2009年11月30日

円高で海外投資を後押し

@【大企業2割が海外移転検討 製造業派遣の原則禁止で】
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090918/biz0909181939011-n1.htm

A【日本の海外企業買収3.7倍に/金融危機が追い風に】
http://www.shikoku-np.co.jp/national/main/article.aspx?id=20081108000289

さてさて、ちょっと考えれば当然なのですが、円高になると日本の輸出産業は日本で製品を作っても価格競争力で不利になるために、通貨安の国に工場を建設して生産拠点を移します。世界の景気が良いときは、生産増加が止まるわけではないために日本国内の工場も維持できると思いますが、今の状況だと国内工場は「廃止」か「規模縮小」という事になるので、いずれ失業率上昇という形で跳ね返ってくる事になるでしょう。
今回は、ドル高の要因が見つからない中での円高騒動になっているので、企業は真面目に工場の海外移転を考えているんじゃないかなぁ、と思います。


B【製造業への派遣を原則禁止 労働者派遣法改正案合意で3党共同会見】
http://www.dpj.or.jp/news/?num=16333

そんな中で、現政権は派遣禁止を進めようとしております。もし仮に派遣禁止をやってしまうと、@とAの記事の事を察するに、相当な勢いで製造業の海外移転が始まってしまい、失業率が結構上がってしまうのではないでしょうか?「業界」の味方でなく、「家計」の味方である民主党としての政策判断が難しいところでしょうね。


japan-direct-investment-abroad.jpg
それでは具体的に↑の「対外直接投資」を見て、数字を追っていきましょう。

「対外直接投資」とは、海外子会社(出資割合10%以上)の株取引等の投資に関する統計で、「株式資本」「再投資収益」「その他資本」の3つから構成されています。
「株式資本」は、株取引の収支の事で、日本の会社から海外の子会社への投資はマイナス、海外の会社から日本の子会社への投資はプラスで計上されます。
「再投資収益」とは、海外子会社の株式等による利子や利回りで未配分のものです。つまり、本来本国に送金されるものですが、未送金で海外子会社で留保しているお金とも言えるでしょう。この項目には、収支という概念が無く、単純に日本の海外子会社からの未送金分がマイナスとして経常されます。
「その他資本」とは、株や再投資収益以外のものの収支のことです。具体的にどんな取引が対象になっているのかはわかりませんが、日本から海外子会社への投資はマイナス、海外から日本子会社への投資はプラスで計上されます。

さて、一番左の列の「対外直接投資」を見てみると、少なくとも2007年からは常にマイナスであるために、海外の会社が日本の子会社に投資するよりも、日本の会社が海外の子会社に対して投資している事がわかります。しかも、リーマンショック直後の2008年Q4は、「株式資本」のマイナスが大幅拡大になりました。これは、海外の会社から日本子会社に投資された流入分よりも、日本の会社が海外子会社に投資した流出分が非常に大きかったためで、海外投資に勢いがついたことがわかります。
やはり、円高が海外移転を後押しする事が数字で示されています。


俺が一つ非常に気になるのは、リーマンショック直後の2007年Q4から「再投資収益」のマイナス幅が縮小している事です。

【海外子会社利益の国内還流促進で法人税非課税化へ−来年度税制改正】
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=aB4.KgwKywUI

これは、↑のように前政権で決定した「海外子会社利益の国内還流促進」に関する税制改正による影響が大きいと思います。今の日本は、諸外国よりも法人税が高いために、海外子会社からの還流分は法人税の安い現地に留保させるわけです。この留保分をどんどん日本に還元させるために、前政権が上記の税制改正により海外子会社からの還流分を非課税にしたわけです。
これによって、日本国内で業績の悪くなった自動車会社や電機メーカーの赤字分を、海外子会社の黒字分で穴埋めしているわけです。ただ、これは海外から日本へお金を流入させるわけですから、当然円高要因になります。一説によると、日本の海外子会社が現地で留保している利益は15兆円クラスとも言われているので、仮に全額日本に流入してきたら、とんでもない円高を引き寄せてしまうわけですけどね。


japan-direct-investment-abroad-cb.jpg
さて、↑に「地域別の対外直接投資」をあげました。これを見ると、リーマンショック直後の2008年Q4に海外投資が激増しましたが、地域別で見ると「北米」の投資額が群を抜いた増加率になっています。円高をチャンスとばかりに、アメリカの有力な会社を日本の会社がどんどん買収したわけですね。同様に、2008年Q4は中南米もガツッと買収しています。こちらは、レアメタルとか食料関係の会社を買収したのでしょうかね?一方、日本は「東欧」や「中東」地域はそんなに投資しているわけではなさそうです。地域的に遠いという事もありますが、結果的に「ラトビア」や「ドバイ」に代表されるやばそうな地域を避けているわけで、日本人の安全志向を表しているのかもしれません。


さて、今日は「対外直接投資」の統計を見てきましたが、今のところ日本企業は状況に応じて理に適った海外投資をしているように思います。一つ心配になる事は、今後国内工場を海外移転しすぎる事により、営業利益を海外子会社からの還流分に依存しすぎて、「円高が止まらなくなる」&「輸出産業が過度に為替レートに依存する(参考リンク@)」という可能性がある事です。元々俺は、「長期的な円安トレンドは日本国債の投売りにつながる」(参考リンクA)と思っているのですが、とは言うもののあまりに急速な円高も困るわけで、可能な限り長期的にゆっくり円高を進行させるのが一番望ましいと思っています。

そういう意味で、果たして現政権がどんな円高対策をするのかが楽しみでなりません。(笑)


参考リンク@【黒字転換したホンダの営業利益の中身】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/32061746.html

参考リンクA【国債の利回りさえ払えなくなる日はいつ?】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/32620113.html



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posted by きらっち at 23:59| Comment(3) | TrackBack(0) | 経済

2009年11月29日

ドキッ!同じ職場からのアクセス

本ブログはアクセス解析をしています。俺自身がブログの読者層を知りたいので個人的に調べているだけなのですが、数十人程度は毎日チェックしてくださる方がいるので、この場を借りて御礼申し上げます。今後も可能な限り、経済ネタを中心に「数字」からいろいろな世の中の動きを見ていこうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。


さて、実は最近のアクセス解析結果を見ていると、自分と同じ省庁からのアクセスが増えてきたので、非常にびっくりしております。自分自身は仕事場からのアクセスはしていないので、間違いなく同じ省庁の誰かが本ブログを見ているわけです(それも、おそらく複数の可能性が大)。しかも、深夜の時間帯や土曜日や日曜日のアクセスもたまにあるので、それなりに忙しい部署の方だと思います。可能であればこちらから「お仕事ご苦労様です」と声をかけたいところなんですけど、今もお仕事の最中なんでしょうか……。


ところでサイト開設当初は、「*.ne.jp」「*.go.jp」「*.lg.jp」の方が多かったのですが、最近は「(特に非金融機関の)*.co.jp」からのアクセスが増えてきて、平日の1日で150程度のIPからのアクセスがあるみたいです。
当面は、平日1日当たり200IP程度を目指そうと思っていて、可能な限り更新したいと思います。拙いブログですが、どうぞ皆様今後もよろしくお願いいたします。



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posted by きらっち at 22:19| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記

2009年11月28日

二番底のトリガー?!

