2010年08月04日

不況の象徴と財源負担の無いドル建て日本国債

@【長期金利 一時1%割れ…景気減速懸念、7年ぶり水準】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20100804-OYT8T00728.htm

A【長期金利一時7年ぶり1%割れ、「日本選好」海外資金流入も】
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-16638920100804

B【景気拡大下でも利回り最低 米国債 欧州不安で資金流入】
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100727/mcb1007270505016-n1.htm

いやいや、すごいですよ。ついに、10年物の日本国債の利回りは1%を切りました。日本国内に、ろくな投資先がない事と、Aの記事にあるように海外からも日本国債を買う動きがあるようですね。さらに、米国債についてもBの記事のように利回りの低下が続いています。
基本的にどこの国でも国債は、不景気の度合いが強まるにつれ安全な金融資産として買われます(利回りが低下します)。一方、景気拡大時になると相対的に利子や利回りの大きい株や社債等に資金が流れるために国債が売られます(利回りが高くなります)。つまり、今の日本国債や米国債の利回りは、両国の不況のシグナルと捉える事ができますし、極端に言えば日本国債バブルとも言えます。


【欧州債:独30年債利回り、約3週間ぶり高水準−入札で応札額達せず】
http://bit.ly/boGerD

「日米の国債利回りが低下しているという事は、ユーロ圏もそうなのか?」というと、実はそうでもなかったりします。つい最近、↑の記事の通り、孤軍奮闘でユーロ国を引っ張るドイツでさえ、30年物のドイツ国債が札割れに追い込まれました。いや、これはドイツの景気が良いから投資家が利子や利回りの良い株や社債を買っているからではなく、ユーロ圏への信用不安からドイツ国債が売れないわけで、事態は欧州の方がやばそうですね。もちろん、ドイツの場合は同一通貨であるユーロを使っているギリシャに足を引っ張られている側面はありますが、いずれにしてもユーロ圏の国は不景気・不況を通り越して、恐慌と言ってもいいのではないでしょうか?


さて、ここからは世界経済が最悪の方向で動いた場合に、その後に何が起こるかを予想してみます。まず、ユーロ圏の国の恐慌が収まらないとすると、ユーロの信用不安から米国債や日本国債がますます買われてしまいます。その結果、日本はさらなる円高と日本国債の利回り低下が進むでしょう。おそらく、ある程度円高が進めば政府や日銀の方も現状維持の金融政策を捨てて、さらなる金融緩和をするかもしれませんね。日本は米国やユーロ圏の国と違い、金融緩和においてはまだまだやれる余地を残しているとは言え、本格的な量的緩和みたいな事をやりだすと、海外勢は日本国債を売って実物資産の購入に走り出すんじゃないかなぁ……。
元々、日本国債は海外勢保有者が少ないので、仮に海外勢が日本国債を売り払っても大きな利回り上昇にはならないし、さらに、日本にはまだ量的緩和(日銀による長期国債の買い切り)の手が残されているので、世界的に見れば相対的には非常に安全国です。


もし日銀がこのまま金融緩和しないのであれば、ここで一つ提案してみたいのは「ドル建て日本国債」です。経常収支がしばらく赤字にはなり得ず、しかも大量の米国債を所有している日本が使える有効な手段です。
ご存知のように、日本政府は100兆円以上の外貨準備高の大半を米国債で所有しています。この米国債の利回りはドルで支払われるのですが、これを全て円に換えようとすると円高になってしまうわけで、日本の産業や雇用情勢を考えるとあまりしたくないところです。もしドル建て日本国債を発行すれば、このドル建て日本国債の利回りを日本政府所有の米国債の利回りで支払う事ができるので、日本政府の財政負担はほとんどありません。(現在の10年物の日本国債と米国債の利回りはそれぞれ1%と2.8%程度なので、この差額の1.8%をドル建て日本国債の利回りに充てられます。)しかも、ドル建て日本国債であれば、円高になればなるほど円で見れば実質の負担は軽減されますよね。
「中期的には自国通貨安の要素があまり無い」「自国国債の利回りが低く、米国債の方が利回りが大きい」「大量に米国債を保有している」という条件が揃っているので、ドル建て日本国債は一考に値するとは思うのですが、どうですかね?もちろん、アメリカ政府はあまり良い顔をするとは思えませんし、逆に円安に振れてしまうと実質負担が重くなるのでデメリットもあるわけですが、とりあえず短期日本国債の一部をドル建てで発行してみたらどうかなぁ……。



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2010年07月26日

2010年5月現在の日本と中国の米国債保有状況

さて、今日は日本と中国の米国債保有状況を見てみましょう。


201005_us-treasury.jpg
↑が、2010年6月現在の米国債発行残高と日本と中国の米国債保有状況です。

まずは、米国債発行残高を見てみましょう。アメリカはリーマンショック後、景気対策法(7820億ドル)と金融安定化法(7000億ドル)等々の財源確保のために、ひたすら米国債を刷り続けています。今年の6月には、米国債の発行残高は13.2兆ドルを程度となりました。現在のレート(1$=87円)で円換算すると、これはおよそ1150兆円程度ですかね。
アメリカは2008年1月から2010年6月の二年半で、割合で書くとおよそ43%、金額にしておよそ400兆ドルも米国債発行残高を増やしました。ただし、これだけのペースで米国債を刷り続けているにもかかわらず、↓の記事の通り、10年物米国債の利回りは下がり続けて現在は3%を切っています。

【超長期債利回り低位安定、需要拡大でリーマンショック後の最低視野も】
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920018&sid=at8VG2WqUb7I

やはり世界的な不況が続いていることで投資先が少なくなり、安全資産である米国債が買われているということでしょう。通常の経済状況では、誰かが株や社債等に投資することによって、お金が広く世の中に流れて好景気を作り出すわけですが、現在はリスクのある株や債券にはお金が回らず、米国債に資金が集中しているわけです。今はアメリカ政府の支出によりアメリカの景気も何とか持ちこたえているわけですが、今後アメリカの財政再建の圧力が強くなればアメリカも政府支出を絞る事で、お金の出し手がいなくなる事が心配です。

ちなみに、アメリカは↓の記事の通り、1月に1430兆ドルまで米国債発行上限を上げる法案を通しました。とは言え、今の米国債発行ペースであれば、数ヵ月後には再びこの上限値が突破しそうですねぇ……。

【Senate agrees to record increase in debt limit to $14.3 trillion】
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/28/AR2010012800522.html


さて、それでは日本と中国の米国債保有状況を見てみましょう。

まずは中国です。2009年7月に突然、中国の米国債保有額が上がっていますが、これは2009年7月から米国債保有額のカウントの仕方をアメリカの国債局が変えた事によるものです。この辺の詳しい事情はよくわかりませんが、とりあえずこの急増はあまり気にしないこととします。
とは言え、中国は2009年12月から外貨準備高の運用方針を変えたのか米国債保有を減らしています。この辺りは人民元の柔軟化政策ともかかわってくるので、今後の展開が面白いことになるでしょうね。
俺が中国の外貨準備高の運用責任者であれば、中長期的には当然のごとく元高ドル安が進む事により、米国債をなるべく売り払いたいところです。じゃあ、一体外貨準備高を何で運用すればいいのかと考えた場合、他通貨で運用するという前提ならば、円が相対的に見て一番元高にはならないのではないかと思うので、中国は今後日本国債を買い出す可能性があると思います。(日本にとって、良い話なのか悪い話なのかは微妙なところですが。)

そして、日本の米国債保有額ですが、順調に積みあがっていることがわかります。とは言え、日本の場合は政府が米国債を買っているわけではないので、民間企業が買い増していることになります。
個人的には、利益追求する民間企業が「何で円高ドル安の進む中で、わざわざ米国債を買いたいのだろうか?」と思うのですが、日本企業が海外支店でだぶついたドル資金で米国債を買ってるのかな?あるいは、世界経済が正常に戻って円安になることを見込んで、日本の金融機関が米国債を買ってるとか?


いずれにしても2010年5月の時点では、日本(7868億ドル)と中国(8677億ドル)で米国債発行残高(13兆ドル)の13%程度を保有していることになります。「この程度の割合であれば、中国が米国債を売りさばいても、アメリカ政府は何とか耐えられるんじゃないの?」と思わなくもない数字ではありますが、国際収支の経常収支が大幅黒字国である中国や日本は、安定した世界経済を実現するためにも、個人的にはある程度の米国債やユーロ国の国債を買ってもいいような気がします。(それが、自国の国益にもつながると思うのですが……)



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2010年07月21日

2010年5月の日米欧中マネーストック最新状況

@【2009年12月の日米欧中マネーストック最新状況】(2010年2月10日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/35247479.html

さて、日米欧中のマネーストックについては、↑@で昨年12月の統計まで推移を見ていましたが、その後はどうなっているのでしょうか。今日は、今年5月までの統計を見てみましょう。


201005_money-stock_juec.JPG
という事で、↑が2010年5月までの日米欧中のマネーストック推移となります。毎回、このグラフを見るたびに、「誰もが思う突っ込みどころが1点あるよなぁ」と思っちゃいますね。(笑)


