2009年06月08日

金利差がお金の流れを生み出す?!

【NYで大幅円安、2円08銭円安の98円60〜70銭】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20090606-OYT1T00330.htm

【米国債市場概況 短期債下落、雇用統計後に利回り曲線平たんに】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/media/djCVU3421.html

アメリカでの先週金曜日の円相場、前日比で突然2円も円安になったので「何かあったのかな?」と思ってたんだけど、アメリカの短期国債が下落(利回りは急上昇)したというのが要因だったわけね。今日は「何故米国短期国債の下落(利回り上昇)が円安を呼び起こすのか?」を自分なりに考えてみたので、考察してみたい。


us_short-treasury_interest.jpg
さて、まずはここ数日のアメリカの短期米国債の利回りがどうなっているかを調べてみた。↑が6月の米国債利回りを表している。2番目の記事にもあるように、政策金利の利上げ予測に加えて、6月5日に発表されたアメリカの雇用統計が思ったよりも悪くなかったので、投資家が利回りの低い米国債よりも、景気回復の期待感から株やその他の投資の方へ興味が向いたという事で、5日の日は米国債が下落して利回りが急上昇したと思われる。


【財務省 平成21年(2009年)5月と6月の国債入札情報】
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/calendar/0905.htm
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/calendar/0906.htm

さて、一方の日本の短期国債の方の利回りはどうであろうか?上記の財務省HPを調べる限りだと、5月と6月に、6ヶ月国債の入札が行われている。その結果を見ると、利回りは以下のように変遷している。

6ヶ月国債(短期証券):0.231%(5月)→0.186%(6月)

つまり日本の場合はアメリカと違って、利回りが上昇していないどころか、むしろ利回りが落ちているわけですよ。アメリカよりも景気見通しが明るいにもかかわらず、リスクを避ける日本人気質が良くあらわれている例だなぁ。(笑)いずれにしても、「日本と米国の利回りの差がより開いた」事に注目して欲しい。6月5日の時点で、日米の6ヶ月国債の利回り差は0.185%程度で、ほぼダブルスコアの差がついたわけだ。

ここで、もし日本の6ヶ月国債を大量に所有していたら、みなさんどうしますかね?米国債の方が利回りを倍にもらえるのであれば、乗り換えてみたくなりません?(笑)もちろん、最終的に円に換金する際の為替レートリスクはあるものの、わずか6ヶ月間の為替レートの変動を考慮するだけなので、この利回り差は日本人投資家には魅力的に映ると思うんだよなぁ……。

という事で、おそらく6月5日(金)に大きく円安が進んだのは、「6ヶ月米国債を購入するために、円売りドル買いした日本人が結構いたんじゃないのかな?」と俺は思うわけですよ。

もし、6ヶ月日本国債から6ヶ月米国債に乗り換えた人がたくさんいるのなら、その分6ヶ月日本国債の需要が少なくなっているわけで、米国債の利回り上昇と連動して、そのうち日本国債も利回りが上昇するんじゃないかな?だとすると、日米国債の利回り差が縮小するだろうから、再び日本国債に戻る人が出てくるので、おそらくこの急激な円高も近いうちに元に戻ると推測できるわけですよ。


ただ、これってよくよく考えてみると、「金利の低い通貨」から「金利の高い通貨」へお金が流れるって事でなので、市場は儲けの匂いのするところへと場の動く事が推測できる。(笑)
あっ、なるほど。だから今はみんなが中国に投資したいわけか。確かに今の中国は、1年金利が5%台であって、しかも半固定レートなので、投資するにはうってつけの対象なんだよなぁ……。
posted by きらっち at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年06月06日

ラトビア こりゃヤバイんじゃないの?!

【ラトビア、3日の短期国債の入札で応札ゼロ】
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK029393420090604

【ラトビアの経済悪化問題、柔軟に対応する必要性認識=IMF】
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-38406820090605

【IMFとEUはラトビアへの追加融資に踏み込まず、通貨切り下げ懸念高まる】
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK847864520090605

俺としては、ラトビアが東欧の破綻国家第一号にならないのを祈るのみだけど、国債の応札結果が0(しかも長期国債じゃなく短期国債)って事は、誰もラトビア政府を信用してない状態でしょ?しかも2番目の記事を見る限り、IMFとEUはラトビアに融資する気は無さそうなので、こりゃもう本当にどこからもお金を借りれないわけですよ。一方で、ラトビアには返済期限の迫る国債やもろもろの借金があるわけで、どうするつもりなんだ?



【CIA The World Factbook(2007) External Debt 対外債務(対GDP比)】
http://www7.atwiki.jp/epolitics/pages/250.html

まずは、ラトビアの民間部門と政府部門を含めた対外債務がどの程度あるか見てみよう。上記のページより、2007年末の時点でGDP比で83.2%程度の外国からの借金がある。2007年のGDPが272億ドル程度なので、226億ドルの対外債務があるわけだ。(おそらく現在は債務額がもっと膨らんでいるはず)


そして今問題なのは、ラトビア国債の応札が0だったので、ラッツ(ラトビアの通貨単位)の資金調達源が絶たれてしまったわけですよ。

外貨建ての借金に関しては外貨準備高を消費すればいいので、しばらくはどうにかなるかもしれない。今どうにかしないといけないのは、ラッツ建ての借金なんだよね。さて、このまま行くと近いうちに国債によるラッツの調達ができなくなりそうなので、考えられそうな手段は以下の3つ。

@EUに泣き付いて融資してもらう
Aラッツをばんばん刷る
B外貨準備高を使ってラッツに換える

当然、良識ある国であればAはやらないので、@かBになると思うんだけど、果たしてEUはラトビアを助けるだけの余裕があるのかな?おそらく現実的な路線はBなんだよね。……となると、1ユーロでたくさんのラッツを換金できるように、ラトビアは通貨価値を思いっきり引き下げざるを得ないわけですよ。



latvia_foreign-reserves.jpg
さて、それじゃ実際のラトビアの外貨準備高を見てみようか。↑のグラフが、2008年1月〜2009年5月までのラトビアの外貨準備高である。これ見れば、非常にラトビアがやばいのは一目瞭然!2007年時点で対外債務が226億ドルあるにもかかわらず、2009年5月末の外貨準備高はわずか41億ドル。しかも、ラッツ調達のためにも外貨準備高を使わなくてはいけない状態なので、すでに「リーチ」がかかってるようなもんでしょ?!



latvia_balance-of-payment.jpg
であれば、直近でどのくらい外貨を稼げるのかな?と思ったので、次はラトビアの国際収支を見ていこう。上記の表が2008年第一四半期からのラトビアの国際収支である。
こっちを見ても、経常収支が赤字なので愕然とするばかり。2009年1Qでは経常収支が何とか黒字になっているけど、これは輸入減による貿易収支の改善が主な要因で、ラトビアがたくさん稼げるようになった事を示すものではない。
ラトビアは経常収支が赤字で、資本収支の方で稼ぐ状況ができてしまっていて、完全に外資頼みの経済である事がわかる。(当然、ラトビアは内需だけで一国の経済を支えられるわけではない。)
さらに状況が芳しくないのは、ここ最近では資本収支ですら黒字が確保できない状況に陥っているので、完全にラトビアは海外からも資金調達手段が無くなっている事がわかる。つまり、ラトビアはこれ以上外貨準備高も増やせる状況にないわけですよ。この状態でラッツを切り下げても、世界の需要減の影響ですぐに輸出が急に増える状況でない。その一方、通貨切り下げにより輸入額が急増するわけで、結局外貨準備高の消費スピードが上がるだけなのでは……。





さて、ラトビアの状況をまとめてみよう。

1.2007年末時点で、対外債務(ラッツ建て、外貨建て両方含む)が226億ドル
2.2009年5月末時点で、外貨準備高は41億ドル
3.国債の応札0で、ラッツ調達が不可能に。
4.外貨準備高の増加が見込めない。

ここから予想できるラトビアの最悪のシナリオは、ラッツの通貨価値を大幅に切り下げつつ、対外債務の返済のために外貨準備高をひたすら消費。輸入インフレの影響を伴いつつ、最終的に外貨準備高が尽きて、最後はデフォルト宣言ってところかな。


いやぁIMFは最終手段なので、EUの方で何とかしてやってくれないかなぁ……。東欧諸国がデフォルトすると、EU圏で連鎖倒産が起きないか非常に心配なんだけどなぁ。
posted by きらっち at 23:51| Comment(0) | TrackBack(1) | 経済

2009年06月04日

分母を上げる?それとも分子を下げる?

【政府の財政再建目標、GDPに対する債務残高比率に切り替え】
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090603-OYT1T00947.htm

ふむふむ。確かに、今のままだと政府が黒字になるのは相当先なので、プライマリーバランスで財政再建を議論できないもんなぁ。

さて、一体これがどういうニュースなのか説明しよう。今まで政府では「何とかして政府の赤字を減らしたい」と考えていて、具体的に数値目標を作って赤字削減に取り組んでいたんだ。どういう数値目標かというと、「プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化」といって、「政府の支出 − 政府の歳入(借金を除く)」を2011年度までにプラスにする事だったんだね。
ところがリーマンショックを機に、誰の目から見てもこの目標が達成不可能なのが明らかになって、今回新しい数値目標を作ろうとしているわけですよ。

今回の数値目標は、GDPに対する債務残高比率。つまり「国債発行残高/GDP」の値をできるだけ減らしていこうって事で、具体的な数値目標がいくつになるかはまだわからないけど、実はこの目標達成のためには以下の2つのアプローチのある事がわかる。

1.国債発行残高を減らす(分子を小さくする)
2.GDPを上げる(分母を大きくする)

まぁ、1.は国の借金がそのまま減るので、みんな意義はないと思うけど、2.に関しては「何で?」と思う人がいるかもしれない。確かに、2.は直接借金を減らす方法ではないのだけど、日本の借金の増え方よりも、経済規模が大きくなるスピードが速ければ、実質は借金の目減りが見込めるという事なんだよね。(自民党の上げ潮派の先生方は喜びそうな数値目標だなぁ。)



treasury_each-nation.jpg
そして、現状の「国債発行残高/GDP」の値はどのくらいかというと、約1.75(175%)なわけで、上記の画像の示した他国と比較すれば、日本は非常に高い数字になっている。この債務残高対GDP比のみを見ると、「ほら見ろ。他国に比べてこれだけ悪い数字が出てるという事は、近いうちに日本は破綻して円が紙切れになるぜ。」と思われる人もたくさんいるかもしれないけど、おそらくここしばらくの間、経済破綻は上記画像で上げた5国の中では日本が一番可能性が低いと思うよ。

