【人は減る一方で仕事は増えるわけで……】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/30329179.html今日は、↑のエントリーで予告した公務員数に対するGDP考察の第一話です。↑のエントリーでは、「国会議員」「地方議会議院」「自衛隊」みたいな公務員の中でも特殊な地位の人(いわゆる特別職)の数は含まれていなかったんだよね。実際にこの辺の分析をしようと思うと、そういう特別職も含めた公務員数が必要になるなと思い、いろいろ調べていたら内閣府の方で良い資料がありました。
【内閣府経済社会総合研究所 公務員数の国際比較に関する調査】
http://www.esri.go.jp/jp/archive/hou/hou030/hou021.htmlという事で、↑のページには自衛隊や議員さん、さらには特殊法人や政府系企業の職員数を含んだ公務員数が掲載されており、しかも日本だけでなく、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカの数値も出ているので、これをベースに考えていく事にしよう。

さて、まずは各国の公務員数から見ていこう。↑が先進5カ国の公務員・政府系企業の職員数です。2004年や2005年時点の数字なので最新版ではないのですが、公務員の数というものは、劇的に急増したり急減するものではないので、とりあえずはこの時点の物で考えたとしても、ある程度今の現状を反映しているものと思う。
さて、この表を見ると日本の公務員数は、日本より人口の少ないフランスやドイツよりも少ない事がわかります。もともと「日本は公務員の数は少ない」とは言われているものの、確かにこの数字はそれを裏付けるものとなっている。
そして、次に各国の2004年/2005年当時の経済規模(GDP)を見ていきましょう。ちなみに、この手の調査を行おうとすると、ネックになるのが各国の物価の違いなんだよな。話を単純化して、思いっきり簡単な例を出そう。(正しい経済学とは、多少ズレますがそこはご勘弁を)
例えば、日本でキャベツ10個を100円で売る。この時日本のGDPは10個×100円=1000円がカウントされる。一方、アメリカでキャベツ10個を0.5ドル(50セント)で売る。この時のアメリカのGDPには10個×0.5ドル=5ドルのGDPがカウントされるわけだ。
今、円ドルの為替レートが1$=100円だったとしたら、日本だと10$、アメリカだと5$分のGDPがカウントされる事になり、同じ行為をするにしてもGDPへのカウントが不公平になるわけです。
これを是正するために、通常の円ドル為替レートではなく「購買力平価」に基づくレートがよく使われる。購買力平価とは、世界中で「同じ物は同じ価格」(一物一価)で購入できるとする考え方で、上記のキャベツの例だと1$=50円となるわけだけど、そうすれば日本の場合もアメリカの場合も同じ5$分のGDPがカウントされるわけです。これによって、購買力平価で見た場合は1$=100円ではなく、1$=50円でドル換算されるので物価の影響をほぼ排除できるわけです。
当然、キャベツだけで購買力平価によるレートの算出はできないので、通常は各国において、↓のサイトに示すとおり、様々な物やサービスの価格を統計を取って購買力平価によるレート算出を行っているんだよね。
【国際比較プログラム(ICP)への参加】(参考リンク)
http://www.stat.go.jp/info/meetings/icp/index.htmちなみに通常の為替レートと購買力平価によるレートが異なる理由は、国家間での通貨取引は「物やサービス」のみでなく「投資」や「投機」の目的もあるため、各国の金利や利子・利回り等々の違いも為替レートに寄与する事が一つ。また、貿易されない財やサービスが存在すること等々が理由として考えられると思う。
さて、前置きが長くなってしまったけど、この購買力平価でドル換算して、物価変動を除去した各国の実質GDPを↓にあげよう。

さて、OECDの資料では、「固定資本形成」を「公的固定資本形成」と「民間固定資本形成(住宅投資、設備投資)」に分けていないので、政府の公共事業も一緒にカウントされてしまっている。よって、実際に政府が支出した分のGDPは完全にはわからないのだが、後日にそれがわかる資料が手に入れば修正します。
まずは今回、購買力平価によるドル換算で「GDP」=「民間最終消費」+「政府最終消費」+「総固定資本形成」+「在庫変動等」+「純輸出」として、それぞれを掲載しました。
そして、いよいよ先進5カ国の「国家公務員一人当たりのGDP」「地方公務員一人当たりのGDP」「全公務員一人当たりの政府最終消費」を見てみよう。ちなみに「政府最終消費」については、国の支出と地方自治体の支出が混ざっているので、国家公務員一人当たりと地方公務員一人当たりで分けて考えることはしない。また、前述のように公的資本形成は「総固定資本形成」に含まれるので、各国ともに公共事業に対する支出分は政府最終消費には含まれていない。ただ、公的資本形成のGDPに対する割合が、日本だけむちゃくちゃ多いということでもないような気がするので、大きな傾向を見る上ではこれでも良いかと思う。

さて、↑の結果を見ると、日本の「国家公務員一人当たりのGDP=(GDP/国家公務員数)」は他国よりも大きいことがわかる。「全公務員一人当たりのGDP」「全公務員一人当たりの政府最終消費」は、他国と比較しても大きな違いの無いところを見ると、「日本の国家公務員の数は、経済規模に対して少ない」という事がわかる。ふむふむ、すでに十分小さくて効率的な政府じゃないですか!
それぞれの国によって、国の仕事/地方の仕事/民間の仕事の仕分けに対する考え方は違うだろうけど、この数字だけ見ると国家公務員の給料を減らすならまだしも、「これ以上国家公務員の数を減らす合理的な理由はどこにあるんだ?」と思ってしまうけどなぁ。
さて、「地方公務員一人当たりのGDP」はドイツと同等程度である。これについてどう考えるかだけど、日本は他の欧米諸国と比べると地方分権が進んでいないと言われる。つまり、他国では地方自治体の行う事業を日本では国が行っているケースが多いはずなんだ。という事は、その分だけ地方公務員の人数が少なくなっていなければならないので、必然的に日本の「地方公務員一人当たりのGDP」は他国より大きい数字になっているべきなんだよね。ところが現実はそうなってはいないわけで、この辺りはいろいろと議論の余地があるんじゃないかな?今後も、もうちょっと詳しい資料や数字を調べてみようと思ってるんだけど、いずれ「経済規模から考える適正な地方公務員数」を定量的に考えてみようと思う。
そして、どうにもならないのはアメリカですな。(笑)アメリカは「全公務員一人当たりのGDP」「全公務員一人当たりの政府最終消費」が他国と比べるとかなり低いのがわかる。これはつまり、「GDPや政府最終消費に対して公務員の数が多すぎる」って事をあらわしているわけですよ。(特に地方公務員!)
ただ、「アメリカは公務員の給料が他国より安い」という話もあるので、「コストパフォーマンス」で考えると、また違う結論が出てくるのかもしれない。今後の考察として、「GDP/政府最終支出」と何らかの「コストパフォーマンス(公務員の給料)」の指標を合わせて、国家比較をやるのも面白いかもしれません。
今後も、不定期でこのシリーズについては書こうと思ってます。
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