財務省からのウケはいいのだろうけど、世間一般から見れば「選挙で負けた直後にもかかわらず、全然自民党は変わらないじゃないか?」と思われてしまうのが心配。そもそも谷垣さんは、「麻垣康三」の中の最後の一人という事で、確かに新鮮味はないでしょうなぁ。
確かに政策通ではあるし、能力のある人ではあるので、「最近の日本経済をどのように捉えているのか」は気になるところです。


【河野・小野寺氏、出馬に意欲 自民総裁選で谷垣氏の対抗馬】
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20090915NTE2INK0614092009.html

その他にも、ぼちぼち若手の中で名前が挙がってくる人が出始めました。今回の総裁選、有名どころの人は早々と不出馬宣言しているのが気に食わないところではあるのですが、最終的に火中の栗を拾うのは誰になるのでしょうか?

いずれにしても、
1.バランスシート不況時において民主党の経済対策はあまり効果が無いだろう事をわかりやすく説明する
2.日本破綻論で国民を脅かす事なく、きちんとした数字を元にこれからのあるべき日本の経済や財政を議論する
3.次の世代に託すべき経済成長のタネを撒く
こういう事を是非とも次の自民党総裁にはやって欲しいと思います。



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posted by きらっち at 21:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治

2009年09月14日

韓国・中国の貿易動向A

【中国・韓国の貿易動向】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/30546124.html

↑のエントリーから2ヶ月経過しました。今日は、7月・8月分の中国と韓国の貿易動向を追ってみましょう。堅調な中国貿易を尻目に、絶好調だった韓国に暗雲が立ち込め始めました。


china_trade-surplus2.jpg
さて、まずは中国の方からみて見ましょう。中国は、7月8月に輸出額が1000億ドルを超え、底堅い動きをしています。一方の輸入はと言うと、7月に950億ドルまで上昇しましたが8月は880億ドルと減っているので、8月の純輸出(貿易黒字)が急激に増えました。確かに、純輸出が増えるという事はマクロ的に見ると中国には良い事なのでしょうけど、為替レートが激変したわけでもないし、資源価格が突然上昇したわけでもないので、8月の輸入減少は普通に在庫調整によるものかな?まぁ、6月7月と輸入が大きく増えていたしね。


skorea_trade-surplus2.jpg
そして、心配なのは韓国です。↑を見れば一目瞭然なのですが、輸出が息切れしてきた一方で、輸入が増えてきたため貿易黒字額が急減してきました。まだ貿易赤字にはなっていないのですが、9月から年末にかけてどうなるのでしょうか?ここ最近は、韓国政府がウォン売りドル買い介入をしているようなので昨年レベルの外貨不足には陥らないでしょうけど、「縮小成長」で貿易黒字を稼ぐ戦略から、そろそろ次の一手が必要になるのかもしれません。とは言うものの海外の需要減はまだまだ続きそうですので、今の韓国が輸出をどんどん伸ばすのは難しいでしょう。韓国政府の次の一手が非常に興味深いです。この辺については、近いうちに昨年の韓国デフォルト危機からの流れと、現在の韓国経済状況を書くつもりなので、詳細はそこで執筆します。


いずれにしても、中国や韓国(もちろん日本にとっても)は、原油や資源の価格高騰が再び来るかどうかが心配です。欧米の景気がV字で回復できる状況でないので、高い利子や利回りを求めるマネーは一体どこに向かうのでしょうか?堅い運用を求めるのなら「米国債」もそれなりの需要はありそうですが、世界の投資家の判断によっては昨年みたいに「原油」とか「食料」にマネーが流れるのかもしれません。あるいは↓の記事のように、中国に追随して「金」への投資が激増する可能性もあります。

【NY金1000ドル超、終値で最高値】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20090912-OYT1T00349.htm


いずれにしてもどこにマネーが流れるかは投資家の動向次第です。ただ、日本の「失われた10年」では将来の円高懸念もあり、当時の日本国内の金融機関や投資家は、外国債券や資源へマネーを集中させたわけではありませんでした。ちょうどその頃、日本政府がバンバン国債を発行して景気対策をやっていたので、彼らのマネーは日本国債へと流れたのです。その結果、日本はインフレにもならなかったし(むしろデフレに悩まされました)、日本国債も順調すぎるほど売り切ることができました。(日本国債の利回りは、各国の国債と比較すると異常に低い事が、全てを物語っています)
さて、今回の金融ショックの場合はどうでしょうか?今はまだ、米国債を順調に消化できているので大丈夫でしょうけど、世界のマネーが米国債や中国株等の金融資産を拒否して、原油や資源等のモノにマネーが向かい出した時に、果たして俺達にインフレを止める術はあるのでしょうか?仮にそういう状況になると、ドル安がむちゃくちゃ進むでしょうから日本は極度の円高になるでしょう。その時、時の政権与党が一体何をどう考えて、どのような決断を下すのでしょうか……。
米国債も中国株もまだまだ大丈夫とは思ってはいるのですが、そんな事を考えると多少は不安になったりもします。



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2009年09月13日

米(農作物)の生産効率性

【衆院選・農政公約(3)「米の生産調整」/与野党、是非で対立】
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/modules/bulletin/article.php?storyid=2998

