2009年06月29日

7月22日東京でも太陽が欠ける!

【国立天文台 2009年7月22日(水)皆既日食の情報】
http://www.nao.ac.jp/phenomena/20090722/index.html

今回のチャンスを逃すと、日本での次の皆既日食は2035年になるわけなんだよね。そもそも今回は、皆既日食が観測できる範囲が広い上に、観測時間も長くなるので、俺らが生きている間では最良の皆既日食観測条件が揃っているとの事。


ところで、何でまた日食とか月食ってのは、頻繁に起こらないのだろうか?地球が太陽の周りを公転し、月が地球の周りを公転しているのであれば、月の影が地球にかかるなんて事は、それこそ割と起こり得そうな感じがする。と、中学生だった当時の俺は思い、理科の先生に質問した覚えがあるのだが、その先生もわからなかったらしく、結局上手くごまかされた記憶がある。まぁ俺のエピソードはどうでもいいんだけど(笑)、とりあえず今日は日食がレアなのは何故かについて紹介する。


moon_position.jpg
まず、日食の起こる必要条件として「新月」である事は用意に推測できる。ご存知の通り、月は満ち欠け周期は29.53日程度であり、新月になるときは、上記の画像の通り地球と月と太陽が同じ方向に来る時であるので、これは部分日食であろうが、皆既日食であろうが、とにかく新月の時じゃないと日食が起こらない。ただ、29.53日に一回は新月になるのであって、日食になるための異なる必要条件が他にあるのは容易に想像がつく。


次の必要条件は、「地球の公転軌道」と「月の公転軌道」が同一平面状になる時である。これは月の地球に対する公転軌道面が、地球の太陽に対する公転軌道面から最大で5度程度傾くことによる。
moon-earth_orbit-difference.jpg
上記の画像を見て欲しい。この画像の上半分の通り、地球は太陽を公転していて、月が地球に対して公転している。これは公転の様子を上から見た図ではあるんだけど、下半分の図は、地球の公転軸を横から見た図である。ここでは大げさに書いているんだけど、実は月の公転軌道は、地球の公転軌道から5度ずれているわけですよ。地球と月の距離は384400km程度あるのだけど、この5度のズレと38万kmの距離がかなり日食をレアにしているわけで、それを模式的に表したのが以下の図である。
moon-earth_orbital-condition.jpg
↑の画像の通り、地球がAやCの位置にいて、さらに新月の条件が重なると、月の公転軌道と地球の公転軌道が同一平面状に来るので、地球・月・太陽が同一直線状に並び日食の起こる事がわかる。しかしながら、地球が@やBの位置に来た時の新月は、月の公転軌道のズレに起因して、地球・月・太陽が同一直線状に並ばない。よって、この時は月の影が地球にかからないので、日食にはならないわけですよ。
つまり、地球がAやCの位置にいて、なおかつ新月時にしか日食は起きないわけだ。そして、当然AやCの状況は、少なくとも一年に2回起こる。さらに、地球がズバリAやCぴったりの位置でなくとも、AやCに近い位置で新月を迎える場合は、部分日食になる。よって、AとCの両サイド近い位置で新月を迎えられるなら、上手くいけば一年に4回くらい部分日食の観測チャンスがありそうなんだよね。

とは言うものの、日本で観測できるかどうかという事になると、そりゃなかなかそんな観測チャンスはないわけですよ。部分日食ならまだしも、次の皆既日食は2035年9月2日だしね。俺、まだ2035年であれば生きているとは思うけど、可能であれば今回夏休み取ってトカラ列島まで行きたいところなんだけど、現実としては職場の屋上で太陽メガネで空を見てるんだろうな。(笑)
posted by きらっち at 20:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学

2009年06月14日

情報理論 誤り訂正符号とは?!

今日は、インターネットや携帯電話に代表されるデジタル通信の要である「誤り訂正符号」(通信路符号化)について説明しよう。

さて、デジタル通信においては、テキストや音声や画像も全て「0」「1」に置き換えられたデータを通信している。例えば、テキストデータの場合、
「a」→「01100001」
「A」→「01000001」
というように、半角アルファベット文字は8個の「0」「1」によって、一意に符号(01データ)が割り当てられている。(この割り当て規則をASCIIコードといって、↓の通りになっている)

【ASCII文字コード】
http://e-words.jp/p/r-ascii.html



さて、今「a」の文字をインターネットで乙が甲に送信したとしよう。この時、実際の通信では「01100001」の符号が甲のPCへと伝送される。ところが、通信の途中でノイズが混じってしまい、甲に届いた符号が「01000001」だったとする。すると、↓の画像をのように、甲のPCでは「a」ではなくて「A」を受信したことになるわけだ。
noise_exsample.jpg
このように通信ノイズがあった時、送信した符号が相手に正しく伝わらないので、非常に困るわけだ。しかも、この手のノイズは(特に無線通信においては)結構あるわけで、ノイズを無視するわけにはいかない。となると、受信側はノイズのあることを前提として、受信符号から正しい符号に戻せるような仕組みが欲しい。
「そんな事できるのか?」と思う人がいるだろう。ところが、多少余計な「0」「1」を付加することにより、ノイズによって反転した「0」「1」を受信側で元に戻せるんですよ。