そもそも経済破綻する場合、過去に経済破綻した国の例を考えると、以下の事が起こるだろうと推測される。
@通貨暴落
A国債の投売り
Bインフレ
ところが、日本の場合は@〜Bの起きる気配がまったくないわけですよ。

@に関しては、少なくともリーマンショック後においても、日本の経常収支がプラスである事(一時は赤字になった月もあったけど)、
豊富な外貨準備高の存在、GDPギャップに示される供給過剰なまでの生産能力があるわで、このようにお金を稼ぐ力があるうちは通貨暴落は起こらないわけですよ。

そしてAに関しても、国債の投売りの可能性もほぼ無いだろうと推測される。というのも、上記画像を見るとわかるけど、赤い枠の列「対外債務残高 対 国債発行残高比」は日本が一番小さく5.3%にしか過ぎない。つまり、日本国債を買っているのは94.7%が日本人なわけですよ。日本国内でドルや他国通貨を使えるのであれば、日本国債を投げ打ってでも他国通貨に換える事はできるだろうけど、今の日本では「こりゃ本格的に円はヤバイ!」と思っても、円以外使えないのだから日本国債を投売りするメリットがないよね。

Bも、まさにGDPギャップに示されるように、日本は世界で一番デフレを心配しなければいけない国なので、しばらくはインフレは起きないわけですよ。

このように@〜Bが起こりようも無いので、しばらくは日本経済の破綻は無い。



そういう観点で見ると上記で上げた国の中では、国内で目立った製造業が無いため金融で稼いでいたけれど、リーマンショックのせいで稼ぐ手段の無くなった「あの国」ですかね?Bはまだみたいだけど、「あの国」はすでに@が起きたし、国債の札割れを起こしていてAの兆候が見え始めてるわけだ。やはり、先進国で一番最初にIMF行きになると言われているだけある。(笑)
ただ、「債務残高 対 GDP比」を見ると、どの国も全然日本よりも数値は低いわけですよ。要は他国の状況と比べると、日本は自国内で国債を売り切れる状況がかなり特殊なんだよね。携帯電話マーケットだけでなく、国債マーケットも日本はガラパゴスなんだよなぁ。


という事で、今回一番言いたい事。
「GDPに対する債務残高比率」は、あくまで財政再建の指標にするのには良いと思うんだけど、「この数値そのものが財政破綻度を表しているわけではない」って事だね。おそらく日本の家計収支のみを考えても、GDPが今後も500兆円を維持できるなら、この値が200%程度になるまでは、家計流動純資産(およそ1000兆円)のみを考えても債務超過にはならないので確実に安心。固定資産まで入れた日本の純資産(2000兆円以上と言われている)で考えるならば、400%くらいまでは国債を発行しても債務超過にはならなさそうなんだよ。

とは言うものの、この不況が抜けたらすぐに政府の財政再建にとりかからなければいけないと、俺も思う。やはり日本人として、借金ってのは気持ち悪いんだよなぁ……。(笑)
posted by きらっち at 21:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月31日

住宅ローン シミュレーション結果を見て俺は興味無くなったわ

低金利の今が住宅やマンション購入のチャンスという話、最近よく聞くんだけど実際のところ住宅の額面金額を一括で支払うなんてなかなかない話で、大抵の人は住宅ローンで分割支払いする事になると思う。俺も将来、何かのきっかけで自分の家やマンションを購入する時の参考として、エクセルで住宅ローン支払いのシミュレーションをやってみた。



loan_simulation.jpg
上記が、固定利率3%で2000万円の住宅ローンを組み、2009年1月から月10万円(元利均等返済)の支払いをした場合のローン残高シミュレーション結果である。(2000万円じゃ都心のマンションは絶対無理だろうけど……)

余談だけど、最近であればフラット35とか、政府の住宅ローン減税なんかを使えばかなり低い利率でローンが組めるんだけど、とりあえずフラット35を参考に今の標準的な金利で固定利率を約3%としてみた。ちなみに、変動金利で減税を上手く組み合わせると、今は1%くらいの金利でいけそうなんだってね。

話を戻そう。さて、上記の表を見ると、住宅ローンを全部返済するまでに23年程度かかる事がわかる。しかも総支払額が2776万円という事で、最初の額面2000万円と比べると返済利率がかなりきいてるわけですよ。この値段だけみれば、何か凄い損したような気持ちにもなるんだけど、そこは「一括支払いの安さ」と「分割支払いでの負担軽減」を天秤にかけることになるわけなんだよね。

インフレになるのがわかっていれば、むしろ分割支払いしたくなるのだけど、世界の景気動向と日本国内の経済動向を考えれば、今後しばらくはデフレの心配をしなければいけないわけで、そうなるとなるべく一括支払うか、あるいは頭金をたくさん払いたい状況ではあるよね。
俺の感覚だと、わずか3%でこれだけ余分に払うのなら、一括で支払うか、一生賃貸マンションでもいいような気がしてきたよ……。(泣)


ちなみに、住宅ローン金利って、何に連動して上がったり下がったりしてるのかというと、変動金利は短期プライムレート、固定金利は長期プライムレートに連動してるらしい。過去のプライムレートは以下の日銀のHPに掲載されてるんだけど、バブルの頃に短期プライムレートが8%を超えてた事実が今となっては信じられないよなぁ……。

【長・短期プライムレート(主要行)の推移】
http://www.boj.or.jp/type/stat/dlong/fin_stat/rate/prime.htm




【おまけの変動金利考察】
ちなみに、変動金利の場合はいろいろと複雑なルールがあるらしく、金利が安いという理由だけで、制度を良く知らない人が変動金利を選ぶと後々非常に困ることになりそうなんだよね。俺が変動金利を勉強して、すぐに気づいた落とし穴は以下の通り。

@金利変動があっても月々の返済額は5年間変わらない。
基本的に変動金利は、半年毎に金利が見直される。ところが、金利が上がろうが下がろうが月々の返済額は最初の設定から5年間は変えられないわけですよ。金利が下がっている時はいいけど、金利が急に上昇したりした場合、下手すると金利上昇分の利子の支払いでいっぱいいっぱいになり、全然ローン残高が減らない事態が起こりうるわけだ。
銀行通帳だけ見れば、引き落とし金額が変わらないためにローン残高が減らない事に気づかない人もいるんじゃないかなぁ……。

A5年後の月々返済額は当初の設定の1.25倍まで
変動金利の場合は、5年毎に月々の返済額を再計算するわけだけど、再計算後の返済額は前返済額の1.25倍までとなっている。例えば、毎月10万円ローン返済していたのに金利上昇でローン残高が思ったより減らなくて、5年後に月々の返済額を再計算したら15万円だったとする。この時、次の5年間は月々15万円支払うのではなく12.5万円しか支払えないわけですよ。これも、銀行通帳見てるだけだとローン残高が減らないのに気づかないわけですよ。逆に、何でまたこんな1.25倍の上限ルールがあるんだかよくわからないのだが……。

Bローン最終月に残り金額を一括返済
Aを考えると、場合によっては最終月に相応のローン残高が残る可能性があるのだけど、当然支払期限を延期することはできないので、ローン返済の最終月には一括で全ローン残高を返済しなければならない。ぎりぎりでローン返済してる人にとっては、最終月の一括返済は非常にリスキーかもしれない。


まぁ、いずれにしても金利が下がってる分には心配しなくていいのだけど、金利上昇の局面を考えた場合でキツキツなローン返済を考えている人にとっては、絶対に固定金利の方をオススメしたい。
目の前の低い金利に釣られて変動金利を選ぶ人はくれぐれも要注意!
posted by きらっち at 21:42| Comment(2) | TrackBack(1) | 経済

2009年05月29日

来たるGMショック CDS発動でどうなる?!

【GM破綻、米政府「容認」 事前調整型で新提案】
http://www.asahi.com/car/news/TKY200905280378.html

やはり、GMもクライスラーと同様に、チャプター11行きですな。仮に今後債権者との調整がつくにせよ、新生GMが上手く行く保証はどこにも無いわけで、実際のところはまだまだ先行きの長い問題になるとは思う。
それよりGM破綻によるGMショックの影響の大きさが心配だわ。


GM社債を持っている投資家は、GM対象で340億ドルのCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を持っているらしい。さて、このCDSと言われる金融派生商品はこれから来るであろうGMショックで、リーマンショック以上の影響を及ぼすだろうと思われるので、今のうちに説明しておこう。

実際の例として、「CDSを売ったAIG」と「CDSを買った投資家」で考えてみる。CDSは、買った投資家が4半期毎にAIGへ一定の保険料を支払うものなんだけど、その代わり対象にしている会社が潰れると、AIGが投資家に相応額を支払う仕組みを持つ金融派生商品なんだ。つまりCDSという商品は、

○対象になっている会社が潰れれば、投資家が儲かりAIGが損をする。
○対象になっている会社が潰れなければ、AIGが儲かり投資家が損をする。

という仕組みになっているわけだ。もしGMが潰れた時にAIGが投資家へ支払う金額は、ISDA(国際スワップデリバティブ協会)で行われるオークションで決定する。また、4半期毎にAIGへ支払う保険料は金融工学の手法を用いて決められる。もちろん、CDSは株券や債券等と同様に他人に売る事もできる。


【「破産の方が得」 GM交渉期限切れ 債権者の思惑】
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090527/biz0905272303021-n1.htm

さて、CDSの仕組みはそんなところにして、何故GMの債務削減交渉が不調なのかを説明しよう。まずGMは、債権者に対してGM社債額の9割を削減させる代わりに、10%のGM株(その後、新提案として25%)と交換する案を提示していた。
つまり今後GMの経営が上手く行けば、削減したGM社債の額面よりも
GM株価が高くなるわけだけど、債権者の方は今後のGM株価に期待するよりも、GMを破産させてCDSの方でAIGからお金を支払われる方が得だと思ってるわけですな。まさに上記の記事通り「破産の方が得」と債権者は思ってるんでしょう。



ちなみに、GM対象のCDSはGM債権者以外でもたくさんに人が所有している。GM対象のCDSがどの程度発行されているのかわからないけど、リーマンブラザーズ対象のCDS発行金額よりも10倍以上あると見られていて、GMが破綻したらCDS発行元(実際はAIGのみでなく、様々な金融機関)がどれだけ損するのか想像がつかないわけですよ。
ちなみに、リーマンブラザーズ対象のCDSでは、↓の清算が行われれて、1000億ドル(10兆円)単位のお金が動くことになったわけだ。(実際は、債券との相殺分もあってもっと少ないだろうけど。)

【リーマンのCDS清算値は8.625%に、推定保証支払い額は3650億ドル】
http://www.worldtimes.co.jp/news/bus/kiji/2008-10-13T221735Z_01_NOOTR_RTRMDNC_0_JAPAN-342666-1.html

おそらくAIGは、金融再生法を使ってアメリカ国民の税金からCDS支払いの原資を出させるつもりだろうけど、ざくっと見積もってこの10倍以上もGM対象のCDSが発行されてる前提で、清算価値をどのくらいで想定してるんだろうか?



