2009年04月15日

政府の予算編成プロセス

役所の予算を所管してるのが財務省なのは、皆様もご承知の通りだと思うけど、この前民間会社に勤めてる友達から
「どうせ政治家を無視して財務官僚が予算配分を全部決めてるんだろ?官僚が自分の予算の使い方を自分で決めてる限り日本は良くならないのでは?」
と喧嘩をふっかけられたので、丁寧に反論したわけですよ。(笑)その議論を聞いて思ったんだけど、一般の人には役所の予算決定のプロセスがほとんど知られていない(誤解されている)のかと思ったので、今日は役所の予算決定プロセスについて書こうと思う。



【4月と5月の動き】
各省は新年度が明けて、すぐに次年度の予算作成の作業に取り組みが始まる。省庁によってもやり方は違うのだろうけど、
○予算要求における重点事項は何か?
○今までやってきた事業に関する政策評価はどうか?
○新規に始める施策は何か?
等々を各局内部で議論して詰めていく。


【6月の動き】
この6月から、「経済財政諮問会議」が予算編成プロセスにおいて大きく関与することになるので、まずはこの組織について説明する。

経済財政諮問会議とは、内閣総理大臣の諮問を受けて経済財政政策に関する予算方針を含む重要事項について審議する組織で、2001年の省庁再編の時に新しく設置されたんだよね。この経済財政諮問会議が、予算編成過程の改革、金融システム改革、郵政民営化、三位一体の改革、政策金融改革、規制改革、税制改革、経済成長戦略、歳出・歳入一体改革等々の数々の改革を推し進めた経緯がある。
ちなみにメンバーは、内閣総理大臣や主要大臣を始め、日銀総裁や民間出身の有識者4名で構成されている。ちなみに、経済財政諮問会議のHPは以下の通り↓。

【経済財政諮問会議HP】
http://www.keizai-shimon.go.jp/


さて、話を予算編成の流れに戻そう。この経済財政諮問会議は、概算要求が始まる前の6月末くらいに「経済財政改革に関する基本方針」という物を閣議決定する。この「経済財政改革に関する基本方針」は、通常「骨太200X」(去年は骨太2008)と呼ばれていて、予算編成面という視点から見ると、8月末から始まる概算要求に対する査定基準の指針になる物なんだ。なのでこの骨太200Xに、「○○の整備を重点的に進める」みたいな事が記載されるだけで財務省への説明が非常にスムーズに運んで、予算もちゃんと付くわけですよ。なので各省庁とも、骨太200Xに自分の業務が掲載されるのを固唾を呑んで見守っているわけですよ。ちなみに、実際の閣議決定文章は↓の通り。

【経済財政改革の基本方針2008(骨太2008)】
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/0627/item1.pdf

この骨太200Xの策定の際に各省にも照会はかかるので、省側から文言の修正依頼も出せるが、基本的には政治家(与党)主導で作成されるために、必ずしも修正を受け付けてもらえる保証はない。(昨年、俺の組織は修正を受けつけてもらえなかった)いずれにしても、この骨太200Xが予算要求における一つのキーになる。



【7月の動き】
そしてこの骨太200Xの策定作業が終わり、7月に入って経済財政諮問会議はその年のGDP等の経済指標の見通し見直しが行われる。この作業は、経済成長率等の指標を最新版に見直した上で、4名の民間議員が次年度の経済見通しを経済財政諮問会議に提出する事で、実際の予算編成につなげるものである。その後、この民間議員が提出した経済見通しを踏まえて、財務省が概算要求基準を作り経済財政諮問会議に諮る事になる。概算要求基準とは、具体的には各省に対して概算要求の上限を示すものであり、「シーリング」と呼ばれている。まぁ、ちょくちょく新聞にも出てくる言葉だよね。この上限値も経済財政諮問会議で議論されるものである。ちなみに↓が実際に昨年、経済財政諮問会議に提出されたもの。