【「ドル・キャリー取引」活発 金・原油先物 NYで高騰】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20091126-OYT8T00527.htm

【外為市場で一時1ドル84円台 対ユーロも円高加速】
http://www.asahi.com/business/update/1127/TKY200911270100.html

どうも米国債新規発行が止まってから、世界の投資マネーの潮目が明らかに変わった感じがします。やはり、今まで米国債に向かっていたマネーが、ドルキャリーを通じてモノや他国に流出しているのでしょう。ただ、これは「ドルの信認低下か?」と言われれば必ずしもそうではなと俺は思います。「超低金利」と「超量的緩和」を導入すれば、必然的に溢れるマネーはどこかに向かうはずですが、今までは新規発行の米国債がマネーの向かい先だっただけです。


【ドバイ政府系企業がデフォルトの危機】
http://www.business-i.jp/news/flash-page/news/200911270089a.nwc

どうもこの一ヶ月で、モノ市場の高騰に加えて、金融危機第2幕が近いうちにありそうな気配が漂ってきました。ユーロ圏では「ラトビア」が一番手でやばそうな感じでしたが、まさかドバイまでヤバイ状態だったとは……。現在のドバイは、原油依存のロシアと違って、GDPに占める原油関係のものはわずか数%程度に過ぎない上に、海外から流入するお金で金融産業を伸ばすビジネスモデルを採用していたために、仮に原油高騰が続いても助からない可能性の方が高そうな気がします。加えて、おそらくドバイみたいに「実はそろそろやばそうです」なんて国がまだまだあるんじゃないかと思うのですが、やはり危ないのは海外からのマネーを集めていた金融立国でしょうね。先進国であるアイルランドとかイギリスとかも真面目に大丈夫なのかなぁ……。


いずれにしても、最終的なマネーの行き先が供給量を自在に調節できない「原油」「金」「レアメタル」等々になってしまうと、インフレに行き着いてしまいます。しかも、株や債券にマネーが行かなくなると企業資金の調達が出来なくなる事により、生産活動も活発にならずいつまでたっても世界景気が回復しなくなるわけです。しかも、それに加えて日本だけは「デフレ」という重荷を背負っているわけで、現政権の経済財政運営は大変とは思いますが、肝心な責任者が↓の調子なので非常に心配です。

【菅副総理、経済オンチ露呈「今ごろ何をトボけたことを…」 】
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/329174/

【「理解が足りないのでは」と菅副総理が反論 経済戦略見えない批判に】
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091127/stt0911271159008-n1.htm

それにしても、↑の下段の記事で副総理は「投資効果のない財政出動を繰り返しても、過去に成功しなかった」と言っているので、「あれだけの財政出勤をしたから、あの程度の景気低迷ですんだ」とは全然思っていない事がわかります。いやぁ、「完全に経済のわかっていない大臣」という事を自分で曝け出しちゃってるなぁ。(笑)とは言うものの、「どこに投資するか」という面では自民党政権が全面的に正しかったわけでもないとは思いますけどね。

それにしても、万が一金融危機第2幕が襲ってくれば二次補正どころの話ではなくなるわけですが、経済財政担当のトップがこの程度の認識なんだから、ある意味恐ろしいですよ。どちらの方の理解が足りないのだか……。

「円高」「需要減」「デフレ」、これらの影響を和らげるためには日本も本格的な量的緩和を今すぐに実行して、補正予算なり来年度予算を拡大すべきなのでしょうけど、まさに自民党と同じようなことをするわけなので、民主党内部での抵抗も大きいのではないでしょうか。アメリカやイギリスは、リーマンショック直後に量的緩和を実施したのに、また日本はぐずぐずしてるうちに「失われた10年」を繰り返しそうな雰囲気です。



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posted by きらっち at 08:44| Comment(0) | TrackBack(5) | 経済

2009年11月27日

必殺仕分け人

先週から仕事がしんどくなってきました。来週末まで、しばらく更新頻度を落とす事になりますが、ご容赦ください。



【「若手育成、未来の投資」 事業仕分けにノーベル賞受賞者ら懸念】
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20091126AT1G2502Z25112009.html

【「2位ではだめなのか」 次世代スーパーコンピュータを「仕分け」した議論】
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0911/15/news002.html

【学力調査「抽出4割多すぎる」 事業仕分けで削減要求】
http://www.asahi.com/national/update/1126/TKY200911260006.html

個人的には、世界の中で日本経済の地位を維持する事を考えれば、「科学技術」とか「人材育成」については絶対に手を抜いちゃいけない分野だと思うし、未来の国力を削ぎ落とす政策に関しては、もっといろいろな場所から批判があっても良いと思うけどなぁ……。
そもそも民主党は、中長期的に日本をどのようにしたいのかあまり考えていない節があるわけで、短期的な仕事(まさに予算削減やマニフェスト実現等々)に没頭しすぎないようにお願いしたい。


【事業仕分けに反撃?文科省、HPで意見募集】
http://www.asahi.com/politics/update/1117/TKY200911170276.html

【経産省も国民の声募る 仕分け対象の34事業】
http://www.asahi.com/politics/update/1120/TKY200911190531.html

そして予算削減される省庁側も、今後の戦略を練るわけですよ。事業仕分けの場では、省庁側の発言は仕分け人の質問に答えるのみでそれ以外の発言はできないし、おそらく事業仕分けの場以外でも完全に役人の意見は聞いてもらえないわけなんだよね。そこで、省庁側としてはオープンな場で意見募集する。そうすれば、予算削減で不利になる業界から間違いなく文句が出てくるわけで、それを「国民の意見」として堂々と財務省や先生方に反論できるわけですよ。
個人的には、事業仕分けが終わる今日以降で、国土交通省とか厚生労働省とかも追随するのかどうか注目しています。


【事業仕分け:「野依さんは非科学的だ」 刷新会議・加藤事務局長が反論】
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091127ddm002010102000c.html

そして、↑の記事のように場外バトルも始まっています。全体のパイを広げる発想の無い民主党の場合、今後も割りを食う分野の人達からいろいろと文句が来るだろうから、組織票もじりじり逃げる展開になるのではないでしょうか。
しっかし、上記の記事の加藤事務局長って、元財務官僚なんだよね。民主党はほんっと、財務省頼みだよなぁ……。



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2009年11月19日

みんな高い点数が欲しいんだなぁ……

【学力テスト1位「秋田に学べ」は大丈夫? 大学進学率は低迷】
http://sankei.jp.msn.com/life/education/081027/edc0810270037000-n1.htm

一年前の記事ですが、非常に面白かったのでご紹介します。「秋田県の全国学力テストの結果が非常に良い」とは聞いていたけど、底上げ政策が上手く機能している一方で、上位層が少ないという典型的な横並び分布になっているらしいんだな。


【秋田県 全国学力学習状況調査の結果(PDF文書) 】
http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1230082599259/files/201225.pdf

そして、↑の市町村毎の結果を見ると、これまた非常に驚くべき結果が出ているわけですよ。俺は「きっと秋田市とか大館市みたいな人口の多い市町村が、平均点の高い傾向が出てくるんだろうな」と勝手に思っていたのだけど、どうやら実情は逆で人口の少ない市町村の方が、良い結果が出ているっぽいんだよね。これについては、これ以上考察はしないけど、現場の先生方はこの事実をどう思っているのか興味深いです。