市場はGM破綻を織り込み済みとはいえ、金融や実体経済に多大な影響があると思われる。果たして、GMショックがリーマンショック以上の影響が出てくるのかどうか、今後の動きを注視したい。
posted by きらっち at 05:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月27日

中国狙いのプチバブルか?

【鉄鉱石、前年度より33%値下げ 新日鉄と英大手が合意】
http://www.asahi.com/business/update/0526/TKY200905260302.html

【自動車用鋼材、1割超下げ 新日鉄とトヨタ合意】
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090527AT1C2600B26052009.html

鉄鉱石が安くなるらしい。しかし、面白いもので鉄鋼の原料になる鉄鉱石は33%の値下げにもかかわらず、自動車用の鉄鋼は1割超下げにしかならないんだね。新日鉄で鉄鉱石を加工してトヨタに卸すのだろうけど、こりゃボロイ儲けになるんだろうなぁ……。(笑)
果たして、自動車を購入する俺達にはどれだけ値下げが利いてくるのだろうか?何せ自動車もいろいろな部品からできているので、鉄鉱石が33%安くなったところでほとんど最終価格には影響がないのかもしれない……。

ところで鉄鉱石価格が下落したって事は、おそらく鉄鋼生産量が落ちているからだと思うんだけど、実際に世界の鉄鋼生産の現状をちょっと調べてみた。



world_crude-steel_prodauction.jpg
上記グラフが、2008年1月からの世界の粗鋼生産量をあらわしている。リーマンショック前は1億2千万トン程度の生産があったのに、物の数ヶ月で8千万トンにまで生産量が急減。そりゃ最盛期の2/3まで生産量が落ちれば甚大な影響があるだろうなぁ。
一応、12月で生産量の底を抜けたみたいで、今は一進一退の状態で緩やかな回復をしているところみたい。このタイミングで鉄鉱石の値段が落ちる影響をどう考えて良いのかわからないけど、少なくとも鉄鉱石を輸出してる資源国(オーストラリア、ブラジル、インド等)は相当痛いんじゃないの?オーストラリアドルも、ブラジルレアルも、インドルピーもここ1,2カ月で通貨価値を10%〜20%程度上げている事から、そろそろ反転下落の時期なのかもしれない。



【中国 4月鉄鉱石輸入 3カ月連続最高】
http://www.business-i.jp/news/bb-page/news/200905140037a.nwc

【中国、鉄鋼を緊急減産 各社に政府命令「余剰生産能力3割」】
http://www.nikkei.co.jp/china/news/index.aspx?n=AS2M15014%2018052009

そして中国も今回は相当損したよね。鉄鉱石価格が高い時期にたくさん輸入してしまい、鉄鉱石価格の下落時に鉄鋼の減産命令が出たわけなので、かなり悔しい思いをしているのではないだろうか?おそらく中国は、鉄鉱石も鉄鋼もかなりの在庫を抱えてしまっただろうから、しばらくは在庫処理に勤しむ事になるだろうな。



ちょっと気になるのは、他の資源の値下げ動向なんだよな。金にしても、石油にしても、一部の資源で、ここ最近の価格が急騰しているものがあるので、「ひょっとしたら一部資源がプチバブルになっている可能性があるんじゃないか?」と思ってるんだけど、実際のところ果たしてどうだろうか?

リーマンショックで世界の投資家が資金を一旦引き上げたわけだけど、その資金が再びどこに向かったのか非常に興味深い。
posted by きらっち at 21:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月26日

日本経済の凄さの一つ

【対外純資産残高:世界一守る 07年比9.9%減】
http://mainichi.jp/select/biz/news/20090526dde007020059000c.html

今日は、財務省から平成20年末時点での対外資産負債残高が発表された。資産から負債を引いた対外純資産は、前年比で10%程度減少したとの事だけど、2007年末の時点で1$=110円、2008年末の時点で1$=90円程度であったわけで、ドルの価値が20%程度落ちた事を考慮すれば、「むしろ、よく-10%で収まったな」と俺なんかは思ってしまう。

とりあえず、今日はここ10年間の対外資産・対外負債の推移を見ながら、今後の日本がどのように対外純資産を増やしていけばいいか考察したい。



oj_assets_liability.jpg
上記が、日本の平成11年〜平成20年までの対外資産負債残高である。平成11年では、対外資産,対外負債が308兆円,223兆円であったが、平成20年では、519兆円,294兆円と対外資産と対外負債が順調に増えている事がわかる。なお、国際収支での「資産」は「日本人の海外資産購入額」で、「負債」は「外国人の日本資産購入額」の事である。

日本は世界一の対外純資産を維持し続けて、なおかつその純資産額も増え続けている。これが、ここ10年間日本の景気がそこまで良くなかったにもかかわらず円高が進んだ一因である事が推測される。
また、平成20年に関してはリーマンショックがきっかけで「円高により日本の対外資産が目減りした」&「外国人が日本の株を売り払った」というのが主な理由で、対外資産額も対外負債額も大幅に減少してしまったのだろう。いずれ世界金融がリーマンショック前の状態に戻れば、再び外国人が日本の株を買い出して、対外負債額もまた増えてくると思われる。

ここで問題にしたいのは、日本人が購入する対外資産についてなんですよ。というのも、本ブログで再三書いているように、長期的に見れば間違いなく円高ドル安&円高ユーロ安の流れは止められないと俺は思っているので、下手に対外資産を持つと価値が目減りするわけだ。なので、ずっと日本に住むつもりであれば、外貨預金とか外国株/外国債券はオススメできない。
おそらく、日本の証券会社とか銀行もそう思っているわけなので、今後は対外資産の「証券投資」は大きくは伸びないような気がする。一方で、海外会社の経営権獲得のための株購入に該当する「直接投資」は、今後かなりの伸びが期待できるんじゃないかな?いやいや、円高の大きなメリットは海外会社の買収ですよ。(笑)今後は、「直接投資」をどんどん増やして行く事が円高に沿ったビジネスモデルになるのではないでしょうか?


ところで、やはり為替レートに着目している人はたくさんいるみたいで、平成20年末の負債項目の中の現・預金が増えているのがわかるよね。これ、間違いなく外国人による外貨預金ですよ。自分の国の通貨価値が落ちると思って円で貯金してるわけだ。一方、資産の方の現・預金が減っているわけで、外貨預金していて円高を怖がる日本人がたくさんいるって事だよね。

そして、公的部門の純資産も順調に増え続けてるのに違和感を覚えない?「あんなに国債発行してるのに、何で純資産がプラスなの?」と思う人もいるのではないだろうか?日本政府の借金は対外的のものではなく、ほぼ全てが国内(日本人)からの借金なんですよ。つまり日本国債の所有者が日本人って事は、国債を投売りされる心配は無いわけで、当分の間は日本が破綻することはないと思うよ。


ちなみに上記記事によると、対外純資産2位は中国らしい。数年のうちに中国の対外純資産は日本を抜くかもしれないけど、いずれ中国も過少評価されてる元のレートを見直す時が来るわけで、その時は一体どれだけ元高になることやら……。
posted by きらっち at 22:55| Comment(0) | TrackBack(2) | 経済

2009年05月25日

さすがに0点は言いすぎじゃない?

【定額給付金はゼロ点 クルーグマン教授、与謝野財務相と対談】
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090525AT3S2401624052009.html

ははは、0点ですか。(笑)確かに、権威ある人がこんな事を言うと、「やっぱり定額給付金は効果がないのかな?」と思ってしまうのが、庶民の心情かもしれないけど、俺個人は決して0点とは思っていない。

クルーグマン教授が何に基づいて0点と判断したかわからないけど、定額給付金でどれだけ市場にお金が回ったかを考えると、おそらく半額以上が貯蓄に回ったのだと思う。おそらく、クルーグマン教授はこの点で評価して0点をつけたのだと思う。(ちなみに前回の地域振興券の時は、4割が貯蓄で6割が消費に回ったという報道がある。)


ただ、定額給付金の良いところは、給付後すぐに効果があらわれるわけで、これは他の景気刺激手段(公共事業や各種減税)よりも明らかに早いわけですよ。
公共事業にしたって、政府の補正予算が国会を通った後、実際に各省庁が予算執行に動くまでに相応の時間がかかるし、事業開始後すぐに全額お金が会社の方に振り込まれるわけではないしね。

しかも、今回のリーマンショックに起因する不況は、誰も想定しなかった程の物凄いペースで景気の坂を転がり落ちていったわけで、「とにかくすぐに効果の出る景気刺激策が必要だ」という事になれば、一つの手段として「定額給付金」というのもアリだったのではないでしょうか?
もっとも、定額給付金を盛り込んだ生活対策の閣議決定が2008年10月30日、国会を通ったのが2009年1月27日なわけで、何でこんな緊急事態にもかかわらず3ヶ月も時間が必要だったのか、そこら辺に関して自民党も民主党もよく考えてもらいたいのですが……。


個人的に景気刺激の「コストパフォーマンス」という意味では、定額給付金よりも各地域で発行されているプレミアム商品券の方が、(スピード的にも)よっぽど良いのではないかと思っているのだけど、↓の記事の通り、やはり制度の網をくぐって本来の趣旨と違う使い方をする奴が出て来るんだよなぁ。これも、各自治体の税金が原資になってるのに……。

【働かずとも…「地域商品券」抜け穴でボロ儲け方法!?】
http://www.zakzak.co.jp/top/200905/t2009051801_all.html



【おまけの考察】
ところで、外国製品や外国サービスを控えて自国製品や自国サービスを優遇する事を「保護主義」と言って、各国の批判対象になるわけじゃない?
ところが、プレミアム商品券なんてのはつまるところ、各自治体が自治体間での保護主義を進める施策なんだよね。国家間では非難の対象だけど、自治体間であれば何の問題にならないのだから不思議なもんだよなぁ……。
posted by きらっち at 19:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月20日

民間最終消費に見る心配性な民族性

【09年1―3月期GDP、15.2%減、過去最大の減少幅、内閣府】
http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20090520/154027/

