2009年08月05日

韓国 消費者物価指数の上昇再び

【GDP 韓国・米国の2009年第2四半期は?】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/31062186.html

【消費者物価指数を巡るあれこれ】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/30797393.html

昨日は米国と韓国のGDPを取り上げたし、ちょっと前に日本の消費者物価指数の推移を取り上げたので、今日は最近の韓国の消費者物価指数について取り上げたい。

韓国は、不景気にもかかわらずインフレが進む「スタグフレーション」に陥っているとも言われているが、今日は韓国の消費者物価指数と経済成長率の数字を見ながら、その辺を考察してみよう。


まずは、韓国の消費者物価指数だけど、2007年〜2009年7月の推移を見ていこう。

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↑が韓国の全12分野と「総合」の消費者物価指数である。「総合」を見ると、わずか2年半の間で韓国の物価は10%程度上昇した事が読み取れる。しかも、2007年末から原油価格上昇に伴って物価上昇ペースが加速していた事がわかる。原油価格は2008年8月くらいから下落したわけで、さらにリーマンショックの影響もあり、2008年中盤に韓国の物価は幾分下落したのだけど、2008年末から再び物価上昇の軌道に乗ったような感じである。2008年末から物価上昇の支配的要因は、おそらくウォン暴落のによる輸入インフレでしょう。

さて、個別の分野毎の物価を見てみよう。1個目の画像だけど、「食品・飲料品」はまさに輸入インフレが如実にあらわれているのではないでしょうか?日本と同じように韓国は食料自給率が低いだろうから、まさにこの分野の物価上昇は庶民に堪えそうだなぁ……。「被服・履物」や「アルコール・タバコ」も程度の差こそあれ、確実な物価上昇を辿っている。

そして2個目の画像だけど、「交通」も原油価格の影響がもろに出てるよね。そして、「家具・家事用品」も14%の物価上昇と上昇幅が大きい。日本の消費者物価指数もそうだったのだけど、何で原油価格上昇に伴い「家具・家事用品」の物価上昇幅が大きくなるのか非常に気になるなぁ……。

最後に3個目の画像を見てみよう。おそらく他のどの分野よりも目に見えて技術革新が進んだはずの分野なのに、2005年と比較して唯一「通信」だけは、物価が安くなっている。「教育」に関しては、3月に一気に物価上昇する傾向があるのだが、これは韓国の新学期は3月に始まる事からであろう。しかしながら、2007年とか2008年は一気に「教育」の物価が4%〜5%程度上昇していて、日本の感覚からすると、授業料の値上げ幅が非常に大きいように感じるなぁ。子供を持つ世帯から文句来ないかな?(笑)
そして、2005年と比較すると一番大きな物価上昇をしたのが「諸雑費」(その他のサービス)なんだけど、2009年の3月でピークを迎えている事から、原油価格の高騰よりもウォン安の影響を受けていると思われる。それにしても2005年と比較して30%近くも物価上昇しているわけで、さすがに4年で30%も物価上昇してれば、韓国に住んでいる人は日常的にインフレを実感できるだろうなぁ……。


ちなみに韓国の対前年比の実質経済成長率は、
2007年が+5.1%、2008年が+2.2%、2009年(Q2まで)が-3.4%
なんだよね。それで、対前年比の総合消費者物価指数の上昇幅は
2007年が+2.2%、2008年が+4.7%、2009年(7月まで)が+3.2%
という事なので、2009年の韓国はスタグフレーションに陥っている事が濃厚と思われる。

しかし、今の韓国だと「物価安定」と「経済成長」を両立させるのは非常に難しいんじゃないのかな?昨日も書いたけど、現在の韓国は「輸出」と「政府支出」の両輪で持ちこたえているけれど、政府支出はそろそろ息切れしそうなわけでしょ?となると、今後は「輸出」のみで韓国経済を底支えしなければいけない事が濃厚。
となれば、韓国政府としては「ウォン安」の維持が至上命題となるので、為替介入して「ウォン高」を阻止するのは明白だよね。なので、韓国はしばらくの間は輸入インフレの影響が続きそうな気がするよ。

そして個人的にかなり心配してるのが、去年並みの原油高騰。もし、現在の状況で原油高騰が起こると輸入額増加により輸出の儲けが相殺されて、今後韓国経済を唯一支えられる「輸出」が間違いなく大ダメージを受けるわけですよ。
とりあえず韓国は見かけの経済が好調な今のうちに、国債を可能な限り発行して資金確保しておいた方がいいんじゃないかなぁ……。



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posted by きらっち at 23:55| Comment(0) | TrackBack(2) | 経済

2009年08月04日

GDP 韓国・米国の2009年第2四半期は?

先日、アメリカと韓国の2009年第2四半期の経済成長率が発表されました。日本は8月17日に発表なので、まだ2週間近く時間がある事より、今日は先に韓国とアメリカの経済成長率について深堀してみたいと思います。


【米4-6月期GDP、大幅改善=下期のプラス成長観測強まる】
http://www.gci-klug.jp/masutani/2009/08/03/006310.php

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さて、アメリカのGDPですが、とりあえず2009年Q1の経済成長率が6.4%減(年率換算)となり「アウチ!」ですまない状態でしたが、2009年Q2では、1.0%減(年率換算)まで収まりました。次の第3四半期ではついにプラス成長に戻せるのか非常に気になります。

それではアメリカGDPの個別項目について見ていきましょう。まず最終民間消費ですが、何だかんだ言いつつ2009年Q2減少幅は小さかったのではないでしょうか?そもそも、最終民間消費支出の最盛期は2007年Q4でしたが、そこと比較しても2009年Q2はわずか2.0%減にしかなっていないわけです。
ちなみに、日本の最終民間消費支出は2009年Q1時点で、最盛期から2.7%減なわけですが、「何でリーマンショックの震源国よりも日本の方がダメージが大きいんだ?」と、ちょっと恨みたくなるようなところです。(笑)

アメリカで深刻なのは、民間住宅ですな。2007年と比較したら半減してるので、サブプライム問題の根が相当深い事を示唆しているのかもしれません。確かに、減少幅は前期よりも縮小しているものの、減少の止まるのがいつになるのかわかりません。
そして、民間企業設備投資も2009年Q2の減少幅は縮小しました。民間在庫変動の値を察するに、アメリカでは在庫をどんどんさばいている状態が続いていて、そのうち在庫が少なくなり再び生産を始める事になるでしょうから、もしかすると民間企業設備投資はこれで底を打つかもしれません。

ところで政府最終消費支出の方ですが、確か2月に成立した景気対策法でアメリカは7820億ドルの支出を決めたと思うのですが、この予算の執行を考えればもう少し政府最終消費支出の額は大きくても良さそうな気がするのだけど、意外にも2009年Q2は大きな伸びを示さなかった事がわかります。

【米景気対策、700億ドルを既に支出 財務次官補】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090804AT2N0302404082009.html

と思ってたら、ちょうど↑の今日の記事で、7月末時点で700億ドルしか支出されていない事がわかりました。近いうちに2000億ドル程度が支出されるそうなので、2009年Q3は、政府支出の増加により経済成長率の増加が期待できそうです。
ただ政府採取消費支出に対する一抹の不安は、カリフォルニア州みたいに財政破綻寸前で支出を絞っている州や地方自治体が多数あるという事でしょうか?この辺の事情はよくわかりませんが、今後しっかり調べてみたいところではあるなぁ……。

最後に純輸出の方ですが、2009年Q2で赤字幅がまだ狭まっています。製造業の衰退したアメリカが貿易黒字に転換するとは思えませんが、どこまで貿易赤字幅を縮小させられるのか非常に気になるところではあります。



【韓国 4−6月期のGDP、前期比2.3%成長】
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=118396

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そして、俺の予想とは裏腹に韓国の快進撃が続いております。韓国の2009年Q2の経済成長率は、年率換算で何と9.5%!さて、それじゃ韓国経済回復の要因は何なのでしょうか?

まず、目が行ってしまうのが純輸出。韓国は輸出よりも輸入の減少幅が大きい「縮小型黒字」になっていた影響もあり、2009年Q1とQ2の純輸出額が非常に大きくなったのがわかる。韓国は現在も引き続きウォンレートが安定しているし、まだまだ純輸出額が増えるかもしれないなぁ。しっかし、こういう海外の需要が一斉に減少したにもかかわらず「輸出で勝負」という外需依存の博打経済が今のところ成功しているわけだ。

【韓国の1〜6月の経常収支黒字217ドルで過去最大】
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=118545

【韓国の1〜6月、資本収支が7770億円黒字 投資マネー回帰】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090729AT2M2902H29072009.html

しかしながら、心配なのが上記の記事。通常、経常収支と資本収支の両方で黒字なのは非常に喜ばしい事なのだけど、韓国経済の好調であるのが数字であらわれているわけですよ。にもかかわらず、ここ数ヶ月は1$=1200ウォン台で安定しているわけで、これは近いうちにウォン高に振れそうな気配が濃厚。(あるいはすでにウォン売りドル買い介入してるのかな?むしろ米国債をたくさん買える方が韓国にとっては好都合のような気が。)
いずれにしても、ウォン高は韓国製品の価格競争力が落ちるわけで、輸出に大きなダメージを与えることになるかもしれない。


【Q3経済成長率が急落の見通し、0%台の可能性も】
http://tinyurl.com/nbuqpq

【起死回生の韓国経済、「点滴」外せばダブル・ディップ?】
http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=020000&biid=2009072974128

ただ、どうやら韓国経済の大躍進は純輸出の増加だけではなく、政府の景気対策も大きく寄与しているらしいのが、↑の記事からわかる。ちなみに韓国の場合、政府最終消費支出に公的固定資本形成が含まれていないため、主に建設投資に政府支出分が加算されていると思われる。そういう事を踏まえた上で、↑の記事を見てみよう。

記事を読むと、韓国政府の景気対策効果が切れる2009年Q3には韓国経済の息切れが予想されているらしい。ここから推測できる事としては、おそらく建設投資が横ばいなのは、韓国政府の公共事業による加算分が大きいという事で、Q3にはここの項目が大きく減少する可能性があるわけだ。

幸い最終民間消費支出に関しては、もう少しでリーマンショック以前の水準に回復しそうだけど、設備投資の回復にはまだまだ時間がかかりそうだなぁ。何とか、ウォン高や建設投資急減の前に設備投資が回復して欲しいのだが……。


というわけで、とりあえず今日の時点ではアメリカと韓国の2009年Q2のGDPを見てみました。アメリカは景気対策法の支出にいよいよ火がついてきたので、2009年Q3の経済成長率期待できそうです。
また、韓国の方も政府の景気対策効果が切れても輸出の方がまだ踏ん張れそうなので、2009年Q3の経済成長率は何とかプラスが維持できるのではないでしょうか?(外需依存度はますます上がりそうな気がしますが……。)

それでは後日に、日本やバルト3国のGDPがどうなったかもお伝えする予定です。



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2009年07月29日

そもそも景気回復局面までどれくらいかかるのやら……

【デフレ脅威後退、景気回復時にインフレ圧力再浮上も=英財務省筋】
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-10262620090728


England_CPI.jpg

↑は、イギリスの消費者物価指数の推移ですが、イギリスの場合は元々インフレがずっと続いた中で、リーマンショックが起こり一時的に物価が落ちたのだけど、今年に入って再びインフレ傾向が戻ってきたわけですよ。
そんな状況で、すでにイギリスの長期国債は札割を起こしているので、すでに長期金利は確かにどんどん上がる下地はできているわけだ。今はまだ景気が引き続き低迷しているため、イギリス国債の利回りは高騰していないけど、景気が回復してイギリス国債よりも利子や値上がりの見込める株が出てくれば、イギリス国債は投売りされちゃうからなぁ……。