俺みたいに、「主食は別に米じゃなくてもいいよ」という人にとってみれば、この辺はあまり興味の無い話ではあるんだけど、そもそも日本の米生産は「減反」制度もあり、昔から積極的に生産性を上げる政策を打っていなかったと思います。
そこで、今日は日本の「米の生産量」と「耕地面積」の推移をちょっと調べてみました。


rice_production_amount.jpg
↑に、1960年から直近までの日本の「米の生産量」と「耕地面積」をあげてみました。まぁおそらく皆様の予想通りで、「米の生産量」も「耕地面積」も年を追うごとに減り続けている事がわかります。ところが、俺はこのグラフを見て「あれ?」と思う事がありました。米生産量/耕地面積(つまり、1ha当たりの生産量)が、増えているわけです。

rice_production_efficiency.jpg
↑に、1ha当たりの生産量の推移をあげます。グラフにすると、このあたりの傾向がはっきりわかりますね。そうです、「耕地面積当たりの生産量」は増加しています。まぁ当たり前と言えば当たり前ですが、1960年に比べると稲の品種改良とか、農業機材等の技術進展もあるので、当然生産効率性は上がります。
しかしこのグラフを見ると、「耕地面積当たりの生産量」は増加してるとは言え、40年以上の時間が経過したにもかかわらず、わずか1.3倍にしかなっていません。おそらく今までの政府の規制で、生産性を上げても農家にメリットが無かったので、わずか1.3倍にしかならなかったのだと思います。

日本がその気になれば、どのくらいこの効率性を上げられるのでしょうか?「耕地面積当たりの生産量」を一気に2倍以上にして、増やした分を米粉に供給すれば、小麦より高いと言われている米粉の値段もかなり落ちるだろうし、普及に弾みがつく可能性もあるんじゃないかなと思っているのですが、どうなんですかね?
あとは、「日本米を輸出する」っていう話も最近のトレンドですが、日本の高い価格の米がそれなりの市場規模で取引されるとしたら、「中国の富裕層」をターゲットにするくらいしかないので、俺的にはリスクの高そうな気もします。


いずれにしても今まで抑えてきた分、生産効率性を伸ばす事はできそうだし、逆に生産量を増やして何かできないもんですかねぇ……。



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2009年09月11日

黒字転換したホンダの営業利益の中身

@【ホンダ・日産、営業黒字確保 日米欧なお不振、4〜6月】
http://www.asahi.com/business/update/0729/TKY200907290412.html

@の記事は、7月29日付で多少時間は経過しているけれど、ホンダの2009年Q2の営業黒字を確保したニュースです。2009年Q2では、トヨタがまだ営業利益の赤字(約1949億円)から脱却できていない事を考えると、ホンダも日産もよく頑張ったんだなと思います。という事で、今日はホンダの営業利益に着目して、どの事業&どういう地域で利益を出しているのか見てみましょう。これを見ると、黒字確保とは言え、ホンダの意外な事実がわかります。


まず、「営業利益」の説明ですが、これは利益のうち本業で稼ぎ出した部分です。ホンダは、事業として「二輪」「四輪」「金融サービス」「その他」事業を持っているので、これらの事業の利益が営業利益としてカウントされます。ちなみに、「資産運用として持っていた株を売却した」とか「社債の利回り支払い」みたいな物は直接の営業とは関係ないので、こういう類の儲けや支出は「営業利益」にはカウントされません。


honda_business-profit.jpg
さて、それでは↑のホンダ全体の連結営業利益の推移を見てみましょう。2007年の最盛期には、四半期単位で3000億くらいの営業利益があったわけですが、2008年に営業利益が下降局面に入り、リーマンショック後の2009年Q1には、営業赤字が3000億円と非常に厳しい結果が待っておりました。ところが、Q2は何とか250億円程度の黒字を確保できました。
ところで何故、ホンダはQ2に黒字を確保できたのでしょうか?普通に考えれば、「世界各国でエコカー補助制度が始まったので、自動車が売れたんじゃないの?」と思うでしょう。俺もそう思っていました。ところが、トヨタは未だに1949億円の営業赤字なので、ホンダはトヨタとは違う「何か」があるはずです。


honda_profit_each-business.jpg
そして、↑にホンダの事業別の営業利益を見てます。ちなみに、ここで出てきている「二輪事業」「四輪事業」「金融サービス事業」「汎用事業及びその他の事業」の合計が、先の連結決算とほぼ一致します。
さて、この図から今のホンダで一番足を引っ張っているのは四輪事業である事がわかります。ただ、2009年Q1に3000億円程度の営業赤字(連結営業利益とほぼ同程度の赤字)を計上しているのに対して、Q2では214億円の赤字となり相当な回復ぶりがうかがえます。(とはいうものの、まだ赤字ではあるわけですが。)
じゃあ今のホンダは何が一番の稼ぎ頭なのか見てみると……。そうです、「金融サービス事業」が今のホンダの命綱なんですよ。これには、俺もびっくりしました。

A【二輪車 新興国で市場拡大 ホンダの稼ぎ頭に】
http://www.nsjournal.jp/column/detail.php?id=176163&dt=2009-09-10

