2009年10月02日

国債の利回りさえ払えなくなる日はいつ?

バルト三国の2009年Q2の経済情勢については、時間のゆっくりとれる明日か明後日に回して、今日は↓の日本国債についてです。

【長期金利大幅低下、一時年1.255% 半年ぶり水準】
http://www.asahi.com/business/update/1002/TKY200910020136.html

10年物の国債の利回りが1.255%まで落ちたとの事ですが、これは先進国ではずば抜けて低い利回りであり(例えば、10年物の米国債の利回りは10月1日現在でおよそ3.3%)、日本国債の購入需要が非常にある事を意味しています。
さて、日本破綻論者は「日本国債の発行残高が800兆円以上ある」という事を盛んに主張していますが、実際のところこのうちの95%程度が日本国内の金融機関や投資家で消化されているので、好きで自国通貨を暴落させたい日本人が激増しない限りは日本国債が投売りされる可能性は低いわけです。
つまるところ、日本政府が財政破綻するかどうかは、「日本国債の利回りを日本政府が払い続けられるかどうか」と言い換えてもいいのかもしれません。

という事で今日は、実際のところ日本政府が国債の利回りにいくら支払っているかを計算してみましょう。


【財務省 国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(平成21年6月末現在)】
http://www.mof.go.jp/gbb/2106.htm

↑を見ると、日本政府による国債、借入金、政府短期証券の残高が示されています。ちなみに、政府短期証券とは超短期国債みたいなもので、償還期間が1ヶ月とか2ヶ月程度の物です。
ここでは、日本政府が総額でおよそ860兆円の借金のある事がわかりますが、ここに出ている借金を「長期物(10年以上)」「中期物(2年〜5年)」「短期(1年以下)」にカテゴライズしてみると……

長期物:456.8兆円
中期物:217.7兆円
短期物:185.7兆円

となります。ここでは「交付国債」「出資拠出国債」「日本高速道路保有・債務返済機構債券継承国債」は、あえて厳しめに長期物にカテゴライズしました。また、「長期借入金」は中期物、「政府短期証券」は短期物にカテゴライズしてあります。

そして、以下がここ最近に発行した日本国債の利回りです。
10年物:1.329%(2009年9月1日)
5年物:0.648%(2009年9月8日)
1年物:0.1727%(2009年9月21日)
(【平成21年(2009年)9月の入札情報】より http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/calendar/0909.htm)

この利回りを上記の「長期物」「中期物」「短期物」に当てはめてみると、1年間の利回り支払いに、
(456.8×0.01329)+(217.7×0.00648)+(185.7×0.001727)
=6.07+1.41+0.32
=7.8兆円程度ある事がわかります。
今の日本の一般会計の税収(国債は含まない)が46兆円程度なのですが、7.8兆円の利回り支払いに対して、46兆円の税収をどう見るかで評価の割れるところではあるでしょう。

そして今日はあえて、財務省の立場になって考えてみたいと思います。まず、7.8兆円の利回りの支払いは、過去の国債発行に起因するのでどうやっても変える事はできません。であれば、財政再建のために何を変えられるかと言うと、46兆円の方の税収の方でしょう。この税収の増やし方としては、いくつか考えられて

1.増税によって国民から徴収
2.経済成長による税収増
3.さらなる国債発行で足りない分を補う

というところでしょうか?まぁ、3.はとりあえず除外するにしても、ここ20年くらいはまだ人口減少の影響がそこまで利いてくるわけではありません。ただし、それ以降は人口減少が急速なペースでやってきて内需が急激に縮小するでしょう。その時に、当然税収も急激に少なくなるでしょうから、その時に日本政府が国債の利回り支払いや償還に耐えられる財務体質になっていなければ困るわけです。財務省は、将来の国債の利回り支払いや償還が怖いので、「今のうちに返せる借金は早く返したい」と思っているはずで、上記の1〜3の中で一番確実な方法の「増税」をとりたいわけです。