大体、イギリスの場合はこれからどうやって稼ぎ頭の産業を作っていくんだろう?かつては、産業革命によって世界の工場だった時代もあったけど、最近では製造業を始めとして「物」を媒介する産業がことごとく衰退してたわけなんだよね。それを表すのが、↓である。

GDP_eacharea.jpg

ここでは、それぞれの国におけるGDPの中で、農林水産業、鉱業、製造業、建設業、純輸出(実体のある物を取引する産業)の寄与する割合を棒グラフで表したものである。
これを見ると、韓国やドイツはまさに物作り国である事がわかる。しかも、韓国にいたっては純輸出がGDPの10%を越えているわけだ。(ただし、韓国は石油高騰を主要因として2008年に貿易赤字国に転落してしまうわけですが)
それと比較すると、アメリカやイギリスではGDPの中で製造業が寄与する割合がとても低いわけだ。当然、国内で物が作れずその分を輸入でカバーするわけなので、輸入量が増えて貿易赤字になってGDPを押し下げるわけですよ。まぁ製造業を捨てた分、アメリカやイギリスは金融産業やサービス産業(実体のない物を取引する産業)が発達したわけだけどね。


イギリスもアメリカも今まで、金融産業によって海外からお金を集めることで、経常赤字(その主要因は貿易赤字)をファイナンスしてきたわけだけど、リーマンショックでユーロ圏のダメージが非常に大きかったため、イギリスではヨーロッパからお金を呼び寄せる事が困難になり、その歪は↓のようにポンド急落の形であらわれたわけだ。

pond-rate.jpg

対ドルでさえ、ここまでポンド安になっているので、対円で見た場合はポンドの通貨価値が半分くらいになっちゃったわけですよ。確かに最初の記事の通り、景気回復時の長期金利の上昇も心配ではあるのだけど、すでにイギリスは輸入インフレの心配をしないといけないんじゃないのかなぁ……。


と、物価を基点にして、イギリスの現状を考えてみましたが、ざっと整理すると以下のような感じでしょうか?

○ポンド急落(対ドルで30%程度の下落で輸入インフレが心配)
○国債の札割(今のところ利回りの急騰は起こっていない)
○定常的なインフレ(20年で物価がおよそ1.75倍)
○稼ぎ頭の金融産業が崩壊(ポスト金融産業はまだ見つからず)

う〜ん、これはどう考えてもイギリスは厳しいような気がしてきました。景気回復前に国債の利回りが急騰したら、間違いなくイギリスは終わってしまいそうな……。まぁ近いうちに、量的緩和をさらに拡大せざるを得ないでしょう。
果たして、イギリスの中央銀行がどこまでイギリス国債を買い切れるのか?日本にとっては非常に参考になる事例なのかもしれません。



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2009年07月27日

円ドルレートと株価の連動

ここ2、3年くらいは、日本の株価と円ドルレートが連動しているような気がするんだけど、「長期系列で見たらどうなんだろう?」と思ったので、1991年〜現在までの「日本の株価」と「円ドルレート」について、さらっと調べてみました。


yen-rate_stock.jpg

↑上記が1991年からの円ドルレートと日経平均株価なんだけど、常に「円高と株安」が連動しているわけでもない事がわかる。ぱっと見た感じだと、二つが連動している時期は「1991年〜1992年」「1994年〜1996年」「2004年〜現在」というところでしょうか?
ふむ、要は「バブルの弾けた直後」「失われた10年中で日本経済が疲弊しきっていた時」は、円高と株安の連動は起きなかったどころか、この時期は逆に「円高と株高」が連動してるように見える。この事実から察するに、日本の経済・金融が相対的に欧米の経済・金融よりも調子の悪い時には「円高と株高」が連動して、日本の経済・金融が相対的に欧米の経済・金融よりも調子の良い時には、「円高と株安」が連動してるわけね……。ここでは出していないけど、各国の金利推移も一緒に調べてみると面白そうだな。

まぁよくよく考えてみると、同じハードカレンシーであるドル/ユーロ/ポンド/スイスフランは、対円以外ではそんなに通貨価値の変動がないのに、円だけはこの10年間でもすごい価値変動のあるって事は(このグラフ上でも1$=80円〜140円まで変動している)、やっぱ欧米の投資家にとっては何かあった場合の避難通貨に見られてるって考えるのが自然だよな。

ちなみに、2001年3月に量的緩和が開始。確かに、その後円は140円近くまで下落したのだけど、それから1年くらい後で株価が底入れしてるわけですよ。この1年間でようやく当時の日本の金融不安が落ち着き出したって事だったのかな?そして、2004年後半から2005年前半に株価が円高と共に足踏みしてるんだけど、ここで日銀砲が発射されて外国のヘッジファンドを撃退。(詳しくは↓をご参照)その後日本の景気は再び上昇気流に乗ったわけか。

【伝説の日銀砲】
http://blog.goo.ne.jp/debuo2006/e/d06f0ea8c15f318d9bb42af86e9161c9


いずれにしても、今後しばらくは欧米の経済・金融はしんどいだろうから、まだまだ円高と株安の連動は続きそうなわけだ。ただ、逆にこのタイミングで円安になれば株高になるかというと、なかなか厳しいような気がする。海外需要が回復すれば円安誘導も一つの手段だと思うけど、今は内需の方に頑張ってもらわないといけないので、下手に為替介入せずに「エコポイント」や「エコカー補助」の政策を打ったのは理にかなったものだと思う。

それどころか、民主党が政権取ったら外貨準備高を円に換えた上で財源にするって言っているけど、より円高が進むのでますます外需が当てにできなくなるじゃない?なので、もし本気で外貨準備高を使うのであれば、その財源で確実に内需拡大につながる事をして欲しいんだよね。ところが民主党のお金の使い方は、家計や農家に対する補助金などのメニューが多いわけで、この補助金を貯蓄に回された時の事を考えてるのだろうか?
どうも民主党は、外国為替の絡む話になると一貫性の無い政策を打ち出しているようにしか思えないので、非常に心配。(俺が心配性なだけかもしれませんが…)




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2009年07月24日

消費者物価指数を巡るあれこれ

【消費者物価指数:物価下落、最大の1.1% デフレ局面、鮮明に−−5月】
http://mainichi.jp/select/biz/news/20090626dde001020033000c.html

【6月の中国の消費者物価1.7%下落 10年ぶりのマイナス】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090717AT2M1702U17072009.html

【タイの消費者物価指数、6月はマイナス4.0%】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090701AT2M0101701072009.html

どれも前年同月比であるんだけど、日本・中国・タイの消費者物価指数は大きく下落傾向を示している。もっとも、これは前年の石油価格高騰によるものが大きく、石油を外国に依存しているアジア諸国は軒並み影響を受けているものと思われる。
そして、来週の7月31日(金)には日本の6月の消費者物価指数の発表がありますが、前年5月→6月の消費者物価指数(101.7→102.2)が大きく伸びた反動で、今年6月の消費者物価指数の前年比は、先月の-1.1%を大きく越えるでしょう。おそらく、-1%台の後半にいっちゃうんじゃないかなぁ……。

さらに今後を考えると、特に日本の物価動向は非常に厳しいと思われる。というのも、日本は中国と違い変動為替レートを採用しているわけです。そして今後の欧米の経済・金融状況の見通しが明るくない上に、しかもアメリカから以下のニュースが入っているので、FRBの長期国債の買取枠が増えるとなれば、「ドルの供給量が増える」→「さらなる円高」という局面が続きそうです。

【米、長期国債購入延長を協議へ FRB議長議会証言】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090722AT2M2200I22072009.html


これにより日本は、輸入品の値段が今後も下がる事が予測される上に、国内市場でも継続的な需要増加が見込まれないので、しばらく物価は落ち続けそうな気がします。むしろ、デフレを真面目に心配しなければならない日本こそ、じゃんじゃん量的緩和をやって政府支出を増やせば「デフレ」と「不景気」を一気に解決できるので、一つの手段としてアリなのかもしれません。しかも内需を成長させる分野に絞って財政支出すれば、今よりも外需に依存しない健全な日本経済を作るチャンスでもあると言えるのではないでしょうか?
どこかの政党が主張しているように「弱者や子持ち世帯配慮のための再配分」も大事だとは思いますが、多少の犠牲(国債発行)を払ってでも、変えられるうちに日本の経済構造を健全な姿に変えないと、後々苦しい事になると思うんだよなぁ……。

ちなみに脇道にそれますが、逆に物価関係で難しい舵取りを迫られるのは、韓国です。韓国の場合は、日本のように「不景気&デフレ」ではなく、「不景気&インフレ」で悩まされています。よって、不景気を打破しようとして財政支出や0金利を導入すれば、インフレ率の上がってしまう可能性があり、逆にインフレを打破しようとしてドル売りウォン買いの介入をやったり、金利を思いっきり上げてしまうと、ウォン高によって韓国の生命線である輸出産業が大ダメージを受けてしまうことになるので、八方塞がりの状況なのかもしれません。
ただ、ここ2,3ヶ月でようやくウォンのレートが安定してきたので、これを糸口に韓国がスタグフレーションから抜け出せるか非常に気になるところです。この辺の韓国の経済事情に関しては、詳しい資料と共に後日のエントリ−に書く機会もあるでしょう。



さて、いつも以上に前置きが非常に長くなりましたが、今日はここ40年くらいの日本の消費者物価指数の流れを見てみましょう。

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↑の3つの画像が、1970年からのそれぞれ9分野(食料、住居、高熱・水道、家具・家事用品、被服及び履物、保健医療、交通・通信、教育、教養娯楽、諸雑費)と総合の消費者物価指数です。1970年の「総合」(1個目の画像)の消費者物価指数は、31.8となっていて随分物価が安いのにびっくりです。俺は1979年生まれなので当時の実際の物価は当然知らないのですが、当時を知る人の感覚的にもそのくらいだったのでしょうか?

さて、分野別に見るといくつか面白い事があります。「家具・家事用品」(2個目の画像)を見ると、第一次石油ショックに起因して、1974年からわずか10年程度で物価指数が2倍程度にまで跳ね上がったのだけど、何で「家具・家事用品」がこんなにも影響を受けたのだろうか?当時は原子力発電所の数も少なかっただろうし、真っ先に影響を受けそうな分野は「光熱・水道」(2個目の画像)だと思ったんだけどなぁ。これについて、いろいろ考えてみたんだけど、自分で納得の行く推測ができませんでした。どなたか知っている方がいましたら、是非とも教えてください。

そして、「被服及び履物」(2個目の画像)も面白い。1970年代後半から、消費者物価指数にはっきりとした周期性が出てきたわけですよ。おそらく、被服関係商品のバリエーションが豊富になった事によって、市場に季節性が出た事によるものだと思われる。ちなみに、消費者物価の谷となる月は2月と8月で、山となる季節は5月と10,11月。5月よりも10,11月の消費者物価の大きくなる傾向があるのだけど、冬物の方が生地も厚いし、肌を覆う割合が高くなるんだから、そりゃ冬物の方が値段が上がって当然ですな。(笑)
やはり、「これから暑くなる」「これから寒くなる」という季節に需要が集中するみたい。

次に、「保健医療」(2個目の画像)を見てみよう。1997年の9月、突然に消費者物価指数が高くなったわけだけど、これは医療法の改正により、患者負担金の割合が高くなった事に起因するものだろう。確かに他の項目と比較しても、「保健医療」の消費者物価指数は低かったわけで、老人からは文句が出ただろうけど、必要な改正だったと思います。

さらに「教養・娯楽」(3個目の画像)を見てみよう。この分野は、この10年程度は消費者物価指数が下がり続けている。まぁ失われた10年に入ってから、一番最初にお金を出し渋る分野だろうから、なかなか大変だとは思うんだよな。そんな中、2000年頃から「被服及び履物」と同じように、消費者物価指数に周期性の出てきたことが読み取れる。ちょうどこの年に、「教養・娯楽」の分野の小項目に「パック旅行」という項目が加わった事によるものと思われる。確かにパック旅行なんかの値段はオンシーズンとオフシーズンで随分違うもんなぁ……。