さて、現状では「小学校」「中学校」は義務教育であって、義務教育に要する費用は俺達の税金から出ています。しかも、俺たちは全員小学校や中学校には通ったわけなので、利用者負担の面から考えれば義務教育制度は非常に理に適っているように思えます。ただし、「高校」に関しては義務教育の制度から外れるので、秋田県の小学校や中学校みたいに「底上げ主義」ではなく、「伸ばす人を伸ばす」という方向に切り替える方が良いように、個人的には思います。

別に、何か根拠があって書くわけではないのですが、秋田県の大学進学率低迷の要因は、小学校や中学校ではなくて「高校」にあるような気がします。もちろん、学歴が無くても食べていける地域性やいろいろと事情があるのかもしれませんが、「底上げ主義」や「平等主義」を、「高校」にも持ち込んでいるのではないでしょうか?(おそらく、秋田県の教育委員会の方針なんですかね)


俺の直感的な感覚ですが、公立の学校の場合「小学校」「中学校」までは秋田県をモデルにしても良いとは思うのだけど、「高校」は秋田県ではなく別の県や別の高校を参考にする方が良いと思います。例えば、学生数に対して東大や京大入学者の多い茨城県とか、ここ数年で飛躍的に進学実績の良くなった公立高校(札幌南高校や富山中部高校)なんかが良いのではないでしょうか。(自分が東日本出身なので、西日本の教育事情はよく知らなくてすみません。)

ただ、最近高校時代の先生と一緒に飲んだのですが、その先生はこんな事を言っていました。
結局は「東大にどれだけ合格させたか」なんだよ。もちろん、東工大/一橋大/公立大学の医学部等々でも素晴らしいのだけど、教育委員会や外部からの評価は、結局その一点なんだよな。
う〜ん、現場の高校教師としては、多少の苦悩があるところなのかもしれません。



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posted by きらっち at 12:28| Comment(1) | TrackBack(1) | 時事

2009年11月17日

GDP発表と共に動き出した経済対策

【7〜9月期実質GDP、年率4.8%成長 設備投資増加に転じる】
http://www.nikkei.co.jp/keiki/gdp/20091116d3s1600i16.html

昨日、日本の2009年Q3のGDPが発表になりました。↑のように、前期比で1.2%の増加(年率換算で4.8%増加)の高い伸びになって万歳としたいところですが、素直に喜べる状況ではありません。というのも、実質GDPは前期比で1.2%増加ですが、名目GDPの方は前期比で0.1%減少になってしまっているからです。これはつまり、物の取引は活発になっているにもかかわらず、流れているお金の量が少なくなっているわけで、物価安が進んでいる事を意味しています。


【日本経済の次なる不安】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/31379515.html

ちょうど3ヶ月前に2009年Q2の日本のGDPについて考察したのですが、↑のエントリーで「今後はデフレを何とかしないといけないんじゃないの?」と懸念した通りの状況に、まさに今なっているわけです。


2009Q3_japan-realGDP.jpg
まぁ、とりあえず今日は2009年Q3の日本の実質GDPを見ていきましょう。↑に実質GDPの推移を出しました。
まずは、「最終民間消費支出」を見てみましょう。Q2に引き続き増加しています。まぁとりあえずは、前政権の補正予算(特に、エコポイントやエコカー補助)の効果が引き続き発揮されているのでは無いでしょうか?

【エコポイント、延長を検討…菅戦略相】
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20091117-OYT8T00736.htm

おそらく、↑のように民主党がエコポイントを継続すると発表したのも、この数字を見た上での判断でしょう。あれだけ前政権の補正予算を批判していたのに、実際の数字を見て手のひらを返してきたわけです。まぁ、責任ある与党としては妥当な判断じゃないでしょうか。

一方、「民間住宅」の下げの止まらない事が非常に心配です。住宅やマンションの購入は、家具等々の追加消費効果が大きいために、景気に大きく影響を与えるのですが、ここのテコ入れも何とかしなければなりません。

【菅氏、住宅版エコポイント検討 17日に補正で閣議決定へ】
http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009111601000250.html

↑そんな中で、こんな話も出てきました。間違いなくこれも、GDPの数字を見た上で決めたと思われます。GDPの発表と共にこんなニュースが出るなんて、民主党は良い意味でわかりやすいですね。(笑)

そして、「民間設備投資」もようやく下げ止まりました。おそらく、「最終民間消費支出」と「輸出」が伸びた事により、日本の全体の生産量が上がったからだと思われます。おそらく生産量が増加すればするほど、「民間設備投資」は今後も増えることが期待されるのですが、一方で生産量が増えれば増えるほど物価がどんどん安くなるわけで、ちょっとややこしい事態になりそうです。この辺りについては、もう少しデータが揃ってからいろいろと考察してみます。

「民間在庫品増加」も若干増えました。俺はてっきり、今回の「民間在庫品増加」はマイナスに転じる事になるのではないかと思ったのですが、逆にプラス幅が増えています。「最終民間消費支出」と「輸出」のプラス幅が大きくなっているにもかかわらず、在庫が減らない状況なので、「生産過剰」の状態が続いているとも解釈できます。確かに、こういう指標からもデフレの波を読み取ることができるのかもしれません。

「政府最終消費支出」は堅調に伸びていますが、「公的固定資本形成」は若干減少しました。Q4には、民主党が補正予算の執行を止めた影響も本格的に出てくるでしょうから、「政府最終消費支出」も「公的固定資本形成」もQ3よりは落ちるでしょう。どの程度、GDP減少に効いてくるかはわかりませんが、興味のあるところではあります。

そして、「純輸出」はQ2に引き続き回復しています。「輸入」の増加よりも「輸出」の増加が大きいわけで、これは非常に良い傾向です。とりあえず日本経済が正常の姿に戻るためには、「民間住宅」や「民間企業設備」が全回復するまでは、何とか「最終民間消費支出」「政府最終消費支出」「公的固定資本形成」「純輸出」でGDPを支えていかなくてはなりません。民主党は内需主導で日本経済を回して行こうとしていますが、現在の「最終民間消費支出」を支えているのは、国債発行を原資にした「エコポイント」や「エコカー補助」の政府支出なわけです。つまり逆に政府支出を削れば最後の砦は「純輸出」しかなくなるわけですが、さすがに民主党もそこまでの賭けはできないという事でしょう。結局、官僚に丸め込まれて、官僚の主導する経済対策をやっているように見えるのですが……。


いずれにしても、今後はデフレスパイラルを止めるために、政府は何かしらの手を打つ必要が出てくるでしょう。民主党が日銀と一緒に「量的緩和&大量の国債発行」という手を打てるのかどうかが非常に気になります。

それでは、後日に2009年Q3の各国の「GDP」と「国際収支」の比較をしてみたいと思います。



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posted by きらっち at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年11月13日

ウィルコム 次世代PHSを展開できず

【128kbpsのPCデータ通信が上限5985円で使い放題――ドコモの「パケ・ホーダイ ダブル」で】
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0911/05/news076.html

う〜ん、個人的にはこのニュースで俺は得するのだけど、企業の視点から見ると、このオプションプランによって他社から顧客を奪うのは無理なんじゃないの?
というのも、今までのdocomoのプランでは、13650円払わないとPC接続(7.2Mbps)を含めての定額にはなりませんでしたが、このオプション登場によって低速PC接続(128kbps)であれば5985円で定額になります。
ところが、すでにイーモバイルは4980円で7.2Mbpsの完全定額、ウィルコムは256kbpsで3880円の完全定額プランがあるので、docomoの128kbpsで5985円の定額プランはどういう客層に狙いをつけているのかイマイチ見えないんだよなぁ。
俺みたいに、「携帯電話はdocomo」「データ通信はイーモバイル」という感じで2社に契約している人で、「7.2Mbpsも通信速度は必要無い」という人であれば、今回のオプションプランでdocomoに一本化できて支出を絞れるメリットはあるのだけど、「そもそもウィルコムの3880円の方が安いじゃん?」という事になるわけだしなぁ……。


