2009年10月23日

資産・負債に見る不況の原因

【GDP(フロー)と資産・負債(ストック)の意味するところ】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/33103560.html

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先日↑のエントリーで、フローとストックについて説明しました。その際、現在の日本経済の状況を↑の画像に集約して、「政府支出でGDPを支えるために政府の資産・負債が拡大して、一方で民間企業は債務返済のために資産・負債が減少している」事を書きました。
さて、今日はその資産・負債(ストック)面において、日銀の資金循環統計から実際の数字を追ってみましょう。


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まずは、↑に日本国内の金融部門と非金融部門に対する資産・負債額の推移を出しました。金融部門の方は、景気動向にかかわらず、資産・負債共にわりと安定している事がわかります。金融部門が会社や個人から預かったお金は「いつか預け主に返さないといけない」という理由で、負債として位置づけられているのですが、現金のまま持っていても利子や利回りがつかないため、その大半を株とか債券を購入して資金運用をしています。そのため金融部門は、資産も負債も同程度の金額で推移しているのです。
一方、非金融部門の方の資産・負債の推移は動きが激しいのがわかります。ぱっと見た感じでは景気動向と非常に相関がありそうですね。いずれにしても非金融部門については、正常な経済状況であれば、生産/投資活動が活発になるので、資産・負債が共に増加していきます。実際に、失われた10年からようやく抜け出し始めた2002年辺りから、その傾向が顕著にあらわれています。ところが、アメリカのサブプライム問題が表面化した2007年頃から、日本の非金融部門の資産・負債の増加傾向が止まって、共に急減に転じました。

普通、不景気になると生産/投資活動が弱くなることにより、資産・負債は伸びなくなります。ただし、仮に生産/投資活動をしなかった(お財布の中身の出し入れが無い事に相当)としても、資産・負債額に変化は出ません(お財布の中の金額は変わらない事に相当)。ところがお財布の中には、「株」という日々価値の変動する物があるわけで、株価が買った値段より下がってしまうと、当然その分を損をするわけです。そのまま放っておいて、株価が値上がりするのを待てるほど資金繰りに問題がないならばいいのですが、社債や借入金の類の負債については、負債額が変動するものではないため、期限までにしっかり返さないといけないわけです。
通常、民間企業の資金は全て預貯金のみで運用しているわけではなく、多額の「株」で資金運用しているところもあるわけです。例えば、会社の全資産の1/2を株で運用していたとしましょう。そして、株の暴落があって平均株価が1/3になったとしたら、会社の資産の2/6が消えた事になります。一方で、会社が発行した社債や銀行から借りた借入金の額は変わらないので、会社の実質的な返済負担が重くなるわけです。これにより、今までは営業利益を何かに投資(自社の設備投資、子会社への増資等々)していた会社が、迫り来る借金返済が怖いので、営業利益をそのまますぐに借金返済につぎ込んだわけです。これにより非民間部門は、資産も負債もどんどん減少する「失われた10年」から抜け出せなかったわけです。

さて、↑の2007年以降の非金融部門の資産・負債状況を見ていると、国内非金融部門の資産は3150兆円→2700兆円、負債は2950兆円→2450兆円まで減っているわけで、再び「失われた10年」と同じ状況になりかけているのかもしれません。ただ、日本はすでにこの状況は一度経験しているし、その時に企業のバランスシートを相当に綺麗にしたので、他国に比べると今回の被害は相対的にかなり軽いとは思いますけどね。

それでは、次にこの国内非金融部門をもう少し深堀して調べてみましょう。非金融部門は「非金融法人企業」「家計」「一般政府」「対家計民間非営利団体」の4つの部門で成り立っています。「対家計民間非営利団体」は規模が小さいのでここでは省略しますが、残りの「非金融法人企業」「家計」「一般政府」についての資産・負債状況を見てみましょう。


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↑が「非金融部門」中の「非金融法人企業」「家計」「一般政府」の資産・負債の推移となります。まず皆様が「あれ?」と思うのは、非金融法人企業の資産よりも負債の多い状況ではないでしょうか?これはどういう事かと言うと、返済義務の無い株も負債としてカウントされているからです。個人投資家(家計)や金融部門が購入している企業の株は、個人投資家や金融部門にとっては「資産」であり、企業にとっては「負債」となります。ただし、株は返済義務の無い負債であるので「借金」とは違います。2009年Q2現在で、非金融法人企業の負債のうち440兆円が株による返済の必要の無い負債なので、これを考慮すれば、非金融法人企業は資産>負債となります。
ただ、「一般政府」の方はそうではありません。一般政府の負債増加の原因は、皆様もご承知の通り国債発行によるものですが、これは返済義務のあるものです。
そして、「家計」の資産について言えば、失われた10年以降も着実に増えてきました。2007年以降、株安のせいで若干減少傾向を示していますが、一方で負債の方も額は少ないけど着実に減少しています。しかし、純資産(資産-負債)が1000兆円程度あるので、日本国民は素晴らしくお金持ちですなぁ。(笑)

いずれにしても、今まで見てきたように、非金融部門のストック面における現在の日本経済の課題は、「非金融法人企業」の資産・負債を増やす事である事は明白です。それでは次回、どうやってここを底上げするのかを自民党視点と民主党視点で考察してみたいと思います。
(「民主党の経済対策は逆に景気が悪くなるのでは?」と思う論拠を図でいろいろ説明する予定です。)



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posted by きらっち at 23:53| Comment(3) | TrackBack(0) | 経済