一応、↑Aの記事にもあるように、Q2は「二輪事業」も黒字回復したとは言え、額を見ると56億円であり大した事はありません。ところが、「金融サービス事業」は今年に入って営業利益が拡大していて、Q2では468億円の黒字を計上しています。ここでの営業利益は日本のみでなく世界全体のホンダグループでの営業利益であるため、四輪事業はどこの地域でも苦しいという事を示唆しているのかもしれません。


honda_profit_each-area.jpg
それでは最後に、↑ホンダの地域別の営業利益を見てみましょう。こちらも各地区の営業利益の和は、ほぼ連結営業利益と一致します。さて、地域別に見ると足を引っ張っているのは「日本」と「北米」です。ただ、アメリカも日本もエコカー補助制度がQ2に始まり、V字回復していることがわかります。ところが、アメリカは補助金の財源が底をつきエコカー補助制度が8月下旬に終了しました。果たして、北米地域のQ3とQ4の営業利益が再び大幅赤字に転落するかどうか心配です。一方、日本の方はエコカー補助金政策実施されたにもかかわらずQ2はまだ47億円の赤字です。まだ今年度末まではエコカー補助は続くので、Q3,Q4の黒字を期待したいところですが……。
そして、地域別にみた場合の現在の稼ぎ頭は「アジア」である事がわかります。おそらく中国の影響が一番大きいような気はしますが、この事実を見越してホンダの社長は「日本市場ではなく海外に重点を置く」「日本国内の生産を減らす」との↓のコメントを発表しています。

B【ホンダ社長「国内生産100万台に抑制」 海外に重点】
http://www.asahi.com/business/update/0911/TKY200909100411.html

「雇用は維持する」と社長は言っていますが、雇用を維持したまま生産能力を落とせば、まさにデフレスパイラルにつながりそうな感じがします。失われた10年を経験した日本を考えれば、今回みたいな金融危機が去った後始末として「貸し渋り/貸し剥がし」「失業率」「デフレ」の問題が来るわけで、各国ともむしろ正念場はこれからです。

ちなみに参考ですが、地域別の営業利益は全て「円」換算で出しているので、円高になれば当然営業利益は圧縮されます。ホンダの場合は、1$当たり1円の円高で100億円くらいの減益になるので、Q2の営業利益(252億円)は数円の円高でパーになるレベルです。



と、いろいろ思ったところを書いたのですが、今日の言いたいところをまとめると以下のようになります。

1.2009年Q2のホンダの連結営業利益(全世界分)は252億円の黒字。
2.連結営業利益252億円のうち、事業別で最も営業利益に寄与しているのは「金融サービス事業」で、468億円の黒字。
3.連結営業利益252億円のうち、海外での営業利益分が288億円。

つまり、ホンダは「車で稼いでいる」わけでもなく、「日本で稼いでいる」わけでもないわけです。確かに黒字は黒字ですけど、これは安心して喜べる状況なのでしょうか?きっとホンダだけではないでしょうけど、営業利益が「為替レート」に依存する輸出依存の製造業の怖さを垣間見た気がします。



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posted by きらっち at 23:45| Comment(2) | TrackBack(0) | 経済

2009年09月10日

弱い力〜中性子のβ崩壊〜

【強い力〜ヘリウム原子の矛盾〜】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/30819916.html

7月25日に、↑のエントリーでヘリウム原子を例に出して、原子核内の中性子と陽子を結びつける「強い力」の存在を説明しました。今日は、もう一つの根源的な力「弱い力」を説明します。


42helium.jpg
↑再びヘリウムの原子を例にしましょう。大抵の原子の原子核には、陽子と中性子が存在しますが、実はこの中性子は原子核内では安定的に存在できますが、単独で取り出すとおよそ15分くらいで中性子線と呼ばれる放射線を放出しながら、「陽子」と「電子」と「反ニュートリノ」とに分解してします。これを物理学の世界では「β崩壊」と呼んでいます。

中性子→陽子+電子+反ニュートリノ

これは裏を返すと、中性子は陽子と電子と反ニュートリノと中性子線から出来ているとも言えそうな気もしますね。なお、「反ニュートリノ」とはニュートリノの反粒子なのですが、ここでは「そういうものがある」と思っておいてください。(反粒子の説明は、また後日に詳しく書く予定です。)
さて、この中性子のβ崩壊ですが、そのメカニズムについて「重力」「電磁気力」「強い力」では以下の理由で説明できません。

【電磁気力でβ崩壊が説明できない理由】
中性子は電気的に中性なので「電磁気力」とは反応しない。

【強い力でβ崩壊が説明できない理由】
β崩壊は中性子単独の崩壊なので、複数の中性子や陽子間に働く「強い力」とは関係が無い。

【重力でβ崩壊が説明できない理由】
陽子と中性子はほぼ同じ質量を持っているのですが(質量のみでなくその他の性質もほぼ同じ。異なるのは電荷の有無くらい)、陽子は単独状態で安定である事から「重力」に起因するものでも無さそう。

という事で、β崩壊を引き起こさせる力を「弱い力」と位置づけたわけです。そして今の物理学では、この「重力」「電磁気力」「強い力」「弱い力」の4つが根源的な力として認められていて、現在観測される全ての物理現象は、この4つの力で説明できます。

ちなみに、今日のエントリーで出てきた「中性子」「陽子」「電子」「(反)ニュートリノ」の中で、昔から存在の知られていたのは「陽子」と「電子」です。この2つの粒子は、「電磁気力」と反応するために観測する事が容易ですし、1910年代にはボーアによってすでに原子モデルが確立されています。しかし、「中性子」「(反)ニュートリノ」については「電磁気力」に反応しないためその発見は遅れ、中性子は1930年代、ニュートリノは1950年代にようやく存在が初めて確認されています。