最後に「交通・通信」(3個目の画像)を見てみよう。「交通」の分野は、石油価格がもろにきいてくるので、ここ1年でこの分野の消費者物価指数は乱高下しているのだけど、基本的には、1980年代前半から「交通・通信」分野の消費者物価指数が横ばいなんだよね。この間、携帯電話とかインターネットが普及して俺達の生活が一変しちゃったのに、消費者物価指数が横ばいってのも凄い話で、技術革新には本当に頭が下がりますわ……。




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2009年07月23日

日本の家計資産・家計負債に問題無し

日本のGDPの60%を占めるのは「民間最終消費支出」なんだけど、そのほとんど(民間最終消費支出の97%程度)が「家計最終消費支出」なんだよね。つまり日本のGDPのおよそ60%が、家計金融資産・家計金融負債に直結するものであるわけです。今日は、ここ10年の日本の家計金融資産と家計金融負債の推移を見てみましょう。


japan_household_asset.jpg
まずは、家計資産の方から。↑を見ていただければ一目瞭然ですが、日本人は1400兆円の家計金融資産を持ちながら、そのうち800兆円程度(57%程度)を「現金・預金」で保有しているわけで、非常に「現金・預金」が大好きな民族であるわけです。(笑)ちなみにアメリカの家計金融資産が40兆ドル程度に対して、現金・預金は6.3兆ドル(16%)程度です。
その他の項目では、「株式・出資金」が、ここ最近は減少しています。2007年6月が、日本の家計金融資産の絶頂期だったと思われますが、2009年3月までの減少分の大半は「株式・出資金」の減少によるもので説明がつくでしょう。
もう一つ見逃せないのが、1998年には「現金・預金」が700兆円くらいだったのに対して、ここ10年間で「現金・預金」が100兆円くらい増加していることです。ほとんど利子もつかないのに、何故現金・預金が増えるのかはよくわかりませんが、事実として「日本人は消費せずに貯蓄の方にお金を回している」という事なのでしょう。おそらく、日本経済が低迷している支配的要因はここだと思います。すでに800兆円程度の現金・預金がありながら、それが消費の方に回らないわけで、他の国から見れば「日本人はすでにとんでもない金額を貯金してるのに、何でこれ以上貯金する必要があるんだ?いい加減にしろよ!」というところでしょう。(笑)

財務省の視点から見れば、今までいろいろと個人消費を上げるための政策を打ったけどどれもあまり効果が上がらないので、だったら「増税によって強制徴収」というところでしょうか?(笑)ただ、いずれにしてもこの800兆円のうち3%でも消費に回れば、GDPギャップが解消されるので、デフレを抑えて景気も回復するのだろうけど……。


japan_household_liability.jpg
そして、次に家計金融負債の方を見てみましょう。実は、こちらは見ていてあまり面白いものではありません。ただし、縦軸のスケールは家計金融資産とあわせてあるので、日本の家計金融負債が家計金融資産に対していかに少ないかがわかるでしょう。ちなみに、日本人の家計金融純資産(家計金融資産-家計金融負債)は2009年3月で1000兆円あるのですが、これは当然ぶっちぎりで世界一です。



とりあえず、ここ10年の日本の家計金融資産と家計金融負債を見てきましたが、どんどん資産が減ったり負債が増えている状況でもないので、取り急ぎ日本の家計には問題無いと言えるでしょう。それどころか、バブル崩壊後ずっと景気が良くないと言うわりには、家計の貯蓄額が一貫して増加しているわけで、日本経済の問題点は「資産状況(ストック)」にあるわけではなく、「貯蓄してお金が回らない(フロー)」という事でしょう。
確かに、貯蓄してお金が回らないなら「増税による強制徴収」というのも一つの手段としては考えられますが、どうすれば固い財布を緩ませる事ができるのか。与党も野党も真剣に考えて欲しいものです。

ところで、ふと思ったのですが、銀行口座にもマイナス金利が適用されれば、多少は消費に回すインセンティブが出ますかね?まぁ、一種の増税か。(笑)




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2009年07月18日

過去の失敗から学ぶ事が大事

【英国の10代妊娠を予防する教育プログラム、逆に妊娠増招く皮肉な結果に】
http://news.livedoor.com/article/detail/4248829/

もちろん、政府は万能ではないし時には間違いをおかすこともある。上記は、まさに政府の意図するところとは逆の結果を生み出したわけで、結果的に見れば失敗といえよう。イギリスは、この失敗から何を学び取れたのでしょうか?


【派遣によって救われた人もいるのでは?】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/30591746.html#comment

さて、↑のエントリーのコメントでも書いたんだけど、1985年のプラザ合意を受けて日銀が低金利政策を取ったのも、結果的に見れば「失敗」だったと言えるのかもしれない。


俺が知っている限り、政府の意図と逆の結果になった最大の失敗は「レーガン減税」でしょうか?当時のアメリカは、「インフレ」と「失業率」に悩まされていたんだけど、レーガン大統領は「減税」と「規制緩和」によってこれを打開しようと考えていた。
レーガン大統領の計算はおそらくこんなところだったんだと思う。

@減税により「貯蓄」と「消費意欲」の増大を図り、中産階級の労働意欲を刺激させ、企業や富裕層の「投資」活動を推進させる。

A規制緩和により、社会の生産力/供給力を増大させアメリカの経済規模が拡大させる。

B経済規模拡大で失業率が改善され、減税前よりも減税後の方が税収が増加。さらに、投資活動の活発化でマネーの流通量が増える事によりインフレ率の低下。

ところが、実際は全然そうはならなかったわけですよ。当時のアメリカは高金利の中で減税と規制緩和が実施されたため、アメリカ国内の投資活動は想定外に低調の一方で、(日本を含む)海外からのマネーが大量にアメリカへ流入。その結果、為替レートがドル高になり輸出減少と輸入拡大を招いてしまったわけだ。これにより、アメリカの貿易赤字がとんでもない事になる。ただし、ドル高はインフレ率の低下をもたらしたため、レーガン大統領の目的(インフレ率と失業率の低減)の一つは達成できた。
ところが、ドル高によりアメリカ国内の企業競争力が低下して、さらなる失業率増加を呼び起こしてしまったわけです。よって、レーガン大統領の計算通りに税収増加はせず、アメリカ政府の財政赤字が進んでしまい、世に言う「双子の赤字」(貿易赤字と財政赤字)を生み出してしまったわけだ。

この状況を受けて、「このままじゃアメリカはまずい!」という事になり、1985年のプラザ合意につながるわけです。



ところで、「下手に金利を上げれば海外からマネーが流入して、通貨高を引き起こす」というアメリカの事例を学習したのか、輸出産業を大事にする日本や中国は、その後低金利政策を続けております。とは言うものの、日本は低金利政策によりマネーが不動産や株に流れた挙句にバブル崩壊を引き起こしてしまいましたが、果たして中国も大丈夫でしょうか?以前俺は、↓のエントリーで「中国が実体経済に対して金利が低すぎる」と指摘しているわけで、いつか起こるであろう中国のバブル崩壊が非常に心配です。

【中国の金利政策の行方】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/29725890.html


一方、日米欧は共に超低金利時代に突入してしまったために、おそらく日米欧のマネーの行方は「高金利の国」や「資源」に流れていくはずです。よって、今金利をむちゃくちゃ引き上げる新興国が出るのであれば、それはそれで面白い展開になりそうなのですが……。(笑)

いずれにしても、欧米諸国は日本のバブル崩壊を遠目で見ていたにもかかわらず、自分達の国のバブル崩壊(リーマンショック)を止めることはできませんでした。やはり、人間は直接自分で体験しない事には、本気になって考えないというところでしょうか?

まぁ何でもそうかもしれませんが、「他人の失敗から学び取る」という事は自分の失敗を防ぐと言う意味でも非常に大事だと思います。



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posted by きらっち at 21:37| Comment(2) | TrackBack(0) | 経済

2009年07月14日

中国・韓国の貿易動向

以前も中国や韓国の貿易動向をお伝えしていましたが、2ヶ月ぶりくらいに最新状況をお知らせしましょう。


200906-china_trade.jpg
まずは中国から。中国は輸出額がリーマンショック後に激減し、完全にL字型で推移し続けている。しかし輸入の方に関しては、1月以降に増加傾向を示しているために、貿易黒字額も2009年3月に回復しかけたけれど、それから再び低減してる。
ふむ。こりゃ、そもそも中国は昨年に比べると、貿易黒字額が激減してしまったので、以前ほど米国債を買い支えられないわけですよ。中国政府は「もう米国債を購入しない」という趣旨の事を言っているけれど、そもそも「もう米国債を購入できない」の間違えじゃないの?(笑)
しっかし、中国は下手したら7月の貿易黒字がほとんどなくなりそうな気配。もし中国が、単月と言えど「貿易赤字」に転落してしまうと、相当世界経済にショックを与えるだろうなぁ……。


200906-s-korea_trade.jpg
そして、次は韓国。中国と違って、韓国の貿易黒字額は絶好調なんだよな。(笑)韓国も、輸出額はリーマンショック後に激減。ところが韓国は中国と違い、その後のウォン安も相まって輸出額がはっきりと増加傾向を示している。一方、輸入額の方はと言うと、リーマンショック後の激減からそんなに増加していないわけですよ。ひょっとして、韓国はこのまま回復街道へ一直線か?
韓国が輸出額を増加するには、輸出品の元になる材料の輸入を増やさないといけないので、俺の予測ではそろそろ輸入額ががっつり増える事により貿易黒字額が減ってくるはずなんだけどなぁ……。

ちなみに、2009年6月の韓国の貿易黒字額は、同月の中国の貿易黒字額に肉薄してきたわけで、ひょっとしたら7月の貿易黒字額は中国を超えるかもしれない。一体、韓国はいつまで輸出絶好調を続けられるのだろうか?とても半年前まで、デフォルト寸前まで追い込まれた国とは思えないな。(笑)


という事で、2009年第2四半期も終了しました。今後は、各国のGDPや国際収支発表もあるので、随時お伝えしていきます。



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posted by きらっち at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年07月08日

深い闇と一筋の光

【5月のユーロ圏失業率、9.5%に悪化 10%を超える可能性も】
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/eu/20090702D2M0202Y02.html

【米雇用46万人減、再び拡大 6月、失業率9.5%に悪化】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090703AT2M0203L02072009.html

【米大統領、雇用創出に向け必要なことは全て行う=行政管理予算局副局長】
http://jp.reuters.com/article/foreignExchNews/idJPnJS841764020090708

さて、やはり世界経済は失業に起因する二番底を迎える可能性が高くなっているような気もする。2番目のアメリカの記事で気になるのは、小売り業の雇用者減の減少幅が拡大してるわけで、アメリカが唯一踏ん張っていた民間最終消費支出もいよいよ坂を転げ落ちることになるのだろうか?

そんな中、オバマ大統領はさらなる雇用対策をやろうとしているんだけど、アメリカはどこまで米国債を発行できると思っているのやら。景気対策法で7820億ドル、金融安定化法で7000億ドルに加えて、今度の雇用対策ではどれだけの財源が必要になるのかな?オバマ大統領は、雇用対策の詳細についてはまだ何も語ってはいないのだけど、「米国債がそろそろ限界だ!」という事になれば、アメリカ政府の資金調達が厳しくなるので内需による雇用創出が難しくなる。そうすると、残された道は「ドル安誘導」で外需に活路を見出す戦略しかアメリカは取れないような気がするんだけど……。万が一そうなったら、さらなる円高で日本もまた大騒ぎするんじゃないのかな?