さて、とりあえず今回はEUから見てみましょう。EUは、リーマンショック後の2008年10月からマネーストックがほとんど変化していません。元々、EUはインフレを抱えている国が多いため、必然的にマネーストックが増加していたわけですが、その流れがリーマンショックでパタリと止まりました。EUのマネーストックはM3(=M1+定期預金+据置貯金+定期積金+外貨預金+CD(譲渡性預金))を取っています。ここではグラフは出していないのですがEUのマネーストック(M1)は順調に増加していることから、「定期預金」「据置貯金」「定期積金」「外貨預金」「CD(譲渡性預金)」を削って、M3にカウントされない何かを購入している事になります。それが株なのか債券なのか、あるいは金や原油に代表される資源関係かはわかりませんが、このバランスシート不況の中でEUの人たちが「株」「債券」に多く流れるとは思えないので、EUのマネーストックが増加しない今の状況は非常に嫌な感じがします。


アメリカについても、マネーストックについてはEUと似た状況かもしれません。ただ、アメリカのマネーストックはM2(=現金通貨+国内銀行等に預けられた預金)を取っているので、外貨預金で海外に逃げるマネーはカウントされていません。しかも、アメリカのマネーストックは微増ながらも増え続けているため、EUほど深刻な状況でも無いように思えます。おそらく、量的緩和によって溢れたマネーが海外投資に向かったり、株や債券等から資産シフトにより現金・預金に移った一部が再び株や債券等に戻る事で、マネーストックの増加率が落ちているのだと推測できます。もしこの推測が正しければ、アメリカは少なくとも5月までは正常な経済を取り戻しているとも言えるかもしれません。(最新の経済指標では、二番底の懸念が出てきましたが……)


日本については、ほとんど2007年から変化がありません。あえて書くのであれば、2009年1月辺りからマネーストックの増加率が多少上がっているような気がします。ここでは詳細なグラフは載せていませんが、これの主な要因は「定期預金」「据置貯金」「定期積金」が増えている事なので、明らかに株や債券等の金融資産から安全資産である「定期預金」等に資産シフトが起こっているわけです。この流れだと、結局預金を預けられた銀行は日本国債を買うしか無いのですが、肝心の政府が予算を絞る方針なので、これからも景気が大幅に良くなる事はないでしょうね……。


そして、一番の突っ込みどころの中国です。3年5ヶ月でマネーストックが1.9倍になっているので、尋常な状態じゃないような気がしますね。ただ、最近の中国の名目GDP成長率(2007年23%、2008年18%、2009年7%)を察するに、マネーストックが経済成長率に比例するのであれば3年間で1.55倍(=1.23*1.18*1.07)程度の増加については、自然なのかもしれません。とは言え、実際の中国のマネーストックは2007年から3年間で1.7倍になっているので、何らかの歪が出ていてもおかしくないような気がしますが……。


という事で、次はまた半年後くらいに「マネタリーベース」と「マネーストック」について、追ってみたいと思います。



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2010年07月19日

2010年5月の日米欧中マネタリーベース最新状況

@【2009年12月の日米欧中マネタリーベース最新状況】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/35176671.html

ブログ再開の第一弾として、今日は各国マネタリーベースの最新状況を見てみましょう。@で、2009年12月までのマネタリーベースは見てみましたが、果たして何か大きな変化があらわれたでしょうか?


201005_money-base_juec.jpg
という事で、↑が2010年5月現在の日米欧中のマネタリーベース推移となります。何回も書いて申し訳ないのですが、「マネタリーベース」とは「各国中央銀行が社会に供給するお金の総額(通貨流通量+民間銀行への当座預金残高)」という事になります。ここでは各国の通貨単位がバラバラで数字の桁も異なるので、2007年1月の各国のマネタリーベースの数字を100として指数化したものの推移を表しています。

アメリカを見てみると、2010年2月をピークにしてマネタリーベースが落ち着きだしました。アメリカは昨年にこれ以上の量的緩和を打ち切っていて、とりあえず今の水準で様子見というところなんですかね?

EUについては、2010年に入ってマネタリーベースが上昇トレンドになっています。もともとEUは、リーマンショックよりも以前からインフレ懸念のある国がある事も影響しているのですが、今年に入ってのギリシャ問題が表面化した事等により、信用不安を和らげるために一時的に紙幣供給してるのでしょうか?ECB(ヨーロッパ中央銀行)が量的緩和へ舵を切ったので、今後おそらくEUのマネタリーベースの上昇ペースが上がるような気もします。

中国についても、特段大きな変化はありません。中国は、もともと2月に旧正月を迎えるため1月は消費が大きくなることにより、1月のマネタリーベースが大きくなる傾向があります。しかし、中国はここ数年は毎年20%近くの名目GDPが上昇しているにもかかわらず、マネタリーベースの伸びはそこまで大きくありません。これは、一体どう解釈すればいいのでしょうか?この辺りも、時間があるときにゆっくり考えてみようと思います。

そして、最後に日本のマネタリーベースですが、ほとんど増えていません。日本は中国と同様に、12月と3月の経済活動が活発になることより、毎年12月と3月にマネタリーベースのピークができます。アメリカやEUと比較すれば、日本銀行の金融政策は「静観」が続いていますね。これを「無策」と見るか「日本の金融は正常なので、あえて手を打つ必要は無い」と見るかは、いろいろと意見の分かれるところかもしれませんが、少なくとも「まだ量的緩和の手段は残されている」という事で、日本は隠し玉を持っていると言えそうです。


しかし、アメリカはマネタリーベースをいつか元の状態に戻すことを考えているのでしょうか?マネタリーベースがこんな状態で、アメリカの景気が本格的に回復してしまう状態になると、市中に大量のドルが出回り始めるために、ドル安がさらに進んでしまうような気がします。あまり考えたくないのですが、今後はアメリカの景気回復が進むとドルの供給過剰で円高が進み、アメリカが景気回復しないと安全通貨への逃避で円高が進むという、どっちに行っても円高が進みそうな気がします。



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2010年03月24日

亀井大臣の意図はこうだ!

【ゆうちょ銀、上限2000万円 かんぽ2500万円に】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20100324-OYT8T00384.htm

なるほど。さすがというか何というか、公共事業推進派の亀井金融大臣の事なので、当然これも公共事業を見据えた政策ですね。
まだ亀井大臣も本音を見せていない段階なので、あくまで個人的な憶測ですが、預け入れ額の上限引き上げによって、その増えた金額の一部を公共事業の原資にしようと思ってるのだと思います。


みなさんもご存知のように、バランスシート不況時は個人が株や債権等への投資をしなくなるために、銀行への貯蓄額が積み上がります。ところが民間銀行の方も、バランスシート不況時は極度にリスクのある投資を嫌がるので、結局は安全資産である日本国債を購入しているわけで、この結果日本の民間会社には資金が行き届きません。
となると、結局こういう状況ではお金をバンバン支出できるのは国しかなくなるので、今までは国債発行を原資として政府支出によって景気を支えていたわけですよ。その結果、家計貯蓄額がどんどん積み上げる一方で、政府負債もどんどん積み上がって、家計資産と政府負債のアンバラが拡大し続けたわけですね。


さて、この状況でゆうちょ銀行とかんぽの預け入れ限度額を上げたらどうなるでしょうか?当然、これによってゆうちょ銀行とかんぽへの預け金額は増えます。一方で、民間銀行への預け金額は減るでしょうね。(なので、民間銀行は↓のように、当然反対するわけですが。)

【郵政改革法案、政府関与残るなら郵貯の業務拡大「断じて許容できない」=全銀協】
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK038927820100324


ところがゆうちょ銀行やかんぽは、積み上がったお金の一定割合を公共事業みたいなものへ投資できるようなシステムができるとすると、

@家計の過剰貯蓄が民間銀行を通して国債に振り向けられていたものが、ゆうちょ銀行やかんぽを通して公共事業へ支出される。

Aしかも、この公共事業の原資は家計貯蓄なので、国の財政負担は無い。

という事で、直感的に考えると、このやり方であれば財政支出を行うことをせずにバランスシート不況の根本の原因を止められる有効な手段になりそうな気もします。


という事で、明日以降はもうちょっとこの政策のメリット・デメリットを深く突っ込んで考えてみようと思います。



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posted by きらっち at 22:24| Comment(17) | TrackBack(1) | 経済

2010年03月15日

アイスランドの経済状況〜その3〜

@【預けたお金を返してくれない国】(2010年03月09日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/36178549.html

A【アイスランドの経済状況〜その1〜】(2010年03月10日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/36221661.html

B【アイスランドの経済状況〜その2〜】(2010年03月11日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/36245835.html

というわけで、ちょっと間が開いてしまいましたが、↑の@ABに引き続き、今日はアイスランドの外貨準備高と対外債務を見てみましょう。


200912_iceland_foreign-reserves.jpg
まずは、↑の外貨準備高についてみてみましょう。アイスランドの外貨準備高は、リーマンショック前までは25億ドル程度で安定していましたが、リーマンショック後に一気に35億ドル程度にまで増加しました。アイスランドは、2008年10月にIMFに2年間で20億ドル程度の緊急融資を得ることで合意したので、本来であれば徐々に外貨準備高が減るところだと思いますが、現状では外貨準備高が減っているようには見えません。ただし、2年間のIMF融資期限は今年の10月くらいに切れるわけで、その後アイスランドはIMFの融資が無くて大丈夫なんですかね?おそらく、IMFの融資は継続する事になるのではないかと思うのですが。
そして、↑のグラフからアイスランドの外貨準備高は、そのほとんどを外国通貨で運用している事がわかります。おそらく、ユーロやドル建ての債券なんかで運用しているのでしょうね。


