2009年10月07日

ポアンカレ予想とは?

【【第5回】難問奇問と天才奇人数学者 〜ポアンカレ予想の解決〜】
http://www.itmedia.co.jp/anchordesk/articles/0702/09/news029.html

数学の世界で「ミレニアム懸賞問題」というものがあるんだけど、これは数学上の7つの未解決問題(「P≠NP予想」「ホッジ予想」「ポアンカレ予想」「リーマン予想」「ヤン-ミルズ方程式と質量ギャップ問題」「ナビエ-ストークス方程式の解の存在と滑らかさ」「バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想」)に、100万ドルの賞金がかけられているものなんだ。
んで、このうちの「ポアンカレ予想」が最近、ロシア人のペレルマン博士によって証明されたわけなんだけど、今日はこの「ポアンカレ予想」について解説する。

ちなみに、この「ポアンカレ予想」は「ミレニアム懸賞問題」の中でも、一般の人には非常にイメージしにくい「トポロジー」と呼ばれる分野の問題であり、インターネット上でポアンカレ予想を解説しているサイトもあるのだけど、大抵それらは非常に難解であって、しかも「ロープを持って宇宙一周したらどうのこうの」と、これまた余計にわからなくなるような例え話が書かれている。
という事で、今日のエントリーはこのポアンカレ予想の本質について手短に説明したい。


そもそも、ポアンカレ予想とは「単連結なn次元閉多様体は、n次元球面に同相である」という予想なんだ。
まずは言葉の定義についてだけど、「AとBが同相である」とは、「図形Aを、切ったり穴を開けたりくっつけたりせず、曲げたり伸ばしたり縮めたりするのみで、図形Bに変形できる」という事である。もう少し数学的に言うと「図形Aと図形Bに連続的な1対1写像が取れる」という事なんだ。

poincare_digest.jpg
おそらく、文章だけの説明だとイメージがわかないので、n=1,n=2の時の具体例を↑の図を使って説明しよう。

まずは、@のn=1の場合を見て欲しい。この時、「単連結な1次元閉多様体」とは、2次元平面状で「線分の両端をつなげてできた閉図形」で、「1次元球面」とは「円周」を意味している。これを見ればすぐわかるけど、「単連結な1次元閉多様体」は、切ったりくっつけたりせずに、ちょっと形を整えて拡大/縮小するだけで、「円周」とぴったり一致する。これが「同相である」という事で、n=1の時は自明で成り立つ事がわかると思う。

そして、次にはAのn=2の場合を見てみよう。この時、「単連結な2次元閉多様体」とは、「内部に穴の無い立体の表面」で、「2次元球面」とは「3次元球の表面」を意味している。↑の画像中では、立方体の表面を例として書いたのだけど、この表面も切ったり穴を開けたりくっつけたりせずに、6面をそれぞれ上手に変形させた上で拡大/縮小すれば、3次元球の表面とぴったり一致する事がわかると思う。ということで、n=2の時も確かに自明で成り立ちそうな気がしますね。
ちなみに余談ですが、同じく2次元閉多様体である「トーラス」(ドーナツ形の表面)は、「2次元球面」とは同相ではありません。「トーラス」は、この形のままいくら変形したところで、一箇所をちょん切らない限りは「2次元球面」へ変形できないからです。(一箇所ちょん切れば、円柱の形に変形でき、そこから「2次元球面」に変形できます)このように、「立方体」と「トーラス」では物体の持つ空間的な性質(トポロジー)の異なる事がわかります。何に起因してこの違いが出るのかは、本エントリーの最後の参考@で補足説明致しましょう。

さて、話は戻して、次はBのn=3の場合を考えて見ましょう。ちなみに、ペレルマン博士が証明したのは、このn=3の場合です。今までは、n=1の時に2次元空間、n=2の時で3次元空間を考えていたわけですが、n=3になると4次元空間を相手にしなければいけないので、これが非常に難しいわけですよ。実際、「単連結な3次元閉多様体」も「3次元球面」も絵に描けないわけで、あくまで自分の想像力で考えるしかないのですが、とにもかくにもペレルマン博士の証明したのは「単連結な3次元閉多様体は、3次元球面に同相である」という事です。(一応、本エントリーの最後の参考Aで4次元球に対する補足説明をします)
ところで、ポアンカレ予想の面白いところは、普通は次元数が上がれば上がるほど証明が困難になると思ってしまうのですが、実は、n=4以上の時はすでに先人が証明されていて、最後のn=3をペレルマン博士が証明したところですかね。

わかりやすく書こうとは思っていましたが、やっぱポアンカレ予想を一般の人にわかりやすく説明するのは無理ですね。すみません。(謝)とりあえずn=1とn=2の時だけでも、飲み会用の話ネタにもなれれば幸いです。(笑)



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【参考@ 何故、立方体とトーラスではトポロジーが異なるのか?】
実は立方体もトーラスも、どちらも一枚の紙から作ることができるのですが、くっつけ方が異なるのでトポロジーが異なるわけです。

cubic-torus_difference.jpg
↑に、それを図示しました。立方体は、最後の貼り付けが一度に行えるので、1ステップ(単連結)で貼り付けが完了しますが、トーラスはまず側面の辺を貼り付けた上で、円周部分の貼り付けをしなくてはいけないので、貼り付けに2ステップ(2連結)必要です。この貼り付けのステップ数の違いで、同じ2次元閉多様体でもトポロジーが異なるわけです。


【参考A 4次元球のイメージ】
4D-ball.jpg
とりあえず「4次元球」のイメージを↑に出しておきました。ここでは、2次元球(円)はy直線で切った時の断面(面ではなく線だが)、3次元球をZ平面で切った時の断面、4次元球をt空間で切った場合の断面を表しています。何となく、4次元球についてイメージできるでしょうか?
それぞれの切った断面は、(例えば3次元球の断面が2次元円になるように)もともとの空間から次元数が1だけ落ちるのですが、「4次元球の断面が3次元球になる」という事は、やはり通常の感覚では理解しがたいところですよねぇ……。
posted by きらっち at 23:18| Comment(0) | TrackBack(2) | 科学
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