2009年11月03日

金利差拡大によるバブル不安

【ノルウェー利上げ 金融危機後、欧州で初】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20091029AT2M2803528102009.html

【豪、2カ月連続で0.25%利上げ 年3.5%に】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20091103AT2M0301M03112009.html

いよいよ不況脱出の出口戦略(利上げ)を実施に移す国が出てきました。そもそも利上げのメリット/デメリットはいろいろとあるわけですが、とりあえず思いついたものから書いていくと

【海外投資】
利上げ:海外から国内への投資が増える→通貨高
利下げ:国内から海外への投資が増える→通貨安

【生産】
利上げ:借入が少なくなる→生産減
利下げ:借入が多くなる→生産増

【物価】
利上げ:生産減→インフレ抑制
利下げ:生産増→インフレ促進

【キャッシュフロー】
利上げ:株や債券よりも貯蓄に向かう→株安&利回り上昇
利下げ:貯蓄よりも株や債券に向かう→株高&利回り減少

大体こんなところでしょうか。これらの効果により、景気が良いにもかかわらず利上げをしないと、そのうちインフレや株高を抑えられなくなってしまい、「庶民の生活が苦しくなる」&「バブル崩壊」等々を引き起こす事が推測できます。
とは言うものの、日本は「失われた10年」でゼロ金利を続けたにもかかわらず、「生産増」「インフレ促進」「株高」は達成できず「通貨安」「利回り減少」しか達成できませんでした。これの原因はいろいろとあるのですが、いずれにしても今までの経済学の教科書に書いてある通りの政策では、景気回復ができなくなってしまったわけです。(この辺りの要因についても、後日にいろいろと書く機会があるでしょう)


bankrate.jpg
今日はとりあえず、↑の世界各国の政策金利推移を見てみましょう。
一番最初に目が行くのは「ブラジル」です。ブラジルの現在の経済状況がわりと良いのですが、「レアメタル産出」「安い人件費」「広大な土地(いずれ世界の食料庫になるのではないかと言われている)」などなど非常に投資先としては魅力である上に、金利もべらぼうに高いため、これからますます注目されることかと思います。
一方、2008年1月当初からずっと低空飛行を続けているのが日本です。リーマンショック以降、各国との金利差が随分少なくなってきて円キャリートレードも随分解消されたものと思われますが、当然その分円高も進んでしまいました。むしろ日本としては「円安」を維持したいので、「当面はゼロ金利を維持して各国金利の上がるのを待つ」という戦略をとるのがベストでしょうか。おそらく、米国も欧州もそう考えていると思われます。
ただ、そうすると日欧米の資金が一気に政策金利の高い国に流れる可能性があるかもしれません。特に米国や欧州各国はこれ以上国債を発行できないために、政府支出で自国景気を支えられなくなる可能性があります。そうすると、米国や欧州は「海外投資でどこかの国にバブルと通貨高を作り、適当なところで資金を自国に戻して儲けを得る」というビジネスモデルを作らないか不安です。これをやられると、次々に新興国がバブル崩壊を起こすために世界経済の安定にはまったく寄与しません。

米国や欧州とは違い、日本にまだ救いがあるのは政府支出(さらなる国債発行)ができる事です。もちろん、通貨高の国に投資するのも良いかもしれませんが、それだと日本国内の生産増にはまったく寄与しないわけで、日本の景気は良くなりません。「海外への投資をするな」とは思いませんが、できるだけ自国に投資する方が日本の失業率上昇も抑えられるのではないでしょうか。


いずれにしても政策金利を上げる国が増えて、欧米との金利差が広がり続けると、どこかの国でバブル景気が発生しないか心配です。



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posted by きらっち at 23:56| Comment(3) | TrackBack(1) | 経済

2009年11月02日

マネーストック(マネーサプライ)とは?

@【日米欧のマネタリーベース推移】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/32919107.html

先日、↑@のエントリーでマネタリーベースについて説明しましたが、本日はマネーサプライ(今は「マネーストック」と呼ぶ方が一般的ですが)について説明しましょう。取り急ぎ、今日はアメリカのマネーストックの推移を考察してみます。そして、後日に日米欧のマネーストックについて比較みる事としましょう。

まず、先日のエントリーでは、「マネタリーベースとは、日銀が社会に供給するお金の総額」と説明しました。一方、マネーストックとは一言で書くと「非金融部門(一般企業、個人、地方公共団体など)の預金資産残高」です。つまり、マネーストックは非金融部門における金融資産の一部を表しているものと言えます。
さて、一口で預金資産残高と言っても対象となる預金には、「普通預金」「当座預金」「定期預金」等々の様々あります。マネーストックの統計では、それぞれの預金の流動性をもって以下のように「M1」か「M2」にカテゴライズされます。

M1:「通貨」「小切手」「要求払預金」「当座預金」
M2:「貯蓄預金」「定期預金」「リテール預金」であり、
M2 = 貯蓄貯金+定期預金+リテール預金+M1となります。

通常、M2が物価やGDPと連動する傾向があるため、このM2が世界で最もポピュラーなマネーストックの指標となっています。(ちなみに、日本の場合はM3が一番ポピュラーなんですけど、これについては次回以降に説明します。)
ちなみに、「通貨」は現ナマ、「要求支払預金」はいつでも引き出せる預金(普通貯金)、「当座預金」は利子の付かない預金(主に企業等の小切手支払いに使用される預金)、「貯蓄預金」は普通預金よりも利子が高いけれど残高が基準額よりも低くなるとペナルティーの課される預金、「リテール預金」は個人向けの外貨預金や投資信託等の預金なんだよね。(もうすぐ30才になるのに、不覚にも「貯蓄預金」と「リテール預金」なる存在を今日初めて知りました……。)


us_money-stock.jpg
という事で、実際にアメリカのマネーストックについて、↑の表中の数字を追ってみましょう。↑の表は、リーマンショック前の2008年5月から2009年9月のマネーストックの推移です。まずM2についてみると、この17ヶ月間で6.6兆ドル程度増えたことがわかりますが、2009年に入ってからはわずか1兆ドルしか増えていないので、アメリカ経済の停滞していることが読み取れます。しかも「定期預金」「リテール預金」が減少していて、「貯蓄預金」や「要求支払預金」が増えている事から、アメリカの非金融部門は安全性(流動性)の高い預金へ資金シフトが起こっているわけです。
まさに日本が「失われた10年」で経験した事(金融資産がどんどん安全性の高い普通預金等に資金シフトした)とまったく同じ状況が、アメリカのマネーストックでも起きているわけですよ。当時の日本政府は、日本国債をバンバン発行して銀行に集中する資金を吸い上げていたのですが、先月アメリカ政府は法律で定められている米国債発行上限額に達してしまったために、これ以上の米国債発行はできません。


【米金融、破綻100社超す 17年ぶり高水準】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20091026-OYT8T00379.htm

【中小企業の連鎖倒産も 米CIT破綻】
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/091102/fnc0911021035007-n1.htm

しかもタイミングの悪い事に、↑のようなニュースも出てきました。いずれにしても今の米国は「資金需要があるにもかかわらず、あえて米国債を発行しなかった」という事例を作ってくれました。これが吉と出るか凶と出るか、日本はしっかり見ておく必要があるでしょう。もしかしたら「下手に国債発行を止めると、日本は余計に苦しむ事になる」という事を勉強できるのかもしれません。


そう言えば、@のエントリーで「アメリカのマネタリーベースは、リーマンショック前と比較して2倍になった」と書きましたが、マネーストックの方は2倍になったわけではありません。これは「マネーが金融部門から非金融部門に思ったほど流れていない」という事を示唆しているわけです。なおかつこの状況で米国債も発行できないとなると、アメリカの金融部門は「海外投資」や「資源投資」に手を出すのが自然な推測だと思うのですが、この推測が正しいとすると間違いなくドル安が進むでしょうねぇ……。

それでは次回(来週を予定)、日本と欧州のマネーストックも出してみて、日米欧の比較してみたいと思います。



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2009年10月26日

わざわざ不確実な方法を取る理由は何だ?

【資産・負債に見る不況の原因】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/33147412.html
nf_asset-liability.jpg
↑の先日のエントリーで、非金融部門中の「非金融法人企業」「家計」「一般政府」の資産・負債を分析したところ、不況の影響を直撃しているのは、「家計」ではなく「非金融法人企業」である事を示しました。バランスシート不況のせいで、「非金融法人企業」における資産・負債は共に急減してしまっているので、この状況を断ち切り、再び「非金融法人企業」の資産・負債を増やす政策を打ち出す事が、日本経済を元の姿に戻す上で重要な方法である事を説明しました。
今日はこの事を踏まえた上で、民主党と自民党の経済政策について考察していきましょう。とりあえず民主党と自民党の経済政策の違いを端的にまとめると以下のようになります。


dpj-flow.jpg
【民主党の経済対策の視点】
@家計支援中心(「子供手当て」や「農家の戸別補償」等々)
A政府支出削減(徹底的なムダ削減/国債発行は消極的)
B経済成長戦略が無い
Cデフレ阻止に対する政策が無い


jimin-flow.jpg
【自民党の経済対策の視点】
D企業支援中心(「公共事業」等々)
Eできるだけ政府支出維持(必要であれば国債発行やむなし)
F経済成長を促して、債務残高対GDP比を低くさせる
G政府支出拡大による需要増加でデフレ阻止

バランスシート不況の脱却(「非金融法人企業」の資産・負債を増やす)という視点で比較すれば、@AとDEでどちらの方が確実な政策かは、それぞれの目指すフローの図を見てもらえば一目瞭然です。「政府支出削減」と「家計支援」を打ち出している民主党のやり方であれば、「非金融法人企業」の資産・負債の増加は、家計消費が増加しないと達成できないので、100%の保証がありません。(家計支援の結果、消費に回らず貯蓄に回されると、まったく効果が出ない事になります。)
一方で自民党のやり方は、政府支出で企業にお金を流すので「たら」「れば」の仮定は必要無く、確実に「非金融法人企業」の資産・負債を増やす方向には向かうわけです。しかも、自民党のやり方であれば、Gにも示したとおり政府支出によって需要を作り出すので「デフレ対策」にもなるわけですが(同時にある程度の失業率低下にもつながるでしょう)、Cのように民主党には「デフレをどうにかしよう」という戦略は今のところ何も言及していない上に、Bのように経済成長に対する戦略が今もってまだ不明確なわけです。