ちょっと話はそれるけど、もし民主党が政権を取って、その後急激な円高が進むとしたら、ちょっと面白そうな展開が待ってるかもしれません。何せ、民主党は少なくともドル建て米国債は買わない方針を明らかにしている。けれど、どんどん円高が進み輸出産業界から「介入しろよ!」と圧力がかかった場合、果たして円売りドル買いの介入をするのかしないのか。そして彼らが、「円高がチャンス」と捉えられる政策を打てるのか打てないのか。結局は自分達で考えられるキャパを超えてしまい、官僚の言いなりになる可能性も無くはないような気もするんだけどなぁ……。
(もっともこれは自民党に関しても同じだろうけど)

話を元に戻そう。欧米で失業率悪化とは言え、これはある程度想定されていた事であるので、そこまで衝撃的な事とも思えない。別に悲観一色になる必要はなく、世界には光の見えるニュースもたくさんあるので、そちらの方にも目を向けてみよう。例えば、↓このニュース。

【ドイツ、電気自動車など環境に優しい車の普及を後押し 買い替えへ公的補助金の支給を決定】
http://www.ecool.jp/foreign/2009/01/post-32.html

【ドイツの新車販売、6月は4割増 1〜6月の累計過去最高に】
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/eu/20090703D2M0300A03.html

ドイツでは、景気対策の一環として行われた自動車購入補助金制度が非常に上手く行っていて、6月の販売台数は前年同月比よりも40%増との事。日本も後発隊として、4月に同様な制度を導入して一部にはその効果が出始めたけれど、何とかこれを起爆剤としてドイツと同様に日本の景気を盛り上げていって欲しいよね。

germany_car-registration.jpg
さて、実際にドイツの自動車販売台数と輸出台数の推移を↑のグラフにしてみました。これを見ると、ドイツ政府の打った政策は見事にクリーンヒットしたのがわかる。ただ、「販売台数のうちドイツ車」の伸びよりも「販売台数」の伸びの方が大きいので、確かにドイツ車も売れた事は売れたのだけど、海外からの輸入車の躍進という要因が一番支配的にきいている事がわかる。一体、どこの国の車が躍進したのだろうか?非常に気になるなぁ。(円高局面でも、環境にやさしいという事で日本車が売れたのであれば喜ばしい事なのだが)

それにしても、やはりドイツ車といえども輸出台数の方は低迷していて、日本と同様に海外の需要減に悩まされていると推測できる。しばらくは、ドイツも日本も国内販売の方でカバーするしかないだろうなぁ……。ただし、この補助金効果が一服する頃に海外の需要減が完全に回復しているとも思えないので、果たしてドイツ政府と日本政府が次にどんな手を打つのか興味深い。ドイツの方が2ヶ月程度先に補助金制度を導入したので、日本としてはドイツの先例を見ていろいろ考えられるのが非常に参考にはなるのだけどね。



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posted by きらっち at 19:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年07月06日

それぞれの想いを胸に米国債

今日もタイトルが川柳になったな。



【アメリカ政府を救うのは、米国民か中国か?〜その@〜】(2009/03/29)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/27955679.html

【米国債 果たしてどこまで売りさばける?】(2009/04/16)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/28518176.html

さて、よくよく思い返してみると、上記のエントリーを最後に「米国債発行状況」や「日本と中国の米国債保有額の動向」をお伝えしていなかったので、久しぶりにこれについてお伝えしよう。


us-treasury_all-japan-china.jpg
↑が、2008年1月から2009年5月までの米国債発行算高と、日本と中国の米国債保有額の推移である。5月末〜6月上旬にかけて、米国債の一時的に利回りが急上昇して金利上昇のニュースになったのだけど、総じて見ればアメリカは金融安定化法と景気対策法の財源として、意外にも順調に米国債を発行し続けていると言えるんじゃないかな?

さて一方、日本と中国の米国債保有動向だけど、ここ最近の中国の米国債保有額上昇のペースが頭打ちになっている。中国は、「長期米国債を売却して短期米国債に乗り換える」みたいな話もあるので、今後の米国債に対するスタンスが気がかりなところ。

そして日本も、2009年初頭にかけて米国債を買い増した事が読み取れる。まぁ、これはあくまで日本政府の米国債保有額ではなく、日本全体での保有額なので、日本の誰が米国債を買っているかがわかるわけではない。

いずれにしても、treasurydirectの資料を見る限り、11兆ドルを超える米国債のうちmarketableな米国債(市場に出回れる米国債)は6兆5千億ドルしかない。日本と中国で1兆4千億ドルの米国債(これが全てmarketableな米国債かはわからないけれど)を保有している現状を考えれば、アメリカは中国の米国債に対するスタンスが気になってしょうがないと思うなぁ。(笑)
ただ、今の米国債の利回りを見ると米国債発行はまだいけそうだし、極端なドル安もまだ起こっていないところを見ると、市場心理としてはまだ着火点には至っていないわけか。とはいえ、まだまだ毎週のように米国債を発行していて、当面は予断を許さない状況なわけですが。

俺はアメリカ経済の没落を望んでいるわけではないけど、米国債が札割れなんかした場合、みんな何に投資しようとするんだろう?



【ロシア、ブラジル:IMF債引き受けへ−ドル離れ進める】
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003013&sid=aHwPgFcraSak&refer=jp_us

【中国の米国債保有残高、10カ月ぶりに減少 4月末】
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/asia/20090616D2M1602M16.html

【ロシア首相と米大統領、準備通貨で協議の可能性】
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-38851620090703

そしてそんな状況の中、やはり米国債離れは↑のようにじわじわと各国に広がっているわけだ。「米国が米国債を発行できなくなれば大量の米国債を保有しているロシアも中国も、ドル安で一蓮托生じゃない?」と思う人もいるかもしれないけど、おそらくロシアと中国(加えて日本や韓国)の真の狙いはこうであろう。


【中国】
これ以上価値下落するドルなんていらないので、スキを狙って米国債は高値で処分できるうちに処分して、外貨準備高は金とか違うもので積み立てればいいや。っていうか、俺様の経済力と将来性を考えたら元が基軸通貨になるべきだよな?まずはアジア通貨として元をいろんな国に使わせよう。

【ロシア】
むしろロシアが米国債を売り払って米国債を暴落させれば、世界中の投資家が米国債に代わって石油に投資してくれるかもしれない。そうなれば、去年の上半期みたいなバブリーな生活が戻るじゃないか!
って、フランス!お前、余計な事言うな。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-38783120090630

【日本】
アメリカが「米国債買え」って言ってるので買っておくか。怒らせるといろいろとめんどくさいし。

【韓国】
米国債はさておき、お願いだからウォン/ドルスワップをもうちょっと続けて。




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2009年07月04日

マレーシア 逆転の発想

【マレーシア、証券会社へ外資の全額出資を容認 自由化加速】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090630AT2M3003330062009.html

おぉ、ついに金融関係で自由化に舵を切る国が出始めたな。というのも、アメリカ・ヨーロッパ・イギリスは、↓の通り、金融業界に規制をかける方針を決めていて、今までみたいに規制の無い自由な金融市場がなくなりそうな気配だったんだよね。

【米金融規制改革案、日本勢にも影響 大手銀・証券「市場の目」意識】
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090618AT3S1702518062009.html

【英、金融規制を強化 自己資本積み増しなど】
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/eu/20090629D2M2702W29.html

【金融監督、欧州も一元化 統一組織設け危機の再発防止】
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/eu/20090619D2M1902S19.html

ところが、投資家達はこの状況は非常に困るわけですよ。自分達の活動にいろいろと新しいレギュレーションや規制がかかるのは、投資意欲にブレーキがかかるわけで、彼らは自由金融市場を求めるわけです。
というこの状況で「うちの国は規制を撤廃して自由な金融市場を作ります」という国があらわれれば、それなりに海外からお金を呼び込めるんじゃないかと思うんだけどな。

ある意味、先進国では金融ダメージの少なかった日本が、自由な金融市場立国に名乗りを上げるチャンスもあったのかもしれないけど、さすがにリーマンショックの怖さからか、あるいは金転がしの得意でない国民性からか、まったくそんな機運が上がるわけでもなかったので、「いつかどこかの国が、金融の自由化を進めるんじゃないか?」とは思っていたんだよね。



さて、良い機会なのでマレーシア経済について数字を追っかけて見ていこう。

malaysia_GDP.jpg

malaysia_GDP-ep.jpg
まずはGDPから。↑は、マレーシアGDPの支出別/業別で推移を見たものである。2008年Q4と2009年Q1は、二期連続で経済成長率(前期比)がマイナス二桁を記録しているけど、支出別で見ると「政府最終消費」と「在庫変動」がかなり寄与している。もともとマレーシアは1月から会計年度がスタートする事もあり、Q1で政府支出が落ちるのは毎年の事のような気がする。よって、おそらくマレーシアのGDP急落の主原因は、在庫をさばいていた事によるところが非常に大きい。しかしマレーシアは、GDPに占める純輸出の割合がすごい大きく、しかもその割合が上昇傾向である事が気になる。
(2007年Q1)18%→20%→22%→20%→(2008年Q1)19%→26%→25%→22%→(2009年Q1)25%
リーマンショック後に海外需要減が一気に進んだにもかかわらず、に海外依存傾向が進んでいるので、おそらく内需が相当ピンチに陥ってるんじゃないだろうか?
そして、業別で見るともっと面白くて、リーマンショック前後で一番減少率の大きな業種が「鉱工業」でも「製造業」でもなく、「農林水産業」なんですよ。ソースの方でもこれ以上の情報が無いのでわからないのだが、農業や水産業の場合はそこまで景気の影響を受けない上に在庫管理が難しいので、林業の在庫増加(木材とか)がかなりきいていたんじゃないかな?そして、鉱工業と製造業も在庫を増やしたために、GDPをかなり落としたものと推測できる。


malaysia_bop.jpg
次にマレーシアの国際収支を見てみよう。経常収支の方は、リーマンショックで影響があったもののそこまで減少したわけでもなく、貿易収支の方も25%減くらいで収まっている。そして、国内経済の不景気のため株等による海外への配当金が減り、所得収支に改善の傾向が見られる。とはいえ、安定的に経常収支が黒字である事だし、他のどうにもならない国なんかと比べれば、全然まだマレーシアは健全じゃないのかな?
資本収支の方は、もともとマレーシアから海外への投資が多かったので、ここ最近はずっと赤字だったのだけど、2008年Q3Q4の証券投資と2008年Q4,2009年Q1のその他投資はかなりの赤字になっている。おそらく、外資が引いたことによるものだと思うけど、これによってマレーシアは大幅に外貨を消費せざるを得なかったわけだ。


malaysia_foreign-reserves.jpg

malaysia_ex-rate.jpg
そして、↑がマレーシアの外貨準備高と為替レートの推移を示している。リーマンショック後に大幅に外貨を消費したわけだけど、ようやく最近外貨消費も収まった事がわかる。為替レートの方も、4月上旬辺りにリンギ高が底を着いて、最近は小康状態というところだろうか?
日本もリーマンショック後に円高が進んだけど、どうもマレーシア通貨のリンギは、日本の為替レートと連動してそうな感じだな。マレーシアは、急激な通貨高と外貨消費の時期が重なっていたわけで、これもまた世界の国の中では非常に珍しい事例だったのかもしれない。


malaysia_external-debt.jpg
そして最後は、マレーシアの対外債務。2009年Q1で、74000百万ドル(短期債務は112百万ドル)である。マレーシアの2009年3月の外貨準備高が87000百万ドルであることから、マレーシアの資金繰り状況はかなり健全であると言っていいだろう。しかも、政府の対外債務はわずか5000百万ドル程度であるので、対外債務に起因するデフォルトも無いな。


という事で、マレーシアは経常収支が恒常的に黒字だし、GDPも在庫変動以外に致命的な弱点も見当たらないので、将来が期待できる国なんじゃないかな?冒頭のニュースの自由化によって、将来を見込んだ上で結構いろんな国の金融機関が目をつけそうな気がするけどなぁ。日本の金融機関や投資家は、どう動くんだろう?