とりあえず、前回と今回のエントリーで「強い力」「弱い力」の存在について説明しましたが、次回は素粒子(クォーク)を説明します。素粒子がわかれば「強い力」「弱い力」の発生する原理を深く理解できるのですが、何せ素粒子レベルの話になると常識を覆される話がたくさん出てくるので、我々にとってはなかなかハードルが高い学問でもあるのですが、なるべく平易に説明できるように頑張ります。



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posted by きらっち at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学

2009年09月09日

CO2の25%削減〜誰がどのように負担する?〜

【CO2 25%削減 どう実現するか道筋示せ】
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/120693

【家庭で温室ガス25%削減…家計負担は最大650万円】
http://sankei.jp.msn.com/life/environment/090908/env0909082309005-n1.htm

産業界と議論も根回しせずに、「2020年までに1990年比で25%削減」なんて決めて大丈夫かな?「高速道路無料化」や「子供手当て」もそうだけど、最終的に誰がどの程度の負担するかを決めずに数字だけが一人歩きしている状況なので、非常に危ない案件ではあるな……。
それに最近、現政権(自民党&公明党)が「2020年までに、2005年比で15%減(1990年比で8%減)」という目標を決めたばかりなので、かなりの路線変更になるって事だよね。


world_co2_emission.jpg
しかも、↑の画像を見て欲しい。これは、2006年の世界各国の二酸化炭素排出量割合である。(出典 EDMC/エネルギー・経済統計要覧2009年度版。全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より)
俺がこのグラフを見ると、「世界の二酸化炭素排出量の総量を減らしたいなら、日本(全世界の二酸化炭素排出の4.5%を占める)が身を削ってまで25%削減するよりも、アメリカと中国(全世界の二酸化炭素排出の42.1%を占める)に多少の努力を促す方が排出総量を削減させる観点からは合理的なんじゃないの?」と思うのですが、皆様はどう考えますかね?
確かに鳩山代表は、「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の約束の前提だ」という仮定も言っているのですが、2005年比でEUが13%減、アメリカが14%減の目標を掲げている中、日本は2005年比に直すと30%減の目標を掲げているわけで、果たして各国が日本の高い数値目標について来れるかどうか心配です。もし、この事を今月の国連総会で言うのであれば、日本としての国際公約になってしまうので、果たしてこのまま民主党が1990年比で25%減を押し切れるのか興味深いところです。


あと、民主党は無駄削減で10兆円以上の予算を捻出するつもりとの事ですが、「高速道路無料化」で二酸化炭素排出が増加という政策を打ち出しているにもかかわらず、「二酸化炭素の25%排出削減」というような矛盾政策をいくつか抱えています。これから、いろいろと予算の無駄を見つけて民主党に報告しなければならない我々(公務員サイド)からすれば、「解決しなければいけない課題に優先順位をつける」とか「民主党の矛盾政策の無駄削減」の方をしっかりしてからでないと、どのような方針/考え方で予算を削っていけばいいのかわからないので、その辺りをしっかりと民主党には示して欲しいと思います。



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posted by きらっち at 21:34| Comment(0) | TrackBack(3) | 政治

2009年09月08日

自由度の高さが過失割合を難しくする例

【ペッパーランチ、きょうも営業停止 食中毒問題】
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090908AT1G0800P08092009.html

俺、2回ほどペッパーランチに行った事があって、その時に一緒に行った友達と「客が焼くっていうシステムは斬新だけど、生のまま食べた客が食中毒になったら、客の責任か店の責任かどっちになるんだろうね?」なんて話をした記憶があるのだけど、本当に食中毒が出ちゃったなぁ……。

ちなみにO-157は、70℃程度で1分程度加熱すればほとんど死滅してしまう菌なので(もちろん菌の付着した食べ物によって多少の差はあるだろうけど)、おそらく食中毒にかかったのはレアで食べようとしたお客さんが中心だと思われる。

確かにお店の方も、「最低○分以上の加熱をお願いします」というような加熱を促す張り紙とか周知も十分じゃなかっただろうし(少なくとも俺が来店したときはそうだった)、それなりに過失はあるのだろうと思う。ただし、お客さんの方が自分の判断で生に近い状態で食べたのなら、それなりにお客の方にも過失がありそうな気もするし、どうなんでしょうか?それとも、飲食店で起きた食中毒はどんな理由でも100%店側の責任なのかな?


どこかのテレビ番組みたいだけど(笑)、とりあえず今回のポイントを整理してみよう。
1.ペッパーランチは普段から、お客が肉を焼くシステムを採用していた。
2.O-157は、70℃で1分加熱すれば菌はほとんど死滅する。
3.ペッパーランチは、客に「最低○分以上の加熱をお願いします」という周知が十分にされていなかった。
4.どの焼け具合で食べるかはお客の判断なので、生に近い状態で食べたお客のいた可能性がある。

お客の過失割合がどの程度であるかは、個々のケースに依存するとは思うけど、ここではあえて「レアの一歩手前」の焼き加減で食べたお客がいたとしましょう。この場合、お店とお客さんの過失割合はどの程度になるんですかね?俺も正解はわからないけど、とりあえず投票してみたいと思います。




まぁ複数のお店でO-157にかかった人がいるのだから、確かにペッパーランチの過失は重いとは思います。ただ、今となっては個々のお客さんがどんな焼き加減で食べてたかわからないわけだし、ペッパーランチ的には食中毒になったお客さんには一律的な対応しかできないとは思うけど、こうなってしまった以上はお店の方で肉を焼き上げるのは当然の流れなような気もします。