【平成21年度概算要求基準について】
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/0729/item1.pdf



【8月〜10月の動き】
これらの経済財政諮問会議の行う種々の議論を踏まえて、8月末から各省の概算要求が始まるという事で、官僚の暑い夏はここからが本番を迎える。この時期に何回財務省まで足を運んだ事か……。(笑)

ちなみに、この時期は経済財政諮問会議としてのルーチンワークが途切れる事もあり、「税制改革」「社会保障改革」「規制改革」「中長期的な経済成長戦略」等々の様々な議論が展開される。ちなみに、去年は「補正予算」とか「金融情勢」に関する議論が多かったような気がする。



【11月の動き】
概算予算要求が一息ついたこの頃に、経済財政諮問会議で「予算編成の基本方針」が議論される。これは、骨太200Xを踏まえて、政府の予算編成作業に先立ち、予算の基本的な考え方を明らかにするのが目的。俺みたいな下っ端から見ると、「骨太200Xとは何が違うのか?」と思える事もあるんだけど、やはりここでも、自分達の行っている事業が掲載されると予算獲得においては非常に有利になるらしい。(そもそも、11月末だと財務説明もほとんど決着してるようにも思うのだが)
ちなみに、昨年の実際の文章は↓の通り。

【平成21年度予算編成の基本方針】
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2008/1203/item7.pdf



【12月の動き】
予算編成の基本方針の策定も終わり、財務省の方も政府予算案作成に対していよいよ大詰めを迎える。大体クリスマス頃に、財務省からの予算案についての内示が届くのだけど、政府財政も苦しい中、うちの組織はここ数年まともなクリスマスプレゼントが無い状況が続いている……。(泣)

経済財政諮問会議の方は、財務省の予算案内示と同時期に「経済見通しと経済運営の基本的態度」を議論して閣議決定する。これは、政府予算案が実際に執行される頃の経済状況を予測するという意味があるのだが、昨年は「経済見通しと経済運営の基本的態度」ではなく、代わりに「経済財政の中長期方針と10年展望」という物を打ち出した。中身は例年やっていた「経済見通しと経済運営の基本的態度」とは違い、中長期的な展望と財政再建のための道筋が述べられている。今後、この10年展望の策定が毎年続くのかどうかが注目される。



【1月〜3月の動き】
財務省の予算案が政府案として閣議決定されて、国会へと提出される。その後、国会でいろいろと議論され、国会議決を元に次年度の正式な予算となる。



これを見ると役所の予算編成に関しては、決して役人だけで勝手に予算を決めているわけではなく、民間議員を含めた経済財政諮問会議が大きな役割を果たしているのが分かると思う。省庁再編前までは、それこそ旧大蔵省が非常に大きな権限を持っていたので、概算要求基準の発表前に予算編成の方向性について議論されることは無かったし、予算の大蔵省原案が提出されるまで、予算編成の基本方針が策定されるということも無かったわけだ。そういう意味からすると、政府の予算決定プロセスは政府外の人も関与できるようになったし、予算方針の議論もよりオープンになっているという事が言えると思う。

まぁ我々の仕事は、政権与党がどうなるかでがらっと仕事のやり方が変わるので、予算編成に関して今後もこのようなプロセスを行っていくかどうかはわからないけど、現状は上記の説明のようなプロセスを経て、政治家や政府外有識者の議論も踏まえつつ、じっくり次年度の予算を決めていくわけですよ。




と、本エントリーの最初に登場した友達に説明したところ、「1年の予算編成に1年間の時間をかける事自体、俺には理解できない。何で2ヶ月くらいで決められないの?」と、ばっさり言われちゃったわけですよ。(笑)
「80兆円分の予算を2ヶ月くらいの短時間なんかで決めようとすると、それこそ官僚主導になるのでは?」と思うのは、俺だけでしょうか?(笑)
posted by きらっち at 20:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 仕事
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