【ウィルコム、PHS+3.5G対応のスマートフォン「HYBRID W-ZERO3」発表】
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0911/11/news053.html

そして、ウィルコムも「通話はPHS、通信はdocomoの3G」という予想外の端末のプレスリリースがありました。これを見る限り、完全にウィルコムは次世代PHSは諦めムードっぽいですな……もっとも、ウィルコムは経営状態が大ピンチなので、当然次世代PHSがどうのこうのと言っていられる状態ではないはずなのですが……。
「HYBRID W-ZERO3」での通信値段設定がどうなるかは未発表なのですが、端末そのものは無線LANルータやBLUETOOTHルータにもなるので、モバイラーにとっては非常に魅力的な端末ではあります。


おそらくdocomoの戦略としては、7.2Mbpsの定額通信はMVNOの相手先であるウィルコムに任せる代わりに、低速接続は自社で担う腹積もりなのでしょう。一方、ウィルコムはdocomoの3Gネットワークを借りて7.2Mbps定額通信で顧客流出を止めつつ、少しずつ次世代PHSの基地局整備をしていくのでしょうか。docomoはまだしも、ウィルコムが生き残るためには、最低限で東名阪に次世代PHSが使えるようにして、「次世代PHS」「PHS」「docomoの3G」のトライバル端末のスマートフォンくらいをリリースしないと厳しいような感じがするのですが、果たしてそれまで資金が持つのか心配なところです。



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posted by きらっち at 11:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事

2009年11月12日

ボウリング業界の苦しい現状

この前、同年代の友達と一緒にボウリングをやってきたんだけど、その時に「一時のボウリング再ブームと比較すると、最近ボウリングって聞かなくなったなぁ」なんて話をしていたんだよね。後日に気になって、ボウリング産業の現状を調べたら非常に面白い資料が出てきたので、本日のエントリーで報告します。


service-sales_comparison.jpg
↑の画像が、対個人サービス産業の業種別売上高の対前年同月比です。今回は、「ボウリング」のみでなく「パチンコホール」「劇場・興行場、興行団」「遊園地・テーマパーク」「映画館」「ゴルフ場」の6サービスについて調べてみました。

まず一番気になる「ボウリング」ですが、平成18年1月から対前年同月比がほとんどマイナス推移している事がわかります。(辛うじて平成19年9月のみプラス)つまり、「ボウリング」の売上高がコンスタントに減少してるわけなので、明らかに「ボウリング」が廃れている事がわかります。自分が学生の頃は結構やってたけど今はほとんど行かなくなったので、確かにこの数字を見ると実感できるなぁ……。

そして、「劇場・興行場、興行団」「映画館」は月によって、非常に変動が大きいことがわかります。まぁ、この手の集客は作品に依存するだろうから、確かに安定しないのでしょう。
平成19年9月の「映画館」が急激に伸びたのは、前年にヒット作品に恵まれなかった一方で、HEROがヒットした事に起因するものでしょうか?この月は、「劇場・興行場、興行団」も急伸してるんだけど、何か関係あるのかな?

「遊園地・テーマパーク」は、平成21年を除いて平成18年〜平成20年までは、基本的に対前年比がプラス基調である事がわかります。ところが、平成21年4月から8月までマイナス基調が続きました。ちょうど同じ時期に高速道路1000円が始まったので、高速道路1000円で行楽に行く家族連れに客足を奪われたという事が濃厚です。高速道路1000円は、こんなところにまで影響があるのですねぇ。ただし、秋のシルバーウィークでは逆に急伸したことが読み取れます。「GWはむちゃくちゃ渋滞したので、シルバーウィークは近場の遊園地に行くか」って心理ですかね?(笑)おそらく、10月以降は再びマイナス基調が続くと思いますが。

「ゴルフ場」は、2月以外はわりと安定してるのですが、なぜ2月だけが急伸したり急減するのかよくわかりません。天候の影響?

「パチンコホール」は、非常に安定している事がわかります。俺が非常に気になるのは、「パチンコホール」は景気の影響を如実に反映している可能性がある事です。このグラフ上で言うと、平成18年1月〜平成19年10月が景気拡大期で、それ以外の期間が景気減速期なのですが、パチンコホールの売上高の対前年同月比が下降傾向を示しているのが、まさに平成18年1月〜平成19年10月なんですよ。何かの偶然かな?(笑)
しかも平成21年8月からは、再びパチンコホールの売上高の対前年同月比が下降傾向を示しているのですが、つまりここ最近の景気状況が上向いているという事を示唆するものなのでしょうか?ちょっと今後も追いかけてみたくなる指標です。



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posted by きらっち at 19:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事

2009年11月11日

良くも悪くも目立つ人

【郵便局で「婚活支援」 亀井氏「斬新アイデア」披露】
http://www.j-cast.com/2009/11/10053555.html

【亀井氏「役人は優秀ですよ」 官僚への姿勢も「閣内不一致」】
http://www.j-cast.com/2009/11/06053399.html

【外国人地方参政権、亀井氏が慎重姿勢 「時間をかけて」】
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091107/stt0911071638001-n1.htm

【亀井金融相「特別会計に切り込むべきだ」 財源「20兆、30兆はすぐ出る」】
http://www.j-cast.com/2009/10/16051796.html

やはり、今の鳩山内閣の中では、この亀井大臣は良くも悪くも強烈なアクセントになってるよなぁ。いろんな記事を見る限り、この人の基本的な思想は、

1.大きな政府を推進
2.国債発行について積極的
3.役人とは「対立」でなく「上手く使う」

というところがあげられるでしょうか。さらに今までの亀井大臣の主張(「モラトリアム法案」や「国債発行」等々)からは、彼がリフレを狙っているのではないかと思われます。

確かに、デフレ脱却のために「量的緩和の拡大」&「国債発行」によって政府支出を増やして、日本の需要を増やしつつ、今後経済成長の期待できる分野に投資するという事は、合理的なような気もします。ただ、もし亀井大臣の狙いがそういう事なら、「大きな政府を推進」というポリシーを非常に疑問に思うのは俺だけでしょうか?
というのも基本的に「大きな政府」は、市場介入を行ったり、規制を作ったり、政府が競争性の少ない事業を直接実施したりと、経済成長を阻害する要因を作ってしまいます。経済成長という側面では、「むしろ小さい政府を進める方が理に適ってるのではないか」とも思わなくもありません。もっとも、今みたいに緊急事態の局面では、民間単独ではリスクを背負いきれないので、ある程度国が前面に出て市場介入や規制を作る事も必要だろうとは思いますが。


しかし亀井大臣は、むちゃくちゃ言うけど落とし所はわきまえていて、それなりに計算高い感じを受けます。しかも、さすがに官僚出身の方なので、役人の悪口を言っているところをあまり聞かないですね。↓の記事のように、どこかの大臣とは大違いですな。(笑)

【菅国家戦略相「霞が関は大バカ」…講演で批判】
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091031-OYT1T00859.htm