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posted by きらっち at 17:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年06月30日

役人のミクロ経済学〜補助金と課税を例に

本ブログでは今まで、ほとんどがマクロ経済学の分野に関する事を
書いてきたのだけど、今日は趣きを変えてミクロ経済学(余剰分析)を書こうと思う。


demand_supply.jpg
まずは、中学の公民分野で習った需要供給曲線についてのおさらい。↑の画像に需要供給曲線の例を出した。(図の簡略化のため、需要も供給も今は直線で書いている)とりあえず何の市場でもいいのだけど、ここでは「缶ジュース」で考えてみるか。

最初に需要曲線に関して見てみよう。価格が下がれば下がるほど、数量が増えるわけなんだけど、これは「缶ジュースの値段が下がれば欲しい人がたくさん出てくる」という事を意味している。一方、供給曲線の方は価格が上げれば上がるほど、数量が増える。これは「高く売れるのであれば、缶ジュースを売りたい人がたくさん出てくる」という事を意味している。このような自由な市場では、需要曲線と供給曲線の交点(均衡価格と均衡取引量)で、価格と取引量が決まるわけだ。

確か、ここまでが中学の公民で勉強した範囲だったような記憶がるのだが、ここではもう少し考察してみよう。
surplus_example.jpg
↑の画像は、缶ジュースを例にして、「需要者側の総余剰」と「供給側の総余剰」を図示したものである。需要者側の総余剰とは、一言で書けば、「缶ジュースを購入した人がどれだけ得をしたのか?」という事である。もう少し詳しく書くと、この缶ジュース市場では均衡価格が88円で均衡取引量が250本であるので、88円の缶ジュースが250本売れるわけだ。ただ、需要曲線を見る限りこの缶ジュースを150円で買いたい人が少なくとも1人はいたわけで、その人にとってみれば88円で缶ジュースを買えるのだから差額の62円分は得をする。そして、140円で缶ジュースを買いたい人、130円で缶ジュースを買いたい人も、それぞれ52円、42円分は得をする。このように、全需要者の買いたかった値段と実際の取引価格の差額分が、上記画像の青い領域「需要者側の総余剰」になるわけだ。

供給者側の総余剰の方も考え方は同じで、この市場には、60円で缶ジュースを売りたい人が少なくとも一人はいたわけだけど、均衡価格が88円であるのでこの人が88円で売れば想定よりも28円余分に儲けられる。70円で缶ジュースを売りたい人、80円で缶ジュースを売りたい人は、それぞれ想定より18円、8円の余分に儲けられるわけで、全供給者の売りたかった値段と取引価格の差額分が、上記画像の赤い領域「供給側の総余剰」になる。

経済学的には、この総余剰が大きければ大きいほど、社会的な便益が大きい(喜ぶ人がたくさんいる)という事なので、なるべくこの総余剰の面積を大きくさせたいわけですよ。今日は役人の視点でこの総余剰について考察してみたい。



さて、我々役人が市場に介入する手段として、よく用いられるのは
「補助金」と「課税」というところでしょうか?最近で言うと、景気対策の一環で行われている「エコカーの購入補助」が補助金の良い例だと思う。そして、同じく車関係で課税となれば「ガソリン」ですかね?という事で、需要供給曲線での総余剰に関して、「補助金」「課税」を施すと何が起こるのかを以下で考えてみたい。


insentive_exsample.jpg
まずは、補助金の方を考えてみよう。↑に補助金導入前の需要供給曲線と、補助金導入後の需要供給曲線を示す。さて、導入前後によって需要側/生産者側の余剰がどうなるだろうか?
まずは、需要側の方から見てみよう。補助金政策の場合は、消費者に代わって一部を政府が払うものであるので、補助金分だけ需要曲線が上方にシフトする。すると、シフトした分だけ需要が増えて均衡価格と均衡取引量が増加するわけだ。その分、需要側の余剰(青い部分の面積)も増加することがわかる。
さて、供給側の方はどうなるだろうか?補助金効果によって、均衡取引量と均衡価格が増加する事により供給側の余剰も増加する事は容易に想像はつくし、実際にグラフもそうなることを示している。
ちなみに、補助金導入後のオレンジの領域が、補助金によって増加した供給側の余剰なんだけど、供給側は何もしなくても補助金政策によってこのオレンジの領域の面積を増やせるわけで、非常においしい展開なわけですよ。つまり、あまり補助金を出しすぎると、業界全体が自助努力しなくなってしまう事に注意が必要なわけだ。

ちょっと話が脇道にそれるけど、補助金政策が失敗する例を挙げておこう。今まで例に出してきた需要供給曲線は、価格弾力性のある場合の例である。価格弾力性とは、グラフ上で言うと需要曲線や供給曲線の傾きが大した事の無い場合の事である。市場の種類によっては、価格弾力性が非常に小さい(需要曲線や供給曲線の傾きが大きい)場合があって、この時の補助金政策は上手く行かない場合がある。
insentive_bad-example.jpg
例えばある地区の「住宅」を考えてみよう。基本的に、缶ジュースとは違って住宅の場合は気軽に買える物ではないし、供給量も少ないので、供給曲線の傾きが非常に大きい。よって、住宅に対する補助金政策の場合は↑の画像のように、補助金によって供給曲線が上方にシフトしても、需要側の余剰はほとんど増えない。
一方、供給側の余剰は需要曲線の上方シフト分だけ増加するわけで、これは結局需要側への余剰増加が無く、供給側へほとんどそのまま補助金が流れてしまう事を意味している。
この手の市場に補助金を突っ込んでも、「供給側を喜ばせるのみ」
という失敗例の代表であるわけですよ。


さて、話を戻して次は「課税」について考えてみる。ここでは簡単のために、缶ジュースに需要側、供給側共にそれぞれ税金32円、8円を課すケースについて考える。
lost-surplus_by_tax.jpg
上記の画像のように、課税後は需要側は32円の負担が出るために、当然課税前よりも缶ジュースの需要が250本から200本に落ちる。一方で、供給側の方も8円の負担により、供給量が200本に落ちる。この時、需要側、供給側のそれぞれの余剰は課税前よりも当然どちらも減り、その代わり今まで余剰領域だった場所に「課税による税収」が出現する。政府はこの面積分の税収が得られるわけだ。
ただ、課税によって均衡取引量が落ちることで、課税前は余剰領域だったのに、課税後は税収にもならない「失われた余剰」の領域が出てくることがわかる。これは、課税によって市場規模が縮小することを表していて、政府が余計な事をするとろくな事にならない代表例であると言えるだろう。(笑)市場に介入する場合は、なるべく「失われた余剰」は小さくするようにするのが望ましい。



と長々書いてしまいましたが、政府の介入(補助金、課税)によって市場がどうなるのかをミクロ経済学で考えると、大体上記のような事態を生じることになるわけです。
おそらく政府機関も、何か市場に介入する政策を打つ場合には、この手の分析を必ずやっているはずなわけで、その辺は適当に決めているわけではないと思う。(先生方が分析結果抜きでいろいろ口を出す事はあるとは思うけど)

ただ、俺の疑問は「どうやって需要供給曲線を算出しているのか?」って事なんだよね。例えば、ある程度の精度の需要曲線は、民間会社が各自のマーケッティングによってそれぞれ持っているとは思うのだけど、政府として何か政策決定する場合に、こういう需要供給曲線のデータなんて持ってるのかなぁ……。
まぁ俺が、そういう関係の数字を扱う部署に異動することはまずないのだが、単純に気になるわ。
posted by きらっち at 19:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年06月28日

バルト3国 やはり一番手はラトビアか?

【ラトビア こりゃヤバイんじゃないの?!】(2009/06/06)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/29640372.html

【ラトビア問題〜その後の展開〜】(2009/06/14)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/29793523.html

【ラトビアに負けず劣らずエストニア】(2009/06/19)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/29902626.html

さて、ラトビアシリーズの第4段です。今日は、ラトビアを含むバルト3国の経済&対外債務状況を比較してみよう。


baltic_foreign-reserves.jpg
まずは、バルト3国の外貨準備高を見てみよう。バルト3国の経済規模としては、リトアニア>ラトビア>エストニアであるので、外貨準備高の多さもこの順番通りである。リーマンショック以降、3国とも外貨準備高を減らしているのだが、2008年1月〜2009年5月の最高額と最少額の減少率で見ると、エストニア、ラトビア、リトアニアでそれぞれ、25%,40%,30%となっており、ラトビアの減少率が一番大きい。


baltic_GDP.jpg
そして、次は名目GDP推移を見ていこう。直近の名目経済成長率を見ると、リトアニアが-28.4%と相当な経済の落ち込みようが見て取れる。後でまとめるけど、これ年率換算だと-73.7%だぜ。(驚)一体、リトアニアは実際にどんな状況なんだろう?
どの国も、2008年3Q辺りから総固定資本形成が総崩れであるので、やはりスウェーデン辺りの投資の外資マネーが一斉に引いた事に起因していると推測できる。おそらく外資マネーで、住宅・建築・インフラ関係の投資を主導していたって事なんだろう。2008年の4Qで、バルト3国は政府支出を増やして、何とかしようとした形跡があるっぽいけど、2009年1Qは資金調達ができなくなったのか政府支出も大きく減少させていて、どうにもこうにもならない状況が読み取れる。
いずれにしても経済の失速度合いという視点では、リトアニアが一番やばそうだな。まぁデフォルトを考えた場合の問題は、GDPよりも対外債務の状況だよな……。まぁこれは後で見るとして、次は国際収支の状況を見てみよう。


baltic_BOP.jpg
これまた意外な事に、2009年1Qではバルト3国の経常収支は黒字に転換してるわけですよ。とは言うものの、これは輸出よりも輸入が激減した事と、不景気で株等の利子を海外に払わない事によるもので、典型的な縮小成長に起因するものである。まぁただ、黒字額は大したことがないので、どの国も問題は資本収支の方なんだよな。
さて、その資本収支であるけれど、バルト3国は2009年1Qで資本収支が赤字に転じたわけだ。注目すべきはラトビアで、「その他投資」が大幅赤字になっている。これは、海外からラトビア債券を購入した人が、ロールオーバーせずにそのまま債券を償還したのが主な要因と推測される。つまり先日のニュースの通り、ラトビアの債券の買い手が激減した事が読み取れる。ちなみにラトビアだけでなく、エストニアとリトアニアも同じ傾向が読み取れる。当然、それに連動してどの国も外貨準備高を激減させているわけだ。
いやぁ、これ見ると確かにラトビアは凄い勢いで外資が逃げてるのが読み取れるなぁ……。


baltic_external-debt.jpg
そして、いよいよ対外債務を見てみよう。これを見ると経済規模では、「リトアニア>ラトビア>エストニア」だったけど、全対外債務額を見ると、「ラトビア>リトアニア>エストニア」である事がわかる。やはり、ラトビアが一番外資依存の状況だった事が読み取れる。しかも、ラトビアは2009年1Qの政府債務が激増しているので、やはりバルト3国の中では一番せっつばった状況なんだろうか?ただ、もうラトビアは国債発行できないわけだしなぁ……。さっきの外貨準備高をグラフを見ると、ラトビアの外貨準備高が2009年5月時点で40億ドル程度だったので、すでにラトビアの対外政府債務はリミットまで来てるわけですよ。おそらく、ラトビア政府の債務はほとんどが短期債務だろうから、やっぱり非常にまずい状況かもしれないな……。

そして3国ともに、銀行部門、その他部門では2009年1Qで債務額が減少してるわけで、やはりロールオーバーできなくてどんどん外資の逃げている事が、ここでも読み取れる。ただ、エストニアとリトアニアの政府部門債務は外貨準備高と比較すると、まだ若干の余裕はありそうだな。特にリトアニアは、外貨準備高に対して、短期の対外債務と政府債務の割合が少ないので、おそらくデフォルト危険性という意味では、頭一つ抜いてエストニアやラトビアより安全であるわけか。


baltic_conclusion.jpg
そして、最後にバルト3国の直近の状況をまとめてみる。ここでは、あえて比較対象として「日本」と「韓国」を追加してみました。
さて、ここではGDPに対するそれぞれの対外債務額をパーセンテージで算出した。リトアニアは、経済規模に対して対外債務額は大した事になっていないけど、エストニアとラトビアは外貨準備高も豊富というわけじゃないし、かなり危ないかもなぁ……。




というわけで、とりあえずバルト3国について詳細に調べてみた結果を報告します。ここまで調べているのは、日本では俺が最初だと願いたい。(笑)
posted by きらっち at 23:52| Comment(1) | TrackBack(0) | 経済

2009年06月26日

海外在庫を増やした日本の自動車輸出?

