2009年10月05日

エストニアは回復基調に乗るのでは?!

@【危機は今:リーマン破綻1年/中 再燃の「火薬庫」】http://mainichi.jp/select/world/news/20090916ddm008020148000c.html

A【ユーロ圏の失業率、10年半ぶりの高水準】http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20091001-OYT1T00859.htm

B【IMF:ラトビアのユーロ導入、2014年目標達成は困難も−財政赤字で】
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=a2xHLyt0eB0M

↑ここ最近のラトビア関係の記事ですが、やはりラトビア経済は厳しい状況です。Aの記事に「失業率18%」って書いてあるけど、こんな高失業率で暴動とかおきないのかな?ちょっと心配。


【バルト3国 やはり一番手はラトビアか?】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/30153940.html

そして今日は↑のエントリーの続きです。前回は、バルト3国の2009年Q1の経済指標と対外債務残高を見ていきましたが、今回は2009年Q2の最新指標を見ていきましょう。


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まずは、↑のバルト3国の外貨準備高の推移から見ていこう。このバルト3国シリーズでは「GDP」「国際収支」「対外債務状況」においては四半期毎のデータを出しているのだけど、「外貨準備高」に関しては月毎にリリースしているデータを使うので、8月までデータを掲載している。
ここでの注目はやはり「ラトビア」です。「ラトビア」は7月に外貨準備高が急増しているわけだけど、これはEUによる融資金でしょう。とりあえず、「ラトビア」はこのEUからの融資でデフォルトの危機を免れたような感じがします。しかし、もともと「ラトビア」は2012年に財政赤字をGDPの3%以内に抑えてEUに加盟する予定になっていたのですが、Bの記事にもある通り、この目標達成は到底困難になったとみてよいでしょう。そもそも「ラトビア」は、GDPすら前年比で-20%程度になった一方で、政府債務が前年比で2倍くらいに激増しているわけです。(この辺の数字は後で出てきます)こういう状況だと、「GDPを増やす」にしても「政府債務を削減」するにしても、どっからどのように手を付けていいか頭の痛いところでしょう。


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そして次は、↑のバルト3国のGDPについて見ていきましょう。ここでのGDPは、季節調整の無い生の名目GDPです。さて、実は2009年Q2は意外にも、「エストニア」も「ラトビア」も「リトアニア」も、前期比でGDPはプラスを確保しました。しかも、この3国の中で先行きの明るい国が一つあります。
その国とは「エストニア」です。「エストニア」は「総固定資本形成」が急減中ですが、これは「総固定資本形成」の中に「在庫変動」という項目に起因するものです。この「在庫変動」が-3400(100万クローン)となっていて、これが相当に足を引っ張っています。ただ、在庫変動が大きくマイナスになったという事で、近いうちに生産が拡大すると思われます。実際、「エストニア」の純輸出が急増しています。この表からはわかりませんが、エストニアの輸出増加の要因は「輸入の低減」ではなく「輸出の増加」によるものです。つまり、「エストニア」では生産量が増加してるわけで、これは失業率の低下にもつながる良いニュースかもしれません。いずれにしても、「エストニア」は在庫も無くなっているし、輸出量も増えているわけで、先行きはそこそこ明るそうな気がします。
一方、「ラトビア」と「リトアニア」は「総固定資本形成」が前期比でプラスに転じていて、一定の歯止めがかかった感じがします。ただし、「ラトビア」の「総固定資本形成」は最盛期の半分以下、「リトアニア」の「総固定資本形成」に関しては最盛期の1/4近くまで落ち込んでいます。特に、「リトアニア」の「総固定資本形成」は「在庫変動」によるマイナス分を除いたとしても、最盛期の「8600」には到底届かないわけで、外国資本に戻ってもらわない限りはかつての勢いを取り戻せそうにありません……。
ちなみに、それぞれ3国のGDP最盛期から2009年Q2の落ち込み幅は、エストニア18%、ラトビア20%、リトアニア25%となっています。