ちなみに↑の記事には出てないけれど、「経済効果より突っ込んだ話になった途端に大臣の理解が追いつかなかった」なんてオチがあるんじゃないかとも思ったり……



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2009年11月09日

日米金融機関の「投資」に対する考え方

今日は、日本と米国における金融機関のキャッシュフローについて考えたところを書こうと思います。


japan_cashflow1.jpg
まずは日本についてですが、失われた10年以前の通常時のキャッシュフローについて書いた図が↑です。銀行等の金融機関は、俺達顧客の貯金を何かに投資したり誰かに貸したりして資金運用をしているわけです。そこで、今回は「何に投資したらどんな事が起こるのか」という視点で整理してみたのですが、とりあえず今回は「日本国債」「日本の株・債券」「外国の株・債券」「資源」の4種類にカテゴライズしました。
まず「日本国債」に投資する場合ですが、これは円市場の商品なので為替レートには影響を与えません。さらに、国内経済への影響は時の政権の政策次第です。前政権みたいに公共事業をバンバンやるのであれば景気を底支えできますが、現政権みたいに家計支援に重点を置くならば家計の消費次第という事になります。次に「日本の株・債券」に投資する場合ですが、これは当然企業の資本が増えるわけなので、国内の経済活動が活発になります。そして「外国の株・債券」と「資源」に投資する場合ですが、これは円市場ではなくなるので円安を招きます。またお金が国外に出てしまう事になるので、国内経済にはほとんど寄与しません。
失われた10年以前は、今ほど海外投資が盛んだったわけではないので、日本の金融機関は主に日本国債や日本の株・債券等の国内投資で、顧客から預けていた資金を回していた事になります。

japan_cashflow2.jpg
さて、それでは次に「失われた10年時の日本のキャッシュフロー」を↑の画像で見てみましょう。
失われた10年では、景気が上向かない中で家計預金額が一気に100兆円程度増えました。その結果、日本の金融機関もさらに何かへ投資する必要があったのですが、ちょうど政府が景気対策として国債をバンバン発行してた事もあり、「日本の株・債券」を回避して「日本国債」を国内金融機関は購入していました。一方で当時は円キャリートレードが流行していた事や、円安誘導政策(特に日銀砲)が取られていた影響で、日本の海外投資が盛んになりました。この時期の国内金融機関の投資は、本来であれば投資すべき「日本の株・債券」に全然投資されずに日本国債や外国投資へお金が回ったのが、大きな問題であったと言えます。
まぁでも当時の日本は、車や電子機器等の輸出産業の輸出拡大をエンジンにして日本経済を立て直していたので、当然政府は「円安」に誘導しようとするわけです。ところが、それが結果的に「日本の株・債券」へ資金が回らない一つの要因になっていたのだと思われます。「日本を投資立国に導きたい」というのであれば、確かにこの手法もアリだったかもしれませんが、現政権はその辺をどう考えているのでしょうか。今までの経済閣僚の発言から察するに、民主党はおそらく内需主導の経済構造を作りたいと思われますが、だとすれば「外国への投資に課税」とか「円高誘導」等、外国への投資を抑える政策を打つのかどうか、興味のあるところです。


us_cashflow1.jpg
そして、↑に最近のアメリカのキャッシュフローについても見ていきましょう。現在のアメリカも、失われた10年時の日本と同じく家計の預金額が急増中です。ただ、日本の投資と違う点は「ほとんどの資源がドル建て市場」という事です。よって、日本の場合は「円高」「円安」によって資源投資に大きな影響を与えますが、アメリカの金融機関はその辺の影響がほぼありません。
現在のアメリカは米国債が発行できず、バランスシート不況のせいで米国の株や債券への投資も伸び悩んでいて、しかも財政赤字や超金融緩和政策によってドル安が進んでいます。よって、アメリカからの(特に「経済成長率」「金利」の高い発展途上国への)国外投資が増えるのではないでしょうか?もっともアメリカの場合は、ドル安を嫌ってドル資金を国内に滞留させようとしても、これ以上の米国債発行はありませんし、バランスシート不況に入っているので米国株や債券もそもそも発行が少ないとなると、必然的に資金は資源に向かってインフレを起こしそうな気もするのですが……。

アメリカは、「(インフレを避けるために)なるべく国内資金を海外に投資しなければならない」という条件の下で、アメリカ本土の景気も上昇させなくてはならないわけで、こりゃ確かにアメリカの景気回復までには長時間かかるだろうなぁ、と思います。



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posted by きらっち at 21:03| Comment(0) | TrackBack(1) | 経済

2009年11月08日

ランダムウォークとその周辺@

数学の確率や統計の分野で「ランダムウォーク」と呼ばれる分野があります。このランダムウォークは、「賭け事のみならず、株価や為替相場に応用の可能性がある」という事で、経済関係の研究者でも研究対象になっているのだけど、今日を含めて2回か3回程度に分けて、このランダムウォークの基礎になるところを説明しようと思う。

さて、今日はまず1次元のランダムウォークと逆正弦法則について説明しよう。第一回目からで申し訳ないのだが、早速人間の直感がいかにいい加減かを思い知らされる事になるでしょう。


randam-walk0.jpg
とりあえず最初は「1次元ランダムウォークとは何か?」という事だけど、↑の画像のように数直線があって、まずは「0」の場所に自分がいるとしよう。ここで、サイコロ(ここでは細工の無い公平なサイコロを考える)を振って奇数が出たら+1(→)に動き、偶数が出たら-1(←)に動くとする。つまり、右か左かどちらに行くかはわからないけれど、ランダムに隣へ動き続けることになるわけだ。これが「ランダムウォーク」と呼ばれるもので、例えば右に行くことが「コイントスで表が出る」とか「株価が上がる」事で、左に行くことが「コイントスで裏が出る」とか「株価が下がる」とかに応用できるわけだ。

さて、まずはこのランダムウォークだけど、2回、3回、4回とサイコロを振った後の事を考えてみよう。それぞれのサイコロの目の出方とサイコロを振り終わった後の自分の位置を考えると、以下のようになる事が考えられる。

【2回サイコロを振る場合】
1.→ →(+2の場所に移動)
2.→ ←(0の場所に移動)
3.← →(0の場所に移動)
4.← ←(-2の場所に移動)

2回サイコロを振った後に
「+2」の場所にいる確率1/4
「0」の場所にいる確率2/4
「-2」の場所にいる確率1/4


【3回サイコロを振る場合】
1.→ → →(+3の場所に移動)
2.→ → ←(+1の場所に移動)
3.→ ← →(+1の場所に移動)
4.→ ← ←(-1の場所に移動)
5.← → →(+1の場所に移動)
6.← → ←(-1の場所に移動)
7.← ← →(-1の場所に移動)
8.← ← ←(-3の場所に移動)

3回サイコロを振った後に
「+3」の場所にいる確率1/8
「+1」の場所にいる確率3/8
「-1」の場所にいる確率3/8
「-3」の場所にいる確率1/8


【4回サイコロを振る場合】
1.→ → → →(+4の場所に移動)
2.→ → → ←(+3の場所に移動)
3.→ → ← →(+2の場所に移動)
4.→ → ← ←(0の場所に移動)
5.→ ← → →(+2の場所に移動)
6.→ ← → ←(0の場所に移動)
7.→ ← ← →(0の場所に移動)
8.→ ← ← ←(-2の場所に移動)
9.← → → →(+2の場所に移動)
A.← → → ←(0の場所に移動)
B.← → ← →(0の場所に移動)
C.← → ← ←(-2の場所に移動)
D.← ← → →(0の場所に移動)
E.← ← → ←(-2の場所に移動)
F.← ← ← →(-2の場所に移動)
G.← ← ← ←(-4の場所に移動)

