2009年06月02日

それにしてもあっぱれ!

【16歳イラク移民少年、数学の歴史的難問解く=ベルヌーイ数を説明―スウェーデン】
http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_sci&k=20090529022448a

【この少年の写真入り記事(英語)】
http://www.thelocal.se/19710/20090528/

【スウェーデン ウプサラ大学ニュースリリース(英語)】
http://www.uu.se/news/news_item.php?typ=artikel&id=693

英語記事とアプサラ大学のニュースリリースを読む限り、時事通信の完全な飛ばし報道だったっぽいね。彼はウプサラ大学に招請されたわけじゃないし、彼がベルヌーイ数の一般式の第一発見者でもないじゃん?もう少しちゃんと裏を取って報道してくれよ。(笑)

まぁ、この少年の発見が世界で初めてではなかったとは言え、ベルヌーイ数の周辺分野はまだまだ未解決問題も多いし、彼もこれをきっかけにこのまま数学をやり続けたいと思えたのなら、それはそれで十分良いニュースなのではないでしょうか?



さて、それじゃ彼の成果がどのような物かを説明しよう。まず彼の成果そのものを説明するには、「級数展開」を理解しないといけないので、まずは「級数展開」から説明しよう。

世の中にはいろいろな関数がある。高校くらいの数学であれば、扱う関数はわりと単純な物ばかりなんだけど、実際の自然現象とか世の中に存在している関数は非常に複雑で、式であらわすのが難しかったり、まともにパソコンで計算させると数値誤差が非常に大きくなり計算結果の保証できない関数も多々存在する。級数展開とは、「複雑な関数を単純化させるための関数分解法」と捉える事ができて、その導出法は「テイラー展開」「マクローリン展開」によって確立している。
ちなみに、実際にe^x(eは自然対数)をマクローリン展開によって級数展開すると、以下のように級数展開できる。
(なお、マクローリン展開に関しては、 http://w3e.kanazawa-it.ac.jp/math/category/suuretu/suuretu/henkan-tex.cgi?target=/math/category/suuretu/suuretu/maclaurin.html )

ex_macroling.jpg



今の例ではe^xだけなので、あまり級数展開するありがたみは無いかもしれない。ただ、このように級数展開をすれば無限に項が出現するのだけど、後ろに行けば行くほど無視できる程小さい数になるし、普通にe^xを数値計算するよりも計算誤差を小さくできるので、実学的にも級数展開は非常に意味のある事なんだ。



んで、今回の彼のそもそもの成果とは、「x/(e^x-1)」という関数の級数展開に関するものなんだ。パッと見ただけでは、この関数を級数展開すると何が出てくるのかわからないけど、少なくとも先のe^xの級数展開で、次数0〜無限のxの項が出現する事により、「x/(e^x-1)」も、同じく次数0〜無限のxの項が出現しそうな気はするよね。よって、それぞれの項の係数はわからないけれど、e^xと同様に↓のような級数展開ができそうなわけですよ。(各係数B0〜Bnがベルヌーイ数と言われる数)
x_frac_ex-1_macroling.jpg


今回の彼の成果を一言で書くと、上記のベルヌーイ数の一般式を発見したわけなんだな。通常、高次の添え字のベルヌーイ数は、低次の添え字のベルヌーイ数から漸化式を使って一つずつ計算していたらしいのだけど、一般式の発見により高次のベルヌーイ数を直接計算できるようになったわけですよ。
※:その一般式は、2番目の記事中の写真に掲載されている。



【もうちょっとベルヌーイ数を考察】
ちなみに、奇数次のベルヌーイ数はB1を除き全て0なんですよ。これは「x/(e^x-1)」を連分数にすると自明なんだけど、まずは、連分数について説明しよう。

まず世の中には、数の表し方として「ルート√」とか「小数」とか「分数」があるじゃない?それと同じように「連分数」という数の表し方がある。これは、分数の中に分数が混じるので非常に直感的でない数の表し方なんだけど、実際に以下で小数と連分数で表した√2を見てみよう。
same_value-diffdisp.jpg

ちょっと余談になるけど、これを見れば小数では何の規則もない√2が、連分数では規則的な構造のある事がよくわかるだろう。非常に興味深いところではあるが、話を元に戻す。



x_frac_ex-1_renbun.jpg
ここで上記画像のように、e^xとtanh(x)の性質から「x/(e^x-1)」も連分数展開ができる。(ただし、tanh(x)はハイパボリックタンジェント)
この時、青枠で囲った部分は奇関数、赤枠で囲った部分は偶関数なので、ベルヌーイ数の奇数添え字成分は、B1を除いて全て0である事がわかる。

俺には、偶数添え字成分をどうやって導出したのかまったくわからないけど、これを高校生が独力で解いたって事は、確かに驚愕だよなぁ……。
posted by きらっち at 21:20| Comment(0) | TrackBack(1) | 科学
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