あと、財務省は将来の「円安」に対しても相当心配していると思います。というのは、今後はしばらく円高が続くと思いますが、人口減少で日本経済が縮小方向に向かい出すと、それまでの円高が止まり、いずれ円安に転じます。この時、為替損を気にして外国の債券や株の購入を控えていた日本の金融機関が、今度は為替得を狙って一気に日本国債を手放して外国の債券や株を購入する日が来るかもしれません。この時、いよいよ日本国債が危なくなるのではと思っています。
そうならないためには、「円安にさせなければ良い」という事で

○人口減少を止めさせる
○恒常的な日本の経済成長
○(もし円安になってしまった時のために)外貨準備高の適切な運用

が今後の日本の至上命題になるのではないのでしょうか?おそらく財務省は、そのくらい先の日本経済まで読んでいるはずです。

と、今日は財務省の目線で彼らの思うところを書いた次第です。しかし個人的には、今はとにかく日本政府が日本国内のお金の流動性を供給しないといけないので、国債発行して政府支出を増やすべきだとは思うのですが、今の与党でそんな事を言う人はいるのでしょうか?
いずれにしても今の現政権には、経済の縮小する方向に誘導しないようにお願いしたいものです。現政権は、「今後の日本の経済成長」について何も示していない上に、補正予算をひっぺがえしたり、来年度予算をガリガリ削ったり、真面目に今後の日本の経済成長を考えている節が見当たりません。あるいはまさか、「子供手当てで景気回復できる!」と本気で信じている事は無いと思うのですが……。



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posted by きらっち at 22:30| Comment(5) | TrackBack(2) | 経済
この記事へのコメント
解説ありがとうございます。権限を増やしたいという陰謀論よりもよっぽど説得力がある。

>日本国債を手放して外国の債券や株を購入する
まあ、そんなことは財務省はやりたくないのだろうと思いますが、そうなったらお札を刷って返せばいいじゃんと思ったのは内緒。

>人口減
とはいえ、BRICsのロシアはオイルマネーとはいえ、日本よりも急激な減少でも成長できていますけどね。とはいえ、成長する前提でいろというと「成長できなかったらどうするんです?」と言われそうだし、成長するビジョンを財務省が組めというのは八百屋で魚を求めるような物か。

書いていて思ったことは、財務省が余りに力が強すぎるという点。現政権でも財務の力は強いみたいだし。主計局は国家戦略局直下に置くべきだと思います。
Posted by あかさたな at 2009年10月03日 08:45
なるほど。長期的な円安は、日本国債が売り飛ばされる要因になるわけですね。となると、日本は今後も円高を維持しなくてはならないわけですか……。
このサイトは経済だけでなく、いろいろと勉強になります。
Posted by 通りすがり at 2009年10月03日 08:46
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20060621/104822/

とはいえ、ロシアも人口要因で減っていくので移民を受け入れるべきという結論になっていますね。

幸福実現党や中川(女)がアップを始めましたってところですか?
Posted by あかさたな at 2009年10月03日 08:49
>あかさたなさん
お金を刷っちゃうと円安がますます進むので、度が過ぎると輸入インフレがおきちゃうかもしれません。デフレの状況下では、多少インフレにでもなったほうが良いのかもしれませんが。(笑)

>通りすがりさん
ただ同じ20円の円高でも、1$=100円→1$=80円になるのと、1$=40円→1$=20円になるのは全然違うので、「今後も円高基調」とはいいつつも、円高のペースは鈍るはずです。
この間に、日本は未来を見据えた一手を打たないといけないわけですよ。
Posted by きらっち at 2009年10月06日 01:20
そういえば、この見立てにインフレの事は全く考慮に入れていないのですが、財務省の人たちはデフレ状態が続いたらという最悪の場合を考慮に入れて計画を立てているのでしょうか?

それだってリフレというやり方もあると思うのですが、そんなにリフレをやりたくないのでしょうか?
Posted by あかさたな at 2009年10月06日 16:53
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