4回サイコロを振った後に
「+4」の場所にいる確率1/16
「+3」の場所にいる確率1/16
「+2」の場所にいる確率3/16
「0」の場所にいる確率6/16
「-2」の場所にいる確率3/16
「-3」の場所にいる確率1/16
「-4」の場所にいる確率1/16

ここでは、2回〜4回までサイコロを振る事しか考えていないけれど、一般的にn回サイコロを振った後に「0」付近に移動する確率が大きそうな気がしますね。確かにその通りで、スタート地点が「0」でサイコロを振るたびにランダムに左右へ動くので、当然「0」近くにいる確率は高くなりそうな気はします。ただし、サイコロを振る回数が100回とか1000回くらいになると、↓のようにサイコロを振った後に「0」近くにいる確率は低くなって、確率分布がだんだん正規分布に従う事になります。(ちなみに、この事象はまさに二項分布そのものです。)
randam-walk1.jpg


さて、ここまでは高校の数学で習っているので、直感的に理解できる人も多いとは思いますが、次は「n回サイコロを振って、n回移動する中でそのうちどのくらいの確率で「0以上の場所にいるか」」を考えます。ちょっとわかりにくいので、具体例として4回サイコロを振ること(n=4)として、それぞれ1.〜G.でどのように移動するかを見てみましょう。

【4回サイコロを振る場合】
1.→ → → →(1 2 3 4)「0以上の場所にいる確率」は4/4
2.→ → → ←(1 2 3 2)「0以上の場所にいる確率」は4/4
3.→ → ← →(1 2 1 2)「0以上の場所にいる確率」は4/4
4.→ → ← ←(1 2 1 0)「0以上の場所にいる確率」は4/4
5.→ ← → →(1 0 1 2)「0以上の場所にいる確率」は4/4
6.→ ← → ←(1 0 1 0)「0以上の場所にいる確率」は4/4
7.→ ← ← →(1 0 -1 0)「0以上の場所にいる確率」は3/4
8.→ ← ← ←(1 0 -1 -2)「0以上の場所にいる確率」は2/4
9.← → → →(-1 0 1 2)「0以上の場所にいる確率」は3/4
A.← → → ←(-1 0 1 0)「0以上の場所にいる確率」は3/4
B.← → ← →(-1 0 -1 0)「0以上の場所にいる確率」は2/4
C.← → ← ←(-1 0 -1 -2)「0以上の場所にいる確率」は1/4
D.← ← → →(-1 -2 -1 0)「0以上の場所にいる確率」は1/4
E.← ← → ←(-1 -2 -1 -2)「0以上の場所にいる確率」は0/4
F.← ← ← →(-1 -2 -3 -2)「0以上の場所にいる確率」は0/4
G.← ← ← ←(-1 -2 -3 -4)「0以上の場所にいる確率」は0/4

「4回サイコロを振って16通りある出方で」
4回の移動後の位置が全て0以上になる確率6/16
4回の移動後の位置が3回で0以上になる確率3/16
2回が0以上になる確率2/16
1回が0以上になる確率2/16
0以上にならない確率3/16

いずれにしても、4回全てが0以上になる確率が6/16と高いわけです。今はn=4の時を考えましたが、nが大きくなるとこの傾向が顕著に出てきて、↓のような分布になります。
randam-walk2.jpg
つまりこれは、コイントスの賭けを何度もした場合、最終的にはどちらかが勝ち(負け)に偏る確率が大きい事を意味しています。これは非常に面白い現象で、要は「今は大きく負けているけど、そのうち取り返せるはず」というギャンブラー特有の心理が、確率計算によって物の見事に否定されている事になります。

「いやいや、1/2で勝負のつくゲームだと期待値はプラスにもマイナスにもならないのではないか?」とか、「さっきの正規分布と矛盾してるのではないか?」と思う人もいるでしょう。俺も、大学で最初にこれを習ったときにはそう思いましたが、当時の先生はこのように説明してくれました。
コイントスは表と裏の出る確率は共に1/2なので、期待値としては勝ち負けがイーブンになると君は思っているのだろう。しかしそれは、「ゲームを一回で終わらせた場合の平均値」という事で、多くの人が誤解している部分だ。確率論で言うところの「期待値が0」という意味は、無限回数のゲームを行えば「勝ち負けの差/ゲーム数」が0になるということに過ぎないわけだよ。勝ち負けの差もゲーム回数が増加するほど大きくはなるが、ゲーム回数に比べればその増加スピードは非常に小さいだけだ。

と、ばっさり切られた記憶があります。ちなみに、この事を確率用語で「逆正弦の法則」と言います。賭け事が好きな人は、覚えておいた方が良いのではないでしょうか。


さて、次回(来週くらいですかねぇ)は1次元ランダムウォークではなく、2次元と3次元ランダムウォークについて説明します。



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posted by きらっち at 02:10| Comment(4) | TrackBack(0) | 科学

2009年11月07日

マニフェストに書かれていない事が何故突然に?

【定住外国人・地方参政権付与、民主がマニフェスト記載見送りへ】
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090531/stt0905311938005-n1.htm

【民主・山岡氏、外国人参政権法案提出の意向 国会延長も】
http://www.asahi.com/politics/update/1106/TKY200911060224.html

民主党はあれだけマニフェスト実現に拘っているくせに、マニフェストへの記載を見送った外国人参政権付与は、今国会会期を延長してまで法案を通そうとしてるみたいですね。今までの彼らのスタンスを考えると、「そんな法案よりもマニフェスト達成のために出さなくてはいけない法案がたくさんあるんじゃないの?」と思うのは、きっと俺だけではないと思うのですが……。そもそも、「外国人参政権付与」がそこまで緊急の案件なんですかねぇ。
何せ今の首相には、お金の出どころのよくわからない偽装献金の問題があるので、これだけ「外国人参政権付与」をやりたいのも、ひょっとすると何か裏があるのでしょうか?普通この手の問題は、時間をかけた議論が必要なのでしょうけど、何でまたこんなに焦ってるんだか……。


【3兆円補正執行停止、GDPを0.2%押し下げ 菅副総理】
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20091106AT3S0600806112009.html

【09年度補正予算:執行停止分、2次補正に 政府検討】
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091106dde001010025000c.html

さらに次は、執行停止した1次補正予算をマニフェスト達成のための財源にするのではなく、2次補正の財源にするというニュース。おいおい、「子供手当て」や「農家の戸別補償」等々の財源はどうするつもりなんだよ?(笑)そもそも、GDPを下げたくないのなら補正予算の執行停止なんてしなければよかったのに。
いずれにしても、今になって民主党のやろうとしていることは、当初の目的とは違う目的で話が進んでるように見えます。最初の「外国人参政権付与」のニュースもそうだけど、どうやら民主党は突然、「マニフェスト実現」を棚上げにするかと疑いたくなるような方針を打ち出していますしね。


う〜ん、今日のこの2つのニュースは今までの民主党の立ち位置を考えると、何か腑に落ちないんだよなぁ。一体誰のどういう意向が働いているのかわかりませんが、民主党がどこに向かおうとしているのか、一国民として非常に心配です。



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posted by きらっち at 00:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治

2009年11月06日

GDP 韓国・米国の2009年第3四半期は?