今日、日本の2009年第1四半期(1月〜3月)の経済成長率が発表された。経済成長率であるGDPの前期比は-4.0%(年率換算で15.2%)となり、2期続けてとんでもない数字を日本ははじき出してしまったわけだ。前期は、外需に足を引っ張られていたけど、今期は内外需ともにGDP大幅ダウンに寄与してしまったとの事。

これまた面白いもので、金融に力を入れていたアメリカやイギリスよりも、ドイツや日本みたいな物作り国の方が経済成長率においてはダメージを受けてるんだよね。

という事で、今日はGDPの内訳に関する詳細データを公表した日本・アメリカ・韓国の第一四半期のGDPを見て、この3カ国が今後どうなるか考察してみたいと思う。



japan-us-korea_gdp.jpg
まず、この3国の2009年第1四半期のGDP内訳を上記の画像に示す。ここでは、それぞれの国ができるだけ同じ土台で比較できるように日米に関しては、
「GDP」=「民間最終消費」+「政府最終消費」+「住宅投資」+「設備投資」+「在庫増加」+「純輸出」
とする。なお、日本とアメリカに関して政府最終消費には公的固定資本形成(公共事業費)が含まれる。
韓国においては、公的固定資本形成は建設投資に含まれ、
「GDP」=「民間最終消費」+「政府最終消費」+「建設投資」+「設備投資」+「在庫増加」+「純輸出」
とする。このため、画像右のGDP各項目は日本とアメリカに適用され、韓国は画像左の各項目に従うものとする。また、3カ国全てに関して、在庫増加には民間部門・公的部門どちらも含んでいる。

「前期比」は、各項目別の前期比となっていて、寄与率はGDPの前期比のうちどの程度その項目が寄与しているかを表している。例えば、上記画像で日本の民間最終消費の寄与率が-0.6%だけど、これはGDP-4.0%のうち、民間最終需要が-0.6%分の減少を担っているという意味である。これらを踏まえた上で各国を分析してみよう。


【日本について】
とりあえず、GDP-4.0%のうち足を引っ張った大きな要因は「設備投資」と「純輸出」である事がわかる。まぁ、2008年第4四半期でも純輸出で足を引っ張っていたんだけど、海外の需要減はまだまだ続きそうなので、しばらくは輸出に期待できないと思われる。一方、輸出に比べて輸入の減少が緩やかなのも、純輸出が足を引っ張る要因になっている事がわかる。日本は高い物や付加価値のある物(自動車、機械、電気機器関係)を主な輸出品(※先の3項目で全輸出額の60%を占める)としている一方、日々の生活に必要な物(燃料や食料品)の輸入割合(※先の2項目で全輸入額の40%を占める)が高い。よって、今後も輸入額の急激な減少は見込めないので、純輸出の寄与率が大きく回復に向かうのはしばらくないような気がする。
(※:JETROのHP資料より http://www.jetro.go.jp/world/japan/stats/trade/excel/gaikyo2008.xls )

設備投資に関しては、関連する種々の指標(機械受注や鉱工業指数)
に下げ止まりの数字が見えてきたものもあるので、次の四半期は回復するんじゃないかな?そういえば次の四半期は、2008年度の2次補正が実行に移されるので政府最終消費が増えるだろうし、住宅ローン減税が開始されて住宅投資を後押しするし、高速道路1000円での観光効果や定額給付金等で民間最終消費にもかなり期待は持てそうなんだよな。上手くいけば、来期は一気にプラス成長になると思うんだけど、一番の不安要因は民間最終消費の中で大きな割合を占めている家計消費。マスコミが「日本経済はもうダメだ!」と炊きつけて、家計消費の回復を遅らせないかが心配だよ。(笑)


【アメリカについて】
この国の凄さは、やはりGDPの7割を占めている民間最終消費だと実感する。他の内需項目は全てマイナスであるにもかかわらず、民間最終消費が底割れを防ぐために頑張っている姿が浮き彫りになっているよね。リーマンショックから一季節が過ぎて、すぐに前期比プラスに戻せるアメリカ人の消費性に感心するよ。
サブプライムバブルに起因して、住宅投資が本調子に戻るのはもう少しかかると思うんだけど、アメリカの景気対策法(2年で7000億ドル)の実行で設備投資をどこまで取り戻せるんだろう?ちなみに、7000億ドルのうち3000億ドルが減税に当てられるので、やはり民間最終消費がアメリカのGDPを引っ張る事になるのが濃厚のような気がする。

そして、面白いのが純輸出。純輸出の寄与率増減がプラスに転じているのは、輸出が増えたからではなくて、輸出以上に輸入が急減して貿易赤字幅が縮小しているからである。そして、在庫増加も0.7%の寄与率が減少した。これは、在庫が減っていて今まで生産を止めてた商品が再び生産が始まるものがあるかもしれないという事で、来期のGDPにはプラスの影響があると思われる。

ただしアメリカは、今年に入ってから失業率が7.6%(1月)→8.9%(4月)に急増している。このまま失業率が増え続ければ、直接民間最終消費に響くし、デフレスパイラルに突入すれば失業率の増大と景気後退の悪循環から抜け出せなくなる。GMの行方にもよるけど、当面はここ数ヶ月がアメリカ経済(つまりは世界経済)の勝負どころだと思うんだよな。ここでGMが潰れて再生の見込みが立たなくなったり、アメリカの景気が息切れしたりすると、それこそ世界経済の二番底が来そうだよなぁ……。



【韓国について】
実は、韓国のGDP内訳が一番興味深い。というのも、韓国は昨年9月以降「デフォルトするんじゃないか?」とあれだけ言われていて、2008年の第4四半期の経済成長率は年率換算で-20%と、シャレにならない数字が出てたにもかかわらず、今期のGDPはまさかのプラス。「おぉ、韓国復活か?!」と思ってよく詳細を見てみると、「輸入激減による純輸出の寄与率増1.54%」と「在庫増加の寄与率減-2.24%」が非常に目を引くところ。
どういう事かと言うと、韓国は昨年、(特に)リーマンショック以降に急速にウォンが暴落してしまった。この時、海外の人から見れば韓国からの輸出品は安くなる。一方、韓国の人から見れば輸出品を作るために輸入する原材料は高くなる。よって、韓国の会社は原材料の輸入を抑えて、既存の在庫品をとにかく輸出してたのではないだろうか?ここ数ヶ月、韓国の輸入減による貿易黒字拡大はそういう意味で合点がいく。もしそうだとすると、近いうちに韓国は在庫が尽きて輸入を大幅に増やすときが来るはずで、この時に外貨が十分になければウォンをドルに変えなければならないので、ウォン安が進むんじゃないかなと思う。さらに、ドルに変えた分ウォンの消費が抑えられるために、民間消費支出と設備投資が減少するのではないかと俺は予想する。来期(4月〜6月)か来々期(7月〜9月)辺りになれば縮小成長も終わるだろうから、この頃が韓国の正念場になるんじゃないだろうか?

2009年第1四半期の韓国は、縮小成長の戦略が上手く行き過ぎたような感じがするんだよね。もちろん、韓国政府の経済対策が始まっているので政府最終支出と建設投資で持ちこたえている側面もあるのだが、予想外に民間最終支出もプラスだったので、これには正直びっくりしている。



という事で、俺の来期の経済成長率(年率換算値)をざっくりと予想すると、「日本は急回復」「アメリカは若干の回復」「韓国は横ばいか若干の悪化」ってところじゃないでしょうか?
しっかしアメリカも韓国も、自国に構造的な経済問題を抱えているにもかかわらず、民間最終消費がプラスなんだよね。「日本人がどれだけ心配性なのか」という事を表しているデータかもしれません。(笑)
posted by きらっち at 22:12| Comment(8) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月15日

結局日本が買うのかよ?!

【中国が“米国債離れ”か…オバマ大統領、財政再建訴える】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20090515-OYT1T00313.htm

【中国 純輸出激減の誤算】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/29097565.html

「米国債の一番のお得意様は、今年2月より貿易黒字が急減中」と先日の↑のエントリーで書いたわけだけど、貿易は国際通貨(ドル)で決済してるんだから、貿易黒字が減少すればそりゃ中国も米国債も買わなくなるよね。って事で、「米国債の利回りがぼちぼち上がっているのではないだろうか?」と思い、2008年8月からの日々の米国債利回りを調べたみた。


us-treasury200808-200905.jpg
上記が2008年8月(リーマンショック前)から2009年5月までの、それぞれの米国債利回りをあらわしている。これを見れば、いつリーマンショックが起きたか一目瞭然!短期の米国債の利回りが急激に落ちた時期がまさにリーマンショックが起こった時ですよ。とはいえ、長期米国債の利回りはそこまで落ちたわけではないところを見ると、利回りが落ちた直接の要因は政策金利を下げた事だと思うけどね。実際にアメリカの政策金利は、2008年8月に2%だったのが12月で0.5%まで落ちてるんだ。

リーマンショック後、世界の投資家が資金を引き上げたのだけど、他の金融商品を買うよりは、相対的に安全な米国債に結局は人気が集まり、米国債の利回りは年末にかけて落ち続けた。ところが2009年になって潮目が変わったのか、今度は利回りが上がり始めたわけでアメリカも焦ったと思う。しかも、2月に入って中国の貿易黒字が急減したので、今までみたいに中国が米国債を購入し続ける事に期待ができないわけだけど、3月半ばくらいに何故か長期国債の利回りが急減した時期があるんだよね……。これは何故だろう?どこかの誰が米国債を大量に購入したのか、はたまた大量の米国債の償還期限を迎えたのか?