2009Q4_externel-debt_iceland.jpg
そして、↑はアイスランドの対外債務です。
ちなみに、こんな推移をしている国はなかなか見る機会はないでしょうね。というのも、2007年Q1〜2009年Q4のわずか3年間の間で、「対外債務の合計」が3倍になった事がわかります。これは、通貨暴落した影響でしょうけど、それにしても長期債務が2倍程度に留まっていて2009年Q2をピークに減少している一方で、短期債務の増加が止まらず2007年Q1から7倍近くに膨張しています。つまり、短期でしかお金を借りれずに資金繰りがカツカツの状態になっている事がわかります。
しかも2009年Q4現在で、対外債務のうちの70%以上が「国内破綻金融機関の債務」であるので、アイスランド国民としては「破綻した金融機関の債務は返済しない」と言いたくなる気持ちもわからなくはないですねぇ……。(笑)


という事で、実際にアイスランド対外債務の対名目GDP比や対外貨準備高比がどうなっているかというと、↓の通りです。
2009Q4_edr-iceland.jpg
まずは、アイスランド全体で見ると、2009年の時点で対外債務対名目GDP比は1000%を超えていて、対外貨準備高比だと3000%ですよ!うぅ、アイスランドはどうやって名目GDPの10倍もの対外債務を返済する気なんですかね?俺がアイスランドの国民であれば、この数字を見るだけで絶望的になるだろうなぁ……。
ただし、アイスランドは民間銀行の対外債務はとんでもない事になっていますが、「アイスランド政府」の対外債務となると、2009年時点で対名目GDP比が44%、対外貨準備高比で135%となります。ただし、対外債務でも短期のものにしぼれば、対外貨準備高比で14%程度であるので直近でアイスランド政府が破綻する事はなさそうですね。
とは言うものの、政府の対外債務が名目GDP比で44%という水準で、その上外貨準備高比が100%を超えているので、危険な香りはぷんぷんします。(ちなみに、2009年時点での日本政府の対外債務の対名目GDP比は13%、対外貨準備高比が68%程度)


アイスランドはしばらくIMFにお世話になるか、他の大口スポンサーが現れない限りは、名目GDPの10倍もの対外債務の返済で、今後数十年は借金の返済だけでいっぱいいっぱいでしょうね。(「対外債務を踏み倒さない限り」という条件付の話ですが……)とは言え、アイスランドは人口が少ないので実際の債務額で言えば大した額ではありません。
アイスランドは、資源がたくさん眠っている北極圏へ進出する際の拠点となり得る国であって、しかもアメリカとロシアの中間国に位置する地政学的にも重要な場所なので、見方によってはお買い得物件にもなり得る国でもあります。今は、IMFの融資で何とか持ちこたえていますが、そのうちアイスランドを巡って「アメリカ」「ロシア」、そして「中国」辺りが表立っていろいろと何か仕掛けるのではないかと、俺は見ています。ちなみに「日本」は、アイスランドを支援するメリットがあまり無いために、おそらく静観じゃないかなぁ……。



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posted by きらっち at 23:20| Comment(2) | TrackBack(0) | 経済

2010年03月10日

アイスランドの経済状況〜その1〜

【預けたお金を返してくれない国】(2010年03月09日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/36178549.html

という事で、昨日の予告どおり今日〜明後日は三回に分けてアイスランドの経済状況を「GDP」「国際収支」「外貨準備高」「対外債務」の推移を追いながら、いろいろと見ていきましょう。
今日は「GDP」、明日は「国際収支」に着目してアイスランドの金回りを調べることにして、明後日は「外貨準備高」「対外債務」を調べて債務状況と破綻可能性を考察します。

さて、まずは名目GDPと実質GDPを見てみましょう。アイスランドの実質GDPは何年の物価を基準にしているのかわからないのですが、名目GDPと実質GDPの数値が大きくかけ離れている上に、ここ最近の物価上昇率が非常に大きいので、まずは物価上昇を除去した実際の経済規模を示す実質GDPから考察してみます。


2009Q4_realGDP-iceland.jpg
↑が2007年からのアイスランドの実質GDPです。実質GDPを見ると、アイスランドの絶頂期は2007年Q3でした。元々アイスランドは、金融自由化を推し進めて、海外からお金を流入させて経済発展させていたわけですが、サブプライム問題やリーマンショックを機に、外資が逃げ出して凄まじい状況に追い込まれた様子が読み取れます。

GDP項目の中で一番ダメージの大きい物は「民間住宅」と「民間設備投資」ですね。「民間住宅」にいたっては、2009年Q4現在でも底が見えないばかりか、最盛期だった2007年Q3の水準のわずか18%程度ほどに激減しています。そして「民間設備投資」は、2009年Q1で底を脱したかのように見えますが、この時期は最盛期2007年Q3の水準のわずか20%程度にまで急減しています。さらにアイスランドが非常にまずいのは、「最終民間消費支出」まで急減してしまっていることです。2007年Q4の最盛期と比較すれば、2009年Q2は75%程度に落ち込みました。ただし、2009年Q3以降も「最終民間消費支出」の回復力は弱く、以前の経済状態まで戻るのは非常に長い時間を要することになりそうです。

一方で、「政府最終消費支出」の方はそこそこ踏ん張っているのですが、アイスランド政府も財政的には余力がほとんどないために、「公的固定資本形成」はボロボロの状態です。ただ、仮に財政的な余力があるにしても、アイスランドみたいに人口が少なくて、国土も狭い上に、可住地域が島内の特定箇所しかないような小国の場合は、公共事業を増やすにしても、どんな公共事業が考えられるのですかね?

そして「純輸出」だけは、収支が改善しています。元々アイスランドは輸入超過の貿易赤字国だったのですが、(ここでは、純輸出の内訳はグラフに出してはいませんが)通貨クローナの暴落を追い風に「物の輸出」「サービスの輸出」共に堅調に増加しています。一方で、「物の輸入」「サービスの輸入」は減少しているために、リーマンショック後にアイスランドは突如として貿易黒字国に転換しました。(輸出も輸入も減少した韓国とは、状況が少し違うようです)しかも2009年Q4現在では、GDPの10%以上を純輸出が占めるようになっていますが、輸出については増加ペースがまだ頭打ちになっていないので、まだ「純輸出」は増える可能性が大きいと俺個人は思っています。


2009Q4_nominalGDP-iceland.jpg
さて、次は物価影響を加味しない↑の名目GDPを見てみましょう。まずは、2007年Q1と2009年Q4の名目GDPと実質GDPを比較してみましょう。実質GDPの方は、2007年Q1も2009年Q4も、およそ2190億クローナ程度でほぼ同じですが、名目GDPの方は2007年Q1でおよそ3000億クローナ、2009年Q4でおよそ4000億クローナとなっているので、すごい大雑把に言えば、この3年間で物価はおよそ33%程度のオーダーで増加した事が読み取れます。
そのせいか、実質GDPでは大きく減少して回復が進んでいない「最終民間消費支出」が、名目GDPの方ではすでに最盛期の水準に戻りつつあったりして、まったく別の統計に見えたりしますね。ただ「民間住宅」は、名目GDPを見ても実質GDPを見ても、瀕死の状況であるのは一目瞭然ですがなのが……。


という事で、GDPを見る限りアイスランドは、インフレの影響が強い上に「最終民間消費出」「民間設備投資」「民間住宅」が激減したわけで、非常に経済状況が苦しくなったのではないでしょうか?とは言うものの、インフレが進み外資が逃げ出し、アイスランドは自国通貨価値が暴落した事によって、輸出増加を促して貿易赤字国から貿易黒字国へと転換しました。
ちなみにですが、2009年Q4現在のアイスランドは、名目GDPの10%以上を純輸出で稼いでいて、輸出額対名目GDP比も50%を超えています。一方で2007年Q1では、純輸出が名目GDPを-11%押し下げていて、輸出額対名目GDP比もわずか36%でした。という事で、今やアイスランドは立派な貿易依存国と言えるでしょう。
ただしこれは裏を返せば、アイスランド国内の内需がボロボロで外需にしか活路を見出せないという事でもあるかもしれません。


昨日のエントリーでも書きましたが、「電力料金が安い」と「通貨暴落した」いうメリットを活かせば、それなりにアイスランドは活路を見出せそうな気はします。そのための資金を外国(特にユーロ圏)に求めるのならば、イギリスやオランダには預金を返す約束をして、あまり彼らを刺激させない方が良いような気もするんですけどねぇ……。



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2010年03月09日

預けたお金を返してくれない国

先週末は単純に更新をさぼっていて、さらに月曜日からは出張で更新滞りすみませんでした。コメントの返信は、今日の仕事が終わってから書きます。


【アイスランド:英蘭預金者保護法案を否決 国民投票で】
http://mainichi.jp/select/biz/news/20100308k0000m030047000c.html

よくよく考えてみればこれもすごい話で、イギリス人とオランダ人がアイスランドの銀行に預けていた預金が引き出せなくなったので、アイスランド政府が肩代わりして「イギリスとオランダ分の預金の払い戻しをしよう」という法案が否決されてしまったわけですよ。
そりゃイギリスやオランダから見れば、「アイスランドの銀行は泥棒か詐欺師と同じじゃねぇか!」って事になりますよねぇ……。

確かに、「借りたものは返す」ってのは世の中の鉄則です。ただし、民間会社の場合は破綻によって債務整理ができますけど、さすがに銀行における対外的な預金や債務に対してはチャラにできるわけでもなく、アイスランドはどうするつもりなんですかね?


