http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/32919107.html
A【マネーストック(マネーサプライ)とは?】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/33366638.html
先日は、↑の@Aで「マネタリーベース」と「マネーストック」について説明しました。おさらいのために書いておくと、
「マネタリーベース」=日銀が社会に供給するお金の総額
「マネーストック」=非金融部門の預金資産残高
でした。
今日のエントリーでは「中国」の「マネタリーベース」と「マネーストック」について考えてみましょう。(Aの続き物として日欧のマネーストックを書くのを、すっかり忘れていました。これについては、また後日に書こうかと思います。)

という事で、↑が中国の2007年1月〜2009年11月の「マネタリーベース」と「マネーストック」になります。
まずは、「マネタリーベース」の方から見てみましょう。中国の「マネタリーベース」は、2007年1月に280億元程度だったものが、2008年1月に370億元、2009年1月に410億元と急拡大している事がわかりますが、中国の2007年経済成長率(名目GDP)が21%、2008年経済成長率(名目GDP)が17%程度だった事を考えると、確かにそのくらい増えてもおかしくはないかもしれませんね。
一方で「マネーストック」の方は、2007年1月に35兆元程度だったものが、2008年1月に42兆元、2009年1月に50兆元、2009年11月に60兆元と、わずか3年も経たない間に1.7倍にまでなっていて、「マネタリーベース」の伸び率よりも「マネーストック」の伸び率が非常に大きい事がわかります。マネーストックが伸びるという事は、「金融機関から経済全般へ供給されている通貨総量の増加率が大きい」という事を意味するので、単純に考えれば景気が良い(フローが良くなっている)事を意味するのですが、この伸び率が大きすぎると通貨供給量が過剰という事になり「インフレ状態」という事になります。ところが中国の場合は、2009年2月〜2009年10月の消費者物価指数は対前年同月比でマイナスを記録しており、ようやく2009年11月でプラスに戻ったところなので、「マネーストックの伸び率」と「消費者物価指数の伸び率」の整合がどうにも取れていないわけです。これって何を意味するのですかね?
【中国の人民元建て新規融資やマネーサプライが急増、景気の底打ち期待高まる】
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK833044420090212
その答えを示唆するのが、↑の記事です。中国のマネーストック(マネーサプライ)の急増は、「中国の民間銀行が中国政府の要請で貸し出しを積極化している」との趣旨が書いてありますね。マネーストックが急増した原因は、確かに銀行貸し出しの増加に起因するものなのでしょう。問題は「貸し出したマネーが何に使われているか?」という事だと思います。普通に考えれば、この貸し出し金が民間に広く融資されれば、中国国内の需要が強化されるため「消費者物価指数」が9ヶ月間もマイナスになる事はなかったのではないでしょうか。
あまり当たって欲しくない想像ですが、中国の民間銀行の貸し出したお金の大半が、「株」や「不動産」に投機されているとすれば、「マネーストックの急増」「消費者物価指数の低迷」という通常では相反する2つの指標の動きを説明できそうな気もします。(もしこの想像が正しいとすれば、中国は自身の政策によりバブル崩壊への第一歩を踏み出した事になりますが……)
実際のところ今後の中国がどうなるのかはわかりませんが、今日のエントリーは「中国経済に何らかの歪があらわれている一例」と言えるのかもしれません。
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