【米国債 果たしてどこまで売りさばける?】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/28518176.html

いずれにしてもアメリカは、米国債を売り続けないと財源の確保ができない。↑のエントリーでも書いたけど、ここ最近は1週間で1兆円近くの米国債を発行してきたわけで、利回りがちょっとでも高くなるだけで、アメリカ政府は相当の財政負担を強いられる事になる。

当然、今後下落するドル建ての米国債を中国や日本が買い続ける事に難色を示すのは間違いない(それでも日本が米国債を買い続ける可能性もあるけど)。アメリカが本当になりふり構わずに財源を確保しようとするなら、円建て米国債しか手はないんじゃないのかなぁ……。円建て米国債なら円高も阻止できるだろうし、輸出企業にとっても悪い話じゃないでしょ?いやぁ、そのうち経団連あたりが円建て米国債についていろいろ言ってきそうな気もするなぁ……。(笑)

一方で元建て米国債は、半固定為替レートと中国体制をネックになるので、実現性としてはかなり低いような気がする。中国が「ドル/元の完全変動相場で構わない」というなら話は別だけど、今の水準から比較して超元高になるのが見えているので、中国は絶対にやりたがらないだろうな。



まぁ、まだ致命的な利回りではないので、しばらくは大丈夫だと思うけど、今後も米国債を発行するしかないアメリカはどうやって乗り切るつもりなのだろうか?!
posted by きらっち at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月14日

日本は輸出依存国じゃないのになぁ……

【経常黒字半減 日本成長戦略描けず】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20090514-OYT8T00334.htm

この記事だけ読んでしまうと、「日本経済はもうダメか?」と思えるのだけど、この記事は「国際収支」(日本と外国とのお金のやり取り)の視点で考察しているに過ぎず、日本経済全体の視点に立っていないところを留意する必要がある。

それでは日本経済全体の視点で見た場合、日本はどういう成長戦略を描けれるのだろうか?ということで、今日はGDPに着目し日本経済の行く末を考察する。


まず、GDP(Gross Domestic Product)(国内総生産)について説明しよう。GDPとは、国内で産出された付加価値額の合計の事で、平たく言えば日本がどれだけお金を稼げたかを表す指標である。GDPはいろいろな定義式があるのだけど、一般的に以下の式で表される。

「GDP」=「民間最終消費支出」+「民間住宅投資」+「民間企業設備投資」+「在庫変動」+「政府最終消費支出」+「公的固定資本形成」+「純輸出」

ここで、「公的固定資本形成」は何だかよくわからない単語ではあるのだが、一言で書くと「政府の公共事業費」の事である。さて、それではここ数年の日本の名目GDPの推移を見ていこう。


japan_1994-2008GDP.jpg
上記が1994年〜2008年の日本の名目GDPとその内訳である。実はこの統計を読むと、一般的な日本人の思い浮かべる「日本のビジネスモデル」が実際は随分異なっている事に気づかされるだろう。

まず、最近の日本のGDPは、概ね500兆円くらいで推移している。そのうちの60%程度が「民間最終消費支出」で構成されていて、日本の経済活動の主役が、一般家計を含めた民間部門である事がわかる。

ちょっと話が脇道にそれるが、政府が支出する項目「政府最終支出」と「公的固定資本形成」を見てみよう。「政府最終支出」は年々増加しているけど、「公的固定資本形成」は逆に年々減ってきているのがわかるだろう。ところが両者を足した値について調べると、ほとんど変化のない事がわかる。
公共事業が年々減ってきているという事実は皆さんわかっているとは思うけど、それを踏まえた上で、この事実をどう取れば良いのだろうか?それは、みなさん自身で考えていただきたい。(笑)


japan_2007-2008GDPchart.jpg
それでは話を戻そう。上記は2007年と2008年の名目GDP内訳を円グラフで示したものである。2007年はリーマンショック前で、日本の貿易が正常だった頃。2008年はリーマンショックが起こり、輸出産業が壊滅的な打撃を受けた後のものと認識して欲しい。

この円グラフから「あれ?」と思った人がいるだろう。そう、GDPに対する純輸出(貿易収支)の割合は、2007年でさえわずか1.67%でしかないわけだ。つまり、GDPのうち98.33%は日本の内需で構成されている事になる。
一般の日本人は、「日本は貿易で稼ぐ国なんだ」というイメージを
強く持っているのだろうけど、実はリーマンショックの起こる前の年ですら、貿易黒字がGDPに占める割合はわずか1.67%に過ぎないわけですよ。


それを踏まえた上で、最初にあげた読売新聞の記事を読んでみると、「そもそも日本の成長戦略は輸出にあるわけじゃないんじゃないの?」と気づけるわけですよ。GDPが示す日本の成長戦略は、明らかに内需(特に民間最終消費支出)を刺激することであって、外需の方ではないことがわかる。

とはいうものの、輸出製品を作るための設備投資等々は内需分にカウントされるため、実際のところはGDPの中でどれだけ外需関係の物が含まれているかわからない。ただ、「純輸出」ではなく日本の「輸出」のGDP比が16%程度(韓国、中国、ドイツが40%程度)である事から、他の「貿易国」と言われる国と比較すると、外需の落ち込みで内需を下振れさせる影響力は全然小さいと推測できる。
(この辺については、また後日に詳細を書く予定)


読売新聞だけじゃないけど、日本経済全体の行方を書きたければ、それなりの指標を持ち出して議論して欲しいのだけど、国際収支だけで日本経済全体の話をしないで欲しいよなぁ。(笑)
国際収支だけで日本経済を語るということは、「日本経済は完全に外国依存です」と認めてるようなものだけど、実はそうじゃないんですよ。



【おまけの考察】
上記の読売新聞記事では、「所得収支も2008年度は減少に転じてしまった」と書いてあるけど、そもそもGDPには所得収支がカウントされていなくて、帳簿外収入の状態なわけですよ。もし、この所得収支をカウントしたら、10兆円以上が収支としてカウントされるため、もはやその国全体の経済力をあらわす指標として所得収支を無視するわけにはいかないんじゃないかなぁ……。ということで、今後は世界中でGDPに取得収支を含んだGNI(Gross National Income)(国民総所得)を使う方が、日本にとっては有利に働くような気がする。
ただし、外資依存で成長している国には不利に働くので、果たしてGNIが、全世界でGDPに取って代われる指標になるのかどうかは微妙かもしれない。
posted by きらっち at 22:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月13日

日立製作所 膿出し決算?!

【日立今期予想 4期連続赤字 改革加速も見えぬ再建シナリオ】
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200905130022a.nwc

営業赤字が7800億円って、これまた凄い話になってるけど、このうち2000億円程度は営業外損失で一時的な損失なわけで、実際のところの日立の経営状態はどうなんだろう?という事で、今日は日立の2001年度〜2008年度までのバランスシートと部門毎の営業利益率に着目して考察したい。


hitachi_balance-sheets.jpg
まずは、上記のバランスシートから見ていこう。上記は2001年から2008年までのバランスシートの推移を示したものである。このバランスシートを見ると、日立は2003年度に「有形固定資産」が激減してるし、2002年度に「退職給付債務」「その他の包括損益」が激増していた事がわかる。おそらくこの時期は、失われた10年の末期であるため、工場等の不動産の売却し、年金運用損失の穴埋めを行い、さらに従業員のリストラで大なたを振るったものと推測できる。

2003年度〜2007年度にかけては資金繰りの大きな変化は読み取れないけれど、2008年になって、いくつかの大きな変化があらわれた。

@「現金及び現金等価物」が突然増加
「その他流動資産」が同じオーダーで減少しているところを見ると、リーマンショックを機に危ない金融商品とか有価証券等々を売り払って、使い勝手の良い現金に換金したのではないかと推測できる。そもそも資金繰りが悪くなると、一番使い勝手の良い現金に換えるのは、経営の常套手段でもあるしね。

A「資本」が急激に減少
この1年間で資本が1兆円以上も減少していて、この結果2008年度の自己資本率は11.2%となった。銀行とか証券会社みたいに、キャッシュフローのある金融関連会社なら自己資本率が数%ってのは珍しくないけど、大手の総合電機メーカーであれば、自己資本率11.2%っていうのは結構低いと思われる。もっとも、バランスシートと会社の発表を見る限り今回の資本減少の大きなの要因は、「為替差益」「リストラ費用」っぽいので、今年度はある程度持ち直すんじゃないのかな?
ちょっと心配なのが、(上記の画像には詳細がでていないけど)「その他の包括利益累計額」の中の「年金債務調整額」が4000億円の損失を計上している事。年金運用でとんでもない事になっていなければいいのだけど……。

B「短期借入金」が激増
短期借入金は毎年コンスタントに1兆円〜1.1兆円の範囲内で計上してたのに、2008年度だけ突然1.5兆円に増えているので、資金繰りが上手くいっていない事を強く示唆していると思われる。

さらに、ここ数年間を通して気になるのが、失われた10年から抜けた2004年度以降も「棚卸資産」(在庫)が増え続けていること。通常、景気が良くなれば在庫が減ってもおかしくないのに、日立の場合は在庫が増え続けているのに疑問を感じる。幹部は「景気の良いうちに在庫を減らせ」と、指示しなかったのだろうか?

いずれにしても、日立は今後何らかの手段で資金調達すると思うんだけど、どういう選択を取るのか、俺的には非常に興味深い。公的資金を受けるとなると自由な経営が出来なくなるし、株の増資なんかをしたら協力的でない株主が増える可能性があるし、社債を発行するにしてもこのバランスシートじゃ利回りが気になるところだし、どの方法も一長一短があるからなぁ……。



hitachi_segment-rate.jpg
さて、全体的な話はこれくらいにして、日立の部門別の営業利益率を見ていこう。上記のグラフは、2001年からの日立の各部門営業利益率を表している。「営業利益率=営業利益/売上高」なわけだが、これを見ると日立の足を引っ張っているのは、「デジタルメディア・民生機器」部門であるのがはっきりわかる。長期的に営業利益率が落ち続けていて、まだ底が見えない段階なので、この部門の再生は非常に大変なような気がするなぁ。俺的には、この部門が何故ずば抜けて儲けが得られないのかわからないのだけど、何が原因なんだろう?

一方で光の見えるのは、「情報通信システム」部門である事がわかる。収益率の高いこの部門に、ある程度社内投資を集約した方が良いのではないかと思うのだけど、いかんせん日立って「全ての分野を満遍なく着実に」ってイメージじゃない?そこは、ライバルの東芝とは違うので「分野を絞って一点突破!」みたいな発想が日立にできるどうか……。



おそらく、内部留保金をこれだけ取り崩し、通期損失が7800億円になるなんてしばらくないとは思うけど、こういう機会に一気に膿を出すほうが長期的には日立にとっては良いような気がする。すでに今年度での復活は厳しいような感じもするけど、来年度以降に期待したい。
posted by きらっち at 19:20| Comment(0) | TrackBack(1) | 経済

2009年05月12日

中国 純輸出激減の誤算

【中国、4月の輸出22.6%減 成長けん引の外需低迷】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090512AT2M1201P12052009.html

【中国貿易統計こうみる:輸出が予想以上に減少】
http://jp.reuters.com/article/economicIndicatorsAndComments/idJPnJS847220320090512

記事のタイトルだけ読むと、あたかも中国の輸出額が減っているように見えるけど、22.6%減っていうのは前月比ではなく「前年同月比」なんだよね。こちらとしては、あくまで輸出額そのものを発表して欲しいのだけど、何故か中国が表に出す数字は「前年同月比」なんだよね。
という事で、さっき中国税関総署のHPを読み漁り、何とか輸出額と輸入額そのもののデータを探してきたので、これを見て最近の中国の貿易動向について考察してみよう。


china_trade.jpg
上記のグラフが、2008年1月から2009年4月の中国の輸出額・輸入額・純輸出額(輸出額-輸入額)を示したものである。中国の税関が発表している数字なので、ここでの輸出は「物」の輸出のみで「サービス」の輸出は含まれていないのだろうけど、中国貿易の参考にはなるだろう。
さて、これを見ると中国は、昨年9月のリーマンショックまでは順調に輸出・輸入・純輸出の全てが増えていたことがわかる。特に、純輸出(貿易黒字)が増えていた事で外貨準備高が激増する主要因だったと推定される。

ところが、昨年9月のリーマンショックを機に輸出と輸入が激減。面白いことに、輸入の方の減り方が急だったので、輸出が激減したにもかかわらず純輸出(貿易黒字)が過去最高を記録するという縮小成長の状態が4ヶ月ほど続く。しかし今年の2月に入って輸入減が止まり、しかも中国では旧正月と重なって生産と輸出が落ち込んだ事があり、純輸出が辛うじてマイナスを免れる状態にまで落ち込んでしまう。3月と4月になり輸出額は1月水準まで戻したものの、V字型のような輸出回復にはならなさそうな気配が濃厚。2月の旧正月要因を取り除けば、中国の輸出はL字型回復を辿ってるっぽいな。

中国は今後、輸出回復局面に向かうとすれば、輸出より前に原材料を輸入を増加させなければならないため、ここ数ヶ月は純輸出額も低迷するものと思われる。これにより、外貨準備高も今までのように激増しないために、中国は短期的に米国債を買い支えられなくなるんじゃないのかな?



