2009年04月14日

人間の直感がどれだけいいかげんか?〜三囚人問題〜

今日は認知心理学の分野でよく出される三囚人問題。「条件付き確率」や「ベイズの定理」を考える上でよく例として出されるんだけど、こんな話↓。


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三人の囚人、A,B,Cがいる。先日の司法会議でこのうち二人の処刑が決まった。三人は同程度の重い罪を犯している事により、処刑を免れる確率はA,B,C共に1/3とする。三人には、「二人が処刑される」と伝えてあるのだが、「どの二人が処刑されるか」は伝えられていない。

その状況で囚人Aは、看守にこう言った。
「BとCのどちらかは必ず処刑されるのだから、処刑される一人を教えてくれないか?それによって俺に情報を与えることにはならないだろう?」
誰が処刑されるかわかっている看守は、囚人Aの言い分に納得してこう答えた。
「Bが処刑される。」
これを聞いて、囚人Aは喜んだ。
「自分の助かる確率は1/3だったが、これを聞いて自分の助かる確率は1/2に上がった」
さて、実際に囚人Aの助かる確率は1/3から1/2に本当に上がったのか?

※ただし、BとCが処刑される場合は、看守はどちらかを1/2の確率で言うとする。
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俺が大学生の時、最初にこの問題を聞いて「ん?」と思い、2時間くらい考えたという思い出のある問題なんだけど、皆様はいかがでしょうか?



受験数学の常套手段として、このくらいの規模の問題であれば、全ての場合をしらみつぶしで探すと答えは出てくるので、表にして考えてみるとそれぞれのケースで以下のような確率となる。
normal_sansyujin.jpg
何も情報が無い時点では@〜Hの可能性があるのだが、看守の言葉「Bが処刑される」という条件の下で考えると、考えられるケースがA(Aが恩赦)とG(Cが恩赦)の場合のみに狭まったことになる。Aが知りたいのは自分が恩赦になる確率という事なので、

Aの確率/(Aの確率+Gの確率) = 1/3

というのが、数学上の答えとなる。つまり、AはBが処刑される情報を得ても、「自分が助かるかどうかにはまったく関係無い」という事が数学的には導かれるわけだ。

ちなみに、この手の条件付き確率の話になると、人間の直感は当てにならない事が多いらしく、「あれ、待てよ?!」と思う人が多かったのではなかろうか?




面白いのは、三囚人問題の発展版である↓の変形三囚人問題。

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三人の囚人、A,B,Cがいる。先日の司法会議でこのうち二人の処刑が決まった。三人は罪の大きさを考慮して、それぞれ恩赦になる確率は1/4,1/4,1/2とする。三人には、「二人が処刑される事とA,B,Cの恩赦の確率」を伝えてあるのだが、「どの二人が処刑されるか」は伝えられていない。

その状況で囚人Aは、看守にこう言った。
「BとCのどちらかは必ず処刑されるのだから、処刑される一人を教えてくれないか?それによって俺に情報を与えることにはならないだろう?」
誰が処刑されるかわかっている看守は、囚人Aの言い分に納得してこう答えた。
「Bが処刑される。」
これを聞いて、囚人Aは喜んだ。
「自分の助かる確率は1/4だったが、これを聞いて自分の助かる確率は上がるだろう。」
さて、実際に囚人Aの助かる確率は本当に上がるのか?

※ただし、BとCが処刑される場合は、看守はどちらかを1/2の確率で言うとする。
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これも、表にして全てのケースをつぶしてみよう。
normal_sansyujin2.jpg
先ほどと同じように、「Bが処刑」という条件付きで考えると、AとGのケースだけ考えればいいので、Aの助かる確率は

Aの確率/(Aの確率+Gの確率) = 1/5

つまりこの場合は、Bの処刑を聞いた事で自分の助かる確率がかえって落ちてしまうわけだ。この事実、「いや、ちょっと待て。本当にそうか?」と思う人の方が多いような気がするんだけど、数学上の確率は確かにそうなんですよ。



このように、条件付き確率になると人間の直感なんて当てにならないわけですよ。胡散臭い儲け話ふっかけて、この当たりを上手く利用すれば騙される人がたくさん出そうな気もするけどなぁ……。(笑)
posted by きらっち at 21:17| Comment(3) | TrackBack(0) | 科学
この記事へのコメント
>面白いのは、三囚人問題の発展版である↓の変形三囚人問題。
違和感の原因はどこかなぁ、と考えてみた。
最大のポイントはここですな。↓
>※ただし、BとCが処刑される場合は、看守はどちらかを1/2の確率で言うとする。
数学的な調和のとれた看守なら、
BとCが処刑される場合は、1/4:1/2の割合でBかCか教えてくれるはずなのだ。この場合は命題のAの助かる確率は1/4となって、調和のとれた世界に落ち着くのである。良かった良かった。
おやすみなさい。
Posted by ぷらっそ@MIXI at 2009年04月22日 00:10
>ぷらっそさん
本質をズバッと突いてきますなぁ。(笑)さすがぷらっそさんですよ。
確かに、まさにそこがポイントなんだよね。一見、確率を1/2にする方がフェアに聞こえるんだけど、そうじゃないんだよね。
Posted by きらっち at 2009年04月22日 02:32
変形三囚人問題が違和感を覚えるのは、看守が「Bが処刑」と言った時に、AかCの恩赦の確率を1:2としているからです。この場合、AとCの事前確率の比が1:2であれば、事後確率の比は1:4となり、Aが恩赦の確率は1/5になります。(これは、A,B,Cの恩赦の確率が0.2,0.4,0.4でも0.33,0.01,0.66でも同じで、Bの事前確率は関係ありません。)
Posted by ベイズ at 2019年06月01日 07:57
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