【トヨタ、5月国内生産41%減の19万台…76年以来最低】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20090625-OYT1T00468.htm

この手のニュースは、よく「前年同月比」で○○%増とか△△%減と出されるんだけど、俺にとっては前月比の方がわかりやすくていいんだけどな。まぁ、確かに1月とか8月は休みの日が多い都合上、前月比では正確な状況把握ができないっていう事もわかるんだけどさ。という事で、トヨタの自動車生産台数の推移を見たかったので、↓の通り自分で作成してみました。

toyota_car-product.jpg
このグラフは、トヨタ自動車の乗用車と商用車の生産台数を国内/海外別であらわしている。さらに、国内で生産された自動車の輸出台数も掲載した。
さて、リーマンショック前の水準を見る限り、トヨタは海外生産台数と国内生産台数をほぼ同じく揃えていた節が読み取れる。ところが、2009年に入って、その傾向が崩れてきた。海外生産は、2009年1月で底入れして回復基調に乗ったのだけど、国内生産の方はさらに生産台数を落とし2月〜4月にかけて不振を極めていたわけだ。ところが、日本政府のエコカー購入補助の政策効果が出始めたのか、5月に入って国内生産台数は急回復した事がわかる。自動車は耐久消費財であっていつかは壊れてしまう物なので、このまま需要が激減し続ける事は考えにくい。おそらく政府の購入補助効果は、数ヶ月間くらいは持続するんじゃないかな?

そして一つ興味深いのが、2008年11月と12月。この月は、世界生産台数も国内生産台数も激減していたにもかかわらず、輸出台数はそこまで不調という事でもなかったのがわかる。ただ、トヨタの海外生産も激減しているので、当然海外の自動車需要も激減してたわけですよ。こんな状況で、一体どこに輸出してたのだろうか?
それを示唆するのが、以前↓のエントリーで書いたアメリカの自動車会社の在庫日数である。

【GMとクライスラー、そして米国自動車業界の行方】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/28774386.html

↑のエントリーを見れば、TOYOTAの在庫日数が、この時期増えているのがわかるであろう。おそらく日本から輸出されたトヨタの自動車が、現地工場で生産された自動車と販売層がかぶるので在庫が増えたと推測される。しかも在庫日数グラフを見ると、TOYOTAだけでなく他の日本の自動車会社(NISSAN、SUZUKI)も在庫日数が激増していることがわかる。きっと日産やスズキもトヨタと同様、輸出ペースを落とさなかったことで、逆にアメリカ法人の在庫が激増する事になったのではないだろうか?
意外に日本の自動車業界も、自国の在庫激増を防ぐためとはいえ、海外の現地法人に迷惑かけるのを承知で腹黒い事やってるなぁ。(笑)


ただ、上記のトヨタ自動車の生産グラフを見る限り、やはり日本の景気は2009年2月くらいが底だったのかねぇ。このまま順調に景気回復してくれる事を願うばかり。
posted by きらっち at 06:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年06月24日

日本の経済状況と対外債務

【ラトビア こりゃヤバイんじゃないの?!】(2009/06/06)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/29640372.html

【ラトビア問題〜その後の展開〜】(2009/06/14)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/29793523.html

【ラトビアに負けず劣らずエストニア】(2009/06/19)
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/29902626.html


先日、ラトビア経済危機関係で上記のエントリーを書いたのだけど、ラトビアを含むバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の最新主要経済指標と対外債務のデータを見つけたので、近いうちにバルト3国の経済状況比較を書くことになります。
東欧ショックが起こるかどうかはまだわからないけど、数字に基づいた深刻なバルト3国の経済状況をお届けできそうです。

さて、バルト3国の対外債務状況を分析する前に、まずは自分の国の対外債務状況を知っておいた方が良いと思ったので、今日はとりあえず日本の最新主要経済指標と対外債務のデータを見てみよう。


japan_int-reserve.jpg
まずは、外貨準備高から見ていこう。↑は、2008年〜現在までの日本の外貨準備高の推移をあらわしている。日本の外貨準備高はおよそ1兆ドル前後で推移していることがわかる。リーマンショック直後、日本から多くのドルを流出していた事が10月の外貨準備高から推測される。ただ、わずか一ヵ月の間に外貨準備高は元の水準に戻ったわけで、日本は全然外貨準備高で困るような状況ではないわけだ。(まぁドル下落による為替含み損で、困っていると言えば困ってるのだが)


japan_gdp_quarter.jpg
そして、次に経済状況を見ていこう。↑が、2008年〜現在までの日本のGDPとGDP内訳の推移を示している。ここでは、今後のバルト3国の分析結果と合わせるために、GDP内訳を「民間最終消費支出」「政府最終消費支出」「総固定資本形成(住宅投資+民間設備投資+公的資本形成+在庫変動)」「財貨・サービスの純輸出」の4種類で分類した。(バルト3国は、何故か在庫変動を総固定資本形成にカテゴライズされているので、それに合わせた)

ここでのGDPは、物価変動を考慮せずに季節調整前の名目GDPであるため、あまり確かな事は言えないかもしれないが、リーマンショック直後の2008年第4四半期は、純輸出以外の全項目の前期比がプラスになっているし、意外にも国内経済は順調だったと言えるかもしれない。しかしながら、輸出関係で大打撃を受けた結果、2009年第1四半期が悲惨な状況になったのはみなさんもご承知の通り。ただ、輸出対GDPが20%もなく純輸出対GDPも1%に満たない日本が、何故こんなにも輸出で打撃を受けたのだろうか?この問いに対して、数字に基づく明確な答えは俺の中ではまだみつからない。
まぁいずれにしても、日本の場合は他の外国政府よりも国債発行ができるし、キャッシュフローも良いため、政府最終消費支出を増やしてGDPを底支えできるのが強みなんだよな。2009年第1四半期を見る限り全ての項目がボロボロの状態なので、ここは政府支出に頼る以外にマクロ経済を支える術は無さそうだよね。


japan_bop_quarter.jpg
次は、国際収支の方を見てみよう。やはりリーマンショックの影響は非常に大きく、2008年第3四半期から証券投資が大幅に赤字。まぁ、通常資本収支が赤字になるのは、外国人による日本への投資額よりも、日本人が外国に投資する額が大きいからなのだが、この時は外国人投資家が日本の株や債券を売り払ってしまって赤字幅の広がる要因になってしまったわけだ。
また、貿易収支の赤字転落と、海外の景気悪化で所得収支が激減した事により、経常収支の方も激減。日本は苦しい事態を迎えることになるのだが、取り急ぎ経常収支が赤字になっているわけではないので、こんな状況であろうともまだ海外からお金を稼げるわけだ。ということで、今後も外貨準備高が減り続ける状況は考えにくい。


japan_ex-debt_quarter.jpg
そして最後は、↑の日本の対外債務推移を見てみよう。まずは、日本全体の対外債務は2兆ドル(200兆円)程度あり、GDP比で考えると40%程度である。

【List of countries by external debt】
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_external_debt

ちなみに上記が世界各国の対外債務ランキングなんだけど、これを見る限り日本の対外債務対GDP(ここでは2007年6月末時点で35%)は、世界的には低い値であることがわかる。いや、世界的に見て低いどころか、G7で絞るとずば抜けて低い値であることがわかる。米国100%、イギリス375%、ドイツ160%、フランス212%、スペイン80%、イタリア58%なので、対外債務で日本を見る限りにおいては、財務的に一番日本が健全であるわけですよ。(ただし対内債務になると、日本は凄まじい事になるわけですが。)

さて、対外債務推移の話に戻ろう。↑の画像を見る限り、政府部門に6500億ドル(約65兆円)の対外債務がある事がわかる。この債務が全て国債ではないだろうけど、800兆円以上の国債発行がある事実からすると、大した額じゃないように思えるよね。(笑)
これら6500億ドルが一気に日本から流出する事態は考えにくいわけだし、日本のGDPや国際収支の額から考えられるキャッシュフローを持ってすれば日本政府がデフォルトするとは思えないなぁ……。

そして通貨当局債務(つまり日銀債務)は、2008年第3四半期に激増。まぁ、リーマンショックで現金需要が急増したことによる短期の現金供給でしょうな。そのうち金融が安定化してくれば、日銀債務もそのうち消えるでしょう。

そして銀行部門に関してのみ、リーマンショック後から債務額が増えてるんですよ。しかも短期債務額が大きく増えているので、円高を見越した外国人が日本の金融機関の債券等を購入したのだろうか?
確かに、リーマンショック後に株価が落ちて金融機関の自己資本率が落ちてしまったため、自己資本率を上げるための新しく発行した株や債券を外国人もたくさん購入したと考えれば筋は通るけどね。



さて、今日の話をまとめると、
1.日本の1兆ドルに及ぶ外貨準備高、
2.マイナス成長とはいえ、日本のGDPは500兆円(5兆ドル)
3.リーマンショックにもかかわらず経常収支が黒字を継続
4.対外債務対GDPは40%程度で、先進国の中では非常に低い
この事実からすれば、少なくとも対外債務に起因する日本の経済破綻可能性はほぼ0%のように思える。むしろ、イギリスとかアメリカの方が心配になってしまうわ……。


ということで、近々バルト3国に関しても同じように「外貨準備高推移」「GDP推移」「国際収支推移」「対外債務残高推移」について書きますので、興味のある人は楽しみにしててください。
(やはり、驚くべき数字が出てきます。)
posted by きらっち at 23:55| Comment(4) | TrackBack(0) | 経済

2009年06月19日

ラトビアに負けず劣らずエストニア

今日のタイトルは川柳になってるな、こりゃ。(笑)


【バルト三国進出で損失拡大 スウェーデン銀、国家破綻危機響く】
http://www.business-i.jp/news/bb-page/news/200906180019a.nwc

【ラトビア こりゃヤバイんじゃないの?!】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/29640372.html

うむ、やはりスウェーデンはバルト三国への投資で痛い目を見るわけか。実際本ブログでも、↑のエントリーでラトビアの経済分析はしたのだけど、その他の「エストニア」と「リトアニア」に関しては、何も調べていなかったなぁ。最近は、「東欧諸国デフォルトが金融危機2nd-Stageの発火点になりそう」と言われ始めてきているいるし、とりあえず今日は最近のエストニアの主要な経済指標を全て探してこれたので、まずはエストニアのマクロ経済分析をしてみよう。 (ちなみに今現在、朝の5時。「そんな時間があれば寝ろよ」と俺自身も若干思っているのだが……)



estonia_foreign-reserves.jpg
さて、まずは↑のエストニアの1年程度の外貨準備高推移を見てみよう。ちなみに、エストニア通貨「クローン」はユーロとペッグっしているで、それを踏まえておいてほしい。
やはりエストニアも、リーマンショックの影響をもろに受けて2008年9月に一気に外貨準備高を消費してしまった事が読み取れる。その後は、一進一退が続くも平均的にはどんどん外貨準備高が少なくなっていることがわかる。ただ、最悪期の2月は抜け出したのかな?いずれにしても、2009月4月末現在で35億ドルくらいの外貨準備高は確保してそう。
ただ、ラトビアと同じで、今後エストニアも自国通貨防衛のために外貨準備高を消費することになるのだろうか?