@【GDP 韓国・米国の2009年第2四半期は?】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/31062186.html

本日は、↑@のエントリーの続きで2009年Q3の韓国と米国のGDPの詳細を見ていきましょう。


us-gdp2009q3.jpg
まずは、↑のアメリカのGDPについてみていきましょう。2009年Q3の米国GDPは、ついにプラスとなり年率換算の経済成長率は3.53%と、数字としてはかなり良いものが出ています。さてそれでは、それぞれ個別項目についてみてみましょう。
まず最終民間消費支出ですが、前期比で750億ドル程度の増加となり、前期比1100億ドル程度のGDP増加に最も寄与しました。ここでは、最終民間消費の深堀はしませんが、景気対策法の効果がかなりあるものと思われます。ただ、アメリカは失業率が上昇中なので、政府の景気対策が無い限りは普通に考えると最終民間消費がそんなに増加するはずはないわけですよ。なので、最終民間消費支出については、景気対策法の効果がいつまで保つのかが鍵となるわけです。ところが、一部の施策(代表的なところだと「エコカー補助」)についてはすでに終了しているので、Q4の最終民間消費支出がどうなるのか注目です。もしQ4で最終民間消費支出が減少するようなら、すぐにでも世界経済の二番底が見えそうだよなぁ……。
民間住宅については、2009年Q3でようやく下げ止まり、Q2で底を打ったように見えます。ところが長期金利が上がり始めた傾向があるので、果たしてQ4以降も上昇気流に乗れるかどうかはよくわかりません。
民間企業設備投資については、↑@のエントリーで「Q2で底を打つかもしれない」と書きましたが、この予想は外れてしまいました。とは言うものの、民間在庫変動のマイナス幅が縮小しているので、今度こそQ3で底を打つ可能性が高いと思われます。
政府最終消費支出の方は堅調ですが、米国債がこれ以上発行できない状態が続くとなると、政府最終消費支出が今後は減少するような気がします。しかし、↑@のエントリーでも書きましたが、7820億ドルの景気対策法を考えたら、もう少し政府支出が増えていてもいいのになぁと思います。
そして、純輸出の方はマイナス幅が下げ止まりました。ここでは、輸出額と輸入額は掲載していませんが、それぞれ前期比で4.7%増と6.4%増となっていて、アメリカの景気が回復しているという兆候が読み取れます。もっとも、アメリカの産業構造を考えると、よほどドル安にならない限りは、景気が良くなれば良くなるほど貿易赤字が進むわけですが……。


skorea-gdp3009q3.jpg
そして、次は↑の韓国のGDPを見てみましょう。韓国はQ2に引き続いて、Q3も年率換算で2桁の経済成長率を達成した上に、GDP上ではリーマンショック前の水準を取り戻したわけで、他国からみたらアンビリーバブルな状況だと思われます。
ところが、↑の表を見てみると非常に興味深い事がわかります。2009年のQ2とQ3を見比べるとGDPが8兆ウォン程度増加している事がわかるのですが、何が支配的な要因で8兆ウォンも増加しているのかとGDPの内訳を見てみると、「最終民間消費支出」「設備投資」両方合わせて前期比で3.5兆ウォン程度増加しているのですが、残りの「建設投資」「政府最終消費支出」「純輸出」は前期比で2.5兆ウォン程度減少しています。つまり、非公表になっている「無形固定資産」と「在庫変動」で7兆ウォン程度増えていないと計算が合わないわけです。「無形固定資産」を見ると、年によってそこまで変動が無いので、おそらくは「在庫変動」が7兆ウォン程度の増加に寄与している事だと思います。
ここでは、2009年Q1〜Q3の「無形固定資産」が4500(10億ウォン)だと仮定して、「在庫変動」をGDPから逆算すると、

Q1:-5676
Q2:-10570
Q3:-4706
(単位は10億ウォン)

と推測されるわけです(↑の表中では赤字で記載)。いずれにしても、2007年Q2から溜め込んだ在庫変動分の総額が20兆ウォンぐらいあって、2008年Q4からの在庫変動分の総額が-20兆ウォンぐらいあるわけなので、そろそろ韓国は増産モードに切り替えるのではないでしょうか?これによって、生産量が増えれば失業率低下も期待できそうです。
韓国の今後の不安要素は、すでに政府支出が減少している事です。もともと韓国は、景気対策のため今年の前半に予算執行を集中させた事により、Q3はすでに「建設投資」も「政府最終消費支出」も減少しました。この傾向は引き続きQ4も続きますので、この減少分を他の何かでカバーできるかどうかが問題となります。とは言うもののおそらく韓国のQ4では、在庫変動が引き続き大きく改善し、生産が増えることにより設備投資も増えるため、しばらくは好循環が続きそうな気がします。この状況を維持するために、韓国政府は引き続きウォン売りドル買いの為替介入を続けるという戦略なのでしょう。
韓国は外貨が尽き掛けてデフォルトしかけていたところを、「ウォン安を逆手にとって貿易黒字を拡大させ、しかもウォン安を維持するためにウォン売りドル買いで外貨を増やす」という一発逆転の離れ業をやってのけたわけで、おそらく韓国にとっては計画通りのシナリオだったのでしょう。まさかここまで上手くいくとは、俺も予想外でした。


そして、再来週はいよいよ日本のQ3のGDPが発表です。日本のQ3のGDPが発表されたら、国際収支を含めて各国比較をやってみようかと思います。



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posted by きらっち at 00:01| Comment(10) | TrackBack(0) | 経済

2009年11月05日

学力重視にしたところで、レベル低下が防げるのかなぁ……

【高校入試:公立高「学力」重視へ 広がる推薦廃止 中学生のレベル低下背景】
http://mainichi.jp/life/edu/news/20091104ddm041100054000c.html

確かに、「農業科」とか「情報処理科」みたいな職業科に関しては、通常の試験では見れない専門知識を面接等で問う事ができるのでまだしも、大学進学を目指す「普通科」の場合は中学時代の勉強の到達度を調べる上で、「試験」っていうのは欠かせないような気がするなぁ。
そもそも、俺の中学時代は成績も相対5段階評価だったので、「推薦入試の場合は内申書が物を言うので、レベルの高い中学校での「5」と、そうでもない中学校での「5」を、同じ土俵の上で評価するなんて不公平じゃないですか?」と当時の中学の先生に聞いた記憶がある。内申書もあくまで参考情報程度にしておいて、主に試験の点数で決める方が、公平性の確保の観点からは良いと思うんだけどなぁ。(この場合、内申書は最悪でもテスト点数の良い問題児が入学してしまう事になるけど、そんな例外的な学生なんかそんなにたくさんいるわけでもないだろうしねぇ。)

という事で、久しぶりに投票をとってみましょう。みなさんは、どう考えますかね?




