2009年06月04日

分母を上げる?それとも分子を下げる?

【政府の財政再建目標、GDPに対する債務残高比率に切り替え】
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090603-OYT1T00947.htm

ふむふむ。確かに、今のままだと政府が黒字になるのは相当先なので、プライマリーバランスで財政再建を議論できないもんなぁ。

さて、一体これがどういうニュースなのか説明しよう。今まで政府では「何とかして政府の赤字を減らしたい」と考えていて、具体的に数値目標を作って赤字削減に取り組んでいたんだ。どういう数値目標かというと、「プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化」といって、「政府の支出 − 政府の歳入(借金を除く)」を2011年度までにプラスにする事だったんだね。
ところがリーマンショックを機に、誰の目から見てもこの目標が達成不可能なのが明らかになって、今回新しい数値目標を作ろうとしているわけですよ。

今回の数値目標は、GDPに対する債務残高比率。つまり「国債発行残高/GDP」の値をできるだけ減らしていこうって事で、具体的な数値目標がいくつになるかはまだわからないけど、実はこの目標達成のためには以下の2つのアプローチのある事がわかる。

1.国債発行残高を減らす(分子を小さくする)
2.GDPを上げる(分母を大きくする)

まぁ、1.は国の借金がそのまま減るので、みんな意義はないと思うけど、2.に関しては「何で?」と思う人がいるかもしれない。確かに、2.は直接借金を減らす方法ではないのだけど、日本の借金の増え方よりも、経済規模が大きくなるスピードが速ければ、実質は借金の目減りが見込めるという事なんだよね。(自民党の上げ潮派の先生方は喜びそうな数値目標だなぁ。)



treasury_each-nation.jpg
そして、現状の「国債発行残高/GDP」の値はどのくらいかというと、約1.75(175%)なわけで、上記の画像の示した他国と比較すれば、日本は非常に高い数字になっている。この債務残高対GDP比のみを見ると、「ほら見ろ。他国に比べてこれだけ悪い数字が出てるという事は、近いうちに日本は破綻して円が紙切れになるぜ。」と思われる人もたくさんいるかもしれないけど、おそらくここしばらくの間、経済破綻は上記画像で上げた5国の中では日本が一番可能性が低いと思うよ。

そもそも経済破綻する場合、過去に経済破綻した国の例を考えると、以下の事が起こるだろうと推測される。
@通貨暴落
A国債の投売り
Bインフレ
ところが、日本の場合は@〜Bの起きる気配がまったくないわけですよ。

@に関しては、少なくともリーマンショック後においても、日本の経常収支がプラスである事(一時は赤字になった月もあったけど)、
豊富な外貨準備高の存在、GDPギャップに示される供給過剰なまでの生産能力があるわで、このようにお金を稼ぐ力があるうちは通貨暴落は起こらないわけですよ。

そしてAに関しても、国債の投売りの可能性もほぼ無いだろうと推測される。というのも、上記画像を見るとわかるけど、赤い枠の列「対外債務残高 対 国債発行残高比」は日本が一番小さく5.3%にしか過ぎない。つまり、日本国債を買っているのは94.7%が日本人なわけですよ。日本国内でドルや他国通貨を使えるのであれば、日本国債を投げ打ってでも他国通貨に換える事はできるだろうけど、今の日本では「こりゃ本格的に円はヤバイ!」と思っても、円以外使えないのだから日本国債を投売りするメリットがないよね。

Bも、まさにGDPギャップに示されるように、日本は世界で一番デフレを心配しなければいけない国なので、しばらくはインフレは起きないわけですよ。

このように@〜Bが起こりようも無いので、しばらくは日本経済の破綻は無い。



そういう観点で見ると上記で上げた国の中では、国内で目立った製造業が無いため金融で稼いでいたけれど、リーマンショックのせいで稼ぐ手段の無くなった「あの国」ですかね?Bはまだみたいだけど、「あの国」はすでに@が起きたし、国債の札割れを起こしていてAの兆候が見え始めてるわけだ。やはり、先進国で一番最初にIMF行きになると言われているだけある。(笑)
ただ、「債務残高 対 GDP比」を見ると、どの国も全然日本よりも数値は低いわけですよ。要は他国の状況と比べると、日本は自国内で国債を売り切れる状況がかなり特殊なんだよね。携帯電話マーケットだけでなく、国債マーケットも日本はガラパゴスなんだよなぁ。


という事で、今回一番言いたい事。
「GDPに対する債務残高比率」は、あくまで財政再建の指標にするのには良いと思うんだけど、「この数値そのものが財政破綻度を表しているわけではない」って事だね。おそらく日本の家計収支のみを考えても、GDPが今後も500兆円を維持できるなら、この値が200%程度になるまでは、家計流動純資産(およそ1000兆円)のみを考えても債務超過にはならないので確実に安心。固定資産まで入れた日本の純資産(2000兆円以上と言われている)で考えるならば、400%くらいまでは国債を発行しても債務超過にはならなさそうなんだよ。

とは言うものの、この不況が抜けたらすぐに政府の財政再建にとりかからなければいけないと、俺も思う。やはり日本人として、借金ってのは気持ち悪いんだよなぁ……。(笑)
posted by きらっち at 21:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済
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