民主党のやり方で心配なのは、政府支出を削った上で家計支援を貯蓄されたら、日本が再びデフレスパイラルに陥る危険性があるという事です。家計支援すれば、「家計消費が間違いなく増える」という確信があるならその根拠を明確に示して欲しいのですが、それについては民主党は何も語っていません。民主党は、民間企業の資産・負債を増やさないといけないのに、民間企業に政府支出せずに家計に政府支出をするというギャンブルのような経済対策を打とうとしているわけで、俺には理解に苦しみます……。
とは言え、ここ1週間で来年度の国債発行増が規定路線になってしまったようで、民主党も政府支出増加の現実路線に舵を切っているのかもしれません。良かったのか悪かったのかわかりませんが、連立相手のあの大臣がキーマンだったのでしょうかねぇ……。



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2009年10月23日

資産・負債に見る不況の原因

【GDP(フロー)と資産・負債(ストック)の意味するところ】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/33103560.html

GDP-image2.jpg
先日↑のエントリーで、フローとストックについて説明しました。その際、現在の日本経済の状況を↑の画像に集約して、「政府支出でGDPを支えるために政府の資産・負債が拡大して、一方で民間企業は債務返済のために資産・負債が減少している」事を書きました。
さて、今日はその資産・負債(ストック)面において、日銀の資金循環統計から実際の数字を追ってみましょう。


f-nf_asset-liability.jpg
まずは、↑に日本国内の金融部門と非金融部門に対する資産・負債額の推移を出しました。金融部門の方は、景気動向にかかわらず、資産・負債共にわりと安定している事がわかります。金融部門が会社や個人から預かったお金は「いつか預け主に返さないといけない」という理由で、負債として位置づけられているのですが、現金のまま持っていても利子や利回りがつかないため、その大半を株とか債券を購入して資金運用をしています。そのため金融部門は、資産も負債も同程度の金額で推移しているのです。
一方、非金融部門の方の資産・負債の推移は動きが激しいのがわかります。ぱっと見た感じでは景気動向と非常に相関がありそうですね。いずれにしても非金融部門については、正常な経済状況であれば、生産/投資活動が活発になるので、資産・負債が共に増加していきます。実際に、失われた10年からようやく抜け出し始めた2002年辺りから、その傾向が顕著にあらわれています。ところが、アメリカのサブプライム問題が表面化した2007年頃から、日本の非金融部門の資産・負債の増加傾向が止まって、共に急減に転じました。

普通、不景気になると生産/投資活動が弱くなることにより、資産・負債は伸びなくなります。ただし、仮に生産/投資活動をしなかった(お財布の中身の出し入れが無い事に相当)としても、資産・負債額に変化は出ません(お財布の中の金額は変わらない事に相当)。ところがお財布の中には、「株」という日々価値の変動する物があるわけで、株価が買った値段より下がってしまうと、当然その分を損をするわけです。そのまま放っておいて、株価が値上がりするのを待てるほど資金繰りに問題がないならばいいのですが、社債や借入金の類の負債については、負債額が変動するものではないため、期限までにしっかり返さないといけないわけです。
通常、民間企業の資金は全て預貯金のみで運用しているわけではなく、多額の「株」で資金運用しているところもあるわけです。例えば、会社の全資産の1/2を株で運用していたとしましょう。そして、株の暴落があって平均株価が1/3になったとしたら、会社の資産の2/6が消えた事になります。一方で、会社が発行した社債や銀行から借りた借入金の額は変わらないので、会社の実質的な返済負担が重くなるわけです。これにより、今までは営業利益を何かに投資(自社の設備投資、子会社への増資等々)していた会社が、迫り来る借金返済が怖いので、営業利益をそのまますぐに借金返済につぎ込んだわけです。これにより非民間部門は、資産も負債もどんどん減少する「失われた10年」から抜け出せなかったわけです。

さて、↑の2007年以降の非金融部門の資産・負債状況を見ていると、国内非金融部門の資産は3150兆円→2700兆円、負債は2950兆円→2450兆円まで減っているわけで、再び「失われた10年」と同じ状況になりかけているのかもしれません。ただ、日本はすでにこの状況は一度経験しているし、その時に企業のバランスシートを相当に綺麗にしたので、他国に比べると今回の被害は相対的にかなり軽いとは思いますけどね。

それでは、次にこの国内非金融部門をもう少し深堀して調べてみましょう。非金融部門は「非金融法人企業」「家計」「一般政府」「対家計民間非営利団体」の4つの部門で成り立っています。「対家計民間非営利団体」は規模が小さいのでここでは省略しますが、残りの「非金融法人企業」「家計」「一般政府」についての資産・負債状況を見てみましょう。


nf_asset-liability.jpg
↑が「非金融部門」中の「非金融法人企業」「家計」「一般政府」の資産・負債の推移となります。まず皆様が「あれ?」と思うのは、非金融法人企業の資産よりも負債の多い状況ではないでしょうか?これはどういう事かと言うと、返済義務の無い株も負債としてカウントされているからです。個人投資家(家計)や金融部門が購入している企業の株は、個人投資家や金融部門にとっては「資産」であり、企業にとっては「負債」となります。ただし、株は返済義務の無い負債であるので「借金」とは違います。2009年Q2現在で、非金融法人企業の負債のうち440兆円が株による返済の必要の無い負債なので、これを考慮すれば、非金融法人企業は資産>負債となります。
ただ、「一般政府」の方はそうではありません。一般政府の負債増加の原因は、皆様もご承知の通り国債発行によるものですが、これは返済義務のあるものです。
そして、「家計」の資産について言えば、失われた10年以降も着実に増えてきました。2007年以降、株安のせいで若干減少傾向を示していますが、一方で負債の方も額は少ないけど着実に減少しています。しかし、純資産(資産-負債)が1000兆円程度あるので、日本国民は素晴らしくお金持ちですなぁ。(笑)

いずれにしても、今まで見てきたように、非金融部門のストック面における現在の日本経済の課題は、「非金融法人企業」の資産・負債を増やす事である事は明白です。それでは次回、どうやってここを底上げするのかを自民党視点と民主党視点で考察してみたいと思います。
(「民主党の経済対策は逆に景気が悪くなるのでは?」と思う論拠を図でいろいろ説明する予定です。)



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2009年10月21日

GDP(フロー)と資産・負債(ストック)の意味するところ

今日は、GDP(フロー)と資産・負債(ストック)を説明して、今の日本がどういう状況に置かれているかを図で表してみたい。そして、次回に具体的な数字を用いて、それを裏付けていこうと思う。


flow-stock.jpg
まずは、フローとストックの概念図を↑に表す。そんなに難しい図ではないので見ればすぐにわかるだろうけど、要はGDP(フロー)とは社会の中で流れるお金の額を表している。(本来の経済学でのGDP定義とはちょっと違うのだけど、ここでは「矢印の方向にお金が支払われる」と理解してもらう方が理解しやすいと思います。)そして、資産・負債(ストック)は、それぞれの持っている資産と負債の額を表している。
つまり、
1.GDP(フロー)とは「財布に出入りするお金の量」
2.資産・負債(ストック)とは「財布の中にあるお金の量」
という事なのです。

さて、この事さえわかれば、「GDP(内閣府から3ヶ月毎に発表される)」と「資金循環統計(日銀から3ヶ月毎に発表され、団体別の資産・負債額がわかる)」で、フローとストックの分析が出きるわけです。とりあえず今日は、直近の日本経済をこのフローとストックの概念図に反映してみましょう。


GDP-image2.jpg
かなり誇張して書いていますが、↑この図こそが現在の日本経済(世界各国の経済状況も似た状況のはずです)を端的に表しています。

フローについて言えば、政府による支出以外はお金の流れる量が減ってしまったわけですよ。GDPの「最終民間消費支出」「民間設備投資」「民間住宅投資」「輸出」「輸入」は、リーマンショック前に比べると減少しているので、当然GDPは減少するわけです。一方で、落ちるGDPを支えているのが「政府最終消費支出」と「公的固定資本形成」なわけです。
何せ、社会にお金の流動性を与える銀行は貸し剥がしや貸し渋りが横行して本来の役目を果たせず、景気が悪くなって民間企業の生産量は落ちて失業率も上がり、国民も先が見えずに貯蓄をする状況なので、どう考えても社会のお金の流動性は上がらないわけですよ。そういう状況になったら、そりゃ政府支出によってお金の流動性を与える(GDPを支える)しか手段はないでしょうねぇ……。

一方ストックについては、民間企業がバランスシート不況により負債返却に専念して資産・負債を減らす一方で、GDPを支える日本政府が国債発行により資産・負債を増やしていく構造になっているわけです。

つまるところ日本経済で一番の問題なのは、家計や民間企業が消費/投資をしなくなった事です。家計の方は、貯蓄によってストックの急減を抑えられているわけですが、民間企業は貯蓄ではなく負債の返済に専念しているので、資産・負債が急減しているわけです。その急減分を、政府支出でカバーしている状況なわけですね。


という事で、次回(明後日くらい)に「GDP」と「資金循環統計」からの具体的な数字を元に、現在の日本のフローとストックの状況をもう一度迫ってみようかと思います。


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2009年10月16日

残り2000億ドル程度……

【それぞれの想いを胸に米国債】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/30347734.html

↑のエントリーで5月末現在の米国債の発行状況を書きましたが、今日は最新の米国債状況をお伝えします。
アメリカの法律で、「米国債の発行は12兆1千億ドルまで」という事が決まっていますが、すでに9月末現在で11兆9千億ドルを発行しているようで、今月か来月にはいよいよ米国債の追加発行ができなくなりそうです。
まぁとりあえず、じっくりと下のグラフを見てみましょう。


200909_us-bond.jpg
↑が、2008年1月〜2009年9月の米国債発行残高と、日本と中国の米国債保有額になります。見てわかるとおり、アメリカはコンスタントに米国債を発行し続けています。今年に入ってから、およそ1兆2千億ドル、すなわち一日平均で44億ドル程度(円に換算すると約4000億円)の米国債を発行しているにもかかわらず、米国債発行をいきなりストップして大丈夫なんでしょうか?

そして、日本と中国の米国債保有も見てみましょう。月によっては保有額を減らす事もあるもの、何だかんだ言いつつ中国は米国債保有額を増やしています。米国債を投売りしたら世界経済が崩壊してしまうので、中国も米国債の扱いには非常に困っている事でしょう。もちろん日本も、6月7月と米国債を買い増している事がわかります。
しかしいくら円高基調とは言え、日本は7200億ドル以上の米国債を保有するわけで、仮に利回りが3%だとしてもおよそ22億ドル(日本円で約2000億円)が毎年得られるわけです。もちろん、この利回りが全て円に換えているわけではないでしょうけど、これも「日本がなかなか円安になれない」という要因の一つでしょう。


ところで、アメリカはFRBによる3000億ドルの米国債購入を10月末で完了して、量的緩和の拡大が止まります。(おそらく、「10月末で米国債の追加発行が止まる」と米国財務省とFRBで話が付いていると推測されます)という事で、今まで米国債に流れていた世界中の資金がどこに向かうのかが注目されます。株や債券みたいな金融関係に資金が向かえば嬉しい限りなのですが、原油や貴金属等の「実物」の方に資金が向かってしまうと、それこそ去年のガソリン価格みたいに再びインフレが起こるかもしれません。

さぁ、11月以降インフレが起こるのかどうか。米国債の動向と共に、非常に注目です!