estonia_external-debt.jpg
そして、次は↑のエストニアの部門別対外債務の推移を見ていこう。これを見ると結構意外な事があって、実は2009年第1四半期のエストニア政府の対外債務残高は、わずか8億ドルしかないわけですよ。しかも、その全てが長期債務なわけでなので、短期国債すら発行できなかったラトビアとは事情の違う事がわかる。
ただし、エストニアは国内金融機関とその他部門の債務残高が190億ドル程度あって、そのうち89億ドルが短期債務なわけですよ。いやぁ、エストニア政府のデフォルトは大丈夫だろうけど、エストニアに投資している外資が引き始めたら、エストニアの民間部門は壊滅状態になるなぁ。外貨準備高すら35億ドルくらいしかないので、エストニアの民間会社は涙目状態だな、こりゃ。
ちなみに外資会社間債務ってのは、例えばトヨタのエストニア支社がトヨタ本社に借金してるようなもの。まぁ実際エストニアにある外資会社っていうと、最初のニュースみたいにスウェーデン本社の会社が多いのかねぇ……。

という事で、国全部の対外債務の合計は244億ドル。そのうち短期債務は90億ドルって事で、エストニアはこれ以上外資に引かれると大手企業が続々潰れそうな気配が濃厚。ただ、政府債務が少なく全て長期債務なので、短期国債であればまだこれからでも発行できるのかもしれないが……。



estonia_balance-of-payments.jpg
そして、次はエストニアの国際収支の推移を見ていこう。リーマンショック前までは、ラトビアと同じく経常収支が大幅赤字で、資本収支で国を支えていたことがわかる。ところが、エストニア国内の超不景気のために、株等の国外配当金が減り所得収支の赤字幅が縮まった事と、韓国と同様に輸入激減により貿易収支の改善した事により、2009年第1四半期の経常収支は赤字を脱したのだけど、この改善は縮小成長によるものなので、あまり良い傾向ではない。
一方で外資がエストニアから逃げ出して資本収支が赤字の状態に。しかも2009年第2四半期は直接投資も赤字になりそうな勢い。証券投資の方は、それこそ短期的なトレードで買っている人が主なんだろうけど、買収目的の直接投資まで赤字になってしまうと、本気で外資はエストニアを見捨てる気という事なんでしょうか?

いずれにしても、エストニアも外貨準備高を何とかして増やせる状況ではないな。当面は、35億ドルの外貨準備高で何とかするしかないわけで、ラトビアとそんなに状況は変わらないのでは?


estonia_gdp.jpg
そして、心配なのが↑のエストニアGDPですよ。2009年第1四半期のエストニアの経済成長率は、前期比で-14.5%。年率換算で、何と-46.6%ですよ!経済成長率で、こんなすごい数字初めて見たよ。日本の年率換算の-15%が大したこと無いように思えるもんなぁ。(笑)
しかも2009年第1四半期のGDP各支出項目の前期比を見た場合、総固定資本形成が一番ひどいという事は、まさにエストニアの固定資産バブルが弾けたって事なんだろうか?総固定資本形成は、2008年の第4四半期から激減を始めていて、外資の引き始めたタイミングとほぼ符合する事より、やはり今までは外資によるバブルを引き起こされていた事が推測される。
民間最終消費もすごい勢いで縮小してるし、数が小さいので純輸出には期待できないし、大量の国債発行が期待薄のため政府支出に頼るのも無理があるし、エストニアの打てる手はほとんどなさそう。確かに、EUかIMFに泣きついて融資をお願いするのがベストな方法かもなぁ……。



という事で、エストニアの状況をまとめると、

1.政府の対外債務は少ないが、民間部門の対外債務が膨大
2.国全体の短期債務は90億ドルで、外貨準備高が35億ドル
3.2009年1Qの経済成長率は年率換算で-46.6%で国内経済壊滅状態
4.急激な資本収支の赤字により急速な外貨準備高増加は難しい

ってなところかな?この前のラトビアの経済分析では、今回ほど突っ込んだデータがなかったので、エストニアとの比較ができないのが残念なところ。いずれにしても、今後も空いている時間を見つけて「リトアニア」「ハンガリー」「ウクライナ」「ポーランド」「ブルガリア」等々の東欧諸国の経済分析をやろうかと思っているので、随時資料が見つかり次第この場で発表することにします。


願わくば、東欧ショックが起きない事を祈っているのだが、果たしてどうなる事やら。
posted by きらっち at 05:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年06月17日

産業連関表による各都道府県の経済波及効果分析

【成田・羽田の国際線拡大、年9800億円の経済効果 国交省試算】
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090612AT3S1202K12062009.html

【世界砂像フェスティバル:経済効果96億円 入場収入は3億円−−実行委 /鳥取】
http://mainichi.jp/area/tottori/news/20090609ddlk31040731000c.html

この手の経済波及効果の記事をよく見ると思うんだけど、「どうやって算出してるんだろう?」と思った事ってありません?

今日は上記の記事そのものではなく、経済波及効果を算出するのに使われる産業連関表を使って、地方の産業毎の経済波及効果を考察する。

さて、まずは産業連関表についてだけど、wikipediaでは以下のように説明されている。

数年おきに政府が調査しているもので、それぞれの産業毎の生産構造(どの産業からどれだけ原料等を入手し、どれだけ賃金等を払っているか)や、販売構造(どの産業に向けて製品を販売しているか)をみることができ、経済構造の把握、生産波及効果の計算などに利用されているものである。

wikipedia『産業連関表』


【平成17年(2005年)産業連関表(速報) 生産者価格表 34部門】
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/Xlsdl.do?sinfid=000002568524

【平成17年(2005年)産業連関表(速報) 逆行列係数表(開放型) 34部門】
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/Xlsdl.do?sinfid=000002568535

実際には、上記エクセルファイルが平成17年の日本全体の産業連関表そのものである。詳しい説明は省くけど、産業連関表には様々な種類があるのだけど、「生産者価格表」が基本形のものである。ただ、経済波及効果を見る場合は、通常「逆行列係数表(開放型)」の表を見る。この「逆行列係数表(開放型)」というのは、注目している圏外からの輸入を加味して、圏内に1単位の最終需要がある場合に、どれだけ経済波及効果があるかを調べるのに適したものである。

実際に上記の逆行列係数表(開放型)ファイルを見てみよう。「農林水産業」の列に注目して欲しい。
(農林水産業)1.140839→(鉱業)0.001464→(飲食料品)0.107463
→……→(列和)1.779103
とあるが、これは「農林水産業」が作る10000円の製品やサービスを購入した時、農林水産業に11408円、鉱業に14円、飲食料品に1074円、そして産業全体として17791円の経済波及効果のある事を示している。

さて、これにより「列和」の行で一番大きな値を取る産業が、日本で一番経済波及効果の大きい産業である事がわかるのだが、実際それは何の産業で列和がどのくらいかというと、「輸送機械」で列和が2.815172というのがわかる。つまり自動車産業が作る製品やサービスで100万円の需要があれば、281万円の経済波及効果がある事がわかる。「自動車産業はすそ野が広い」と言われているけど、確かにこのデータが数字でそれを裏付けているわけですよ。


そしてようやく今日の本題。実はこの産業連関表、日本全体のみを対象にしているのではなく、それぞれ各都道府県対象の産業連関表も作成しているんですよ。よって、今日は「兵庫県」「愛知県」「青森県」の3県の産業連関表からそれぞれの都道府県の産業の特徴を考察してみたい。

local-pref_io-inv.jpg

local-pref_io-inv2.jpg

local-pref_io-inv3.jpg
という事で、3県の産業34部門における経済波及効果を↑に示す。何せ部門数が大きかったので、3つの画像に分割しました。今回は日本という国が一つの単位ではなく、都道府県を一つの単位としているので、「県内への経済波及効果」と「県外への経済波及効果」をわけてグラフで示している。(詳しい説明は省くけど、逆行列係数表の「閉鎖型」と「開放型」の列和差分を取る事により県外への経済波及を算出している)

まず2番目の画像を見て欲しい。「輸送機械」を見ると、愛知県にダントツの県内経済波及効果があるのがわかる。これは、自動車という利益率の高い最終製品や中間部品を多量に生産しているからだと思われる。ということは、愛知県の県庁/市役所/町村役場で、いっせいに官用車をプリウスに買い換えるだけで、愛知県の景気浮揚にかなり寄与するんじゃないの?(笑)

一方、輸送機械における兵庫県や青森県の県内経済波及効果が少ないのは、生産しているものが自動車という完成品ではなく、部品中心だからだと思われる。しかも、青森県だけ県外経済波及効果が一段少ないのだけど、これは青森県の作る自動車部品が、青森県内で生産される中間財を中心に生産できる物であると推測される。
同じく2番目の画像で「精密機械」や「その他の製造工業製品」でも、青森県だけが兵庫県や愛知県と比べると極端に県外経済波及効果が小さい上に、県内経済波及効果も低い事がわかる。これも同様の理由であろう。
全体的に鉱工業の多くの部門で、青森県は県外経済波及効果が兵庫県や愛知県よりも小さいので、県内のみで生産が完結する傾向がある物を生産しているという事だろう。

次は1番目の画像の「農業」を見て欲しい。3県とも県内経済波及効果に大差は見られないけれど、県外経済波及効果に関しては、ここでもやはり青森県が一番低い事がわかる。ただし、青森県の産業連関表(生産者価格表)を見ると、上記の鉱工業部門とは違い、青森県は農業生産が盛んで他県にどんどん輸出する一方で、農産物生産による県外経済波及効果が少ないわけだ。
これはつまり、他県の力を借りずに青森県だけで農産物を輸出できる事を意味しているので、効率よく農業で稼いでいるとも言える。「さすが農業王国だ」という事が産業連関表からも読み取れるわけですな。

そういう視点から行くと、兵庫県の農業は県外経済波及効果が大きいので、農産物の生産には県外からの多くの輸入が必要であるわけだ。しかも兵庫県の産業連関表(生産者価格表)を見ると、兵庫県は農産物をほとんど他県に輸出していない。つまり、兵庫県は自分の県の需要しか満たせない上に輸入が多いわけで、農業においては効率の悪い稼ぎ方になっている事がわかる。


このように産業連関表は、それぞれの産業構造や経済波及効果がわかるために、いろいろと活用できる機会があるとは思うのだけど、その原理は大学程度の数学の知識がいるために、完全に理解しようとするのは結構難しいかもしれない。(ちなみにこの産業連関表で、発案者のレオンチェフはノーベル経済学賞を取っている。)

一番上の飛行機路線やイベントでの経済効果も、一般的なお客さんのお金の使い方(お土産に○○円、外食に○○円等々)もモデルとして産業連関表を使って経済波及効果を算出してるんだろうね。


ところでこの産業連関表は、各都道府県と政令指定都市クラスの市でも作成している。また、本エントリーでは産業を34部門にカテゴライズしていたが、実際は100以上の部門表を作っているはずなので、興味のある方は、是非自分の自治体の産業連関表を見ながら何かの役に立ててみてはいかがでしょうか?
posted by きらっち at 12:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年06月16日

長期的な日本のビジネスモデルとは?

