2009年06月17日

産業連関表による各都道府県の経済波及効果分析

【成田・羽田の国際線拡大、年9800億円の経済効果 国交省試算】
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090612AT3S1202K12062009.html

【世界砂像フェスティバル:経済効果96億円 入場収入は3億円−−実行委 /鳥取】
http://mainichi.jp/area/tottori/news/20090609ddlk31040731000c.html

この手の経済波及効果の記事をよく見ると思うんだけど、「どうやって算出してるんだろう?」と思った事ってありません?

今日は上記の記事そのものではなく、経済波及効果を算出するのに使われる産業連関表を使って、地方の産業毎の経済波及効果を考察する。

さて、まずは産業連関表についてだけど、wikipediaでは以下のように説明されている。

数年おきに政府が調査しているもので、それぞれの産業毎の生産構造(どの産業からどれだけ原料等を入手し、どれだけ賃金等を払っているか)や、販売構造(どの産業に向けて製品を販売しているか)をみることができ、経済構造の把握、生産波及効果の計算などに利用されているものである。

wikipedia『産業連関表』


【平成17年(2005年)産業連関表(速報) 生産者価格表 34部門】
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/Xlsdl.do?sinfid=000002568524

【平成17年(2005年)産業連関表(速報) 逆行列係数表(開放型) 34部門】
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/Xlsdl.do?sinfid=000002568535

実際には、上記エクセルファイルが平成17年の日本全体の産業連関表そのものである。詳しい説明は省くけど、産業連関表には様々な種類があるのだけど、「生産者価格表」が基本形のものである。ただ、経済波及効果を見る場合は、通常「逆行列係数表(開放型)」の表を見る。この「逆行列係数表(開放型)」というのは、注目している圏外からの輸入を加味して、圏内に1単位の最終需要がある場合に、どれだけ経済波及効果があるかを調べるのに適したものである。

実際に上記の逆行列係数表(開放型)ファイルを見てみよう。「農林水産業」の列に注目して欲しい。
(農林水産業)1.140839→(鉱業)0.001464→(飲食料品)0.107463
→……→(列和)1.779103
とあるが、これは「農林水産業」が作る10000円の製品やサービスを購入した時、農林水産業に11408円、鉱業に14円、飲食料品に1074円、そして産業全体として17791円の経済波及効果のある事を示している。

さて、これにより「列和」の行で一番大きな値を取る産業が、日本で一番経済波及効果の大きい産業である事がわかるのだが、実際それは何の産業で列和がどのくらいかというと、「輸送機械」で列和が2.815172というのがわかる。つまり自動車産業が作る製品やサービスで100万円の需要があれば、281万円の経済波及効果がある事がわかる。「自動車産業はすそ野が広い」と言われているけど、確かにこのデータが数字でそれを裏付けているわけですよ。


そしてようやく今日の本題。実はこの産業連関表、日本全体のみを対象にしているのではなく、それぞれ各都道府県対象の産業連関表も作成しているんですよ。よって、今日は「兵庫県」「愛知県」「青森県」の3県の産業連関表からそれぞれの都道府県の産業の特徴を考察してみたい。

local-pref_io-inv.jpg

local-pref_io-inv2.jpg

local-pref_io-inv3.jpg
という事で、3県の産業34部門における経済波及効果を↑に示す。何せ部門数が大きかったので、3つの画像に分割しました。今回は日本という国が一つの単位ではなく、都道府県を一つの単位としているので、「県内への経済波及効果」と「県外への経済波及効果」をわけてグラフで示している。(詳しい説明は省くけど、逆行列係数表の「閉鎖型」と「開放型」の列和差分を取る事により県外への経済波及を算出している)

まず2番目の画像を見て欲しい。「輸送機械」を見ると、愛知県にダントツの県内経済波及効果があるのがわかる。これは、自動車という利益率の高い最終製品や中間部品を多量に生産しているからだと思われる。ということは、愛知県の県庁/市役所/町村役場で、いっせいに官用車をプリウスに買い換えるだけで、愛知県の景気浮揚にかなり寄与するんじゃないの?(笑)

一方、輸送機械における兵庫県や青森県の県内経済波及効果が少ないのは、生産しているものが自動車という完成品ではなく、部品中心だからだと思われる。しかも、青森県だけ県外経済波及効果が一段少ないのだけど、これは青森県の作る自動車部品が、青森県内で生産される中間財を中心に生産できる物であると推測される。
同じく2番目の画像で「精密機械」や「その他の製造工業製品」でも、青森県だけが兵庫県や愛知県と比べると極端に県外経済波及効果が小さい上に、県内経済波及効果も低い事がわかる。これも同様の理由であろう。
全体的に鉱工業の多くの部門で、青森県は県外経済波及効果が兵庫県や愛知県よりも小さいので、県内のみで生産が完結する傾向がある物を生産しているという事だろう。

次は1番目の画像の「農業」を見て欲しい。3県とも県内経済波及効果に大差は見られないけれど、県外経済波及効果に関しては、ここでもやはり青森県が一番低い事がわかる。ただし、青森県の産業連関表(生産者価格表)を見ると、上記の鉱工業部門とは違い、青森県は農業生産が盛んで他県にどんどん輸出する一方で、農産物生産による県外経済波及効果が少ないわけだ。
これはつまり、他県の力を借りずに青森県だけで農産物を輸出できる事を意味しているので、効率よく農業で稼いでいるとも言える。「さすが農業王国だ」という事が産業連関表からも読み取れるわけですな。

そういう視点から行くと、兵庫県の農業は県外経済波及効果が大きいので、農産物の生産には県外からの多くの輸入が必要であるわけだ。しかも兵庫県の産業連関表(生産者価格表)を見ると、兵庫県は農産物をほとんど他県に輸出していない。つまり、兵庫県は自分の県の需要しか満たせない上に輸入が多いわけで、農業においては効率の悪い稼ぎ方になっている事がわかる。


このように産業連関表は、それぞれの産業構造や経済波及効果がわかるために、いろいろと活用できる機会があるとは思うのだけど、その原理は大学程度の数学の知識がいるために、完全に理解しようとするのは結構難しいかもしれない。(ちなみにこの産業連関表で、発案者のレオンチェフはノーベル経済学賞を取っている。)

一番上の飛行機路線やイベントでの経済効果も、一般的なお客さんのお金の使い方(お土産に○○円、外食に○○円等々)もモデルとして産業連関表を使って経済波及効果を算出してるんだろうね。


ところでこの産業連関表は、各都道府県と政令指定都市クラスの市でも作成している。また、本エントリーでは産業を34部門にカテゴライズしていたが、実際は100以上の部門表を作っているはずなので、興味のある方は、是非自分の自治体の産業連関表を見ながら何かの役に立ててみてはいかがでしょうか?
posted by きらっち at 12:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済
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