本日のエントリーですが、「現在の日本がどの国から外貨を稼いでいるか」という分析をした上で、それを踏まえた上で「今後日本はどのように外貨を稼げるのか」を考えてみましょう。

本ブログをご覧の皆様であれば、日本の「対外的なお金のやり取り」については、何回も「国際収支」を見てきたかと思います。今一度、↑の日本の国際収支を見てみましょう。
この表からは、日本の経常収支がプラスである事(外国との物やサービスの取引で儲けている)、資本収支がマイナスである事(日本が外国に投資している)、外貨準備高が増え続けている事がわかります。
ただしこの表からは、日本がどんな国から稼いだり、どんな国へ支出しているのかがわかりません。今日は、そこのところを掘り下げてみましょう。

まずは↑が、日本の経常収支を国別でグラフで表したものです。これを見れば一目瞭然で、日本の一番のお得意様はアメリカである事がわかり、しかも2008年の1年間で、アメリカ一国から11兆円も稼いでいるわけです。「そんだけアメリカから儲けてるのなら米国債も買えよ!」というアメリカ政府の気持ちもわからなくはないなぁ。(笑)
そして、2番手グループは東南アジア諸国(香港、台湾、韓国、シンガポール、タイ)辺りなんですね。これらの国は、日本の技術を使って自動車や半導体等の製品を作っているので、日本へ「特許」とか「ライセンス」等の料金支払いが多いという事でしょう。
一方で、逆に日本から支払いの多い国は「中国」「インドネシア」「オーストラリア」といったところでしょうか。中国については「軽工業品」や「食料」の輸入、インドネシアやオーストラリアについては「資源関係」の輸入が多いからでしょうね。
これらの事を察するに、日本の経常収支の黒字幅拡大のモデルは以下の3つがあると思います。
@「貿易収支」の黒字幅拡大
対アメリカのように、どんどん日本製品を輸出して貿易黒字を拡大させる。
A「サービス収支」と「所得収支」の黒字幅拡大
対東南アジア諸国のように、人件費の安い国へ日本企業をどんどん進出(現地法人を買収)させて、特許等使用料(サービス収支)や株や債券等の利回り(所得収支)の黒字幅を拡大させる。
B「貿易収支」の赤字幅の縮小
対中国、対インドネシア、対オーストラリアのように、貿易赤字からの輸入を減らす。
ところが、現実問題として@とBは厳しいと思います。
まず@の厳しい理由ですが、品質は良いけど価格競争力の劣る日本製品を大量に買ってくれる国は、おそらくアメリカ以外には無いでしょう。アメリカ以外で、経済的に豊かで人口の多い国がそもそも無いからです。確かに中国は人口こそありますが、一人当たり名目GDP(2008年)は、アメリカ43370ドルに対して、中国3315ドルなので、確実なマーケットになるまではまだ時間がかかると思います。それに、元が恒常的に通貨切り上げする保証があるなら一考の余地はありますが、多分中国は今のレートを維持する事に固執してるし、そもそも中国のバブルが崩壊したらそれこそねぇ……。
次にBの厳しい理由ですが、そもそも日本は資源国ではないので、ガソリンや鉄鉱石やレアメタル等々を輸入するのは、どう頑張っても避けて通れません。
という事で、個人的には日本が最も確実に今後も外貨を稼げるのはAじゃないのかと思っているのですが、どうなんですかね?韓国、香港、台湾、シンガポールについては、人件費がどんどん高くなっているので、今後は「タイ」とか「ベトナム」とか、人件費が安く、投資活動の自由な国に対して、日本資本の投下を進めることになるような気がします。(すでに、日本の輸出産業はやってるのかな?)

そして、次は↑の日本の資本収支を国別で見てみましょう。
こちらは、経常収支(物/サービス/利子・利回りの取引)とは違って、金融商品(株や債券等々)の収支なので、経常収支とは雰囲気が全然違いますね。資本収支の方では、イギリスが飛びぬけてプラスである事がわかります。つまり、イギリスから日本にお金が流入しているって事ですね。これはどういう事かと言うと、近年のイギリスは国内景気が良くない上にポンドが下落(というより暴落)しているので、イギリス国内のマネーが円高の進む日本に流入しているわけです。よく「安全資産確保のために外国人が円を大量に買ったので円が急騰した」なんてニュースがありますが、この資本収支を見る限り、イギリス人の円買いの影響が非常に大きい事が示唆されますねぇ。おそらく、イギリスは資金繰りが相当厳しいはずなので、短期で利益の出る金融商品しか購入できないはずです。なので、この「円高」のタイミングを利用して、「円」を買ったり、「日本の短期債券」を買ったりしてるのだと思いますよ。
是非ともイギリス人には、日本株や長期の日本の債券に投資して欲しいところなんですけどねぇ。
一方で「アメリカ」「フランス」「ルクセンブルク」は、大きくマイナスになっています。フランスとルクセンブルクに関しては、彼らがリーマンショックにより日本株や日本債券を売りはなした影響で、マイナス幅が大きくなったわけです。アメリカの場合は、それに加えて円高で日本企業によるアメリカの会社への投資/買収が進んだ事で、マイナス幅が大きくなったわけですね。
普通に考えると、他国通貨に対して円高局面になれば、様々な国から日本にお金が流入してくるものなんですが、何故か現状では通貨暴落しているイギリス以外からの目立った動きは見られません。日本が0金利である事もあるのでしょうけど、よっぽど日本政府による経済政策が外国人に評価されていないのでしょうね。(俺が投資家の立場だったら、まともな経済閣僚のいないデフレ国に投資なんかしたくありません。)
もっとも日本は海外投資が盛んなので、資本収支がマイナスである事自体は悪いことで無いと思うのですが、今まで国内に還元してたお金が海外投資に流れれば、そりゃ日本の景気に悪影響が出るわけですよ。可能であれば、日本はこのまま外国投資を続けた上で、イギリス以外からもお金を呼び込めればいいのですけどね。
基本的には、今後も日本が外国に投資する流れは止められそうにないので、「資本収支」はマイナスが続くはずです。ただし、日本の国内経済を考えれば「資本収支」のマイナス幅を縮小させたいところ、つまり「外国から日本への投資」が増えれば良いわけですが、これについては「為替レート」等々の要因で、安定した収支を保つことが難しいわけです。
やはり、他人様のお金(資本収支)で国内経済をどうこうするよりも、自分の努力(経常収支)を中心に考えた方が日本にとっては良いと思いますね。
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