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posted by きらっち at 21:54| Comment(5) | TrackBack(1) | 経済

2009年10月14日

日米欧のマネタリーベース推移

そういえば、本ブログでは「マネタリーベース」については一度も登場していなかったと思うので、今日はこの「マネタリーベース」について見てみよう。


cashflow_structure.jpg
まず「マネタリーベース」の説明の前に、お金の流通の仕組みについて説明する必要があるので、↑にそれを示します。日本の場合、通貨発行権があるのは日本銀行のみです。まず日本銀行はお金を刷って、民間銀行に流通させる。(実際の日銀と民間銀行のお金のやり取りは、「日銀当座預金」という利子の付かない口座を通して行われる)そして、民間銀行を通して広く日本の社会全体に現金が流通する仕組みになっている。
ここで、マネタリーベースとは「社会に出回っているお札/貨幣の総額」と「それぞれの民間銀行の日銀当座預金の残高」の合計の事である。つまるところマネタリーベースとは、日銀が社会に供給するお金の総額であって、これを基にしてその何倍もの額の経済活動を循環させているわけです。

さて、今日はここ最近の日米欧のマネタリーベースの額を追っていきましょう。日本経済は欧米経済と比較すると、非常に健全である事がマネタリーベースからわかります。


world_monetary-base.jpg
という事で、↑が日米欧の2008年1月〜2009年9月のマネタリーベースの推移となります。
アメリカのマネタリーベースは、リーマンショックから半年も経過しないうちに2倍以上に上がりました。社会に供給するお金の総額が2倍になったという事は、普通に考えると2倍のインフレが起きそうなものですが、まだアメリカにそこまでのインフレは起きていません。(ここ最近の消費者物価指数を見ると、ようやくデフレが止まった状態)
これは何故かと言うと、マネタリーベースは増加しているけれども、そのお金が循環しない(民間銀行から先にお金が流通しない)という、まさにバランスシート不況論に行き着きます。この辺りは、「マネタリーベース」と「マネーサプライ」のそれぞれの増加率を比較すれば一目瞭然なのですが、「マネーサプライ」については話が長くなるので、また後日に回しましょう。

いずれにしても、今のアメリカは
@マネタリーベースがリーマンショック以降で2倍になった。
Aしかしながらインフレが起きていない
という2点から、「資金不足」が問題なのではなく民間銀行から先の「資金循環」に問題のある事が推測されるわけです。逆に言うと、「資金循環」の問題さえ解決すれば、アメリカはすぐにインフレになるのではないでしょうか?確かに、FRBが出口戦略をどうのこうのというニュースを見ていて、「おいおい、まだまだ景気がジリ貧の状態で何を寝ぼけた事言ってるんだ?」と思っていましたが、確かにアメリカはインフレの下地が出来ているのかもしれません。(マネタリーベースが全て市中に出回るわけではありませんが)

一方EUの方も、アメリカ程ではないにしろ、マネタリーベースがリーマンショック前から3割程度増加しています。アメリカよりも、むしろEUの方が金融ショックの痛手が大きいと言われているので、「EUの方こそ、民間へジャブジャブに資金供給しなければいけなかったのでは?」と、個人的には意外に感じます。(確かに、EUはアメリカ程の本格的な量的緩和をしていないと言う事もあるとは思いますが)

そして、日本のマネタリーベースはさほど増加していません。欧米では、リーマンショックにより投資資金の回収と共に、相当な金額が現金化され一気に現金需要が急増したのでしょうが、日本の資金回収はそこまでひどくはなかったという事でしょう。
ただ、欧米のマネタリーベースが増加傾向を示す一方で、日本はほとんど変化が無いわけなので、しばらくは円安になる事は無さそうですし、アメリカと違ってインフレの下地ができているわけでもありません。
むしろ日本の場合は、デフレさえ何とかすれば、ある程度良好な経済/金融状態が取り戻せるはずなのですが、アメリカやEUの場合はすでに正常ではない部分(「マネタリーベース」「金融機関のバランスシート」「家計負債の多さ」「国債の利回り」等々)が複数あるために、どれかを無理やり回復させようとすると、どこかが破綻しかねません。今はまだ、アメリカもEUも何とかするだけの財政的余裕がありますが、世界景気が回復する前にこれが尽きるとなると……。いやいや、あまり考えたくないですね。(笑)


そして次回(1週間後くらいを予定)は「通貨供給量(マネーサプライ)」の方の数字を追ってみたいと思います。



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posted by きらっち at 22:17| Comment(1) | TrackBack(1) | 経済

2009年10月09日

国債発行が円高の維持につながる

今日は、日本の国際収支統計から日本の対外収支状況の凄まじさを見てましょう。そして、日本がそんなに簡単には長期的に円安にならない(なれない)上で、さらに国債発行が円高維持につながる事を説明します。


monthly-bop_japan.jpg
↑が2008年1月〜2009年8月の日本の月次の国際収支です。本ブログでは、国際収支統計を度々掲載していますが、復習のために今一度それぞれの項目について説明します。

経常収支とは、日本と海外での金融資産以外でのお金とやりとりで、
「貿易収支(貿易によるお金のやり取り)」
「サービス収支(サービスによるお金のやり取り)」
「所得収支(海外株や海外債券による配当金・利子・利回りによるお金のやり取り)」
「経常移転収支(母国への仕送りや無償援助等、見返りの無いお金のやり取り)」
からなっていて、以下の関係がある。
経常収支=貿易収支+サービス収支+所得収支+経常移転収支

資本収支とは、日本と海外での金融資産に対するお金のやり取りで、
「直接投資(海外子会社等に対する株等の取引)」
「証券投資(海外会社等への株や債券等の取引)」
「金融派生商品(海外とのオプション取引や先物取引等々)」
「その他投資(上記3つ以外のもので、海外との貸付・借入、貿易信用、現預金等の取引)」
「その他資本収支(その他)」
からなっていて、以下の関係がある。
資本収支=直接投資+証券投資+金融派生商品+その他投資+その他資本収支

外貨準備高は、政府や中央銀行の持つ外貨額

なお、「経常収支」「資本収支」「外貨準備高増減」には以下の関係があります。
経常収支+資本収支+誤差分=外貨準備高増減


さて、それではまず経常収支の方を見てみましょう。昨年9月のリーマンショックで、それまで順調だった経常収支が急減して今年1月には経常赤字になってしまいましたが、今年の2月以降は再び黒字基調に戻りました。ただし、経常黒字に一番寄与している項目は、貿易収支ではなく所得収支です。つまり、日本が対外的にお金を儲けている手段は、「貿易」ではなく「海外株や海外債券による配当金・利子・利回り」なわけです。
そして、次は資本収支の方を見てみましょう。直接投資と証券投資は、ほとんどマイナスになっています。日本の場合、2008年9月〜2009年3月はリーマンショックに起因して「日本勢が海外株や海外債券を売り払った」以上に、「海外勢が日本株や日本債券を売り払った」事が主因となり、資本収支が赤字になりました。一方で、それ以外の期間では「海外勢が日本株や日本債券を買っている」以上に、「日本勢が海外株や海外債券を買っている」事で主因で資本収支が赤字になっています。
↑の表だけを見ても、どちらの要因で赤字になっているかは読み取れないので、以下のさらに詳細な直接投資と証券投資の内訳表を読むことで判明します。
http://www.mof.go.jp/bpoffice/bpfdi.htm
http://www.mof.go.jp/bpoffice/bppi.htm

このように、同じ赤字でも「海外勢が日本から手を引く事」による悪性の赤字と、「日本勢が海外の株や債券を買っている」という良性の赤字があるので、この辺りは注意して数字を読む必要があります。ちなみに、日本の資本収支はリーマンショック直後を抜かせば、基本的には良性の赤字です。


さて、この国際収支表を見てみると、

1.経常収支の黒字分は主に所得収支(日本勢の購入した海外株や海外債券による配当金・利子・利回り)が支えている
2.資本収支の赤字分は主に直接投資/証券投資(日本勢による海外株や海外債券の購入)に起因する
3.外貨準備高は常に増加傾向

という事がわかります。これはつまり、「所得収支をもっと増やすために、さらに海外株や海外債券を日本勢が買い進めている。」という事です。日本がすでに貿易国から投資国へ舵を切ったのは、「いくら日本製品の品質が良くても、このまま円高が続けばそのうち新興国との価格競争に負ける」という読みがあったのでしょう。しかも非常に素晴らしい事に、リーマンショックの影響の一番大きかった2009年1月を除いて「経常収支+資本収支>0」の関係(つまり外貨準備高が増える事)が何十年と続いているので、「日本から海外に流出するお金」よりも「海外から日本に流入するお金」の方が多いわけです。とどのつまり、これではなかなか円安にはならないわけですよ。(もちろん国際収支だけで為替レートの決まるわけではありませんが、大まかな傾向を国際収支は示しています)
もう少し刺激的な書き方をすれば、

@所得収支の増加(海外株や海外債券による配当金・利子・利回りの増加)
A直接投資/証券投資のマイナス(海外株や海外債券の購入)
B経常収支+資本収支>0(すなわち外貨準備高の増加)

の3つの関係を保っていけるのであれば、日本の国際収支は当分安泰だし、円安になることはないでしょう。この成長モデルの素晴らしいところは、円高によって所得収支は為替損を被りますが、直接投資/証券投資がマイナスを続ける(海外株や海外債券を購入し続ける)ことにより現地通貨での配当金・利子・利回りは増え続けるので、所得収支の為替損をカバーしてしまえるわけです。



【国債の利回りさえ払えなくなる日はいつ?】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/32620113.html

さらに、先日の↑エントリーで、「長期的な円安が日本国債の投売りにつながる可能性がある」と財務省的な視点で書いたのですが、国際収支を見る限り、今のところ円安になる可能性はかなり薄そうです。
ところで、日本の投資家(金融機関)には、今後も日本国債を買い続けた上で、円高を維持するために「経常収支+資本収支>0」を満たす程度に海外株や海外債券を購入してくれれば良いのではないでしょうか?というのも、この状況で一番怖いのは、逆に日本国債の発行を長期間止めてしまうと、日本の金融機関の余剰資金が長期的に海外株や海外債券に向かってしまい「経常収支+資本収支>0」の関係が保てなくなり、円安を呼び起こして日本国債の投売りされる可能性も出てきます。
つまり、「日本国債の投売りを守るためには、適度に日本国債を発行する必要がある」という事が言えるわけで(しかも日本は、外国に頼らなくてもまだ自力で日本国債を消化できるわけですしね)、果たして政治家の方でこれを理解してくれる方がどの程度いるのか心配です。



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2009年10月05日

エストニアは回復基調に乗るのでは?!