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posted by きらっち at 23:34| Comment(1) | TrackBack(0) | 時事

2009年09月07日

アメリカの「貯蓄率」と「失業率」

【退職後の貯蓄増やすための新対策 米大統領、備えを呼びかけ】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090906AT2M0501N05092009.html

【8月の米失業率9.7%に悪化 26年ぶり高水準、予測上回る】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090904AT2M0403C04092009.html

アメリカはここ最近、個人貯蓄率が急増しているにもかかわらずオバマ大統領のこの声明ですか……。しかも、8月も想定外に失業率が悪化してしまったこのタイミングで、ますます消費の落ちるような事を発表して大丈夫なのかな?
という事で、今日はアメリカの個人貯蓄と失業率の推移を見ていきましょう。


us-savings.jpg
まずは、↑の個人貯蓄の推移を見ていきましょう。ここでは、個人所得、個人可処分所得、個人貯蓄率を出しました。ちなみに可処分所得とは、所得から税金や社会保険料の支出を差し引いた金額をいいます。さらに通常、貯蓄率とは可処分所得に対して貯蓄する割合の事を指します。つまり、(1-貯蓄率)が消費に回っているという事になります。
さて、これを見てまず驚く事は、アメリカの個人所得額がわずか9年足らずで1.5倍くらいまで増加していることです。確かに、リーマンショック前までのアメリカは数%程度のインフレ傾向ではありましたが、労働人口が急激に増えたわけでもないので、物価と人口だけで「9年で1.5倍」の説明はできないわけです。つまり、アメリカは経済成長によって個人所得を増やしていたわけで、失われた10年で所得の上がらなかった日本とは全然状況が違いますね。
そして、リーマンショック後をみると貯蓄率が急増しています。確かに、一般的には不景気になると消費者心理が冷え込むので、貯蓄率が上昇するのは直感的にわかるのですが、わずか1年ちょっと前の貯蓄率が1%だったのに現在では4%後半まで上がっているので、アメリカ経済の環境変化がいかに急激だったかが推測できます。現在のアメリカの経済指標も全面的に良いわけではないので、しばらくはこの高貯蓄率を維持するだろうと思いますが、デフレ局面でこういう数字を見てしまうとますますアメリカ経済の今後には期待できないだろうし、すでにデフレスパイラルに突入しかけているんじゃないのかなぁ……。
さて、もう少し違うところを見てみましょう。貯蓄率が激減した2001年Q4や2005年Q1は可処分所得も減っているので、おそらく何らかの増税が原因だと思うのですが、もろに貯蓄率への影響が出てきます。逆に、2008年Q2は何かの減税をして可処分所得と貯蓄率が増えたのでしょうか?いずれにしてもこの辺は、来るべき日本の増税シミュレーションにも大きく参考にすべきところでしょうね。


us_employment-rate.jpg
そして次に、↑のアメリカの失業率推移を見ていきましょう。一目見ただけで、2008年半ばでアメリカ経済に何か劇的な変化の起こった事がわかりますね。(笑)まぁ、十中八九アメリカの失業率は近いうちに10%の大台を超えるでしょう。10%で留まるか、さらにされ以上行くかは今後の世界経済の情勢次第だと思いますが、これだけ失業率が上がると、アメリカGDPの70%を占める民間最終消費の今後の増加はほとんど期待できないでしょう。政府支出で経済を支えようにも、アメリカはそろそろ法律で定められた国債発行残高のリミット(約8兆2千億ドル)にそろそろ到達してしまうわけで、今後はどうやって経済を支えるつもりなんでしょうか?おそらくは、法改正で国債発行残高の上限リミットを引き上げた上に、FRBの国債買い切り枠も増やすことになるんじゃないかと思いますが、とてもまだ出口戦略を考える状況では無いような気がします。
ところで、アメリカで良くなっている経済指標の一つに経常赤字額の縮小している事があるのですが、この赤字幅縮小の要因は「輸出よりも輸入の減り方が大きい」事によって貿易赤字額が縮小しているからです。ところが、これは決してアメリカの生産が増加しているわけではありません。(国内需要を考えないとすれば)輸出も減少しているという事でアメリカの生産量が減少しているわけです。つまり、生産量が減少すれば失業率の増加につながるわけで、必ずしも「赤字幅の縮小」とか「黒字幅の拡大」は経済にとって常に良い影響があるわけではありません。(この話は、むしろアメリカよりも、韓国に当てはまる話かもしれませんが)
このように、アメリカはマクロで見れば明るい指標もあるのですが、ミクロで見れば「実は国民個人にしわ寄せが来ている」という事も言えるので、今後も楽観はできません。少なくとも、アメリカの生産が今後V字型で回復する材料もあまり無いので、失業率の上昇はもう少し続くと思います。



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posted by きらっち at 23:10| Comment(0) | TrackBack(1) | 経済

2009年09月06日

究極のエネルギー「核融合」

【高エネルギー加速器研究機構 一般公開チラシ】
http://openhouse.kek.jp/2009/images/chirashi09.jpg

今日は高エネルギー加速器研究機構の一般公開日で、それに伴いノーベル物理学賞受賞の小林先生の講演が聞けるという事で、数日前に申し込みしたら、すでに応募人数が超過したためダメでした。あぁ、せっかくのチャンスだったのに。
という事で、とりあえず何かこの手の物理話を書きたかったので、今日は核融合発電について紹介しましょう。