そもそも、アイスランドは金融立国だったので、リーマンショック後にどうやって国を立て直すかを、今一生懸命考えているところだと思いますが、GDPの4割に当たるイギリスやオランダの預金を返すのは相当しんどいと思いますよ。
ちなみに、アイスランドは電力のほとんどを水力と地熱発電で補っていて、電力料金が近隣EU諸国よりもだいぶ安いという事情があります。よって、多くの電力を必要とする金属精錬(特にアルミニウム)が、今後のアイスランドを支える産業になるのではないかと、個人的には思っています。幸い、EUの工業国であるドイツは自国で金属を産出するわけではなく、どこかの国からの海上輸入に頼らざるを得ません。しかしながら、ドイツ国内での金属精錬は高くつくので、アルミニウム原石をアイスランドに積み下ろし、精錬したアルミニウムをドイツに持っていくのならば、アイスランドもドイツもウィンウィンの関係が築けるのではないでしょうかね?
あとはアイスランドの産業っていうと、従来からの「漁業」「水産加工業」や「観光業」ってところでしょうね。リーマンショック後、アイスランド通貨のクローナは通貨価値が1/3程度に暴落したので、「オーロラ」と「温泉」を売りにして日本人観光客を獲得するという戦略はどうでしょうか?(オーロラの観測時期は、初秋から初春にかけてではありますが)


という事で、バルト3国やギリシャの時と同じように、明日はアイスランド経済や債務に関する数値データを詳しく見ようと思います。



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2010年03月03日

日本の完全失業率の推移

【1月の完全失業率4.9%、有効求人倍率も0.03ポイント改善】
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20100302ATFS0200F02032010.html

ふむふむ。とりあえず、去年の7月をピークに失業率はゆっくり落ちているのだけど、トヨタのリコール問題で自動車産業の雲行きが非常に怪しいし、世界経済の二番底の懸念は消えないし、日本の失業率については今後の見通しが読めないんだよなぁ……。
という事で、今日は完全失業率の「年代別」「性別」によってどう変わるかを見ていきましょう。まずは、男女合わせた年代別の完全失業率推移のグラフが↓になります。

201001_unemployment-rate-japan.jpg
やはり、リーマンショック以降の2008年12月以降で、全ての年代について完全失業率が上がっている事がわかりますね。(65歳以上は増えたかどうか微妙なところかもしれませんが。)

特にひどいのは15歳〜24歳です。この年代の完全失業率は2009年になって急上昇し始めて、およそ9%〜10%の間で推移しています。昨年も今年も、非常に厳しい就職活動だったのではないかと推測されます。
そして、この年代は「月毎の値のばらつきが非常に大きい」という特徴も見られます。これはおそらく、「完全失業率」の定義を考えれば説明がつきます。
「完全失業率」とは

@現在仕事についていない
A仕事を探している
B仕事があればすぐに就くことができる

の3つを満たしている人です。つまり、アルバイトをしている人は@の条件を満たしていないので、完全失業率にはカウントされていないわけですよ。おそらく、15歳〜24歳は派遣も含めて日雇いみたいな仕事をしている方が多いため、調査タイミングによって数字が大きく変わるということでしょうね。

そして、25歳〜34歳も6%〜7%の高水準で推移していますね。ひょっとすると日本だけかもしれませんが、若い年代でこれだけ完全失業率が高いと、結婚する人が減ってますます少子化が進むかもしれませんねぇ。(実際に調べていないけれど、外国はどうなんですかね?若い年代の失業率が増加すると、結婚しなくなるんでしょうか?)


という事で、とりあえず次は↓の男女別の完全失業率を見てみましょう。(↑↓の3つのグラフは、縦軸のスケールが同じなので、見た目の違いが実際の数字としての違いになります。)

201001_unemployment-rate-japan-man.jpg

201001_unemployment-rate-japan-woman.jpg
やはり、女性の方が完全失業率が低くなりました。特に15歳〜24歳については、同じ年代の男性とは非常に異なります。2009年5月までは、男性と同じような推移を辿っているわけですが、2009年6月以降は完全失業率が低減しています。おそらく、女性の場合は就職を諦めて「家事手伝い」となる事により、上記の完全失業の条件であるAが満たされなくなる人が多数出てきたからではないでしょうか?

しかし、男性の15歳〜24歳は物凄い高い値が出てますねぇ。「10人に1人が職を探しててバイトもしていない」というわけで、ここでアルバイトをしつつ就職活動をしている人まで加えたら、結構なパーセンテージになりそうですねぇ……。
普通に考えると、「年収1千万の50歳を1人リストラして、その分若い人を数人くらい雇えばいいじゃん?」と考えてしまうところですが、すでに働いている人をリストラするのはやはり相応に難しいという事でしょうね。裏を返せば、「職を探していて貯蓄の無い若い世代」は、就職難とデフレの直撃をもろに受けているので、この不況の一番の被害者であると言えるかもしれません。とはいえ、外需の急速な回復が見込めないとなると、しばらく日本の失業率も厳しい状況が続くような気がします。

もし俺が就職活動をしようとする立場なら、この怒りをどこにぶつければいいのでしょうか悩むところです。



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2010年02月25日

アメリカの家計資産と家計負債

@【米の家計資産、600兆円減 1年で、7割が株式・不動産】(2008年12月19日)
http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt242/20081219AT2M1301K18122008.html

@はリーマンショック直後のちょっと古い記事ですが、あの頃のアメリカの家計資産は1年で日本のGDP以上に減少していたというニュースです。何だか信じられないような金額が消えてしまったわけですねぇ……。

という事で、実は最近この記事を読んだのですが「そういえば、日本の家計資産や家計負債は以前のエントリーで書いたけど、アメリカの家計資産と家計負債は何も書いたことないなぁ」と思ったので、今日はアメリカの家計資産と家計負債について見てみましょう。


2009Q3_us-household-asset.jpg
↑が、アメリカの家計資産です。日本の家計資産と言うと、普通は金融資産のみを指しますが、アメリカの場合は金融資産と固定資産のどちらも考えます。
とりあえず↑のグラフを見ると、2008年9月のリーマンショックよりも、2007年に火がついたサブプライム問題の影響が強かった事がわかります。しっかし、アメリカは2003年からの資産額上昇のペースがすごかったんですね。2003年から2007年のわずか5年間の間に、金融資産は70%近く、固定資産も50%近くも増加し、約30兆ドルも総資産額が上昇したわけです。しかしながら2007年Q3をピークにして、2009年Q1まで家計資産が急減したわけですが、この1年半の間で17兆ドル(1$=90円とすると、およそ1530兆円。日本のGDPの3倍!)も資産額が消えたわけで、これは確かにすごい影響が出ますよ……。
とはいえ、やはり家計資産が急激に落ちすぎたのか、2009年Q2,Q3と結構な勢いで回復しているように見えます。


2009Q3_us-household-liability.jpg
↑そして、こちらがアメリカの家計負債と純資産です。アメリカの家計負債は、ほとんどが不動産ローンですね。日本の家計もほとんどが不動産ローンだった記憶があるのですが、アメリカの家計の場合はカードローンもそれなりにあるんですね。「アメリカは、不動産危機の次にクレジットカード危機が来る」という主張もあるくらいですもんねぇ。
そして(固定資産を含めた)純資産は、ピーク時で66兆ドル(およそ5940兆円)もありましたが、2009年Q1には49兆ドル(4410兆円)まで落ちています。そして、日本と比較するために、固定資産を省いた金融純資産を見てみましょう。現在のアメリカの金融純資産は、30兆ドル(2700兆円)ですね。日本の場合は、1000兆円なので単純な金額だけで言えば負けているのですが、人口1人当たりだと日本は良い勝負できるかもしれませんね。(以前、「家計資産はぶっちぎりで日本が世界一」という事を何回か書いた記憶があるのですが、ここで訂正させていただきます。金融資産のみでなく固定資産も含めた日本の家計資産は、人口1人当たりで世界一のような気はするのですが。)

そして、金融資産額対負債額の割合ですが、日本がおよそ28.6%(400兆円/1400兆円)でアメリカが31.8%(14兆ドル/44兆ドル)となります。何だか家計部門のこの数字だけ見ると、アメリカが「借金大国」とまで言いきれるのか微妙だと思いますよ。確かに、アメリカの家計負債額だけを見れば圧倒的に世界一なんでしょうけど、アメリカの家計も日本の家計と同様に負債を払えるだけの金融資産があるわけですもんねぇ……。(ひょっとして、アメリカが借金大国だと今まで騙されてた?)