@【危機は今:リーマン破綻1年/中 再燃の「火薬庫」】http://mainichi.jp/select/world/news/20090916ddm008020148000c.html

A【ユーロ圏の失業率、10年半ぶりの高水準】http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20091001-OYT1T00859.htm

B【IMF:ラトビアのユーロ導入、2014年目標達成は困難も−財政赤字で】
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=a2xHLyt0eB0M

↑ここ最近のラトビア関係の記事ですが、やはりラトビア経済は厳しい状況です。Aの記事に「失業率18%」って書いてあるけど、こんな高失業率で暴動とかおきないのかな?ちょっと心配。


【バルト3国 やはり一番手はラトビアか?】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/30153940.html

そして今日は↑のエントリーの続きです。前回は、バルト3国の2009年Q1の経済指標と対外債務残高を見ていきましたが、今回は2009年Q2の最新指標を見ていきましょう。


baltic-state_foreign-reserve_2009-Q2.jpg
まずは、↑のバルト3国の外貨準備高の推移から見ていこう。このバルト3国シリーズでは「GDP」「国際収支」「対外債務状況」においては四半期毎のデータを出しているのだけど、「外貨準備高」に関しては月毎にリリースしているデータを使うので、8月までデータを掲載している。
ここでの注目はやはり「ラトビア」です。「ラトビア」は7月に外貨準備高が急増しているわけだけど、これはEUによる融資金でしょう。とりあえず、「ラトビア」はこのEUからの融資でデフォルトの危機を免れたような感じがします。しかし、もともと「ラトビア」は2012年に財政赤字をGDPの3%以内に抑えてEUに加盟する予定になっていたのですが、Bの記事にもある通り、この目標達成は到底困難になったとみてよいでしょう。そもそも「ラトビア」は、GDPすら前年比で-20%程度になった一方で、政府債務が前年比で2倍くらいに激増しているわけです。(この辺の数字は後で出てきます)こういう状況だと、「GDPを増やす」にしても「政府債務を削減」するにしても、どっからどのように手を付けていいか頭の痛いところでしょう。


baltic-state_GDP_2009-Q2.jpg
そして次は、↑のバルト3国のGDPについて見ていきましょう。ここでのGDPは、季節調整の無い生の名目GDPです。さて、実は2009年Q2は意外にも、「エストニア」も「ラトビア」も「リトアニア」も、前期比でGDPはプラスを確保しました。しかも、この3国の中で先行きの明るい国が一つあります。
その国とは「エストニア」です。「エストニア」は「総固定資本形成」が急減中ですが、これは「総固定資本形成」の中に「在庫変動」という項目に起因するものです。この「在庫変動」が-3400(100万クローン)となっていて、これが相当に足を引っ張っています。ただ、在庫変動が大きくマイナスになったという事で、近いうちに生産が拡大すると思われます。実際、「エストニア」の純輸出が急増しています。この表からはわかりませんが、エストニアの輸出増加の要因は「輸入の低減」ではなく「輸出の増加」によるものです。つまり、「エストニア」では生産量が増加してるわけで、これは失業率の低下にもつながる良いニュースかもしれません。いずれにしても、「エストニア」は在庫も無くなっているし、輸出量も増えているわけで、先行きはそこそこ明るそうな気がします。
一方、「ラトビア」と「リトアニア」は「総固定資本形成」が前期比でプラスに転じていて、一定の歯止めがかかった感じがします。ただし、「ラトビア」の「総固定資本形成」は最盛期の半分以下、「リトアニア」の「総固定資本形成」に関しては最盛期の1/4近くまで落ち込んでいます。特に、「リトアニア」の「総固定資本形成」は「在庫変動」によるマイナス分を除いたとしても、最盛期の「8600」には到底届かないわけで、外国資本に戻ってもらわない限りはかつての勢いを取り戻せそうにありません……。
ちなみに、それぞれ3国のGDP最盛期から2009年Q2の落ち込み幅は、エストニア18%、ラトビア20%、リトアニア25%となっています。


baltic-state_bop_2009-Q2.jpg
そして次は、↑のバルト3国の国際収支推移を見ていきます。
「エストニア」は、2009年Q2に経常収支をついにプラスにしました。今後、黒字に定着するかどうかは、特に「貿易収支」の動向に依存すると思います。もしここで、「貿易収支」が黒字になると、バルト3国の中では最初に自律回復に向かうのは間違いなく「エストニア」になると思います。何故かと言うと、「資本収支」中の「直接投資」と「証券投資」が急減しているのですが、「直接投資」に関しては、海外から「エストニア」に投資がされず「エストニア国内」から海外に投資している事に起因していて、「証券投資」に関しては、「エストニア国内」から海外の債券をたくさん購入した事による物です。いずれにしても、海外資本が「エストニア」から流出しているわけではなく、「エストニア資本」が海外に向かうものであるので、今回の「エストニア」の「直接投資」「証券投資」の急減は悪性の物ではなさそうです。さらに「その他の投資」が急増しているのも、「エストニア国内の金融機関」が海外に貸し渋っているのが主因であって、エストニア政府が海外向けに大量に国債発行したわけでもありません。
一方、「ラトビア」の方は所得収支が急増していますが、これは海外支店留保利益(日本語で何ていうのかわからないけど、英語では"undistributed branch profits")が多くなってきた事が主因です。おそらく、「ラトビア」にある海外企業はラトビア内で出した利益をすぐに本国に送金せずに、通過切り下げの後に本国に送金するつもりだったのでしょう。そして「その他投資」もQ1に引き続き大きな赤字になっていますが、これは「ラトビア」の金融機関や民間会社が通貨切り下げを見込んでラッツを売って外貨預金した事が主因です。「ラトビア」では通貨切り下げが既定路線だったので、みんなで為替得を狙ってたのでしょう。実際、Q1から外貨準備高が大きく減らしているのがわかります。この国際収支表を見ていると、確かにEUの融資がなければ「ラトビア」はおそらくデフォルトしてたんでしょうな。ただ、Q3からはEUの融資が始まったので、おそらくQ3の「ラトビア」の資本収支は大きく変わると思います。


baltic-state_ex-debt_2009-Q2.jpg
最後に、↑のバルト3国の対外債務推移を見てみましょう。
まずはデフォルト危機に瀕していた「ラトビア」ですが、2008年Q3で2065(百万ドル)だった対外債務が、わずか半年くらいで倍になりました。2009年Q2でも引き続き増えています。ところが7月にEUからかなりの融資があったので、何とか持ちこたえられるではないでしょうか?ただ、「ラトビア」は政府部門にかかわらず経済規模に対して債務額が大きい(「GDP」対「対外債務」が、エストニア524%、ラトビア590%、リトアニア356%)事がわかります。「エストニア」みたいに、そこそこ先行きが明るいならまだしも、今の「ラトビア」にはEUからの融資がないと厳しいだろうなぁ……。
「リトアニア」は、経済規模的には「エストニア」「ラトビア」よりも債務額が少ないのですが、肝心のGDPの落ち込みが3国で一番ひどいのでL字型の低空飛行を続けることになりそうです。



という事で、各国についてまとめると以下のような感じでしょうか?
【エストニア】
輸出量増加と在庫減少により、Q3はそこそこの経済成長が見込めそう。経常収支がこのまま黒字を確保できるなら、バルト3国の中では一番早く安定化するのではなかろうか?

【ラトビア】
2009年Q2時点ではどうにもならなかったが、7月のEU融資により一時的に何とかデフォルトを免れた。ただし、失業率18%の示すように国内経済はほぼ崩壊状態で、しかも国内企業が自国通貨を売って外貨預金するくらいなので、経済再建は非常に厳しい。まずは、ラッツの信用を回復した上で、金融に重視しすぎたビジネスモデルを修正する必要があるのではないか?

【リトアニア】
GDPの落ち込みは一番激しいものの、対外債務は経済規模に対して多くはないためデフォルトはまだまだ先だと思う。最盛期の1/4程度に落ちてしまったGDP中の「総固定資本形成」をいかに回復させるかが、リトアニア経済の鍵を握る。



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posted by きらっち at 23:41| Comment(180) | TrackBack(0) | 経済

2009年10月02日

国債の利回りさえ払えなくなる日はいつ?

バルト三国の2009年Q2の経済情勢については、時間のゆっくりとれる明日か明後日に回して、今日は↓の日本国債についてです。

【長期金利大幅低下、一時年1.255% 半年ぶり水準】
http://www.asahi.com/business/update/1002/TKY200910020136.html

10年物の国債の利回りが1.255%まで落ちたとの事ですが、これは先進国ではずば抜けて低い利回りであり(例えば、10年物の米国債の利回りは10月1日現在でおよそ3.3%)、日本国債の購入需要が非常にある事を意味しています。
さて、日本破綻論者は「日本国債の発行残高が800兆円以上ある」という事を盛んに主張していますが、実際のところこのうちの95%程度が日本国内の金融機関や投資家で消化されているので、好きで自国通貨を暴落させたい日本人が激増しない限りは日本国債が投売りされる可能性は低いわけです。
つまるところ、日本政府が財政破綻するかどうかは、「日本国債の利回りを日本政府が払い続けられるかどうか」と言い換えてもいいのかもしれません。

という事で今日は、実際のところ日本政府が国債の利回りにいくら支払っているかを計算してみましょう。


【財務省 国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(平成21年6月末現在)】
http://www.mof.go.jp/gbb/2106.htm

↑を見ると、日本政府による国債、借入金、政府短期証券の残高が示されています。ちなみに、政府短期証券とは超短期国債みたいなもので、償還期間が1ヶ月とか2ヶ月程度の物です。
ここでは、日本政府が総額でおよそ860兆円の借金のある事がわかりますが、ここに出ている借金を「長期物(10年以上)」「中期物(2年〜5年)」「短期(1年以下)」にカテゴライズしてみると……

長期物:456.8兆円
中期物:217.7兆円
短期物:185.7兆円

となります。ここでは「交付国債」「出資拠出国債」「日本高速道路保有・債務返済機構債券継承国債」は、あえて厳しめに長期物にカテゴライズしました。また、「長期借入金」は中期物、「政府短期証券」は短期物にカテゴライズしてあります。

そして、以下がここ最近に発行した日本国債の利回りです。
10年物:1.329%(2009年9月1日)
5年物:0.648%(2009年9月8日)
1年物:0.1727%(2009年9月21日)
(【平成21年(2009年)9月の入札情報】より http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/calendar/0909.htm)