さて、現在日本の発電容量の30%を占める原子力発電ですが、その原理はというと、「ウラン」や「プルトニウム」の原子に中性子をぶつけて、ウランやプルトニウム原子を複数の原子や粒子に分裂させた際に出てくる熱でタービンを回して発電しています。発電システム全体で見ると、二酸化炭素の排出量は少ないのですが、何せ放射性元素を使っているわけなので万が一メルトダウンでも起こったりすると、チェルノブイリ発電所の二の舞になってしまうので、厳重な運用が求められます。

という事で、なるべく放射性元素を使わないで大容量の電力を生成したいわけですが、核融合発電はそれを達成できる可能性があります。(とはいうものの、おそらく俺らが生きている間に実現は不可能と思いますが)ということで今日は、代表的な3つの核融合反応式を見て、それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。


nuclear-fusion_ce.jpg
まず、↑に3つの核融合反応式を示します。核融合の場合は、「中性子」と「陽子」の数がポイントになりますので、通常の化学反応式ではなく「中性子」と「陽子」に絞った反応式で書いてみました。

@重水素と三重水素を使うパターン
重水素は海水から生成できるので、地球上でも豊富にある。ただし、三重水素は地球上ではわずかにしかない。原子力発電所の発電炉内で中間生成物としてできるリチウム6やリチウム7から三重水素ができるので、それを使うのが最も現実かもしれないけど現段階での工業生産技術は無いんだよね。
しかもこの@の反応は、原料の三重水素も反応後の中性子も放射能を帯びてるため、安全面ではあまりオススメの方法ではないかもしれない。(ウランやプルトニウム違って、中性子は半減期が数分と非常に短くはあるのだけど)ただし、AやBの反応に比べるとそこまで高温状態でなくとも核融合反応が持続するため、技術的には一番簡単に実現できそうではある。

A重水素を使うパターン
この反応は原料が重水素のみなので、「原料をどこから持ってくるか?」の問題についてはクリアできるし、重水素は放射能も帯びていないので安全だよね。反応後に出てくる三重水素や中性子は放射能を帯びていはいるのだけど、この反応式を使って@の原料である三重水素を生成できるという利点もあるよね。さらに、この反応式では「陽子」を単独で生成できる。つまり、電力を直接生成できるのも大きなメリット。@の反応では、結局のところ出てきた熱でタービンを回して発電するしかないので、「熱エネルギー」→「電気エネルギー」の変換でかなりのロスが出てくるわけだ。ところが、Aの反応で陽子を単独でつかまえれば、電気エネルギーを直接生成できる。

B重水素とヘリウム3を使うパターン
おそらく、これが目指すべき最終核融合発電の反応式になると思う。なぜならば、このBの反応式には、原料と生成物共に放射能を帯びたものがない。しかも、反応後には陽子が生成されるので、Aと同じように直接電気エネルギーを生成できる。ただし、このBの反応は@やAよりも高温度が必要であるので、「どうやって炉の溶けるのを防ぐか?」という問題が生じる。さらに、ヘリウム3は地球上には存在しない。従って、Aの反応で生成するしかないわけだ。あるいは、月の表面には豊富にヘリウム3が存在するので、ロケットを飛ばして月から取ってくるしかないわけですよ。


いずれにしても、どの方法も核融合反応を継続的に起こせるくらいの超高温(数千万度以上)に耐えうる箱を作らないといけないのだけど、どうやってこの箱を作るかが現在一番考えないといけないわけですよ。
実は、「原料をプラズマ状態にさせた上で特殊磁場をかけてバリアを張る」というSFみたいな話が実際に考えられていて、この辺も非常に面白いので(俺みたいな一般人にはよくわからない世界ではあるのだけど)、また機会があれば紹介したいと思います。



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posted by きらっち at 23:04| Comment(3) | TrackBack(2) | 科学

2009年09月04日

物欲を刺激するUMPC(ウルトラモバイルPC)達

mobile-goods.JPG
ちなみに俺、IT製品やモバイル大好き人間である。↑の画像が、今所有しているノートPCや携帯電話の通信機器なのだが、
1.EeePC 900-X(ネットブック)
2.WILLCOM03(PHS)
3.C01LC(Softbankの7.2MbpsUSB端末)
と、外出時とか出張時の電車の中とかでもモバイル生活を満喫していて、本エントリーを含めてよく出先でブログ更新していたりします。

さて、今日はそんな俺の物欲を刺激する2つの製品、「mbook」と「ネットウォーカー」をご紹介しましょう。


【mbook】
http://i-mbook.com/showroom/show.php

mbookは韓国の会社の製品ですが、ほぼDSと同じ大きさ(何と重さは300g台!)の端末の上にWindowsXPが動くので、これは非常に欲しいんだよね。確かに、CPU(1.33GHz)やメモリ(512MB)は非力ではあるんだけど、メールやネット閲覧やOfficeくらいなら普通に動くわけでしょ?もちろん無線LANやBluetoothやインカメラまで標準装備。しかも、microSDスロットのみでなくSIMスロットもあるので、DOCOMOやSoftbankのデータカードかUSB端末があれば、SIMカード挿すだけで定額データ通信が可能なわけです。
まだ日本語版WindowsXPのプリインストールされたmbookは販売されていませんが、日経トレンディ10月号によると近く工人舎からリリース(価格は6万円程度)されるようなので、即買いしそうな気がします。