という事で、今日のエントリーでは「日本とアメリカの家計部門に対する、金融資産額対負債額の割合は大きく違わない」という意外な事実を知れました。確かに、国としてのバランスシートは家計部門だけで構成されるものではありませんが、俺的にはちょっとびっくりです。



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2010年02月24日

日本国債の買い手とその購入意図

@【個人向け国債、金利で魅力低く 財務省が意識調査】(2010年2月22日)
http://markets.nikkei.co.jp/kokunai/hotnews.aspx?id=ASFS1902R%2021022010

↑@の記事を見る限り、個人向け国債を買わない理由は「お金が無い」という事ではなく「利回りが低い」って事ですね。数年前までは、わりと家計部門による国債購入が増加してたような気がするのですが、直近では全然人気が無くて個人向け国債が売れてないのでしょうね。


A【個人向け国債 固定5年(第17回)の発行条件】
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/kojinmuke/contents/list_kotei/No_17.html

まぁ確かに、直近で発行された固定5年物の個人向け国債の利回りは、↑Aの通り税引後で0.35%程度なので、こんなんじゃ買う気になれないのもわかりますよ。(笑)
でも、だとすれば一体誰が日本国債をあんな低い利回りでも購入してるのでしょうか?今日は、その辺について迫ってみたいと思います。


2009Q3-japan_bond-holder.jpg
という事で、↑が2006年Q2からの「日本の普通国債所有者別内訳の推移」です。2006年Q1以前のデータは、購入者カテゴリーが現在と異なる統計なので単純な比較が難しい事から、ここでは掲載していません。

さて、このグラフを見るといろいろと興味深い事がわかりますね。まず、「日銀」と「一般政府」の所有する割合がどんどん少なくなっています。日銀に関しては、2006年3月に量的緩和が終了したのをきっかけに金融引き締めに転じたため、民間へのお金の供給を減らすためにその原資である日本の普通国債を売り出したという事でしょうね。ちなみに、リーマンショック以降の日銀の資金供給は短期国債が原資になっているため、↑のグラフではカウントされていません。この事から日銀は、リーマンショックの一時的な資金需要については対処するが、長期的な金融政策については、2009年Q3の時点で「緩和」という方向性を想定していない事が推測されます。そして「一般政府」の減少分は、財投債(地方自治体や独立行政法人などに資金を貸し付けるため政府が発行して、政府で所有する国債の事。しかし、これによって自治体や独立行政法人の自立を妨げるなどの批判もあって、発行額は年々減っている。)によるものでしょうね。

そして「銀行等」については、リーマンショック前までは所有率が40%前後で推移してきましたが、リーマンショック後の2008年Q4以降は、どんどん所有率が上がっています。金融不安によって、「株」や「債券」から「定期預金」や「普通預金」等へ資産シフトした結果、銀行の預かるお金が増大してしまったからでしょうね。日本国内に、利子や利回りの良い投資対象があれば銀行も積み上がる資金をそちらに流すのでしょうけど、とりあえず魅力的な金融商品が見つからないので、国債を買う選択肢しか無いのでしょうね。

「生損保等」については、2006年から一貫して国債所有率が増え続ける傾向にありますね。生命保険や損害保険については、将来の保険金や給付金などの支払いに備えるため、「責任準備金」としてお客の支払ったお金を積み立てていて、その積立金は資金の貸付けや株式・債券などへの投資で運用されています。これによって、保険会社はお客に対して「最低保証」を約束しているわけですね。という事で、この「最低保証」を約束するために、保険会社は安全資産である国債を購入しているわけですよ。さすがに、何かを保証する保険会社の場合は、投資信託とか金融派生商品みたいに購入者にリスクを背負わせることができないので、国債以外の購入は難しい事もあるかもしれませんね。

「公的年金」については、リーマンショック以降、所有率の増加が止まったように見えますね。これはおそらく、今まで国債を購入していたお金で日本株を買い支えて株価の底割れを防いでいたからでしょうね。日本の株価がある程度まで上昇すれば、再び「公的年金」の国債所有率は上がってくると思います。ただ、今後は納付者がどんどん少なくなる一方で、保険料の値上げの可能性もあるので、長期的にも「公的年金」の所有率が増加するかは不透明のような気がします。

「年金基金(私的年金)」「その他」については、特段の変化は読めません。

「海外」については、2008年Q3に所有率は7.9%のピークを迎えていましたが、リーマンショックを機に所有率が落ちて、2009年Q3では5.8%となっています。「いよいよ日本国債も国内だけじゃ支えきれなくなるのかな?」と思っていましたが、幸か不幸かなかなかそうはならない模様です。元々、GDP対日本の国債発行残高が170%で先進国の中でも一番高い数字であるため、いくら「円高基調」とは言っても海外の投資家から取ってみれば、「何でこんなリスキーな国債をこんな低い利回りで買わなくちゃいけないんだ!」というところなんでしょうね。
それでも買っている国は、通貨暴落&破綻懸念がちらほら出ているイギリス辺りですかねぇ……。

そして最後の「家計」ですが、2007年Q2からは家計の国債所有率は止まった事がわかります。その原因は、@の記事にある通りに「利回りの低さ」でしょうね。確かに、「日本国民が日本国債を信頼していない」という可能性も無きにしも有らずかもしれませんが、そもそもそこまで日本国債が信頼されていなければ、それを購入している銀行が批判にさらされていなければおかしいわけですし、国債を大量発行する来年度予算案だってもっと叩かれているはずです。(笑)
日本の家計部門は、純資産が1000兆円もあるので、その気になれば国債はまだまだ買える余力があるはずなんですよ。それでも家計部門が国債を買わないのは、単純に「利回りが低すぎる」という以外に合理的な理由が見つかりません。もし銀行貯金に課税するとなれば、家計部門が貯金を諦めて日本国債を大量に買ってくれそうですねぇ……。(笑)


それでは、これを踏まえた上で
○金融不況の二番底が来た場合
○このまま世界経済が回復する場合
で、日本国債所有率や日本国債の利回りはどのように変わっていくのでしょうか?次回は、この辺を考えてみたいと思います。



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2010年02月16日

2009年Q4の日本GDP

@【10〜12月の名目GDP、年率0.9%増 7四半期ぶりプラス】
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20100215ATFL1502915022010.html

A【10〜12月期GDP、4・6%成長 3四半期連続プラス】
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100215/mca1002150859007-n1.htm

昨日、2009年Q4の日本のGDPが発表されました。とりあえず、@の記事の通り、物価変動を考慮しない名目GDPが7四半期ぶりに前期比でプラスとなりました。基本的に、実質GDPが増えても名目GDPが増えない限りは、国債返済の実質負担が重くなるだけですので、名目GDPが久しぶりに増加した事に、俺個人としてはほっとしています。
さて、一方でAの記事の通り、物価変動を考慮した実質GDPは前期比で1.1%(年率換算で4.6%)と、数字上では日本の景気も急回復しているように見えるのですが、この実質GDPの中身を見てみるとそんなに楽観はできません。今日は、その辺りを考察してみましょう。


2009Q4_japan-realGDP.jpg
という事で、↑が2007年Q1からの日本の実質GDP推移になります。実質GDPを見ると、日本の景気の底は2009年Q1だった事がわかりますね。その後、実質GDPは3四半期かけて3.18兆円増加しました。
それでは、2009年Q4について詳しく見てみてみましょう。2009年Q4のそれぞれの項目で、前期比を取ってみると以下のようになります。

最終民間消費支出:+0.51兆円
民間住宅:-0.10兆円
民間企業設備:+0.17兆円
民間在庫品増加:+0.08兆円
政府最終消費支出:+0.20兆円
公的固定資本形成:-0.08兆円
公的在庫品増加:±0.00兆円
純輸出:+0.72兆円

なるほど。「民間住宅」は未だに底が見えない状況ですが、その他の項目については明るさを取り戻している事がわかりますね。外需である「純輸出」が一番の回復要因ではありますが、何とか他の項目も純輸出に続いて、伸びて欲しいものです。

ところで、俺が多少気になっているのは「最終民間消費支出」の動向です。この項目が増加した要因としては、「エコポイントやエコカー減税の政府支援で拡大が続いた」と、Aの記事で書いてありますが、元々この政策では需要を先食いするために、あまりに前期比から増加すると、この先が少し心配です。おそらく、2009年Q4は年末のボーナス商戦の影響も大きかったとは思いますが、果たして2010年Q1はどうなるのでしょうか?

そして、心配なのは「民間住宅」ですね。現政権の打ち出す二次補正予算については、「住宅版エコポイント」がありましたが、果たしてこの政策によってどの程度「民間住宅」を上げられるか期待したいところです。俺の直感的な予測ですが、「エコ住宅の新築工事」に対しては、住宅版エコポイントの還元率が良くないので(何せ上限が30万ポイント)、思ったより効果がでないと思います。一方で、「エコリフォーム」の方は還元率も良いので、かなり効果が出るとは思いますね。ただ、リフォームの場合は新築とは違って、その他の分野への経済波及効果がイマイチなのが気になるところです。

「民間企業設備」は、2009年Q3で底を打ったとは思われますが、回復に勢いがありませんねぇ。そもそもの話として、この項目が日本の景気を悪くしている主要因であるので、何とか20兆円台まで戻せるように頑張って欲しいところなのです。ところが日本の大企業は、夏の参議院選挙の結果を見た上で、その後の本格的な投資を実行するものと思われるので、俺的には2010年前半に「民間企業設備」が急激に回復するとは思えません。財界や大企業にとってみれば、政治が安定した上で「どのような経済成長戦略を政府は描こうとしているのか」がわからなければ、投資の方向性を見出しづらいのでしょうね。
もっとも、「家計を中心に政策を打ち出す民主党」と「財界や大企業」の距離感は、なかなか縮まらないとは思いますが。

「純輸出」については、どこまで伸ばす事ができるのかわかりませんが、アメリカでのトヨタ車リコール問題の影響も今後出てくる可能性もあり、なかなか先の読めないところがあります。ただ、今の輸出増加ペースを今後数四半期に渡って維持するのは難しく、しかも輸入の増加によって純輸出を押し下げる可能性を考慮すれば、今の5.38兆円から大幅には伸びないと思います。「過去の純輸出の推移」と「中国やアメリカとの貿易動向」を察するに、やはり7兆円くらいが限界なんじゃないでしょうかね?
いずれにしても、今の日本経済の状況から察するに、この「純輸出」が伸び悩むとなると、いよいよ二番底の懸念が出てくるでしょうね。そうならないためには、中国の富裕層に日本車や日本製の電化製品を売りつけるのが一番楽な方法であるかもしれません。