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posted by きらっち at 02:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事

2009年11月03日

金利差拡大によるバブル不安

【ノルウェー利上げ 金融危機後、欧州で初】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20091029AT2M2803528102009.html

【豪、2カ月連続で0.25%利上げ 年3.5%に】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20091103AT2M0301M03112009.html

いよいよ不況脱出の出口戦略(利上げ)を実施に移す国が出てきました。そもそも利上げのメリット/デメリットはいろいろとあるわけですが、とりあえず思いついたものから書いていくと

【海外投資】
利上げ:海外から国内への投資が増える→通貨高
利下げ:国内から海外への投資が増える→通貨安

【生産】
利上げ:借入が少なくなる→生産減
利下げ:借入が多くなる→生産増

【物価】
利上げ:生産減→インフレ抑制
利下げ:生産増→インフレ促進

【キャッシュフロー】
利上げ:株や債券よりも貯蓄に向かう→株安&利回り上昇
利下げ:貯蓄よりも株や債券に向かう→株高&利回り減少

大体こんなところでしょうか。これらの効果により、景気が良いにもかかわらず利上げをしないと、そのうちインフレや株高を抑えられなくなってしまい、「庶民の生活が苦しくなる」&「バブル崩壊」等々を引き起こす事が推測できます。
とは言うものの、日本は「失われた10年」でゼロ金利を続けたにもかかわらず、「生産増」「インフレ促進」「株高」は達成できず「通貨安」「利回り減少」しか達成できませんでした。これの原因はいろいろとあるのですが、いずれにしても今までの経済学の教科書に書いてある通りの政策では、景気回復ができなくなってしまったわけです。(この辺りの要因についても、後日にいろいろと書く機会があるでしょう)


bankrate.jpg
今日はとりあえず、↑の世界各国の政策金利推移を見てみましょう。
一番最初に目が行くのは「ブラジル」です。ブラジルの現在の経済状況がわりと良いのですが、「レアメタル産出」「安い人件費」「広大な土地(いずれ世界の食料庫になるのではないかと言われている)」などなど非常に投資先としては魅力である上に、金利もべらぼうに高いため、これからますます注目されることかと思います。
一方、2008年1月当初からずっと低空飛行を続けているのが日本です。リーマンショック以降、各国との金利差が随分少なくなってきて円キャリートレードも随分解消されたものと思われますが、当然その分円高も進んでしまいました。むしろ日本としては「円安」を維持したいので、「当面はゼロ金利を維持して各国金利の上がるのを待つ」という戦略をとるのがベストでしょうか。おそらく、米国も欧州もそう考えていると思われます。
ただ、そうすると日欧米の資金が一気に政策金利の高い国に流れる可能性があるかもしれません。特に米国や欧州各国はこれ以上国債を発行できないために、政府支出で自国景気を支えられなくなる可能性があります。そうすると、米国や欧州は「海外投資でどこかの国にバブルと通貨高を作り、適当なところで資金を自国に戻して儲けを得る」というビジネスモデルを作らないか不安です。これをやられると、次々に新興国がバブル崩壊を起こすために世界経済の安定にはまったく寄与しません。

米国や欧州とは違い、日本にまだ救いがあるのは政府支出(さらなる国債発行)ができる事です。もちろん、通貨高の国に投資するのも良いかもしれませんが、それだと日本国内の生産増にはまったく寄与しないわけで、日本の景気は良くなりません。「海外への投資をするな」とは思いませんが、できるだけ自国に投資する方が日本の失業率上昇も抑えられるのではないでしょうか。


いずれにしても政策金利を上げる国が増えて、欧米との金利差が広がり続けると、どこかの国でバブル景気が発生しないか心配です。



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posted by きらっち at 23:56| Comment(3) | TrackBack(1) | 経済

2009年11月02日

マネーストック(マネーサプライ)とは?

@【日米欧のマネタリーベース推移】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/32919107.html

先日、↑@のエントリーでマネタリーベースについて説明しましたが、本日はマネーサプライ(今は「マネーストック」と呼ぶ方が一般的ですが)について説明しましょう。取り急ぎ、今日はアメリカのマネーストックの推移を考察してみます。そして、後日に日米欧のマネーストックについて比較みる事としましょう。

まず、先日のエントリーでは、「マネタリーベースとは、日銀が社会に供給するお金の総額」と説明しました。一方、マネーストックとは一言で書くと「非金融部門(一般企業、個人、地方公共団体など)の預金資産残高」です。つまり、マネーストックは非金融部門における金融資産の一部を表しているものと言えます。
さて、一口で預金資産残高と言っても対象となる預金には、「普通預金」「当座預金」「定期預金」等々の様々あります。マネーストックの統計では、それぞれの預金の流動性をもって以下のように「M1」か「M2」にカテゴライズされます。

M1:「通貨」「小切手」「要求払預金」「当座預金」
M2:「貯蓄預金」「定期預金」「リテール預金」であり、
M2 = 貯蓄貯金+定期預金+リテール預金+M1となります。

通常、M2が物価やGDPと連動する傾向があるため、このM2が世界で最もポピュラーなマネーストックの指標となっています。(ちなみに、日本の場合はM3が一番ポピュラーなんですけど、これについては次回以降に説明します。)
ちなみに、「通貨」は現ナマ、「要求支払預金」はいつでも引き出せる預金(普通貯金)、「当座預金」は利子の付かない預金(主に企業等の小切手支払いに使用される預金)、「貯蓄預金」は普通預金よりも利子が高いけれど残高が基準額よりも低くなるとペナルティーの課される預金、「リテール預金」は個人向けの外貨預金や投資信託等の預金なんだよね。(もうすぐ30才になるのに、不覚にも「貯蓄預金」と「リテール預金」なる存在を今日初めて知りました……。)


us_money-stock.jpg
という事で、実際にアメリカのマネーストックについて、↑の表中の数字を追ってみましょう。↑の表は、リーマンショック前の2008年5月から2009年9月のマネーストックの推移です。まずM2についてみると、この17ヶ月間で6.6兆ドル程度増えたことがわかりますが、2009年に入ってからはわずか1兆ドルしか増えていないので、アメリカ経済の停滞していることが読み取れます。しかも「定期預金」「リテール預金」が減少していて、「貯蓄預金」や「要求支払預金」が増えている事から、アメリカの非金融部門は安全性(流動性)の高い預金へ資金シフトが起こっているわけです。
まさに日本が「失われた10年」で経験した事(金融資産がどんどん安全性の高い普通預金等に資金シフトした)とまったく同じ状況が、アメリカのマネーストックでも起きているわけですよ。当時の日本政府は、日本国債をバンバン発行して銀行に集中する資金を吸い上げていたのですが、先月アメリカ政府は法律で定められている米国債発行上限額に達してしまったために、これ以上の米国債発行はできません。


【米金融、破綻100社超す 17年ぶり高水準】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20091026-OYT8T00379.htm

【中小企業の連鎖倒産も 米CIT破綻】
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/091102/fnc0911021035007-n1.htm

しかもタイミングの悪い事に、↑のようなニュースも出てきました。いずれにしても今の米国は「資金需要があるにもかかわらず、あえて米国債を発行しなかった」という事例を作ってくれました。これが吉と出るか凶と出るか、日本はしっかり見ておく必要があるでしょう。もしかしたら「下手に国債発行を止めると、日本は余計に苦しむ事になる」という事を勉強できるのかもしれません。


そう言えば、@のエントリーで「アメリカのマネタリーベースは、リーマンショック前と比較して2倍になった」と書きましたが、マネーストックの方は2倍になったわけではありません。これは「マネーが金融部門から非金融部門に思ったほど流れていない」という事を示唆しているわけです。なおかつこの状況で米国債も発行できないとなると、アメリカの金融部門は「海外投資」や「資源投資」に手を出すのが自然な推測だと思うのですが、この推測が正しいとすると間違いなくドル安が進むでしょうねぇ……。

それでは次回(来週を予定)、日本と欧州のマネーストックも出してみて、日米欧の比較してみたいと思います。



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posted by きらっち at 23:56| Comment(2) | TrackBack(0) | 経済