【ネットウォーカー】
http://www.sharp.co.jp/netwalker/

そして日本からは、SHARPが今月「ネットウォーカー」をリリースします。オープン価格ですが、45000円程度でになるそうです。mbookと同じようなスペックですが、こちらのOSはLinuxのUbuntuという事なので、一般の人にとっては多少敷居が高くなるのかもしれません。とはいうものの、標準のアプリケーション(Firefox、Thunderbird、OpenOffice)で、インターネット・メール・Officeはできるわけだし、mbookよりも安くなりそうなので、俺としてはこちらも捨てがたいんだよなぁ……。
おそらく、ソニーとか富士通からも同じようなUMPCが発表されそうだし、もう少し待てば自分好みの端末が出て来るような気もするので、どうしようかなぁ……。


いずれにしても、どの端末を購入するかはわかりませんが、ここまで小さいPC端末を所有するのであれば、携帯電話(PHS)に高機能を求めなくても良いので、UMPC購入後は「通話」「メール」機能に絞った携帯電話に機種変更する事にもなるでしょう。



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posted by きらっち at 22:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2009年09月03日

頼みの綱の中国も……

【上海株8月暴落:時価総額42兆円消失、1人60万円損失】
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0903&f=business_0903_069.shtml

asia_stock-market.jpg
↑に、2008年1月からの「日本」「中国」「韓国」の株価推移のグラフを作りました。さて、これを見る限り中国の株価が先月から確変モードに入ったと思いません?(笑)
グラフを見れば一目瞭然でわかりますが、中国株のバブルはリーマンショック前にすでに弾けていた事がわかります。逆に、欧米各国の株価が大幅に下落する中、バランスシートの痛んだ各国金融機関にとっては、すでにバブルの弾けて落ちるところまで落ちた中国株は上がるだろうと思われていたので、希望の星のように映ったのでしょう。


@【中国・韓国の貿易動向】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/30546124.html

A【中国の国債入札:2週間で3度目の札割れ−資金は株式・不動産へ 】
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003011&sid=a.BIjDGWALsc&refer=jp_asia

B【中国が抱え込む新たな火種 銀行貸し出し急増の副作用】
http://news.biglobe.ne.jp/economy/788/dol_090601_7888602446.html

しかし、↑の@のエントリーでも書きましたが、中国は思ったよりも輸出が伸びず、内需も政府の財政支出頼りとなっている状況の中で、Aの通り国債入札で札割れを起こしてしまいました。国債の札割れに関しては、単純に中国国債の利回りよりも儲けられそうな株や不動産の方に資金が流れているからでしょう。そしてBの記事にもありますが、中国政府は、貸出金が回収不能になるのを恐れる国内銀行に融資を強制したため、その融資したお金が株や不動産に流れる構造が出来てしまったわけで、これが再び中国株のバブルに繋がった可能性があります。

もしここで、再び中国株バブルが崩壊してしまうと、世界経済はエンジンを失ってしまうため、2番底どころか相当長い期間立ち直るのは厳しそうな感じがします。しかも、今まで中国株に投資していた投資家達は、再び投資対象を探さなければならないため、昨年のような資源高騰になるんじゃないかと非常に心配です。

どうもここ最近の世界経済や金融情勢を見ていると、「近いうちに、また何か激変が来そうな感じがする」と思うのは俺だけでしょうか?できれば俺の予感が外れていて欲しいものですが……。



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posted by きらっち at 22:36| Comment(0) | TrackBack(1) | 経済

2009年09月02日

伸びる産業と衰退する産業

【民主政権へ期待と不安 建設業界・郵便局・遺族会…】
http://www2.asahi.com/senkyo2009/news/TKY200909010194.html

公共事業を批判している民主党は、おそらく概算予算要求で国土交通省や農林水産省の公共事業費をごっそり削るのだと思うけど、そりゃ確かに建設業に従事している人は、たまったもんじゃないだろうなぁ。自民党ですら、毎年毎年公共事業費を削ってたわけで、おそらく建設業界は相当苦しいんじゃないのかな?

という事で、今日は1990年〜2007年までの実質GDPにおける「産業別の生産額割合」を算出してみました。これを見て、建設業がどの程度苦しいかを見てみましょう。
realGDP_composition.jpg
↑を見てみましょう。ここでは「農林水産業」「鉱業」「製造業」「建設業」「電気・ガス・水道業」「卸売・小売業」「金融・保険業」「不動産業」「運輸・通信業」「サービス業」「政府サービス」「対家計民間非営利サービス」の12産業の実質GDPに対する割合(積み上げ棒グラフ)と、実質GDPの額(折れ線グラフ)をあらわしています。なお、原資料には「関税」「控除」「統計誤差」の項目も含まれますが、数字が小さいのでここでは割合計算に入れておりません。よって、この12産業の全ての生産額の和は、ほぼ実質GDPと同じになります。
さて、このグラフから建設業の対実質GDP比は随分少なくなっている事がわかります。1990年は実質GDPに対して10.8%を占めていたものが、2007年では5.6%にまで落ちてしまいました。日本の実質GDPは、この17年間で27%(120兆円)程度の増加を達成しましたが、建設業の生産額は落ち続けたわけです。上記の朝日新聞に記事中に
「5年前と比べて売り上げは半減。従業員のボーナスはゼロ、昇給もない。地方には農業と建設業しかないという事実がある。地方をただ、切り捨てるというのだけはやめて欲しい」
という記載がありましたが、数字を見る限り確かにこういう状態の建設会社はたくさんあるのでしょう。ただし、「時代と共に求められる物が変わる」という事もあるため、そりゃ淘汰される会社も出てくるのは仕方の無い事なのかもしれません。