baltic-state_bop_2009-Q2.jpg
そして次は、↑のバルト3国の国際収支推移を見ていきます。
「エストニア」は、2009年Q2に経常収支をついにプラスにしました。今後、黒字に定着するかどうかは、特に「貿易収支」の動向に依存すると思います。もしここで、「貿易収支」が黒字になると、バルト3国の中では最初に自律回復に向かうのは間違いなく「エストニア」になると思います。何故かと言うと、「資本収支」中の「直接投資」と「証券投資」が急減しているのですが、「直接投資」に関しては、海外から「エストニア」に投資がされず「エストニア国内」から海外に投資している事に起因していて、「証券投資」に関しては、「エストニア国内」から海外の債券をたくさん購入した事による物です。いずれにしても、海外資本が「エストニア」から流出しているわけではなく、「エストニア資本」が海外に向かうものであるので、今回の「エストニア」の「直接投資」「証券投資」の急減は悪性の物ではなさそうです。さらに「その他の投資」が急増しているのも、「エストニア国内の金融機関」が海外に貸し渋っているのが主因であって、エストニア政府が海外向けに大量に国債発行したわけでもありません。
一方、「ラトビア」の方は所得収支が急増していますが、これは海外支店留保利益(日本語で何ていうのかわからないけど、英語では"undistributed branch profits")が多くなってきた事が主因です。おそらく、「ラトビア」にある海外企業はラトビア内で出した利益をすぐに本国に送金せずに、通過切り下げの後に本国に送金するつもりだったのでしょう。そして「その他投資」もQ1に引き続き大きな赤字になっていますが、これは「ラトビア」の金融機関や民間会社が通貨切り下げを見込んでラッツを売って外貨預金した事が主因です。「ラトビア」では通貨切り下げが既定路線だったので、みんなで為替得を狙ってたのでしょう。実際、Q1から外貨準備高が大きく減らしているのがわかります。この国際収支表を見ていると、確かにEUの融資がなければ「ラトビア」はおそらくデフォルトしてたんでしょうな。ただ、Q3からはEUの融資が始まったので、おそらくQ3の「ラトビア」の資本収支は大きく変わると思います。


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最後に、↑のバルト3国の対外債務推移を見てみましょう。
まずはデフォルト危機に瀕していた「ラトビア」ですが、2008年Q3で2065(百万ドル)だった対外債務が、わずか半年くらいで倍になりました。2009年Q2でも引き続き増えています。ところが7月にEUからかなりの融資があったので、何とか持ちこたえられるではないでしょうか?ただ、「ラトビア」は政府部門にかかわらず経済規模に対して債務額が大きい(「GDP」対「対外債務」が、エストニア524%、ラトビア590%、リトアニア356%)事がわかります。「エストニア」みたいに、そこそこ先行きが明るいならまだしも、今の「ラトビア」にはEUからの融資がないと厳しいだろうなぁ……。
「リトアニア」は、経済規模的には「エストニア」「ラトビア」よりも債務額が少ないのですが、肝心のGDPの落ち込みが3国で一番ひどいのでL字型の低空飛行を続けることになりそうです。



という事で、各国についてまとめると以下のような感じでしょうか?
【エストニア】
輸出量増加と在庫減少により、Q3はそこそこの経済成長が見込めそう。経常収支がこのまま黒字を確保できるなら、バルト3国の中では一番早く安定化するのではなかろうか?

【ラトビア】
2009年Q2時点ではどうにもならなかったが、7月のEU融資により一時的に何とかデフォルトを免れた。ただし、失業率18%の示すように国内経済はほぼ崩壊状態で、しかも国内企業が自国通貨を売って外貨預金するくらいなので、経済再建は非常に厳しい。まずは、ラッツの信用を回復した上で、金融に重視しすぎたビジネスモデルを修正する必要があるのではないか?

【リトアニア】
GDPの落ち込みは一番激しいものの、対外債務は経済規模に対して多くはないためデフォルトはまだまだ先だと思う。最盛期の1/4程度に落ちてしまったGDP中の「総固定資本形成」をいかに回復させるかが、リトアニア経済の鍵を握る。



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posted by きらっち at 23:41| Comment(180) | TrackBack(0) | 経済