http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/36178549.html
A【アイスランドの経済状況〜その1〜】(2010年03月10日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/36221661.html
B【アイスランドの経済状況〜その2〜】(2010年03月11日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/36245835.html
というわけで、ちょっと間が開いてしまいましたが、↑の@ABに引き続き、今日はアイスランドの外貨準備高と対外債務を見てみましょう。

まずは、↑の外貨準備高についてみてみましょう。アイスランドの外貨準備高は、リーマンショック前までは25億ドル程度で安定していましたが、リーマンショック後に一気に35億ドル程度にまで増加しました。アイスランドは、2008年10月にIMFに2年間で20億ドル程度の緊急融資を得ることで合意したので、本来であれば徐々に外貨準備高が減るところだと思いますが、現状では外貨準備高が減っているようには見えません。ただし、2年間のIMF融資期限は今年の10月くらいに切れるわけで、その後アイスランドはIMFの融資が無くて大丈夫なんですかね?おそらく、IMFの融資は継続する事になるのではないかと思うのですが。
そして、↑のグラフからアイスランドの外貨準備高は、そのほとんどを外国通貨で運用している事がわかります。おそらく、ユーロやドル建ての債券なんかで運用しているのでしょうね。

そして、↑はアイスランドの対外債務です。
ちなみに、こんな推移をしている国はなかなか見る機会はないでしょうね。というのも、2007年Q1〜2009年Q4のわずか3年間の間で、「対外債務の合計」が3倍になった事がわかります。これは、通貨暴落した影響でしょうけど、それにしても長期債務が2倍程度に留まっていて2009年Q2をピークに減少している一方で、短期債務の増加が止まらず2007年Q1から7倍近くに膨張しています。つまり、短期でしかお金を借りれずに資金繰りがカツカツの状態になっている事がわかります。
しかも2009年Q4現在で、対外債務のうちの70%以上が「国内破綻金融機関の債務」であるので、アイスランド国民としては「破綻した金融機関の債務は返済しない」と言いたくなる気持ちもわからなくはないですねぇ……。(笑)
という事で、実際にアイスランド対外債務の対名目GDP比や対外貨準備高比がどうなっているかというと、↓の通りです。

まずは、アイスランド全体で見ると、2009年の時点で対外債務対名目GDP比は1000%を超えていて、対外貨準備高比だと3000%ですよ!うぅ、アイスランドはどうやって名目GDPの10倍もの対外債務を返済する気なんですかね?俺がアイスランドの国民であれば、この数字を見るだけで絶望的になるだろうなぁ……。
ただし、アイスランドは民間銀行の対外債務はとんでもない事になっていますが、「アイスランド政府」の対外債務となると、2009年時点で対名目GDP比が44%、対外貨準備高比で135%となります。ただし、対外債務でも短期のものにしぼれば、対外貨準備高比で14%程度であるので直近でアイスランド政府が破綻する事はなさそうですね。
とは言うものの、政府の対外債務が名目GDP比で44%という水準で、その上外貨準備高比が100%を超えているので、危険な香りはぷんぷんします。(ちなみに、2009年時点での日本政府の対外債務の対名目GDP比は13%、対外貨準備高比が68%程度)
アイスランドはしばらくIMFにお世話になるか、他の大口スポンサーが現れない限りは、名目GDPの10倍もの対外債務の返済で、今後数十年は借金の返済だけでいっぱいいっぱいでしょうね。(「対外債務を踏み倒さない限り」という条件付の話ですが……)とは言え、アイスランドは人口が少ないので実際の債務額で言えば大した額ではありません。
アイスランドは、資源がたくさん眠っている北極圏へ進出する際の拠点となり得る国であって、しかもアメリカとロシアの中間国に位置する地政学的にも重要な場所なので、見方によってはお買い得物件にもなり得る国でもあります。今は、IMFの融資で何とか持ちこたえていますが、そのうちアイスランドを巡って「アメリカ」「ロシア」、そして「中国」辺りが表立っていろいろと何か仕掛けるのではないかと、俺は見ています。ちなみに「日本」は、アイスランドを支援するメリットがあまり無いために、おそらく静観じゃないかなぁ……。
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