
↑が、2010年6月現在の米国債発行残高と日本と中国の米国債保有状況です。
まずは、米国債発行残高を見てみましょう。アメリカはリーマンショック後、景気対策法(7820億ドル)と金融安定化法(7000億ドル)等々の財源確保のために、ひたすら米国債を刷り続けています。今年の6月には、米国債の発行残高は13.2兆ドルを程度となりました。現在のレート(1$=87円)で円換算すると、これはおよそ1150兆円程度ですかね。
アメリカは2008年1月から2010年6月の二年半で、割合で書くとおよそ43%、金額にしておよそ400兆ドルも米国債発行残高を増やしました。ただし、これだけのペースで米国債を刷り続けているにもかかわらず、↓の記事の通り、10年物米国債の利回りは下がり続けて現在は3%を切っています。
【超長期債利回り低位安定、需要拡大でリーマンショック後の最低視野も】
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920018&sid=at8VG2WqUb7I
やはり世界的な不況が続いていることで投資先が少なくなり、安全資産である米国債が買われているということでしょう。通常の経済状況では、誰かが株や社債等に投資することによって、お金が広く世の中に流れて好景気を作り出すわけですが、現在はリスクのある株や債券にはお金が回らず、米国債に資金が集中しているわけです。今はアメリカ政府の支出によりアメリカの景気も何とか持ちこたえているわけですが、今後アメリカの財政再建の圧力が強くなればアメリカも政府支出を絞る事で、お金の出し手がいなくなる事が心配です。
ちなみに、アメリカは↓の記事の通り、1月に1430兆ドルまで米国債発行上限を上げる法案を通しました。とは言え、今の米国債発行ペースであれば、数ヵ月後には再びこの上限値が突破しそうですねぇ……。
【Senate agrees to record increase in debt limit to $14.3 trillion】
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/28/AR2010012800522.html
さて、それでは日本と中国の米国債保有状況を見てみましょう。
まずは中国です。2009年7月に突然、中国の米国債保有額が上がっていますが、これは2009年7月から米国債保有額のカウントの仕方をアメリカの国債局が変えた事によるものです。この辺の詳しい事情はよくわかりませんが、とりあえずこの急増はあまり気にしないこととします。
とは言え、中国は2009年12月から外貨準備高の運用方針を変えたのか米国債保有を減らしています。この辺りは人民元の柔軟化政策ともかかわってくるので、今後の展開が面白いことになるでしょうね。
俺が中国の外貨準備高の運用責任者であれば、中長期的には当然のごとく元高ドル安が進む事により、米国債をなるべく売り払いたいところです。じゃあ、一体外貨準備高を何で運用すればいいのかと考えた場合、他通貨で運用するという前提ならば、円が相対的に見て一番元高にはならないのではないかと思うので、中国は今後日本国債を買い出す可能性があると思います。(日本にとって、良い話なのか悪い話なのかは微妙なところですが。)
そして、日本の米国債保有額ですが、順調に積みあがっていることがわかります。とは言え、日本の場合は政府が米国債を買っているわけではないので、民間企業が買い増していることになります。
個人的には、利益追求する民間企業が「何で円高ドル安の進む中で、わざわざ米国債を買いたいのだろうか?」と思うのですが、日本企業が海外支店でだぶついたドル資金で米国債を買ってるのかな?あるいは、世界経済が正常に戻って円安になることを見込んで、日本の金融機関が米国債を買ってるとか?
いずれにしても2010年5月の時点では、日本(7868億ドル)と中国(8677億ドル)で米国債発行残高(13兆ドル)の13%程度を保有していることになります。「この程度の割合であれば、中国が米国債を売りさばいても、アメリカ政府は何とか耐えられるんじゃないの?」と思わなくもない数字ではありますが、国際収支の経常収支が大幅黒字国である中国や日本は、安定した世界経済を実現するためにも、個人的にはある程度の米国債やユーロ国の国債を買ってもいいような気がします。(それが、自国の国益にもつながると思うのですが……)
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