中国はGDPに対して純輸出が9.3%(2007年統計 http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/stat_01/ )を占めているので、今の状況は悶絶モノだと思う。しかも今年の2月から純輸出が激減していて、もう数ヶ月はこの状況が続く事が濃厚。この純輸出激減はGDPを相当に押し下げる要因になるはずで、よほど内需を刺激しない限り、中国政府の掲げる2009年経済成長率の目標8%は、かなり厳しいとしか思えないけどなぁ……。
posted by きらっち at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月11日

フィアットは自動車業界の救世主になれるのか?

【伊フィアット、自動車再編「台風の目」に】
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20090510AT1D0900C09052009.html

【攻めるフィアット、異色のCEO 再建の経験が自信の源】
http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY200905090269.html

クライスラーを買収したフィアットが、矢継ぎ早に新たな買収と提携を打ち出している。GMの欧州部門やGM子会社でドイツのオペルまで念頭に置いているらしい。わずか自動車販売200万台の会社が、一気に600万台のシェアまで伸ばせるんだから、チャンスと言えばチャンスなんだろうけど、フィアットはそれだけ買収できる資金力があるんだろうか?
という事で、今日はフィアットのバランスシートを調べてみたので、これでフィアットの財政事情を垣間見てみよう。


FIAT_balance-sheet.jpg
さて、上記がフィアットのバランスシートである。この表は、2005年〜2008年のバランスシートをおっかけたものである。これを見ると、2005年〜2006年にかけて一気に資産/負債・資本が激増しており、この時期フィアットに大事件があったものと推測される。「一体、何があったんだ?」と思って調べたら、以下の出来事があったわけね。

【フィアットとGMが和解 2100億円支払いで】
http://www.47news.jp/CN/200502/CN2005021401000054.html

これを機に、フィアットはGMとの違約金を投資につぎ込んでいた事が、2006年の資産の投資を見ることでわかる。さらに、同時期に「非流動財務負債」と「流動財務負債」も激増したところを見ると、GMとの違約金をキャッシュフロー源として、投資だけではなく新車開発とか本業にも力を入れてたんじゃないかな?

そして驚くべきが、2006年〜2008年にかけて、利益剰余金が10倍になったこと。さらに、この数年間で自己資本も着々と増えているわけだし、企業の業績としては確かに良好に見えなくはない。ただし、それでも2008年の利益剰余金が30億ユーロ(4000億円)程度なので、いくら格安とはいえ、クライスラーだけでなく、GM欧州部門やオペルを自前の資金だけじゃ買収できないような気がするんだけど、どうするつもりなんだろう?EUの融資や政府保証の枠があるとはいえ、この買収劇が非常に危険な賭けに見えるのは俺だけか?

そして若干気になるのが、2008年は流動負債額が流動資産額を上回っていてフィアットの資金繰りが悪化している兆候が見えるんだよなぁ。2006年は、GMの違約金という後ろ盾で流動負債が激増したのは納得できるけど、2008年は、流動資産の方が激減してるのが気になる。そして、2008年に何故流動財務資産が急に0になったんだろうか……。

もう一つ致命的に気になる点が、「現金・現金等価物」の少なさ。これは、2005年〜2008年を通して少ないのだが、フィアットくらいの規模の会社なのに50万ユーロ(6600万円)しかないのに驚き!つまり、全資産(156億ユーロ)に占める現金・現金等価物のパーセンテージは、わずか0.03%に過ぎないわけで、これは一体どういう事?そもそも欧米の会社は日本とは商習慣も違うので、このくらいの数字が当たり前なんだろうか?ちなみに、トヨタの場合は全資産29兆円に対して、現金・現金等価物は2.44兆円ということで、8.4%程度は確保している。(2008年のトヨタ決算報告より http://www.toyota.co.jp/jp/ir/financial_results/2009/year_end/yousi.pdf )


こうやって、フィアットのバランスシートを見ていると「本当にクライスラーもGM欧州部門もドイツのオペルも買収できるのか?!」と疑問を持たざるを得ない。自動車需要が急減する中、他社の買収によって、これ以上生産能力を増やす勝算はどこにあるんだろうか?一方の日本の自動車業界は嵐が過ぎ去るのをひたすら我慢して待つ戦略を取っているわけで、果たしてどちらの戦略が正解であるか数年後にはわかるだろう。
これまた今後の展開が非常に興味深い。
posted by きらっち at 19:44| Comment(8) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月05日

ロシア 資源国の憂鬱

【ロシア、10年ぶりに外債発行か 一転して借金財政に】
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/090417/fnc0904172307016-n1.htm

今はどこの国も経済的困難に直面しているけど、ロシア経済も例外ではない。リーマンショック以来、外国資本がロシアから逃げ出し始めてルーブル安に歯止めがかからなくなり、通貨価値維持のために2000億ドルくらい為替介入して、大きく外貨準備高を減らしてしまった。
上記の記事は、おそらく国の財政資源としてではなく、外貨調達の目的で外債発行を計画してるのだろうけど、ロシアは今後数年間程度、外貨準備高を消費し続ける事を覚悟しているのだと思う。まぁまだ4000億ドル程度の外貨準備高を持っているし、デフォルトすることはないと思うけどね。


russia_ballance-of-payments.jpg
さて、それじゃ今日は現在のロシアの対外経済状況を見ていこう。上記は、2006年の第1四半期〜2009年の第1四半期までのロシアの国際収支である。(2009年の第1四半期は、確定値ではなく速報値)経常収支を見る限り、ロシアはここ数年の原油高とルーブル高の恩恵を受けて、貿易収支の大幅な黒字化が経常収支を引っ張っていた事がわかる。しかしながら、去年9月のリーマンショック以降に貿易黒字が半減してしまい、経常収支も大幅に減少してしまう。
また、資本収支に関しても外国人のロシア株売りが進んだ事によって証券投資が大幅に赤字に転落。さらに外国からの貸し剥がし等によって、その他投資も桁違いの赤字に転落。これにより、ロシアの民間企業は外貨の資金繰りが危機的状況になり、ルーブル暴落が始まったわけだ。


russia_exchange_rate.jpg
上記が、1年程度前から現在までのルーブル/ドルレートをあらわしている。ルーブルは2009年に入って、通貨価値下落のスピードが加速してしまい、1$=37ルーブル程度まで暴落してしまった。ロシア政府は、昨年からそれ以上通貨価値を落とさないために、外貨準備高を使ってルーブルの通貨価値を維持するための為替介入を続けた。
2月末辺りから、ルーブルの暴落に歯止めがかかったみたいだけど、ロシア経済が上向く経済指標があまり見つからないし、2009年の第1四半期は引き続き外貨準備高の減少が止まっていないため、しばらく1$=30ルーブル近辺をうろつくんじゃないかな?



ところで、マクロ経済的にはロシアの問題は2点あるような気がする。

1.「資源に依存しすぎた経済」

【ロシア;貿易統計 輸出(品目別)】
http://www.jetro.go.jp/world/russia_cis/ru/stat_03/

1998年のデフォルト以来、ロシアは石油に依存した一点突破のビジネスモデルを採用してしまった。それは、↑のサイトのロシア輸出品目別の輸出額を見れば一目瞭然。輸出額の65%程度を石油や天然ガス関係で占めていて、資源バブルが弾けた上に需要の低減した現在は相当苦しい事が推測される。ロシアは、石油価格が再び高騰するか、根本的なビジネスモデルを変えていかない限り、かつてのイケイケ状態に戻るのは不可能のような気がする。


2.「得意産業じゃない自国産業を保護」

【【クレムリン経済学】自動車産業瀕死状態 低品質に無力】
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/090504/erp0905041633003-n1.htm

元々ロシアは、物作りの得意な国ではないので、車産業も高品質な外国自動車に市場で勝てないにもかかわらず、自国の自動車産業を保護するために公的資金を注入したり、外車に対する輸入税をかけ続けていた。
俺が思うに上記の国内自動車産業の保護は、税金や税法を使って一時的に効果を上げるのに過ぎず、「長期的にロシアの自動車産業をどうやって成長軌道に乗せていくか」という視点がまったくないように思える。元々ロシアの自動車産業は世界に対して競争力が無いわけで、一時しのぎの施策を実行しても、すぐに息切れするのが目に見えるけどなぁ……。

それに、まだまだあれだけの外貨準備高があるのであれば、「外国資本との提携」とか「外国の自動車メーカーに対する工場誘致等々、国内の自動車産業のレベルをコツコツ積み上げられる施策を実行する方が、長期的にはロシアのためになるとは思うのだけど……。(とは言いつつ、インドのタタ自動車が台頭すればロシアの自動車産業は壊滅状態に追い込まれそうな気もするが……)



やはり「ロシアの資源産業」や「アイスランドの金融産業」みたいな一点突破のビジネスモデルは、成長の前提となる仮定が崩れだすと非常に難しくなる。一点突破が悪いとは思わないけど、一点突破でもうダメだとわかった時に、いろいろな意味でその国の真価が問われるよなぁ……。
posted by きらっち at 11:21| Comment(1) | TrackBack(0) | 経済