さて、今後の日本GDPの見通しですが、一番危ないのは次の2010年Q1です。2010年Q1でGDPが増加しそうな要因は、1月28日に成立した「二次補正」(予算総額7兆2000億円)くらいしか無いのですが、事務手続きやらその他の要因で2010年3月までにその分の支出が全て民間企業に回らない事を考えると、「純輸出」でその他の減少分をカバーできずに、GDPが前期比でマイナスになるのではないかと、結構心配です。
そして2010年Q2以降は、前年度から4.1%程度増加した来年度政府予算がスタートするので、ある程度政府最終消費支出が前年度比で増加する事で、GDPを底支えするかもしれませんね。ただし、この頃には「純輸出」の増加が止まる事も予想されるので、内需の成長が鍵を握ってくるような気がします。


ちなみに、2010年Q1のGDP発表は5月中旬なのですが、「普天間問題でどうにもならなくなったところに、さらに景気の二番底到来のニュースで、相当に追い詰められた鳩山首相の姿を見てみたい」と、多少思わなくもないですが、果たしてどうなるでしょうか?
という事で、3ヵ月後の2010年Q1の日本のGDP発表が今から気がかりです。



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2010年02月15日

日本の資産/負債から考察B

【日本の資産/負債から考察@】(2010年01月08日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/34616600.html

【日本の資産/負債から考察A】(2010年01月20日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/34838083.html

という事で、今日は「日本の資産/負債から考察」シリーズの3回目です。ちなみに、前回までは、↓の表から読み取れる以下の3つの事を書きました。

japan_asset-debt.jpg

1.「政府」の負債が増えた一方で、「家計」と「金融機関」の資産も増え続けた。

2.対外的に見た場合、日本全体で見れば「破産」どころか、「純資産」が増え続けていて、財務的に問題は見当たらない。

3.日本の財務面での真の問題は、国内ストック(「政府負債」と「家計資産」)のバランスの悪さ。

という事で、今日はどうやったら「政府負債」と「家計資産」のアンバラを解消できるか考えてみましょう。


さて、とりあえず「政府負債」も「家計資産」も減らす方法で、一番簡単なのは「増税」でしょうね。増税は、「家計資産」を減少させた分、「政府負債」を返済する事ができるわけで、一番手っ取り早く、しかも確実にアンバラを解消させる手段です。財務省は高らかに増税を主張していますが、官僚的な視点で書くのであれば、この手法が一番確実な上に、日本経済の基礎的な部分をいじらなくて良いからでしょう。ただし、この手法は国民に直接負担を強いるものであるので、なかなか国民に説得しづらい方法である事も事実です。確かに個人として考えるならば、「頼んでもないのに国が勝手に借金を膨張させた挙句に、何で俺が最後に尻拭いしなきゃいけないんだよ?!」と思いたくもなるのですが、国の借金増加によって日本経済のフローを下支えしていたからこそ、失われた10年はあの程度の不景気で済んだのも事実なんですよ。われわれ国民側もその辺をどう理解するかで、民主党の経済対策の見方が大きく変わるところです。


そして話を元に戻しましょう。アンバラ解消のもう一つの手段は、長期的に名目GDPを増加させて実質の借金価値を下げる方法です。

【分母を上げる?それとも分子を下げる?】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/29596799.html

実はこの話、↑のエントリーですでに一度書いていたりします。基本的に、国の借金の危なさを計る一つの指標は「国債発行残高/名目GDP」ですが、世界的にはこの指標値が大きくなれば国の財政が危なく、この指標値が小さくなれば安全とみなされます。日本の場合は、G7の中でもこの指標値が最も高く、昨年度末で175%程度です。(とりあえず、日本にこの指標を当てはめるのが良いのか悪いのかは置いておいて)この指標値を下げようと思ったら、分子の「国債発行残高」を下げるか、分母の「名目GDP」を上げればいいわけです。つまりこの方法は、名目GDPの増加(多少のインフレと経済成長)によって借金の実質負担価値を下げるというところに主眼が置かれたものですね。
この方法は、「多少のインフレ」を期待するので、物の値段が上がる分「家計資産」の実質価値は減少するものですよね。ただ、「増税」と言われるよりはこちらの方がまだ国民から理解を得られるのではないでしょうか?ただし、物価を安定的に管理する日銀はこの方法をあまり採用したくないでしょうし、財務省も「確実性」という観点と、「多少のインフレによって円安に振れさせる可能性」を考えると、この方法はあまりやりたくないと思われます。それに、「インフレ」という単語に噛み付く評論家とかもたくさんいらっしゃるでしょうね。


という感じで、おそらく「政府負債」と「家計資産」のアンバラを解消する代表的な方法してはこの2通りあります。かつての自民党では、物価や財政論において「インフレターゲット」が論議されましたが、今のところ民主党は物価には興味なさそうなので、「増税」一辺倒にしか考えて無さそうですよね。
とりあえず、日本経済にまず必要な事は「デフレ脱却」ですが、仮に「量的緩和拡大」&「政府支出増大」をするのであれば、政策の連続性や親和性という観点からは、「増税」よりも「多少のインフレと名目GDP増加」の方が、理には適っているのではないかと個人的には思います。(もちろん、この手法には多少の不確実性もあるとは思っていますが)

という事で、次回の本シリーズ最終回(第4回)では、「増税」「名目GDP成長(多少のインフレ)」のそれぞれの場合で、俺達個人がどのような資産管理を行えば、最も所有資産の実質価値を下げられずにすむのか、考察してみましょう。



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2010年02月12日

今は内需産業が堅い!

【12月の失業率、2か月ぶりに改善-先行きは懸念】
http://jp.ibtimes.com/article/biznews/100130/49351.html

という事で、2009年12月の日本の失業率は5.1%との事。失業率のニュースは、この数字以上の詳細が報道される事はあまり無いので、「どの産業の就業者数がどの程度増減したか」という情報って、あまり聞かないんだよね。という事で、今日は産業別の就業者数について調べてみたので、これを見ていこう。


employment-by-industry-sector_1.jpg

employment-by-industry-sector_2.jpg

↑が、それぞれ日本の主要15産業における2007年1月の就業者数を100と見た場合の推移をあらわしたグラフである。これを見ると、どの産業が低迷していて、どの産業が調子良いのか大方は推測できますね。
まず、就業者数が明らかな減少傾向を示しているのは、上のグラフで言うと「建設業」「製造業」、下のグラフで言うと「複合サービス事業」というところでしょうか?特に、「複合サービス事業」は2007年1月時点と比較すれば、就業者数が30%程度も減少しているわけで、相当需要が落ちた事がわかります。最大の労働人口を抱える「製造業」の就業者数も10%程度の減少を示しており、さらにこの先減少するのか心配なところです。(おそらく、減少するような気がしますが……)一方で、「建設業」に関しては2009年の春が最悪期で、それからは若干の持ち直しの傾向が見られます。前政権による公共事業支出の効果が出ているのかもしれませんね。

そして逆に、就業者数の増えた産業を見てみましょう。上のグラフで言うと、「運輸業・郵便業」は通して100以上になってますし、2009年の下半期からは「情報通信業」も就業者数が上昇しています。下のグラフで言うと、「医療・福祉」「生活関連サービス業・娯楽業」が明確に該当するかと思います。
これらの結果から読み取れるのは、直近で就業者数の増えている産業は「内需産業」なんですよね。外需は基本的に調子の良し悪しの波が非常に荒いために、安定している内需産業が失業率上昇を防いでいる構図になっています。さらに、日本は他国と比較すると内需の強い国(GDPの60%程度が個人消費で、GDP対輸出額はわずか16%程度)なので、こういう世界不況の最中では、他国に比べたらまだ日本国内の雇用状況はマシという事でしょうね。


あとは、ここ数ヶ月で就業者数が急激に減っている産業がいくつかあります。上のグラフの「金融業、保険業」「不動産業・物品賃貸業」なんですが、これら2つは2009年前半までは就業者数が増えていたわけですが、何故か2009年後半にかけて就業者数が結構な勢いで減少に転じた事がわかります。元々、この2つの産業は就業者数が安定しているものではありませんでしたが、心配なところです。やはり、不動産や金融関係の会社が、これからどんどん潰れる兆候なんですかね?