この利回りを上記の「長期物」「中期物」「短期物」に当てはめてみると、1年間の利回り支払いに、
(456.8×0.01329)+(217.7×0.00648)+(185.7×0.001727)
=6.07+1.41+0.32
=7.8兆円程度ある事がわかります。
今の日本の一般会計の税収(国債は含まない)が46兆円程度なのですが、7.8兆円の利回り支払いに対して、46兆円の税収をどう見るかで評価の割れるところではあるでしょう。

そして今日はあえて、財務省の立場になって考えてみたいと思います。まず、7.8兆円の利回りの支払いは、過去の国債発行に起因するのでどうやっても変える事はできません。であれば、財政再建のために何を変えられるかと言うと、46兆円の方の税収の方でしょう。この税収の増やし方としては、いくつか考えられて

1.増税によって国民から徴収
2.経済成長による税収増
3.さらなる国債発行で足りない分を補う

というところでしょうか?まぁ、3.はとりあえず除外するにしても、ここ20年くらいはまだ人口減少の影響がそこまで利いてくるわけではありません。ただし、それ以降は人口減少が急速なペースでやってきて内需が急激に縮小するでしょう。その時に、当然税収も急激に少なくなるでしょうから、その時に日本政府が国債の利回り支払いや償還に耐えられる財務体質になっていなければ困るわけです。財務省は、将来の国債の利回り支払いや償還が怖いので、「今のうちに返せる借金は早く返したい」と思っているはずで、上記の1〜3の中で一番確実な方法の「増税」をとりたいわけです。

あと、財務省は将来の「円安」に対しても相当心配していると思います。というのは、今後はしばらく円高が続くと思いますが、人口減少で日本経済が縮小方向に向かい出すと、それまでの円高が止まり、いずれ円安に転じます。この時、為替損を気にして外国の債券や株の購入を控えていた日本の金融機関が、今度は為替得を狙って一気に日本国債を手放して外国の債券や株を購入する日が来るかもしれません。この時、いよいよ日本国債が危なくなるのではと思っています。
そうならないためには、「円安にさせなければ良い」という事で

○人口減少を止めさせる
○恒常的な日本の経済成長
○(もし円安になってしまった時のために)外貨準備高の適切な運用

が今後の日本の至上命題になるのではないのでしょうか?おそらく財務省は、そのくらい先の日本経済まで読んでいるはずです。

と、今日は財務省の目線で彼らの思うところを書いた次第です。しかし個人的には、今はとにかく日本政府が日本国内のお金の流動性を供給しないといけないので、国債発行して政府支出を増やすべきだとは思うのですが、今の与党でそんな事を言う人はいるのでしょうか?
いずれにしても今の現政権には、経済の縮小する方向に誘導しないようにお願いしたいものです。現政権は、「今後の日本の経済成長」について何も示していない上に、補正予算をひっぺがえしたり、来年度予算をガリガリ削ったり、真面目に今後の日本の経済成長を考えている節が見当たりません。あるいはまさか、「子供手当てで景気回復できる!」と本気で信じている事は無いと思うのですが……。



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posted by きらっち at 22:30| Comment(5) | TrackBack(2) | 経済

2009年09月26日

ウィルコムの誤算

【ウィルコムが私的整理 金融機関との調整難航も】
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200909250078a.nwc

ウィルコムユーザの俺にとって非常に気になるニュースではあるのだけど、おそらく次世代PHSサービス開始を止めて既存のPHSサービスに絞るのならば、資金繰りはしばらく大丈夫だとは思うけど、そうすると大量のユーザがイーモバイル辺りに流出しそうだよなぁ……。
という事で、今日はウィルコムの誤算をバランスシートを追いながら類推してみよう。


willcom_balance-sheet.jpg
↑がウィルコムのここ最近のバランスシートなんだけど、昨日のエントリーのアイフルと同じく資産(=負債+自己資本)が減少しています。という事で、ポイントを絞って考察してみます。

【ポイント@:「流動負債」の割合が増加】
2006年Q1では「固定負債」(1年以上返済義務が無い)が約1400億円で、「流動負債」(1年以内に返済義務がある)が約500億円だったのに対して、2009年Q1では「固定負債」1000億円で、「流動負債」が700億円となっている。つまり、すぐに返済義務のある借金の割合が高くなっているわけで、資金繰りが上手く行っていない事がわかる。

【ポイントA:売掛金・未収入金が2008年Q3から減少】
売掛金・未収入金とは、すぐに手に入る事が決まっているけれど、まだ手にしていないお金の事。まぁ、おそらくこのほとんどは加入者からの通話/通信料で、まだ引き落とされていない分だとは思うけど、これが減少しているという事は、そもそもユーザーから徴収している利用料が少なくなっているという事であるので、これは非常にまずい。
おそらく2008年の3月から始まった「新つなぎ放題」で、今までヘビーユーザーだった人がこのプランに乗り換えたからだと思われる。1万3千円だった定額通信料が4000円くらいになったんだから、そりゃ相当ウィルコムには痛かったんだろうなぁ……。

【ポイントB:「自己資本」が増加の一途】
「株主資本」が一途に増加していますが、これは手元の資金確保のための一環だと思います。「社債」や「借入金」に頼るよりも、返済の必要の無い株を発行する方がウィルコムにとって都合が良いですから。
ただ、2006年以降はウィルコムの加入者数の伸び悩んで低迷する中、2009年Q1に一気に「株主資本」を40億円程度増やしています。このペースが保てればまだしも、既存の株主の意向もあるし、なかなか難しいでしょう。

【ポイントC:「1年以内期限到来固定負債」の増加】
2008年Q3と2009年Q1で、「1年以内期限到来固定負債」が850億円ずつ増加しています。これは、次世代PHSの基地局を作るために調達したものでしょう。本来であれば、「社債」や「長期借入金」で資金調達するべきでしょう。ただ、これらは返済義務が1年以上のもので、ある程度信用が無いと使えない手段です。ところが、ウィルコムはここ最近調子が良くなかったため、「短期社債」か「短期借入金」に頼らざるを得なかったのでしょう。事実、「長期借入金」は減少の一途を辿っています。

ちなみに、アイフルの場合は本業である貸金業の「営業貸付金」の減少が資産額の急減する主要因でしたが、ウィルコムの方は「有形固定資産」の減少が資産減少の主要因です。これはどういう事かというと、おそらくウィルコムは数年前に現PHSサービスの全国展開を図るために大量の基地局を作ったわけです。ところが、この基地局は減価償却によって年々価値が落ちるわけで、この減価償却部分が資産減少の主要因なのでしょう。


無線通信の業界では、今年の2月にWiMAX通信サービス(下り40Mbps)が始まり、あと1年程度でLTE(下り数十Mbps)も始まります。ウィルコムの次世代PHSは20Mbpsを売りにしていますが、果たして新たな基地局への多大な投資分を、加入者増によって取り戻せるのでしょうか?
そんな中、俺の住んでいる地域は間違いなく次世代PHSの基地局整備が大幅に遅れる事になるだろうから、俺は年末にDOCOMOに移る予定です。ウィルコムさん、申し訳ない!



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posted by きらっち at 23:47| Comment(2) | TrackBack(0) | 経済

2009年09月25日

消費者金融会社が借金で困るとは

【アイフル:私的整理 消費者金融、苦境浮き彫り 業界再編の観測も】
http://mainichi.jp/select/biz/news/20090919ddm008020082000c.html

という事で、昨日の予告通りに今日はアイフルのバランスシートを見てみます。本当であれば、損益計算書も一緒に出したかったのだけど、そこまで考察する時間がなかったので、とりあえずバランスシートだけ。


とりあえず本ブログでは、何回かいろんな会社のバランスシートを出していますが、復習の意味でおさらいしておきましょう。

@:バランスシートは、「資産の部」「負債の部」「純資産の部(事自己資本)」の3つからできていて、「資産=負債+自己資本」となっている。

A:「資産」とは、会社が所有している物の額(原則として、買った時点での値段で評価)

B:「負債」とは、会社がいずれ誰かに返さないといけない物の額

C:「自己資本」とは、会社が返さなくてもいい元手の額。

D:@の関係式から、「資産が増える」ということは、「負債が増える」or「自己資本が増える」という事と等価である。

俺は会計学を勉強したことがないので、最初はDがよく理解できなかったのだけど、いくつか例を出すとこういう事なんですよ。

【例1 会社が総額100万円の株を発行して、株で得たお金を貯金した】
この場合、「自己資本」の「資本金」に100万円が計上される。と同時に、「資産」の「現金及び預金」にも100万円が計上される。

【例2 ディーラーに20万円の支払手形を払って、中古車を購入した】
この場合、「負債」の「支払手形」に20万円が計上される。と同時に、「資産」の「有形固定資産」にも20万円が計上される。

というような感じで、バランスシート上では「資産が増える」と同時に「負債や自己資本が増える」ことになる。ちなみに例2の場合で車を売ったディーラーの方は、「資産」の「受取手形」に20万円が計上され、同じく「資産」の「商品」で20万円が差し引きになる。この時、+20万円と-20万円で相殺してしまうので、「資産」の合計額に変化はなく、「負債」「自己資本」も変化がないので、「資産=負債+自己資本」の関係は崩れない。
このように単純に物を売っただけでは資産が増えるわけではありません。この辺り、会計用語でいう「資産」は、一般用語でいう「資産」とはちょっと資質が違うかもしれません。


aiful_balance-sheet.jpg
さてそれでは、↑がアイフルのバランスシートになります。これを見てみると、確かにアイフルの経営状況は良くないことがわかります。

【ポイント1:「資産」「負債」が減少している】
「資産=負債+自己資本」から、自己資本が変わらないのなら「資産」も「負債」も減少するのは当然なのですが、2008年Q1では2兆円あった「資産」が、2009年Q2では1兆5000億円となっています。「資産」が減少するという事は、つまりは会社の収入源がなくなっている事を表していて、非常に危険だと思います。

【ポイント2:「資産」の「現金及び預金」が半分以下になった】
2008年Q1では2300億円程度あった「現金及び預金」が、2009年Q2では1050億円程度に減少しました。これは資金繰りが上手く行かない事を示唆しています。

【ポイント3:「借入金」と「社債」の返済や償還が重荷になっている】
2009年Q2では、「負債」の「1年内償還予定の社債」「1年内返済予定の長期借入金」が3000億円以上あります。ここに、短期借入金が1000億円あるわけで、アイフルは1年以内に4000億円以上の借金を何とかしないといけないわけです。しかも、2009年Q2はコマーシャルペーパー(CP)を発行しませんでしたが、これでアイフルが決定的にヤバイと印象付けてしまったのでしょう。よほど利回りを大きくしないと、誰もアイフルのCPを買ってくれないという事だと思いますが、仮に高い利回りのCPを発行してもその利回りの支払いですら首を絞める状況である事を、アイフルは認めてしまったわけです。