2009年05月01日

格付け会社やマスコミの矛盾

この前のニュースステーションで、相も変わらず「これ以上の国債発行で日本は破綻するのでは?」と言っていた。ご存知のように、日本の国債発行残高は800兆円を超えていて、今年度の一般会計は補正予算を入れると100兆円程度。しかも、そのうち44兆円は国債で賄われるわけで、「一般家計なら、800万円の借金がありながら、100万円の年収のうち40万円が更なる借金によるもの」と例えられるわけだが、実はこれ、明らかに日本財政を簡略化しすぎた例えで、視聴者にミスリードを誘うものであり、もうちょっと詳しく説明したほうがいいと思うんだよな。


そもそも日本が破綻するというのは、「国債残高」で決める話ではなく「円の価値が暴落するかどうか」ですよ。当然の事ながら、破綻する国の通貨価値は上昇するわけはない。ところが、円は他の通貨と比較しても長期的に円高が進んでいるわけですよ。



「じゃあ増え続ける国債はどう説明するんだ?」と言われるかもしれないけど、リスクのある国債はドル建てにしたり利回りを高くしないと売れないわけで、国債の安全度を示す指標「利回り」に着目して、直近の、日本、米国、韓国の長期国債(30年物)の比較をしてみよう。

【30年利付国債(第29回)の入札結果について】
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/nyusatu/2008/resul071.htm

【直近の米国債 入札結果】
http://www.treasurydirect.gov/RI/OFNtebnd

【20年物の韓国債の入札結果(3/23/2009)】
http://english.mofe.go.kr/news/bonds_view.php?sect=bonds&pmode=&cat=&sn=6362&page=1&SK=ALL&SW=

なるほど。これを見ると利回りの差は一目瞭然!日本(30年物)1.9%、米国(30年物)3.5%、韓国(20年物)5.0%となっていて、日本の長期国債の利回りが群を抜いて低い事がわかる。しかも、日本の国債は募集額の3倍以上の応募額があるわけで、札割れ(応募額が募集額に満たない事)を起こしている韓国債とは全然状況が異なるわけだ。

しかも、日本国債は全発行額に対して95%の保有者が日本人。米国債や韓国債は相当量を外国人が購入してるので、いざとなれば投売りをされて、ドルやウォンが紙切れになるリスクがあるわけですよ。ところが円建ての日本国債を所有している日本人は、普段から円で決済してるため、国債を投げ売って円を紙切れにさせても、その後は国内でドルやユーロで生活できるわけではない。
要は、自国内で国債を売り切っている限り日本が破綻する事は無いわけですよ。まぁ利回りを見ても、日本国債は世界で一番安全な国債としか思えないんだが……。

その一方で韓国債にいたっては、利回りも高いし、ドル建て債券もあるし、ウォンも暴落してるし、札割れまで起こしているので、
今後がちょっと心配ではあるなぁ……。


private-asset_goverment-debt.jpg
「でも、いつまでも日本人が日本国債を買い続けられないのでは?」と思う人もいるだろう。これに反論できるのが、上記のグラフである。これは、日本の「民間の金融純資産」と「政府の金融純負債」を示したものであり、年々その差が大きくなっているのがわかると思う。つまり、政府の国債発行額よりも民間の金融純資産の増加スピードが速いので、今のペースであれば、理論的には今後も日本人が日本国債を買い続けられそうなんですよ。


という事で、俺の疑問は以下の3つ。

@長期的に円高が進んでいる日本が何故破綻すると言えるのか?
A世界で最も低利回り国債を発行している日本が何故破綻すると言えるのか?
B今後も日本国債を日本で売り切れそうなのに、何故日本が破綻すると言えるのか?

少なくとも、この疑問を明確に反論した上で「だから日本は破綻する」というマスコミを俺は聞いたことが無い。確かに日本破綻論の方がウケを取れるかもしれないけど、大した考察もせず国債発行額が増加するだけで日本破綻論を展開するのではなく、きちんとした裏づけのある数字で議論してもらいたい。

同じく、アメリカの格付け会社が日本国債の格付けをAAに落として
米国債はそのまま最上位AAAに据え置いているが、利回り・購入層・今後の発行計画/通貨価値等々を考慮すると、米国債の方が日本国債より危ないはずなのに、何故日本国債の格付けの方が低いランクなんだろうか?格付け会社も海外の会社なので、日本国債を高いランクに据え置くよりも低いランクに据え置くほうが、彼らのビジネスには都合が良いのだろうと推測する。
日本のお年寄りがこういうミスリード情報で、相当騙されてるような気がするよ。(笑)
posted by きらっち at 19:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年04月29日

GMとクライスラー、そして米国自動車業界の行方

【クライスラーの債務7割削減、フィアットの出方焦点に】
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/eu/20090428D2M2804228.html

【米GM:「捨て身の再建策」 債務圧縮に銀行団反発】
http://mainichi.jp/select/world/news/20090429ddm008020040000c.html

いよいよ、GMとクライスラーの経営再建に向けた協議が大詰めを迎えてきた。クライスラーはこのままフィアットに合意を取り付けて、破綻を免れるのだろうか?そしてGMの方は、銀行団を説き伏せる事ができるのだろうか?
各社の報道を見る限り、どうもGMの方が状況は厳しそうな感じがするけど、リーマンブラザーズ破綻の時と同じで、最後までどうなるかわからないので、ここ数日は固唾を呑んで彼らの行方を見守ることになりそうだ。GMとクライスラーに部品を卸している日本の中小企業も、気が気ではないのでしょうか?



さて、今日はGMとクライスラーの経営状況を分析する一つの指標として、「在庫日数の状況」を見てみよう。通常は、連結財務諸表等の資料を見るのもいいのだけど、そういう類の物は半期に一度しか公表されないので、月単位で公表されている「在庫日数の状況」でその他の自動車会社と比較してみる。

us-car_days-suplly.jpg

上記の画像は、アメリカの主要な自動車会社の在庫日数状況を示している。実際の統計では、もっとたくさんの会社があるのだけど、ここでは「BMW」「クライスラー」「FORD」「GM」「ヒュンダイ」「日産」「スズキ」「トヨタ」の8社に絞ってみた。

さて、この画像を見るとGMの在庫日数が2008年9月のリーマンショック以降で急増しているのがわかる。その他の会社も、リーマンショック以降に在庫日数が増加したのだけど、ここ数ヶ月でリーマンショック以前の水準に戻している事が読み取れるだろう。
GMがリーマンショック以前の水準に戻せないのは、需要が減っているにもかかわらず生産台数をそこまで減少させてないものと思われる。これは、GM労働組合の力が強いので、急には生産台数を落とせないという内部事情があるかもしれない。アメリカ政府から公的資金を受けているにもかかわらず、相変わらず在庫を増やしている昨年末の状況だけを見ると、そりゃアメリカ国民から「GMを潰せ!」という声が上がるのもわかる気がする。

【米GM:6工場追加閉鎖 ブランド廃止も−−再建見直し案】
http://mainichi.jp/select/world/news/20090428ddm002020032000c.html

○工場:47→34に削減
○従業員:6万1千人→4万人に削減
○販売店:6246→3605に削減

一応GMの方も「これではまずい」と思ったのか、上記程度の事業縮小は労組と合意できたらしいけど、果たして債券の株式化で、素直に銀行団が「うん」と言うのかどうなのか……。
その点、クライスラーの在庫日数は3月と4月で随分減らしたのが、グラフから読み取れる。果たしてこのまま在庫日数を減らせるのかどうか興味深い。この数字を見て、フィアットが「これなら大丈夫」と思ってくれればいいんだけど。

車みたいな耐久消費財は、乗り続けてればそのうち壊れるわけなので、そのうち販売台数の減少に歯止めがかかるのは間違いない。今は、従業員をクビにして生産調整をしてるかもしれないけど、そのうち在庫日数が少なくなって再び増産する日が来るはずなんだ。実際、スズキの在庫日数は4月に入って急減して30日程度になってしまっている。おそらく、アメリカのスズキは今頃増産体制に入っているのではないだろうか?
このように、どの自動車会社も2009年に入っての在庫調整が上手く行っているので、アメリカの自動車会社の景気は、あと2,3ヶ月くらいで底を打つんじゃないのかな?と、俺は予測している。




【おまけの考察】
上記グラフの「ヒュンダイ」は、韓国の自動車メーカー。このヒュンダイ、実はすごい販売方法でアメリカ市場では注目の的になっている。

【ヒュンダイの新プログラム…米国新車販売に革命か!?】
http://response.jp/issue/2009/0224/article120856_1.html

↑この販売方法、何がスゴイかって、「購入から1年以内に失業や病気で支払いが困難になった場合、車両を返却すればローン残債が免除される仕組み」との事。これで本当に儲けが出るのか半信半疑なんだけど、このおかげでヒュンダイはアメリカ市場で販売実績が伸びているらしい。
今は、そりゃ販売実績は伸びるだろうけど、もう半年くらいして車を返却したりローンから逃げる人がどれだけ出てくるかなんだよな。さぁ、ヒュンダイの快進撃はどこまで続くのか?
posted by きらっち at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年04月24日

この不良資産額をどう乗り切るんだ?

【独、銀行の不良資産処理へ 最大8530億ユーロ 受け皿機関を計画】
http://www.business-i.jp/news/bb-page/news/200904230083a.nwc

【英金融支援1兆4000億ポンドに GDP匹敵、さらなる追加懸念】
http://www.business-i.jp/news/bb-page/news/200904240021a.nwc

ドイツの不良資産が8530億ユーロ(約109兆円)で、イギリスも1兆4000億ポンド(約198兆円)か。特にドイツはユーロ圏の中では物作りで稼ぎ頭的な存在って事で、相対的に他のユーロ圏の国よりも金融依存ではなかったにもかかわらず、GDP(およそ2兆5000億ユーロ)の30%もの不良資産が出たわけか。こりゃ、他のユーロ圏の国の不良資産はGDP比で50%どころじゃ済みそうも無いな。
イギリスの不良資産額にいたってはGDP比100%なわけで、すでに「お前はもう死んでいる」状態と思うのは、俺だけかな?(笑)

この数字がどのくらい絶望的かというと、日本の「失われた10年」の時の不良資産額が100兆円で、GDP(500兆円)の20%程度だったわけですよ。ところが失われた10年では幸運だった事に、輸出産業へのダメージが少なかったので、ここをテコにして日本経済は何とか乗り切れたけど、イギリスなんて金融産業がメインの国なんだから、GDPとほぼ同額の不良資産を一体どうやってこれから返済するつもりなんだろう?ユーロ圏の国の方もまともな政府支出すらしないで、これだけの不良資産を抱えた不況を乗り切れるんだろうか?