という事で、今日は日本の各産業における就業者数の推移を見てみました。これを踏まえて、もし今俺がクビになったら、安定して今後も就業者数増加の見込まれる「医療・福祉」の業界に就活しに行きますかねぇ……。(笑)



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2010年02月10日

2009年12月の日米欧中マネーストック最新状況

@【2009年12月の日米欧中マネタリーベース最新状況】(2010年02月06日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/35176671.html

↑@のエントリーで、日米欧中のマネタリーベースの推移を出していました。そして今日は@のエントリーで予告していた通り、「マネーストック」の方の推移を見てみましょう。

まず、「マネーストック」とは、金融機関から世の中へ供給されている総通貨量の事なんだけど、企業・家計・政府等々が保有する通貨量残高を集計したものなんだ。そして、これは主要各国で「何を通貨」とするのかで解釈が若干異なる事から、マネーストックにもいろいろ種類があるわけですよ。アメリカや中国は、マネーストックの中でも「M2」というカテゴリーが一般的なんだけど、日本やEUの場合は「M3」というカテゴリーが最もよく使用されるので、本ブログでもこれに従うことにします。

200912_money-stock_juec.jpg
という事で、↑が2007年1月の各国マネーストックを100とした時のその後の推移となります。
まず真っ先に、中国のマネーストックの増加ペースがすごいですよね。特に、リーマンショック後の2008年11月〜2009年3月までは凄まじいペースでマネーストックが積みあがっている事がわかります。一般的に、「マネーストックが増加する」という事は、「金融機関が積極的にお金を市中に貸出しをして景気が良い方向に向かっている(ただし増えすぎるとインフレにつながる)」と解釈するのが今までの定説なわけですが、よくよく他国のマネーストックを見てみると、同時期にはアメリカのマネーストックも増加ペースが速まっていた事がわかります。もちろん、この時期はリーマンショック直後で信用懸念が一気に世界中に広まった時期なので、アメリカの金融機関の貸し出しが増えたわけではないはずです。

そうです。おそらく、今までの通常の経済状態であれば、マネーストック増加の解釈としては「金融機関が積極的にお金を市中に貸出しをして景気が良い方向に向かっている」という事だったのでしょうけど、不況時におけるマネーストック増加の解釈は、おそらく何か違う要因があるという事でしょう。
マネーストックの場合は、基本的には「現金通貨」「預金通貨」が計上されるので、債券や株券の類はどれだけ持っていても、M2やM3のマネーストックには積みあがりません。よって、所有していた株券を売って現金に換えた場合は、その売値分だけマネーストックが積み上がる事になります。これを踏まえれば、おそらく不況時のマネーストック増加は「手持ち資産を安全性の高い現金・預金に変える事」(資産シフト)に起因するものだと推測されます。ただ、中国のこれだけのマネーストック増加は、資産シフトだけで説明がつくのでしょうかね?中国は何せ、3年間でマネーストックが1.7倍以上になっている上に、リーマンショック以前からマネーストックの増加率が日米欧よりも高いんですねぇ。そして中国は、今年に入って再びインフレ懸念も出てきたので、これは詳細をいろいろ分析してみたいところではありますね。

一方で、日本のマネーストックはリーマンショック以降で若干増加しているので、資産シフトの動きが若干はあるのかもしれませんが、概してここ3年程度はほとんど変化がありませんね。↑@のエントリーで、日本はマネタリーベースにほとんど変化が無かった旨を書いたのですが、「マネタリーベース」のみでなく「マネーストック」にもほとんど変化が無いわけです。これは悪く言えば、「ほとんど経済成長していない」と言える一方で、「貨幣論的には、日本経済が安定的に推移している」というあらわれなのかもしれません。

そして、個人的に一番気になるのはEUです。EUは2009年9月のリーマンショック後、中国やアメリカとは逆にマネーストックの増加傾向が止まり、むしろ最近では減少傾向を示している事がわかります。これは一体、どういう事なんでしょうかね?元々、EUは金融業がメインのビジネスモデルとなっている国がたくさんあるので、安全な現金・預金へ資産シフトしてもほとんど利益が出ない事を嫌って、より何かへ投資してるって事ですかね?あるいは、マネーストックでは計上されない実物資産(金や食料等々)に投資を増やしているのか……。う〜ん、これも詳細について調べたい衝動にかられるなぁ……。


という事で、マネタリーベースとマネーストックについては再び3ヶ月後くらいに最新状況を報告する事にします。



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posted by きらっち at 23:34| Comment(55) | TrackBack(0) | 経済

2010年02月09日

やはりデノミは失敗か。

@【北朝鮮デノミ 問題は外貨との交換比率】(2009年12月3日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/33980274.html

A【北朝鮮デノミ2か月、ウォン急落で価値1割に】(2010年2月9日)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100209-OYT1T00227.htm

B【北朝鮮 デノミ失敗 餓死者続出】】(2010年2月4日)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/international/213776.html

さて、↑@のエントリーで、俺は北朝鮮の貿易動向を踏まえた上で「北朝鮮のデノミの鍵は対外為替レートだ」という趣旨の事を書きました。さらに、北朝鮮は供給能力をすぐに上げられない事から、デノミをしたところですぐに輸出増加を誘導するのは無理で、一方で輸入価格が上昇する事によってさらなるインフレを促進するだけじゃないの?と疑問を呈したのですが、AやBの記事を見る限り、まさに思ったとおりの展開になってきたなぁ。(笑)
しかし、そもそも北朝鮮の経済政策担当者は、何を意図してデノミをやったのでしょうかね?多少先の事を考えれば、市場統制がどうのこうのを言う前に国内経済がこうなるのはわかっていたはずなのに……。北朝鮮は、いっそのこと自国通貨を捨てて、中国の元を流通させた方がよっぽど国内が安定するんじゃないの?(笑)

しかし、北朝鮮がすぐに外貨を獲得できる方法って何があるんですかね?輸出を増やそうとしても自国内で設備投資の調達はできないし、突然デノミするような政府は外貨建ての国債も発行できないだろうし、北朝鮮政府の規制によって北朝鮮国内の投資や観光も著しい制限がかかるわけですよ。何だかこういう事を書いていると、自らの手で自国の稼ぐ方法を潰しているようにしか思えないよなぁ……。


そして一つ素朴な疑問なんだけど、北朝鮮って対外的には経常赤字でしょ?(貿易収支は赤字確定。サービス収支、所得収支、経常移転収支で貿易赤字分をカバーできているとは考えづらい)そして、外国資本に対して厳しい規制をかけているので、資本収支も黒字とは思えない。でも、北朝鮮はデフォルトしていないので、どこかで何らかのファイナンスしてるはずなんだよね。とはいえ、経常収支も資本収支も赤字であれば、必然的に外貨準備高が減っているはずなのだけど、北朝鮮ってそんなに外貨準備高あるんですかね?(国際収支を発表してくれればわかる話なのだけど、そもそも北朝鮮は国際収支統計を作っていないらしい。)
いやぁよくよく考えると、どこからお金が湧いているのか不思議な国なんですよ。いやぁ、本来であれば北朝鮮の経済分析をしたいところなんだけど、まともな資料がほとんどないので、憶測でしか語れない国なんですよねぇ。



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posted by きらっち at 21:20| Comment(11) | TrackBack(0) | 経済

2010年02月06日

2009年12月の日米欧中マネタリーベース最新状況

@【日米欧のマネタリーベース推移】(2009年10月14日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/32919107.html

A【中国の「マネタリーベース」と「マネーストック」の推移】(2009年12月29日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/34455938.html

という事で、今までは別個のエントリーで日米欧中のマネタリーベースについてお伝えしていましたが、これからは3ヶ月に1回くらいのシリーズ物として「日米欧中のマネタリーベース」と「日米欧中のマネーストック」を書いていきたいと思っています。


200912_monetary-base_juec.jpg
という事で、↑が2009年12月現在における日米欧中のマネタリーベース推移となります。「マネタリーベース」とは「各国中央銀行が社会に供給するお金の総額(通貨流通量+民間銀行への当座預金残高)」という事ですが、ここでは各国の通貨単位がバラバラで数字の桁も異なるので、2007年1月の各国のマネタリーベースの数字を100として指数化したものの推移を表しています。

まずはアメリカですが、2009年12月でとりあえずマネタリーベースの増加が一服しましたが、2008年9月のリーマンショック前よりも2.5倍程度増加しています。これだけお金をジャブジャブに供給しておきながら、これらがどこにどう流れているかが気になりますねぇ。おそらく、相当な分がドルキャリートレードによって海外に流出しているのでしょう。ただし、一方でアメリカ国内のGDPも回復傾向に乗ってきた事もあるので、そろそろマネタリーベースを絞る出口戦略を考えないと、お金を刷り過ぎた事による「インフレ」が怖いところなのかもしれません。

EUの方は、2009年8月をピークにマネタリーベースはずっと減少しています。@のエントリーでは「EUこそ、下手したら金融危機によるダメージがアメリカより大きいので、アメリカよりもジャブジャブに量的緩和すればいいのに」というような趣旨の事を書きましたが、そもそもEU加盟国はマーストリヒト条約によって財政に縛りがかけられていて、金融政策の自由度が大きくありません。しかも潜在的にインフレ傾向の国が多いので、「金融緩和をしてインフレが止まらなくなったらどうするんだ?」という事を考えると、仮に実行できたとしてもなかなか金融緩和する勇気は出ないでしょうね。ただし、そうは言っても「ギリシャ」に続いて「スペイン」「アイルランド」等々のやばそうな国がまだまだ控えているので、EU圏の国はしばらくマネタリーベースを上げる事はできないかもしれませんね。

中国については、2007年や2008年の名目経済成長率が20%程度あるものの、2009年のマネタリーベースの増加ペースは確かに速い印象を受けますね。しかも、2009年11月以降はデフレも止まって、今後はインフレ傾向が進みそうなので、マネタリーベースはより一層増加するのではないでしょうか?もっとも、中国の場合はアメリカとは違って「マネタリーベース」よりも「マネーストック」を注視する必要があるとは思いますが……。

さて、残念ながら日本のマネタリーベース推移については、見ていて面白い推移ではないですね。(笑)リーマンショック前後で大きな変化のあるわけでもなく、2007年から定常的な微小変化しか読み取れません。良く言えば「日本はリーマンショックによる影響が少なかった」と言えるのでしょう。現在では、日銀が量的緩和の強化に否定的な事から、しばらく日本のマネタリーベースに変化は出ないと思います。