【ポイント4:本業の貸金業がピンチ】
さて、一方で「資産」で一番額の大きい項目「営業貸付金」を見てみましょう。これは、アイフルがお客さんに貸し付けているお金ですが、2008年Q1では1600億円程度だったものが、2009年Q2では1180億円と激減しています。つまり、アイフルは消費者金融会社でありながら、「資産」の70%程度を占める貸金事業が上手くいっていないわけです。


アイフルはこの状況で、借入金を返済して、社債を償還できるのでしょうか?まだ「現金及び預金」が1000億円あるとは言え、本業の貸金事業の縮小傾向が止まらないので、遅かれ早かれ資金繰りがおっつかなくなるでしょう。

しかし、消費者金融会社が借入金の返済や社債の償還で苦しむとは、何とも皮肉な話ではあります。やはりいろいろな意味で、金融系の会社にとってリーマンショックの影響は非常に大きかったのでしょう。



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2009年09月14日

韓国・中国の貿易動向A

【中国・韓国の貿易動向】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/30546124.html

↑のエントリーから2ヶ月経過しました。今日は、7月・8月分の中国と韓国の貿易動向を追ってみましょう。堅調な中国貿易を尻目に、絶好調だった韓国に暗雲が立ち込め始めました。


china_trade-surplus2.jpg
さて、まずは中国の方からみて見ましょう。中国は、7月8月に輸出額が1000億ドルを超え、底堅い動きをしています。一方の輸入はと言うと、7月に950億ドルまで上昇しましたが8月は880億ドルと減っているので、8月の純輸出(貿易黒字)が急激に増えました。確かに、純輸出が増えるという事はマクロ的に見ると中国には良い事なのでしょうけど、為替レートが激変したわけでもないし、資源価格が突然上昇したわけでもないので、8月の輸入減少は普通に在庫調整によるものかな?まぁ、6月7月と輸入が大きく増えていたしね。


skorea_trade-surplus2.jpg
そして、心配なのは韓国です。↑を見れば一目瞭然なのですが、輸出が息切れしてきた一方で、輸入が増えてきたため貿易黒字額が急減してきました。まだ貿易赤字にはなっていないのですが、9月から年末にかけてどうなるのでしょうか?ここ最近は、韓国政府がウォン売りドル買い介入をしているようなので昨年レベルの外貨不足には陥らないでしょうけど、「縮小成長」で貿易黒字を稼ぐ戦略から、そろそろ次の一手が必要になるのかもしれません。とは言うものの海外の需要減はまだまだ続きそうですので、今の韓国が輸出をどんどん伸ばすのは難しいでしょう。韓国政府の次の一手が非常に興味深いです。この辺については、近いうちに昨年の韓国デフォルト危機からの流れと、現在の韓国経済状況を書くつもりなので、詳細はそこで執筆します。


いずれにしても、中国や韓国(もちろん日本にとっても)は、原油や資源の価格高騰が再び来るかどうかが心配です。欧米の景気がV字で回復できる状況でないので、高い利子や利回りを求めるマネーは一体どこに向かうのでしょうか?堅い運用を求めるのなら「米国債」もそれなりの需要はありそうですが、世界の投資家の判断によっては昨年みたいに「原油」とか「食料」にマネーが流れるのかもしれません。あるいは↓の記事のように、中国に追随して「金」への投資が激増する可能性もあります。

【NY金1000ドル超、終値で最高値】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20090912-OYT1T00349.htm


いずれにしてもどこにマネーが流れるかは投資家の動向次第です。ただ、日本の「失われた10年」では将来の円高懸念もあり、当時の日本国内の金融機関や投資家は、外国債券や資源へマネーを集中させたわけではありませんでした。ちょうどその頃、日本政府がバンバン国債を発行して景気対策をやっていたので、彼らのマネーは日本国債へと流れたのです。その結果、日本はインフレにもならなかったし(むしろデフレに悩まされました)、日本国債も順調すぎるほど売り切ることができました。(日本国債の利回りは、各国の国債と比較すると異常に低い事が、全てを物語っています)
さて、今回の金融ショックの場合はどうでしょうか?今はまだ、米国債を順調に消化できているので大丈夫でしょうけど、世界のマネーが米国債や中国株等の金融資産を拒否して、原油や資源等のモノにマネーが向かい出した時に、果たして俺達にインフレを止める術はあるのでしょうか?仮にそういう状況になると、ドル安がむちゃくちゃ進むでしょうから日本は極度の円高になるでしょう。その時、時の政権与党が一体何をどう考えて、どのような決断を下すのでしょうか……。
米国債も中国株もまだまだ大丈夫とは思ってはいるのですが、そんな事を考えると多少は不安になったりもします。



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2009年09月11日

黒字転換したホンダの営業利益の中身

@【ホンダ・日産、営業黒字確保 日米欧なお不振、4〜6月】
http://www.asahi.com/business/update/0729/TKY200907290412.html

@の記事は、7月29日付で多少時間は経過しているけれど、ホンダの2009年Q2の営業黒字を確保したニュースです。2009年Q2では、トヨタがまだ営業利益の赤字(約1949億円)から脱却できていない事を考えると、ホンダも日産もよく頑張ったんだなと思います。という事で、今日はホンダの営業利益に着目して、どの事業&どういう地域で利益を出しているのか見てみましょう。これを見ると、黒字確保とは言え、ホンダの意外な事実がわかります。


まず、「営業利益」の説明ですが、これは利益のうち本業で稼ぎ出した部分です。ホンダは、事業として「二輪」「四輪」「金融サービス」「その他」事業を持っているので、これらの事業の利益が営業利益としてカウントされます。ちなみに、「資産運用として持っていた株を売却した」とか「社債の利回り支払い」みたいな物は直接の営業とは関係ないので、こういう類の儲けや支出は「営業利益」にはカウントされません。


honda_business-profit.jpg
さて、それでは↑のホンダ全体の連結営業利益の推移を見てみましょう。2007年の最盛期には、四半期単位で3000億くらいの営業利益があったわけですが、2008年に営業利益が下降局面に入り、リーマンショック後の2009年Q1には、営業赤字が3000億円と非常に厳しい結果が待っておりました。ところが、Q2は何とか250億円程度の黒字を確保できました。
ところで何故、ホンダはQ2に黒字を確保できたのでしょうか?普通に考えれば、「世界各国でエコカー補助制度が始まったので、自動車が売れたんじゃないの?」と思うでしょう。俺もそう思っていました。ところが、トヨタは未だに1949億円の営業赤字なので、ホンダはトヨタとは違う「何か」があるはずです。


honda_profit_each-business.jpg
そして、↑にホンダの事業別の営業利益を見てます。ちなみに、ここで出てきている「二輪事業」「四輪事業」「金融サービス事業」「汎用事業及びその他の事業」の合計が、先の連結決算とほぼ一致します。
さて、この図から今のホンダで一番足を引っ張っているのは四輪事業である事がわかります。ただ、2009年Q1に3000億円程度の営業赤字(連結営業利益とほぼ同程度の赤字)を計上しているのに対して、Q2では214億円の赤字となり相当な回復ぶりがうかがえます。(とはいうものの、まだ赤字ではあるわけですが。)
じゃあ今のホンダは何が一番の稼ぎ頭なのか見てみると……。そうです、「金融サービス事業」が今のホンダの命綱なんですよ。これには、俺もびっくりしました。

A【二輪車 新興国で市場拡大 ホンダの稼ぎ頭に】
http://www.nsjournal.jp/column/detail.php?id=176163&dt=2009-09-10

一応、↑Aの記事にもあるように、Q2は「二輪事業」も黒字回復したとは言え、額を見ると56億円であり大した事はありません。ところが、「金融サービス事業」は今年に入って営業利益が拡大していて、Q2では468億円の黒字を計上しています。ここでの営業利益は日本のみでなく世界全体のホンダグループでの営業利益であるため、四輪事業はどこの地域でも苦しいという事を示唆しているのかもしれません。


honda_profit_each-area.jpg
それでは最後に、↑ホンダの地域別の営業利益を見てみましょう。こちらも各地区の営業利益の和は、ほぼ連結営業利益と一致します。さて、地域別に見ると足を引っ張っているのは「日本」と「北米」です。ただ、アメリカも日本もエコカー補助制度がQ2に始まり、V字回復していることがわかります。ところが、アメリカは補助金の財源が底をつきエコカー補助制度が8月下旬に終了しました。果たして、北米地域のQ3とQ4の営業利益が再び大幅赤字に転落するかどうか心配です。一方、日本の方はエコカー補助金政策実施されたにもかかわらずQ2はまだ47億円の赤字です。まだ今年度末まではエコカー補助は続くので、Q3,Q4の黒字を期待したいところですが……。
そして、地域別にみた場合の現在の稼ぎ頭は「アジア」である事がわかります。おそらく中国の影響が一番大きいような気はしますが、この事実を見越してホンダの社長は「日本市場ではなく海外に重点を置く」「日本国内の生産を減らす」との↓のコメントを発表しています。

B【ホンダ社長「国内生産100万台に抑制」 海外に重点】
http://www.asahi.com/business/update/0911/TKY200909100411.html

「雇用は維持する」と社長は言っていますが、雇用を維持したまま生産能力を落とせば、まさにデフレスパイラルにつながりそうな感じがします。失われた10年を経験した日本を考えれば、今回みたいな金融危機が去った後始末として「貸し渋り/貸し剥がし」「失業率」「デフレ」の問題が来るわけで、各国ともむしろ正念場はこれからです。

ちなみに参考ですが、地域別の営業利益は全て「円」換算で出しているので、円高になれば当然営業利益は圧縮されます。ホンダの場合は、1$当たり1円の円高で100億円くらいの減益になるので、Q2の営業利益(252億円)は数円の円高でパーになるレベルです。



と、いろいろ思ったところを書いたのですが、今日の言いたいところをまとめると以下のようになります。

1.2009年Q2のホンダの連結営業利益(全世界分)は252億円の黒字。
2.連結営業利益252億円のうち、事業別で最も営業利益に寄与しているのは「金融サービス事業」で、468億円の黒字。
3.連結営業利益252億円のうち、海外での営業利益分が288億円。

つまり、ホンダは「車で稼いでいる」わけでもなく、「日本で稼いでいる」わけでもないわけです。確かに黒字は黒字ですけど、これは安心して喜べる状況なのでしょうか?きっとホンダだけではないでしょうけど、営業利益が「為替レート」に依存する輸出依存の製造業の怖さを垣間見た気がします。