【第85回「今こそ『海外投資立国』に針路を取れ!──L型不況は経済・経営の構造転換の好機」】
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/saito.cfm?i=20090528c1000c1

日本は中期的に見ると、まだ円高が進む可能性が高い上に中国等の新興国の輸出が今後も伸び続けるとみられるため、そのうち貿易黒字から貿易赤字国に反転すると見られる。
そして長期的に日本を考えた場合は、人口減少により経済規模が縮小するので大幅に円安へと振れる可能性が濃厚。確かに上記のコラム作者だけではなく、日本経済がおおよそこういう流れを辿りそうだという事は、大抵の経済評論家の総意だとは思う。

まぁ、俺個人的には日本がそこまで輸出依存国とも思えないのだが、確かにリーマンショック後に全世界の需要激減により、日本の輸出産業は多大なダメージを受けてしまい、経済成長率も年率15%のマイナス成長を記録してしまったわけだ。日本の輸出額対GDP(およそ10%台後半)は他の先進国よりも10%〜20%程度低い水準なのに、
何故日本が一番経済成長率が落ちたのかは、俺も根拠ある数字で説明できないので、とりあえずは上記のコラムの通り日本が輸出依存国であるとして話を続ける。


さて、コラムの執筆者の斎藤所長は、人口減少によって内需の規模も縮小するので、日本の経済規模を維持しようとすると、やはり活路は海外に求めるしかない旨を書いている。その手段を、「貿易」でも「サービス」でもなく、「投資」にあるとの事。俺も、いつか日本は投資立国を目指さなくてはいけないとは思うのだけど、「今すぐ」じゃ無い方がいいとは思うんだよ。その理由は以下の3つ。

@まだまだ円高になる可能性が高い
ドルとユーロがどうなるかまだ不透明な部分があり、今後もし世界経済の二番底があるとしたらさらに円高が進むわけで、とりあえず為替レートが安定するまでは下手に海外投資しない方が無難じゃないのかなぁ。最終的に海外投資で儲けたお金を円に換えるのであれば、最も円高が進んだ時点で買収して、その後の円安局面で円に換えるのが一番損をしないよね。

Aまだ日本は貿易黒字を続けられる見込みがある
世界的に「環境」が次の時代の大きなビジネスになると言われているけど、日本の技術は世界でもトップクラスなので、まだまだ貿易黒字を続けられると思うんだ。手元の資金を下手に海外に投資にするよりは、技術開発につぎ込む方が貿易黒字の期間を延ばせるんじゃないのかな?そもそも電気自動車の輸出が大当たりすれば、それこそ10年〜20年くらいはまだまだ自動車でも輸出を引っ張っていけると思うんだよな。

japan_bop.jpg
B投資の一本化へのリスク不安
↑に、昭和60年〜平成20年までの日本の国際収支を示す。これを見る限り経常収支の稼ぎ頭は、平成17年より貿易収支ではなく所得収支であることがわかる。そう、海外からの収入に関しては、すでに日本は投資大国になっているんですよ。ここでさらに一気に投資に舵を切ってしまうと、日本は「投資」一本にビジネスモデルを絞ることになる。このビジネスモデルの一本化って、俺個人的には不安なんだよな。というのも、ビジネスモデルを一本化に絞った国を考えて欲しい。石油価格の暴落やリーマンショックでロシアやアイスランドがどうなったかを知っていれば、ビジネスモデルを一本化する怖さがよくわかるのではないだろうか?
「投資」は汗水流して物作りをするわけでもなく、非常に楽な稼ぎ方ではあるので、この楽を覚えてしまうと、再び「貿易」とか「サービス」に日本のビジネスモデルをチェンジできるのかどうかも不安なんだよなぁ……。



俺の意見としては、完全に投資へと舵を切るは最後の手段にして、サービス収支をある程度の黒字幅を拡大させた方がいいのでは、と思っている。齋藤所長は、サービス収支を伸ばすことは否定的な立場を取っているけど、俺は日本のサービス収支はまだまだ成長の余地と、成長させられる環境があると思っている。
先の国際収支を見ると、サービス収支はまだ赤字なんだけど、年々赤字幅が縮小しているので数年後には黒字に転換できるかもしれないんだよね。ということで、まずは現状の日本のサービス収支の詳細がどうなっているかを見てみよう。

japan_bop-servises.jpg
↑が日本のサービス収支の各項目である。これを見ると「旅行収支」がサービス収支の足を引っ張っている事がわかる。この原因は、日本人が海外旅行でお金を使うからが主因である。さすがに「海外旅行に行くな」と国が国民に命令できるわけではないので、日本人が海外旅行に行くことは止められない。けれども、逆に外人に日本旅行に来てもらえれば旅行収支の改善は可能である。
そういう事情もあって、政府は観光庁を発足させたし、ここ何年かで外人に日本旅行をしてもらうようアピールし続けた結果、外国人観光客の増加によって旅行収支は改善している。円高で今後も確実に外国人観光客が増えるかはわからないのだけど、今後も何かしらの施策を打ち続ける事は旅行収支上からも非常に重要な気がする。

そして、ここ数年で大きく伸びた項目としては「特許等使用料」なんだよね。俺は、これが今後日本のサービス収支を引っ張る事になるのでは、と思っている。「特許等使用料」の項目は、日本の輸出産業や知的財産と大きく関係しているし、この項目は政治であまりぶれるところでもないために、黒字幅が拡大できる環境は整っていると思うんだよなぁ。


ということで、俺の意見をまとめると

@貿易収支とサービス収支でなるべく長期間の黒字確保をねばる。
特に貿易収支に関しては、環境製品や電気自動車に期待。サービス収支に関しては、旅行収支を改善しつつ、特許使用料を伸ばす。

A貿易収支とサービス収支で限界が見えたら、完全に所得収支(海外投資)へと舵を切る。

というスタンスがいいのではないでしょうか?でも、それこそ海外に投資を加速させると、日本の国債を買ってくれる人が減るんだろうなぁ……。(笑)



参考エントリー【そんなに日本はダメなのか?】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/28400605.html
posted by きらっち at 00:01| Comment(0) | TrackBack(1) | 経済

2009年06月14日

ラトビア問題〜その後の展開〜

【ラトビア こりゃヤバイんじゃないの?!】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/29640372.html

↑の6月6日エントリーで、ラトビアの国債応札が0だった事を取り上げて、ラトビアの経済情勢を分析しました。今日は、その後のラトビア情勢をお伝えしよう。



【為替介入でラトビアの金融市場がまひ、翌日物銀行間金利は100%】
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-38494720090610

まずは、良くないニュースからだけど、やはりラトビア政府が外貨準備高を放出してラッツ確保に走り出したため、短期金利が急上昇。その結果、翌日物の銀行間金利は100%になってしまったとの事。これ、常識的にはあり得ない金利でしょ?!(笑)
確かに、ラッツの為替市場の規模は小さいだろうから、国が本気の介入を仕掛ければ、このくらいの数字が出てしまうのかもしれないけど、やはりラトビア政府は相当追い込まれている事を示唆している。


【スウェーデン中銀、欧州中銀から4000億円借り入れ】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090610AT2M1003O10062009.html

そして、ラトビア問題で一番迷惑を被っているスウェーデンにも動きが出てきた。スウェーデンの民間銀行は、ラトビア向けの多額の債権があるので、ラトビアに万が一の事があるとスウェーデンの銀行にも相当のダメージが来る。
このままラトビア問題のほとぼりがおさまるまでは、「保険」の意味で30億ユーロをクローナ(スウェーデン通貨)とのスワップで確保するらしい。


【EU、ラトビアに1600億円融資へ 月末にも、市場の不安を緩和】
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/eu/20090610D2M1000510.html

そして肝心のラトビアの方は、EUが12億ユーロを今月末〜来月上旬にも実施との事。とりあえず、この融資によってある程度はラトビアも持ちこたえられるかもしれない。
ただ、先日のエントリーでも書いたんだけど、ラトビアは経常収支の大幅な黒字は見込めず確実な外貨確保が保証されないため、おそらく自立的に復活するチャンスは皆無と言ってもいい。(リーマンショック後に、同じく破綻の懸念された韓国とはこの点が大きく違うところ)つまりラトビアは、欧州の金融正常化をもって、再び外資による投資に期待するしか外貨獲得のメドがないわけだ。

今のこの金融情勢から察するに、ラトビアは数ヵ月後に再びEUから融資を受けることになりそうな……。
posted by きらっち at 06:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年06月10日

中国の金利政策の行方

ん?突然カウンタが回りまくったのだけど、どこかに吊るされたか?



さて、今日は中国の金利についてある事実を考察する。どうも今の中国を見ていると、中国の経済成長モデルに大きなジレンマを抱えているようにしか見えないんだよなぁ……。



さて、突然だけど中国の1年金利(政策金利)と経済成長率(実質GDP伸び率)の推移は、以下の通りになっている。

     1年金利 経済成長率
2006年 6.12% 11.6%
2007年 7.47% 13.0%
2008年 5.58% 9.0%

※GDPはJETROのHP( http://www.jetro.go.jp/indexj.html )
※中国の政策金利は中国人民銀行のHP( http://www.pbc.gov.cn/english/ )より。

これ、あまりにも金利と経済成長率に開きがあると思わない?実質ではなく名目GDPでの経済成長率だと、何と15%以上の伸びになる。要は、中国人にとっては貯金利子よりも国内投資した方が儲かりそうなわけですよ。おそらく、経済成長率の割には中国の家計貯蓄率は低いんじゃないだろうか?

さて、市場原理からすると、経済成長率が高いという事は、投資して利益がたくさん出るわけで、みんな借金してでも投資しようとする。みんなが借金すれば金利が上がるので、投資を抑える力が働くわけだ。ところが中国の場合は金利が低いままなので、投資を抑える力が働かない事になる。よって、土地とか株等々の値段が上がるわけでしょ?いやぁ、これってある種のインフレ(バブル)を生み出す事になるんじゃない?


ところで中国は、なぜ金利を上げないんだろう?とりあえず投資家目線に立ってみれば、投資家は金利の低い国よりも金利の高い国に投資したくなる。しかも中国はほぼ固定レートなので、為替リスクを考えなくていい上に、先進国に比べると金利がわりかし高い部類の国なので、投資家にとっては非常に都合の良い国なんだよね。(固定レートにする代わりに、米国債を大量に中国政府が購入するわけですが)

ここで、中国政府が金利を上げだとしよう。すると、大量のマネーが中国に流入するわけで、「大量の米国債を購入して為替レートを維持する」か「元を切り上げなければならなくなる」わけだ。当然、元の切り上げは中国の輸出産業にダメージがおよび、輸出立国の中国としては容認できない。ただ、米国債を購入して為替レートを維持するにしても、これは投資を抑える事にはならないので、いずれにしてもインフレ(バブル)は続き、結局物価が上がる事によって人件費も上がってしまうので、輸出産業もそのうち厳しくなると思うんだよなぁ……。



幸い、リーマンショックで全世界の需要が急激に落ちたことによって、中国も消費者物価が今年に入って落ち続けている。

【中国の消費者物価、4カ月連続で下落 5月は1.4%マイナス】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090610AT2M1001K10062009.html

だた、消費者物価の下落が一段落したときに、ここ最近の資源高騰等が重なって、そのうち物価が結構な勢いで上がり出すのではないかと心配。中国国内からスタグフレーションの心配まで出てるらしいんだよね↓。

【中国国家情報センター、スタグフレーションを警告し追加緩和策をけん制】
http://jp.reuters.com/article/treasuryNews/idJPnTK839734220090610



いずれにしても中国は「元の切り上げ」ではなく、「元の維持」という選択を取ってしまったがために、長期的にはインフレとの戦いになるのではないかと思われる。今後は「いかに人件費を高くせずに輸出競争力を維持できるか」が至上命題になるんだろうな。
今の中国のやり方だと、いつか必ず痛い目にあいそうな気が……。
posted by きらっち at 23:37| Comment(2) | TrackBack(0) | 経済