という事で、やはりアメリカのマネタリーベースの増加には今後も注目でしょう。しかし、アメリカはこれだけマネーを供給していて、一方で日本のマネタリーベースはほとんど変化の無いことから、円高ドル安の流れは止められないでしょうねぇ。もちろん、為替レートはマネタリーベースだけで決まるものではありませんが、↑のグラフを見る限り、「よく1$=90円くらいで踏みとどまっているよなぁ」と個人的には思いますよ。
それでは、次は近日中に「日欧米中のマネーストック」について見ていきましょう。



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posted by きらっち at 23:59| Comment(363) | TrackBack(0) | 経済

2010年02月03日

2009年Q4の韓国実質GDP

【韓国、10〜12月は実質0.2%成長 回復基調続くも勢い弱まる】
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/asia/20100126DGM2601K26.html

skorea-gdp_2009Q4.jpg
という事で、一昨日のアメリカGDPに引き続いて、↑の韓国GDPを見ていきましょう。
まず、「最終民間消費支出」ですが、前期に比べて落ちました。落ち幅が非常に微小なので、どう判断するか迷うところです。1月29日のエントリー(韓国・中国の貿易動向B)でグラフを載せましたが、直近の韓国の輸出額は増加しているので、おそらく韓国の生産量は増えているはずです。韓国のGDP対輸出額は40%程度であり、「輸出額が減れば失業率が上がる」という傾向の強い事を踏まえれば、おそらく来期に向けて失業率はそんなに増えないのではないでしょうか。よって、来期の最終民間消費支出は「横ばい」あるいは「多少増える」と見ています。

そして、「建設投資」は前期比で同じです。韓国も不動産バブルを抱えているんですが、本格的に着火しないため40兆ウォンからなかなか変化しませんね。おそらく2010年は韓国政府の公共事業関係支出が多少減るので、今後は「微減」ってところではないでしょうか?

「設備投資」については、もう少しでリーマンショック前の水準に戻りそうなところまで回復してきました。日本がバランスシート不況突入で、設備投資額の上がらない状況を考えると、韓国の状況はすごいですね。「在庫変動」のマイナス幅を順調に縮小している事から、在庫をさばいた上で設備投資をして生産力を上げようとしているのでしょうか?いずれにしても、韓国は良い経済循環に入っているようにも見えます。
おそらく、どこかでピークを迎えるでしょいうけど、来期についてはまだ設備投資は増えるんじゃないですかね?在庫変動は、引き続きマイナス収支が改善するでしょう。

「政府最終消費支出」ですが、2009年度は年度当初からハイペースで予算執行していたために、2009年Q4では息切れしたのがはっきりわかります。さらに、来年度の政府最終消費支出の見通しですが、韓国政府の2010年予算案がおよそ293兆ウォンです。2009年度予算はおよそ285兆ウォンだったので、およそ8兆ウォン増加するわけです。ただし、韓国のインフレ分を考えると、実質GDPにおける政府最終消費支出は、「ほとんど変わらない」か「若干減る」ような気がします。まぁいずれ近いうちに、「韓国の消費者物価指数」の最新状況をお伝えするので、その時にまた触れる事にします。

そして最後に「純輸出」ですが、2009年の韓国経済を象徴する項目ですね。(笑)おそらく、純輸出の項目がなければ、韓国のGDPはかなり悲惨な状況だったと思われます。
とは言え、1月29日のエントリー(韓国・中国の貿易動向B)でお伝えしたように、輸入額が増加してきた事で、2010年は2009年ほど純輸出には期待できないものと俺は予測します。つまり、韓国が2010年GDPを増加させるためには、少なくとも純輸出の減少分をどこかの項目でカバーしなければならないわけです。おそらく、来期から来々期にかけて、純輸出は10兆ウォン前半くらいまで落ちると想定した場合、見通しの明るい「設備投資」と「在庫変動」だけで、純輸出減少分をカバーするのは難しいのではないかなぁと思っているのですが、果たしてどうなるでしょうかね?


という事で、2010年Q1の韓国GDPの見通しをまとめると、
GDP:→(ほぼ横ばい)
 最終民間消費支出:→(ほぼ横ばい)
 建設投資:→(ほぼ横ばい)
 設備投資:↑(上昇)
 在庫変動:↑(多少改善)
 政府最終消費支出:→(あるいは若干減少?)
 純輸出:↓(減少)
というところでしょうか?3ヵ月後、どれだけ当たったかチェックしてみますかね。(笑)



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posted by きらっち at 02:32| Comment(9) | TrackBack(0) | 経済

2010年02月01日

2009年Q4のアメリカ実質GDP

【米GDP5.7%増 6年ぶりの伸び率、景気回復鮮明に】
http://www.asahi.com/business/update/0129/TKY201001290499.html

↑の朝日新聞の記事は、誰かの受け入り文章なのか、記者が自分で書いたのかわかりませんが、めずらしくまっとうなGDP分析してますよ。(笑)


という事で、あまり俺の書くことがないのですが、一応数字として2009年Q4のアメリカ実質GDPを見てみましょう。
us-gdp_2009Q4.jpg
ふむ、GDPが増えたのは良いとして、アメリカの場合、やはり鍵となるのはGDPの7割程度を占める「最終民間消費支出」なんですよね。確かに「最終民間消費支出」が回復しているのは良い傾向なのですが、「最終民間消費支出」は「失業率増加」がブレーキ要因になるので、このまま回復基調に乗り切るかどうかは不透明だと思います。

そして「住宅投資」も、先の見えない状況なんですよね。最悪期の2009年Q2から一応は悪くなってはいないのですが、あまりにも回復ペースがゆっくりなのが心配です。しかも、税制優遇という政策を打ち出しているにもかかわらず、ほとんど「住宅投資」は回復していないので、アメリカの住宅経済は相当やばそうな感じもします。

「民間企業設備投資」ですが、2009年Q3の最悪状況からは抜け出たみたいです。回復ペースは遅いとは言え、順調に「民間在庫変動」のマイナス幅も縮小しているので、ようやくアメリカの企業部門は最悪期を脱出するのかもしれません。

「政府最終消費支出」ですが、ここは特段の変化も無く低迷する各項目を支えるために、アメリカ政府が引き続き頑張っている事があらわれています。2010年は、アメリカ政府も財政再建も考えなければいけないため、2009年と同程度の政府最終消費支出を期待できないかもしれないのですが、果たしてどこまでアメリカ政府がアメリカ経済を支え切れるのでしょうか。

最後に「純輸出」ですが、2009年Q3よりもマイナス幅が5%くらい縮小しました。これはドル安によって輸出の増えた事が主要因と書いてありますが、もう少し邪推すると、世界での"Windows 7"の発売が輸出を後押しした可能性があると見ています。よって、その反動で2010年Q1の輸出は減ると予想します。


まぁ、大抵この手の予想は当たらないものですが、3ヵ月後の次期アメリカGDPの発表を楽しみに待ちますか。(笑)
では、明日は韓国GDPを見ていきましょう。



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posted by きらっち at 00:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2010年01月29日

韓国・中国の貿易動向B

【中国・韓国の貿易動向】(2009年07月14日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/30546124.html

【韓国・中国の貿易動向A】(2009年09月14日)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/32128932.html

本日は、↑の韓国・中国の貿易動向シリーズの3回目になります。2回目から随分時間が経過しましたが、その後の両国の貿易状況はどのように変化したのでしょうか?


china_trade-ballance_200912.jpg
それでは早速、↑の中国の方から見ていきましょう。
中国は、輸出と輸入共に増加傾向をしめしています。しかも、貿易黒字も増加傾向を示しているので、正常な成長プロセスを辿っているような気がします。しかも、2009年の12月の輸出額は、リーマンショック前の輸出額まで「あと一歩」のところまで回復しているので、中国の生産活動に力強さが戻ってきているとも言えそうです。
少々気になるのは、2009年12月の輸入額が過去最高を記録しました。今まで過去最高の輸入額だった2008年7月は原油高の影響もありましたが、当時の水準から比較すると今は随分原油価格も安くなったはずです。しかも、中国はドルとのレートはほぼ固定であるので、一体何故この状況で中国の輸入額が過去最高を記録するのか不思議です。この辺は、もう少し輸入額の内訳等々を調べてみると、いろいろ面白そうな事実がわかるかもしれません。とりあえず、それはまた後日に調べてみましょう。


skorea_trade-ballance_200912.jpg
そして、次は↑の韓国です。
韓国も、中国と同じく輸出額が増加傾向を示していますが、輸出の増加ペースよりも輸入の増加ペースが早いので、貿易黒字は2009年6月をピークに減少傾向が続いています。俺は以前から、今年の春先の韓国の大躍進は輸入激減による要因が大きいと書いていましたが、そろそろ輸入額も上がってきて春先のような貿易黒字を維持するのは難しくなってきたのでしょう。この要因としては、じりじりと上がる原油高にあると睨んでいます。というのは、韓国は日本以上に原油高に対する貿易収支耐性が弱いため、原油高が続いていた2007年後半からリーマンショックが起きるまでは、貿易立国なのに貿易赤字の続く異常な状況に陥っていた事がグラフから読み取れると思います。そして、心なしかここ数ヶ月で輸出増加ペースが鈍ってきたので、今年はさすがに去年ほど貿易黒字でGDPに歯止めをかけることもできなくなりそうですね。俺の予想では、今年の韓国のGDPは伸び悩むというよりも、そこそこ減少するのではないかと思います。そのあたりについては、先日韓国の2009年Q4のGDPも発表されていますので、また他のエントリーで詳しく書こうと思います。



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posted by きらっち at 23:59| Comment(13) | TrackBack(1) | 経済