ただし、建設業が衰退する一方で、伸びる産業もあるわけです。グラフを見ると「サービス業」の対実質GDP比が増えている事がわかります。1990年には実質GDPに対して17.6%を占めていたものが、2007年には22.1%に増加しました。ちなみに、この「サービス業」は「公共サービス」「対事業所サービス」「対個人サービス」という詳細区分があるのですが、対実質GDP比増加の半分程度が「対事業所サービス」によるものです。おそらく、この17年間で職場環境も大きく変わりIT等々の設備投資も進んだわけで、こういうIT設備の維持や管理等のサービスを受注する会社が多くなったという事でしょうか?
いずれにしても他国との人件費差を考えると、製造業等のモノを媒介する産業は「技術」や「特許」に特化しないと価格競争で勝てないので、他国でも作れる製品についてはこれからも海外への工場移転が進むでしょう。なので、こういう産業については対GDP比の割合をこれ以上伸ばすのは非常に難しいと思われます。
ところが、「サービス業」の場合は外国に流れない仕事(例えば、上記のIT設備保守業もそうですし、医療/介護産業とか教育産業みたいな「モノ」ではなく「ヒト」を媒介する仕事)が多いので、ここを重点的に伸ばす政策を打てば雇用対策にもなるし内需拡大にもつながると思います。


ニーズは時代と共に変わりますが、ニーズ変化に迅速に対応できるのであれば、日本はまだまだ世界経済を引っ張っていける潜在能力はある、と俺は信じています。



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posted by きらっち at 22:38| Comment(1) | TrackBack(1) | 経済

2009年09月01日

生産増加を伴う経済対策を!

【09年度補正予算を執行停止へ】
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2009083000622

民主党は、今年度の一次補正予算の執行停止を考えているらしい。ちなみに自分の身になって考えると、先週の引越しに伴って新しくクーラーとプラズマTVを購入したのだけど、エコポイント制度が無くなるかもしれないって事だよね。うぅ、早くエコポイントの交換申請を提出しないと……。

まぁもっとも、民主党の立場からすれば早く自分達の掲げた目玉政策を実現しないといけないので、補正予算を止めてそれを財源にしたいわけでしょう。裏を返せば、「補正予算を止めない限り、すぐに財源捻出のメドが立たない」という事だろうとは思いますが。


ということで、今日は今まで自民党が行ってきた経済対策の考え方と、民主党の考える経済対策の考え方の違いを経済的な視点で考えて見ましょう。
economic_comp.jpg
↑が、それぞれの経済対策でのお金の流れを図に示したものです。今までやってきた自民党の経済対策は、公共事業や政府事業や民間事業促進等々に視点を置いています。つまり、政府支出によって社会需要を増加させて、民間企業に仕事を流し、最終的に国民へ利益を還元させる政策を取ってきたわけです。
なので、政府支出が大きく増加すれば、社会の生産増加に伴いその影響は広く世の中に還元されます。(いわゆる「乗数効果」というやつです。)

一方、民主党の考える経済対策はどうでしょうか?民主党の場合は、子供手当てや農家の戸別保証等々、国民へ直接お金を流す政策を実行するようですので、これらの政策では民間会社にお金が流れるわけではありません。この補助金政策が経済的に上手く機能するためには、国民が受け取った補助金を消費に回さないいけないわけです。
しかしながらこのデフレ状況下において、補助金を受け取った賢い国民はどうするでしょうか?俺の読みでは、相応の部分が貯蓄に回されて、大きな経済効果が出ないような気がします。さらに、民主党の経済対策では「社会の生産増加」を伴うものではないので、失業率が増加する事になるでしょう。


という事で、自民党の行ってきた経済対策と民主党の考える経済対策をまとめましょう。

自民党の経済対策は
@政府支出によって社会の生産増加を促す
Aその結果、失業率の改善や給料増加が見込める

民主党の経済対策は
@政府支出によって直接国民に補助金を出す
A社会の生産増加や失業率改善は、国民の消費次第

というところでしょうか?民主党の経済対策を実行するとなると、国民の消費が鍵を握る事になるので、別途デフレ対策をやる方が効果的でしょう。(ちょうど下記の記事にもあるように、デフレはすぐそこまで迫っています)この辺は、日銀とか財界と早めに根回しした方が良いと思われますが、果たして民主党はすでに水面下で何か動いているのでしょうか?

【4〜6月期の需要不足、年40兆円規模 内閣府】
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090831AT3S3102A31082009.html


ただ私個人としては、国民一人の得る直接利益については確かに民主党型の経済対策の方が上のような気がしますが、先行き不透明な国民の消費と世界経済の不安定性を考えると、今は自民党型の経済対策の方が確実に全体効果が見込めるような気がします。しかも、自民党型の経済対策であれば政府支出で需要を作り出すため、デフレ対策にも効果を発揮するわけです。

まぁどちらの経済対策が正しいかは、来年から再来年にかけての経済情勢が示してくれるでしょう。



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posted by きらっち at 23:12| Comment(11) | TrackBack(1) | 経済