【クライスラー、来週にも破産法適用申請を…米財務省指示か】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20090424-OYT1T00403.htm

【GM、債務1000億円「返済せず」 6月1日期限分、CFO表明】
http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt244/20090423AS2M2301223042009.html

さらに、この状況でGMとクライスラーにも「リーチ」がかけられている。クライスラーは来週中、GMもGW明けくらいにアメリカ政府のチャプター11の決断が下されるとの事で、いよいよ「その時」が迫っているのかもしれない。ここでは記事を上げなかったけど、特にGMは在庫調整のために最大2〜3ヶ月間休業する工場も出てくるらしい。「休業中にそのままチャプター11になったら」と思うと、従業員は非常に複雑だよなぁ……。



さらにさらに、実は日本の方もうかうかしていられなくて、GW明けに大企業の昨年度決算報告が次々に行われるので、自動車業界や電機業界の赤字額が発表されるわけだ。千億円単位の赤字の出る企業がたくさん出るだろうし、3月は何とか乗り切ったけど決算報告で株価が急落してドロップアウトする会社が出てこないか心配だよ。



世界中でこれだけ悪材料が重なっているので、GW明けに昨年9月以来の金融危機第二幕が起きるんじゃないかと非常に心配。何かあれば、ますます円高が進むぞ……。
posted by きらっち at 22:25| Comment(1) | TrackBack(0) | 経済

2009年04月23日

韓国 輸出で儲からない加工貿易国

【輸出の付加価値創出効果が低下の一途、韓銀調査】
http://tinyurl.com/cy58zn

記事中では、「輸出の付加価値誘発係数は2000年が0.633、2005年が0.617、2006年が0.609と下落を続けている。」とあるが、韓国だけのデータを見てもこの数字が大きいのか小さいのかよくわからないので、日本の数字と比較してみよう。

s-korea_added_value_indice.jpg
上記画像は、2006年韓国と2007年日本の産業連関表から導出した最終需要別粗付加価値誘発係数を表している。図の見方を説明すると、各部門において1の需要があった時に、国内産業がどの程度の付加価値をつけられるかを示している。
具体的に説明しよう。例えば、道路を作るための公共事業(100億円で発注)を考えてみよう。この場合、政府が民間会社に道路整備の発注をかけるのだが、受注した会社の方では人を雇ったり、道路を作るためのアスファルトを購入したりと、その会社以外にも波及効果を伴いながら、いろいろなお金が動く。ここで、日本の一般政府消費支出の最終需要別粗付加価値誘発係数が0.94であることから、公共事業に支出するお金のうち、国内産業には100億円のうち94億円の経済効果が回り、国外産業には6億円が回ることになる。

さて、ここでグラフをよく見てみると、韓国の最終需要別粗付加価値誘発係数は全ての分野にわたって日本よりも低い事がわかる。つまり、何をやるにしても日本より輸入依存度の高い事がわかる。さらに、「輸出」に当たっては日本とはかなり差が開いてしまっていて、最終需要別粗付加価値誘発係数が0.6程度と極度に低い。つまり、韓国の輸出品が売れても、その額の4割は海外にお金が流れてしまうわけだ。しかも、韓国の代表的な輸出産業は、IT製品や自動車なわけで、その核心部品や技術など、相応の部分を日本に依存している。海外に流れる4割の全てが日本に来ているわけではないけれど、韓国は「量」で稼がない限り輸出ではそんなに儲けが出ない構造になっている一方、「量」で稼げば稼ぐほど日本も儲かるようになってると推測される。

しかも上記の記事によれば、輸出における最終需要別粗付加価値誘発係数が年々落ちているとの事。輸入依存度を下げるためには、核心部品や技術等々を自国で生産・開発しなければいけないため、その辺りの先行投資をするべきだと思うんだけど、それだけの余力が韓国にあるのかな?
韓国は日本ほど内需がしっかりしていないので、今後もしばらくは加工貿易で儲けるしかないのだが、長期的な韓国経済を考えると、輸入依存度が年々上がっているのは非常に頭の痛い話だと思う。



【おまけ】

【アジアの加工貿易国の受難】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/28029394.html

実は先日書いた↑のエントリーで、「韓国は輸出で稼ぐという意味においては、非常に効率の悪い貿易をしているのではないか?」と俺は書いてたわけだけど、まさに今日のエントリーは、その事をさらなる数字で裏付けてしまったわけですな。

韓国は国の産業構造を変えない限り、「今のビジネスモデルでは経済成長に限界があるのではないか?」と俺には思えてしまうのだが……。
posted by きらっち at 21:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年04月22日

円やドルが紙切れになる可能性

【紙幣を大増刷すると紙くずになる? 「中央銀行の国債購入」の行方】
http://moneyzine.jp/article/detail/145426

アメリカやイギリスの中央銀行の量的緩和について、「インフレ」を懸念する声が出てくるようになったわけか。特に、アメリカは3000億ドル(30兆円)分の長期米国債をFRBが買い入れるわけで、「ドルが紙くずになるのでは?」と考える人が増えるのもわかる。


そういえば、昨日のテレビタックルでも同じような話で大竹まことさんが「日本も今回の経済危機対策で10兆円の国債を刷るけど、インフレは大丈夫なのか?」と発言して、評論家の宮崎哲弥さんが「日本の需給ギャップは20兆円あるから、あの程度の国債発行ではインフレにはならない」というような趣旨で反論したところ、大竹まことさんの納得できない表情が印象的だった。大竹まことさんが納得できないのもよくわかる。俺達の受けてきた教育では、「国債大量発行」→「通貨価値が暴落してインフレ」と教え込まれてきただけで、それ以上の知識を教えてもらってはいない。
しかし基本的に「通貨」と「物」の価値関係は、「需要」と「供給」のバランスによって決まるものなので、そこから考えればアメリカも日本もすぐにインフレになるとは考えにくい。今日はその辺を考察するために、まずはかつてハイパーインフレに見舞われた国についてその背景を探ってみる。



ここからは、実際ハイパーインフレに見舞われた戦後のドイツや今のジンバブエについて書く。もちろん、彼らは最終的に国の財政が立ち行かなくなって紙幣印刷をしたわけだが、そもそものインフレの最初の原因は、「供給力激減」にあったわけで「紙幣印刷が最初にありき」だったわけではない。

どういう事か説明しよう。第一次世界大戦末期、イギリスやアメリカの連合軍はドイツの生産拠点であるルール工業地域を重点的に爆撃し、ルール工業地域の生産財も労働者にも大きなダメージを与えた。その直後に戦争は終わるのだが、ルール工業地域が壊滅状態になった事によりドイツの主産業である工業生産の供給能力が一気に落ちた。これにより需要と供給のバランスが崩れてドイツ国内のインフレが始まった。ドイツは戦後復興と重なり、供給能力は急には上げられない一方で、需要が急激に伸びていった事によりインフレが止まらなくなり、政府財政もインフレに対応するために国債をどんどん発行してしまう。この結果、通貨価値がどんどん落ちハイパーインフレのスパイラルにはまってしまったわけだ。

今のジンバブエも状況は似ていて、ムガベ大統領の「白人農場の強制収用」「外国資本の国外追い出し」等々の外国人の排他政策により、短期間で一気に国内産業の供給能力を落としてしまった。その結果、やはり需要と供給のバランスが崩れてインフレになってしまったわけだ。その後、ジンバブエ財政はインフレに対応できなくなり、紙幣を刷り続ける事によりハイパーインフレに陥ってしまった。

さて、ドイツとジンバブエの例が示す事は、そもそものインフレの原因は供給能力の激減にあったわけで、お金をじゃんじゃん刷り続けたのはインフレの結果として後からついてきたものなんだな。



という事で、今回の世界恐慌ではどう考えればいいか?別に供給能力が激減したわけでもなく、単純に「需要」が激減しただけなんですよ。上記の宮崎哲弥さんの言うように、今の日本は20兆円程度の需要が足りないわけで、むしろこの需要を政府支出によって埋めることが、正常な日本経済に戻る近道とも取れる。
もし政府支出をしなくても、市場の調整機能により、会社がたくさん潰れて需要供給バランスがそのうち釣り合うとは思うのだけど、それだと相当数の失業者が出るだろうし、デフレも進むだろうから、今は国債発行してでも政府支出をした方が、むしろ弱者救済になるのではないかと俺も最近思い始めてきた。

ちなみに、日本やアメリカの需給ギャップについては以下の記事が参考になる。

【デフレ阻止へ次の一手を】
http://www.business-i.jp/news/special-page/kishacolumn/200904170002o.nwc

【需給ギャップが語る「失われる時間」】
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20090407/191261/
(↑の記事から逆算すると、今年のアメリカの需給ギャップは9000億ドル(90兆円)程度。)



ところが問題は、これ以上の政府支出の出来ない国(国債の発行できない国)がたくさんあり、そういう国は今の現状になす術がないわけですよ。日本政府は、850兆円の国債を発行しているにもかかわらず、膨大な日本の家計金融資産(1400兆円)を資本に、さらなる国債を国内だけで売り切ることはできるけど、こんなにお金を持っている国は世界で日本だけなんだな。これ以上国債を発行できない国(特にマーストリヒト条約がネックで、国債発行も量的緩和もできないユーロ圏の国々)は当面の間、デフレと失業率の上昇に相当苦しめられると思う。

日本やアメリカに関しては、需給ギャップ以上の財政支出をしない事から、直近のインフレは無いように思う。ただし、供給能力の変化が極めて少ないレアメタル等の希少資源(流通量が固定なもの)の類は、今後値段の上がる可能性はありそうな気がするなぁ。




【おまけの考察】

世界的にデフレ傾向が懸念される中、インフレで困っている国があるそうだ。それが、以下の記事↓。

【ショッピングカートの「悲鳴」  じゃがいも1つ1000ウォン】
http://tinyurl.com/c9hggn

韓国経済の興味深いところは、需要激減によりデフレ傾向になるはずなのに、何故かインフレ傾向を示している事なんだよね。

もちろん韓国も需要減の影響を受けているのだが、ウォン暴落によって輸入インフレが起きていると推測される。これは、日本と比較すると非常にわかりやすい。日本は、「需要減」と「円高」が重なる事により、国内産業も輸入品もデフレ傾向に拍車がかかりそうなのに対して、韓国は、「需要減」のデフレよりも「ウォン暴落」による輸入品の価格高騰の方が市民に与える影響が大きいのではと推測される。
韓国では不況とインフレが同時に進むスタグフレーションに陥っていると推測され、今後どうなるのか非常に興味深い。
posted by きらっち at 02:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済