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2009年09月07日

アメリカの「貯蓄率」と「失業率」

【退職後の貯蓄増やすための新対策 米大統領、備えを呼びかけ】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090906AT2M0501N05092009.html

【8月の米失業率9.7%に悪化 26年ぶり高水準、予測上回る】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090904AT2M0403C04092009.html

アメリカはここ最近、個人貯蓄率が急増しているにもかかわらずオバマ大統領のこの声明ですか……。しかも、8月も想定外に失業率が悪化してしまったこのタイミングで、ますます消費の落ちるような事を発表して大丈夫なのかな?
という事で、今日はアメリカの個人貯蓄と失業率の推移を見ていきましょう。


us-savings.jpg
まずは、↑の個人貯蓄の推移を見ていきましょう。ここでは、個人所得、個人可処分所得、個人貯蓄率を出しました。ちなみに可処分所得とは、所得から税金や社会保険料の支出を差し引いた金額をいいます。さらに通常、貯蓄率とは可処分所得に対して貯蓄する割合の事を指します。つまり、(1-貯蓄率)が消費に回っているという事になります。
さて、これを見てまず驚く事は、アメリカの個人所得額がわずか9年足らずで1.5倍くらいまで増加していることです。確かに、リーマンショック前までのアメリカは数%程度のインフレ傾向ではありましたが、労働人口が急激に増えたわけでもないので、物価と人口だけで「9年で1.5倍」の説明はできないわけです。つまり、アメリカは経済成長によって個人所得を増やしていたわけで、失われた10年で所得の上がらなかった日本とは全然状況が違いますね。
そして、リーマンショック後をみると貯蓄率が急増しています。確かに、一般的には不景気になると消費者心理が冷え込むので、貯蓄率が上昇するのは直感的にわかるのですが、わずか1年ちょっと前の貯蓄率が1%だったのに現在では4%後半まで上がっているので、アメリカ経済の環境変化がいかに急激だったかが推測できます。現在のアメリカの経済指標も全面的に良いわけではないので、しばらくはこの高貯蓄率を維持するだろうと思いますが、デフレ局面でこういう数字を見てしまうとますますアメリカ経済の今後には期待できないだろうし、すでにデフレスパイラルに突入しかけているんじゃないのかなぁ……。
さて、もう少し違うところを見てみましょう。貯蓄率が激減した2001年Q4や2005年Q1は可処分所得も減っているので、おそらく何らかの増税が原因だと思うのですが、もろに貯蓄率への影響が出てきます。逆に、2008年Q2は何かの減税をして可処分所得と貯蓄率が増えたのでしょうか?いずれにしてもこの辺は、来るべき日本の増税シミュレーションにも大きく参考にすべきところでしょうね。


us_employment-rate.jpg
そして次に、↑のアメリカの失業率推移を見ていきましょう。一目見ただけで、2008年半ばでアメリカ経済に何か劇的な変化の起こった事がわかりますね。(笑)まぁ、十中八九アメリカの失業率は近いうちに10%の大台を超えるでしょう。10%で留まるか、さらにされ以上行くかは今後の世界経済の情勢次第だと思いますが、これだけ失業率が上がると、アメリカGDPの70%を占める民間最終消費の今後の増加はほとんど期待できないでしょう。政府支出で経済を支えようにも、アメリカはそろそろ法律で定められた国債発行残高のリミット(約8兆2千億ドル)にそろそろ到達してしまうわけで、今後はどうやって経済を支えるつもりなんでしょうか?おそらくは、法改正で国債発行残高の上限リミットを引き上げた上に、FRBの国債買い切り枠も増やすことになるんじゃないかと思いますが、とてもまだ出口戦略を考える状況では無いような気がします。
ところで、アメリカで良くなっている経済指標の一つに経常赤字額の縮小している事があるのですが、この赤字幅縮小の要因は「輸出よりも輸入の減り方が大きい」事によって貿易赤字額が縮小しているからです。ところが、これは決してアメリカの生産が増加しているわけではありません。(国内需要を考えないとすれば)輸出も減少しているという事でアメリカの生産量が減少しているわけです。つまり、生産量が減少すれば失業率の増加につながるわけで、必ずしも「赤字幅の縮小」とか「黒字幅の拡大」は経済にとって常に良い影響があるわけではありません。(この話は、むしろアメリカよりも、韓国に当てはまる話かもしれませんが)
このように、アメリカはマクロで見れば明るい指標もあるのですが、ミクロで見れば「実は国民個人にしわ寄せが来ている」という事も言えるので、今後も楽観はできません。少なくとも、アメリカの生産が今後V字型で回復する材料もあまり無いので、失業率の上昇はもう少し続くと思います。



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2009年09月03日

頼みの綱の中国も……

【上海株8月暴落:時価総額42兆円消失、1人60万円損失】
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0903&f=business_0903_069.shtml

asia_stock-market.jpg
↑に、2008年1月からの「日本」「中国」「韓国」の株価推移のグラフを作りました。さて、これを見る限り中国の株価が先月から確変モードに入ったと思いません?(笑)
グラフを見れば一目瞭然でわかりますが、中国株のバブルはリーマンショック前にすでに弾けていた事がわかります。逆に、欧米各国の株価が大幅に下落する中、バランスシートの痛んだ各国金融機関にとっては、すでにバブルの弾けて落ちるところまで落ちた中国株は上がるだろうと思われていたので、希望の星のように映ったのでしょう。


@【中国・韓国の貿易動向】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/30546124.html

A【中国の国債入札:2週間で3度目の札割れ−資金は株式・不動産へ 】
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003011&sid=a.BIjDGWALsc&refer=jp_asia

B【中国が抱え込む新たな火種 銀行貸し出し急増の副作用】
http://news.biglobe.ne.jp/economy/788/dol_090601_7888602446.html

しかし、↑の@のエントリーでも書きましたが、中国は思ったよりも輸出が伸びず、内需も政府の財政支出頼りとなっている状況の中で、Aの通り国債入札で札割れを起こしてしまいました。国債の札割れに関しては、単純に中国国債の利回りよりも儲けられそうな株や不動産の方に資金が流れているからでしょう。そしてBの記事にもありますが、中国政府は、貸出金が回収不能になるのを恐れる国内銀行に融資を強制したため、その融資したお金が株や不動産に流れる構造が出来てしまったわけで、これが再び中国株のバブルに繋がった可能性があります。

もしここで、再び中国株バブルが崩壊してしまうと、世界経済はエンジンを失ってしまうため、2番底どころか相当長い期間立ち直るのは厳しそうな感じがします。しかも、今まで中国株に投資していた投資家達は、再び投資対象を探さなければならないため、昨年のような資源高騰になるんじゃないかと非常に心配です。

どうもここ最近の世界経済や金融情勢を見ていると、「近いうちに、また何か激変が来そうな感じがする」と思うのは俺だけでしょうか?できれば俺の予感が外れていて欲しいものですが……。



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2009年09月02日

伸びる産業と衰退する産業

【民主政権へ期待と不安 建設業界・郵便局・遺族会…】
http://www2.asahi.com/senkyo2009/news/TKY200909010194.html

公共事業を批判している民主党は、おそらく概算予算要求で国土交通省や農林水産省の公共事業費をごっそり削るのだと思うけど、そりゃ確かに建設業に従事している人は、たまったもんじゃないだろうなぁ。自民党ですら、毎年毎年公共事業費を削ってたわけで、おそらく建設業界は相当苦しいんじゃないのかな?

という事で、今日は1990年〜2007年までの実質GDPにおける「産業別の生産額割合」を算出してみました。これを見て、建設業がどの程度苦しいかを見てみましょう。
realGDP_composition.jpg
↑を見てみましょう。ここでは「農林水産業」「鉱業」「製造業」「建設業」「電気・ガス・水道業」「卸売・小売業」「金融・保険業」「不動産業」「運輸・通信業」「サービス業」「政府サービス」「対家計民間非営利サービス」の12産業の実質GDPに対する割合(積み上げ棒グラフ)と、実質GDPの額(折れ線グラフ)をあらわしています。なお、原資料には「関税」「控除」「統計誤差」の項目も含まれますが、数字が小さいのでここでは割合計算に入れておりません。よって、この12産業の全ての生産額の和は、ほぼ実質GDPと同じになります。
さて、このグラフから建設業の対実質GDP比は随分少なくなっている事がわかります。1990年は実質GDPに対して10.8%を占めていたものが、2007年では5.6%にまで落ちてしまいました。日本の実質GDPは、この17年間で27%(120兆円)程度の増加を達成しましたが、建設業の生産額は落ち続けたわけです。上記の朝日新聞に記事中に
「5年前と比べて売り上げは半減。従業員のボーナスはゼロ、昇給もない。地方には農業と建設業しかないという事実がある。地方をただ、切り捨てるというのだけはやめて欲しい」
という記載がありましたが、数字を見る限り確かにこういう状態の建設会社はたくさんあるのでしょう。ただし、「時代と共に求められる物が変わる」という事もあるため、そりゃ淘汰される会社も出てくるのは仕方の無い事なのかもしれません。

ただし、建設業が衰退する一方で、伸びる産業もあるわけです。グラフを見ると「サービス業」の対実質GDP比が増えている事がわかります。1990年には実質GDPに対して17.6%を占めていたものが、2007年には22.1%に増加しました。ちなみに、この「サービス業」は「公共サービス」「対事業所サービス」「対個人サービス」という詳細区分があるのですが、対実質GDP比増加の半分程度が「対事業所サービス」によるものです。おそらく、この17年間で職場環境も大きく変わりIT等々の設備投資も進んだわけで、こういうIT設備の維持や管理等のサービスを受注する会社が多くなったという事でしょうか?
いずれにしても他国との人件費差を考えると、製造業等のモノを媒介する産業は「技術」や「特許」に特化しないと価格競争で勝てないので、他国でも作れる製品についてはこれからも海外への工場移転が進むでしょう。なので、こういう産業については対GDP比の割合をこれ以上伸ばすのは非常に難しいと思われます。
ところが、「サービス業」の場合は外国に流れない仕事(例えば、上記のIT設備保守業もそうですし、医療/介護産業とか教育産業みたいな「モノ」ではなく「ヒト」を媒介する仕事)が多いので、ここを重点的に伸ばす政策を打てば雇用対策にもなるし内需拡大にもつながると思います。


ニーズは時代と共に変わりますが、ニーズ変化に迅速に対応できるのであれば、日本はまだまだ世界経済を引っ張っていける潜在能力はある、と俺は信じています。



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2009年09月01日

生産増加を伴う経済対策を!

【09年度補正予算を執行停止へ】
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2009083000622

民主党は、今年度の一次補正予算の執行停止を考えているらしい。ちなみに自分の身になって考えると、先週の引越しに伴って新しくクーラーとプラズマTVを購入したのだけど、エコポイント制度が無くなるかもしれないって事だよね。うぅ、早くエコポイントの交換申請を提出しないと……。

まぁもっとも、民主党の立場からすれば早く自分達の掲げた目玉政策を実現しないといけないので、補正予算を止めてそれを財源にしたいわけでしょう。裏を返せば、「補正予算を止めない限り、すぐに財源捻出のメドが立たない」という事だろうとは思いますが。


ということで、今日は今まで自民党が行ってきた経済対策の考え方と、民主党の考える経済対策の考え方の違いを経済的な視点で考えて見ましょう。
economic_comp.jpg
↑が、それぞれの経済対策でのお金の流れを図に示したものです。今までやってきた自民党の経済対策は、公共事業や政府事業や民間事業促進等々に視点を置いています。つまり、政府支出によって社会需要を増加させて、民間企業に仕事を流し、最終的に国民へ利益を還元させる政策を取ってきたわけです。
なので、政府支出が大きく増加すれば、社会の生産増加に伴いその影響は広く世の中に還元されます。(いわゆる「乗数効果」というやつです。)

一方、民主党の考える経済対策はどうでしょうか?民主党の場合は、子供手当てや農家の戸別保証等々、国民へ直接お金を流す政策を実行するようですので、これらの政策では民間会社にお金が流れるわけではありません。この補助金政策が経済的に上手く機能するためには、国民が受け取った補助金を消費に回さないいけないわけです。
しかしながらこのデフレ状況下において、補助金を受け取った賢い国民はどうするでしょうか?俺の読みでは、相応の部分が貯蓄に回されて、大きな経済効果が出ないような気がします。さらに、民主党の経済対策では「社会の生産増加」を伴うものではないので、失業率が増加する事になるでしょう。


という事で、自民党の行ってきた経済対策と民主党の考える経済対策をまとめましょう。

自民党の経済対策は
@政府支出によって社会の生産増加を促す
Aその結果、失業率の改善や給料増加が見込める

民主党の経済対策は
@政府支出によって直接国民に補助金を出す
A社会の生産増加や失業率改善は、国民の消費次第

というところでしょうか?民主党の経済対策を実行するとなると、国民の消費が鍵を握る事になるので、別途デフレ対策をやる方が効果的でしょう。(ちょうど下記の記事にもあるように、デフレはすぐそこまで迫っています)この辺は、日銀とか財界と早めに根回しした方が良いと思われますが、果たして民主党はすでに水面下で何か動いているのでしょうか?

【4〜6月期の需要不足、年40兆円規模 内閣府】
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090831AT3S3102A31082009.html


ただ私個人としては、国民一人の得る直接利益については確かに民主党型の経済対策の方が上のような気がしますが、先行き不透明な国民の消費と世界経済の不安定性を考えると、今は自民党型の経済対策の方が確実に全体効果が見込めるような気がします。しかも、自民党型の経済対策であれば政府支出で需要を作り出すため、デフレ対策にも効果を発揮するわけです。

まぁどちらの経済対策が正しいかは、来年から再来年にかけての経済情勢が示してくれるでしょう。



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posted by きらっち at 23:12| Comment(11) | TrackBack(1) | 経済

2009年08月17日

日本経済の次なる不安

【GDP、実質3.7%成長 4〜6月年率、5四半期ぶりプラス】
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090817AT3S1700L17082009.html

久しぶりに経済成長率がプラスに転じました。ひとまずマイナスを回避できたのは、間違いなく現政権の景気対策のおかげだと俺は確信しております。


japan_real-gdp.jpg
というわけで、↑のここ10年ほどの四半期毎の実質GDP(季節調整済)推移を見ていきましょう。前も書きますが、日本のGDPの構成項目は、「民間最終消費」「民間住宅」「民間企業投資」「民間在庫品増加」「政府最終消費」「公的固定資本形成」「公的在庫品増加」「純輸出」の8つです。ここでは参考のために、輸出と輸入も出しました。
さて、ここ直近の1年〜2年くらいを見ていきましょう。リーマンショックで一番影響の大きかった項目はどれでしょうか?数字の減少幅から言えば、「民間企業設備」「純輸出」が大きく減らしてしまったことがわかります。特に日本経済の足を引っ張っているのは、「民間企業設備」でしょう。2008年Q1のピーク時は22.7兆円もあったものが、2009年Q2には17.3兆円にまで落ち込んでいます。同様に、純輸出も2008年Q1のピーク時には8.2兆円あったものが、2009年Q2は3.6兆円です。(Q1の最悪期は脱したようですが、輸入低減によるものなので、良い傾向ではなさそうです)
実は、この「民間企業設備」と「純輸出」がピーク時の数字を取り戻せば、ピーク時のGDPとほぼ同水準になるわけで、今の日本経済の落ち込みはほぼこの2つに起因するとみて間違いないでしょう。

「純輸出」は、そもそも海外の需要が回復しないとどうにもならないので、政府の政策ではどうにも難しいところはあるのですが、「民間企業設備」を何とかして回復させたいところであります。そもそも「民間企業設備」は生産が増大しないと、企業側も設備投資をしません。「最終民間消費」が堅調に推移しながら、「政府支出」(政府最終消費と公的固定資本形成)で需要を作り出して、一刻も早く「民間企業設備」にブレーキをかけたいところです。

さらに、「最終民間消費」も前期比でプラスになったという事で、エコポイントやエコカー補助等々の景気対策効果が目に見えてあらわれてきたという事でしょう。多少、「最終民間消費」の増加幅が小さいような気もしますが、逆に言うと政府の景気対策が無ければ、まだまだ下げ止まらなかったのではないでしょうか?
しかも、名目GDPの方は前期比で-0.2%という事なので、こりゃデフレを何とかしないと本格的にヤバイ状態に入っちゃうんじゃないのかなぁ……。



ちょっと話は脱線しますが、この10年間の推移を見ると、日本の経済成長は輸出増加に支えられた側面が大きいのがよくわかります。輸出額が2倍以上になり(純輸出は6〜7倍!)、国内の生産量の増加に伴って民間企業設備も6兆円程度増加しました。増加率で見ると、「最終民間消費」よりも「民間設備投資」や「純輸出」の方が大きかったわけです。しかしながら、海外の需要減で「純輸出」が激減すると、「民間設備投資」も激減しました。要は失われた10年以降、日本はプチ輸出バブルだったわけですよ。リーマンショックで、輸出バブルが弾けただけなのです。
ただ日本は、もともと輸出依存国ではなく内需の強い国です。輸出が芳しくなくとも国内の経済基盤が他国と比べればまともなので、今の状態ですんでいるわけです。

さぁ、ここからどのような日本経済の成長路線を描くかは、自民党と民主党でビジョンが異なります。(というか、片方の政党は経済成長のビジョンがあるのかすらよくわかりませんが)
そしていよいよ明日、選挙の公示がされます。自民党は今日の経済成長率を高らかに主張するのでしょうが、果たして有権者はどのような判断を下すのでしょうか?
次の政権が斜め上な経済政策を取らないことを祈るのみです……。




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posted by きらっち at 21:28| Comment(3) | TrackBack(0) | 経済

2009年08月14日

やはり不況脱却レースの最後尾はEU圏か?

【国債買い入れ10月末で終了、FRBが決定】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20090813-OYT1T00337.htm

【【米国債市場概況】長期債価格が下落、FOMC政策声明受け】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djCZG9402.html

アメリカは、ついにFRB(アメリカの中央銀行)による国債買い入れを10月末でやめる方針を打ち出しました。いよいよアメリカは景気の底入れからの出口戦略に舵を切ることになります。

個人的には、「国債買い入れを10月末にやめたら、今後の米国債発行大丈夫なのか?」とは思うのですが、果たしてどうなのでしょうか?すでに、FRBは2500億ドルもの米国債を買い入れているわけですが、アメリカ政府は景気対策法で7820億ドル、金融安定化法で7000億ドルの財源が必要だったわけです。

景気対策の方は7820億ドルをこれから全額支出するつもりでしょうけど、先日のエントリーで近いうちに2700億ドルを支出すると伝えたので、残り5000億ドル近くを調達しなければいけないわけだ。
さらに金融安定化の7000億ドルは
1.金融機関への資本増強に2000億ドル程度
2.AIGやGMへの個別支援に1500億ドル程度
3.住宅ローン市場に2200億ドル程度
にすでに支出したのだけど、とりあえず残り1000億ドル以上はこのまま使わない事になりそうです。

FRBの国債買い入れのリミットがあと500億ドルという事を踏まえると、アメリカ政府は残り5000億ドルの大半をほぼ自力で調達しないといけないわけで、果たしてどこまで米国債の利回りが上がるのか気になるところです。



【バルト諸国の経済低迷続く ラトビア、マイナス19.6%成長】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090813AT2M1003513082009.html

【バルト3国 やはり一番手はラトビアか?】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/30153940.html

でもまぁ、アメリカは何だかんだ言ってもやはり経済大国ではあるし、合理的な金融政策を打っているので、まだ大丈夫だとは思うのだけど、やはり欧州(特にバルト3国)が心配です。
本ブログでも、↑のエントリーでラトビアがやばそうだという事はすでにお伝えした通りですが、2009年Q2の経済成長率が前年比-19.6%という事で、絶望的な数字のように思えます。(ラトビアは四半期毎にGDPのバラツキが非常に大きいため、普通は前期比ではなく、前年比の経済成長率を算出します。)

さらにラトビアは、IMFからの融資条件として財政赤字対GDP比5%までの削減が求められているために、政府支出を絞らないといけない状況です。(というか、政府支出を拡大しようとして国債発行しても、すでに買い手がいない状態ではありますが)当然、公共事業等により景気対策を実施できる状況じゃないので、しばらくはラトビアのGDPは落ち続ける事になると思われます。


まぁ、エストニアやリトアニアのQ2におけるGDPや国際収支のリリース後には、再びバルト3国の最新経済情勢を数字と共にお伝えする予定(9月中)ですが、ラトビアに多額の投資をしていたスウェーデンの銀行はまさしく顔が真っ青になっているでしょう。
先述のエントリーのバルト3国の「国際収支」「GDP」「外貨準備高」「対外債務」の推移を見る限り、3国全てがこのまま無傷で済むとは思えません。よって、スウェーデンの銀行にとっては、「ラッツの切り下げで一気に為替損を受ける」か「ラッツとユーロのペッグ制が維持できたとしても、ラトビア経済が縮小する事により徐々に評価損が膨らむ」か、どちらかになるしかないと思われます。
一体スウェーデンの銀行がバルト3国関係だけで、どれだけの含み損を抱えるのか非常に心配です。



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