実際の例を示そう。ASCIIコードは、「0」「1」の数が8個と多いので、今は簡単のために
「a」→「0」
「A」→「1」
としよう。(以下、この規則は受信側もわかっているとする。)この時、「0」を送信して「1」を受信したとする。この時、受信側では正しい符号が「0」なのか「1」だったのかを判断できない。

ここで、送信側の方でもう1つ同じ「0」「1」を重ねるとして、
「a」→「00」
「A」→「11」
とする。ここで、「00」を送信して受信側で「01」だったとする。仮に、たかだか1個の「0」「1」しか反転しないとしても、この時受信側では「00」が「01」になったのか、「11」が「01」になったのか、まだわからない。ただし、ノイズによって反転した「0」「1」のある事だけは検出(誤り検出)できるが、正しい符号に戻すこと(誤り訂正)はできない。


さて、もう少し考えてみよう。
「a」→「000」
「A」→「111」
としよう。ここで「000」を送信して受信側で「010」だったとする。この時、仮に3つの「0」「1」のうち、一箇所しか反転しないとすれば、「010」は「000」だったと推測できる。この時は、誤り検出も誤り訂正もできるわけだ。この場合の概念図を以下に示す。
3bits_relation.jpg
↑の立方体は、「000」「001」「010」「011」「100」「101」「110」「111」の概念図を表している。この図では、立方体のそれぞれの頂点が各符号を表していて、辺でつながれたそれぞれ隣の頂点は一個の「0」「1」が反転している事をあらわしている。
ここで、「000」の隣接頂点「001」「010」「100」は、「000」から一個しか「0」「1」が反転していない。よって、たかだか1個の「0」「1」しか反転しないのであれば、この符号を受信した時に正しい符号が「000」であったことがわかる。
同じように、「111」の隣接頂点「011」「101」「110」を受信したのなら、正しい符号は「111」であった事がわかるだろう。
ただし、もし2つの「0」「1」が反転しているのであれば、受信符号の誤り検出はできるが、正しい符号への誤り訂正はできない。



この事を少し一般的に考えてみると、「誤り訂正」という概念は、以下のような集合図であらわせるわけだ。このように「000」と「111」で、1個の「0」「1」が反転した2つの集合に、共通部分がなければ誤り訂正が可能という事になる。
correction_code.jpg
問題は、今みたいに送るべき情報が「a」「A」の2つではなくて、数百万とか数千万みたいに非常に大きな数になった場合に、誤り訂正のために付加する符号をどう作るか?という事なんだよね。
実は、これは「巡回符号」「CRC符号」というようなアルゴリズムがすでに開発されているけど、話が非常に高度になるので興味のある方はそれぞれ調べてみてください。



いずれにしても、このような技術を使ってノイズで反転した「0」「1」を正しい符号に戻すことにより、多少電波や通信状態が悪かろうが、正しくメールやデジタルデータが相手に伝わるわけですよ。
いやぁ、誤り訂正符号の研究も数学を駆使することになるので、スゴイ面白そうなんだよねぇ。
posted by きらっち at 22:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学

2009年06月02日

それにしてもあっぱれ!

【16歳イラク移民少年、数学の歴史的難問解く=ベルヌーイ数を説明―スウェーデン】
http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_sci&k=20090529022448a

【この少年の写真入り記事(英語)】
http://www.thelocal.se/19710/20090528/

【スウェーデン ウプサラ大学ニュースリリース(英語)】
http://www.uu.se/news/news_item.php?typ=artikel&id=693

英語記事とアプサラ大学のニュースリリースを読む限り、時事通信の完全な飛ばし報道だったっぽいね。彼はウプサラ大学に招請されたわけじゃないし、彼がベルヌーイ数の一般式の第一発見者でもないじゃん?もう少しちゃんと裏を取って報道してくれよ。(笑)

まぁ、この少年の発見が世界で初めてではなかったとは言え、ベルヌーイ数の周辺分野はまだまだ未解決問題も多いし、彼もこれをきっかけにこのまま数学をやり続けたいと思えたのなら、それはそれで十分良いニュースなのではないでしょうか?



さて、それじゃ彼の成果がどのような物かを説明しよう。まず彼の成果そのものを説明するには、「級数展開」を理解しないといけないので、まずは「級数展開」から説明しよう。

世の中にはいろいろな関数がある。高校くらいの数学であれば、扱う関数はわりと単純な物ばかりなんだけど、実際の自然現象とか世の中に存在している関数は非常に複雑で、式であらわすのが難しかったり、まともにパソコンで計算させると数値誤差が非常に大きくなり計算結果の保証できない関数も多々存在する。級数展開とは、「複雑な関数を単純化させるための関数分解法」と捉える事ができて、その導出法は「テイラー展開」「マクローリン展開」によって確立している。
ちなみに、実際にe^x(eは自然対数)をマクローリン展開によって級数展開すると、以下のように級数展開できる。
(なお、マクローリン展開に関しては、 http://w3e.kanazawa-it.ac.jp/math/category/suuretu/suuretu/henkan-tex.cgi?target=/math/category/suuretu/suuretu/maclaurin.html )

ex_macroling.jpg



今の例ではe^xだけなので、あまり級数展開するありがたみは無いかもしれない。ただ、このように級数展開をすれば無限に項が出現するのだけど、後ろに行けば行くほど無視できる程小さい数になるし、普通にe^xを数値計算するよりも計算誤差を小さくできるので、実学的にも級数展開は非常に意味のある事なんだ。



んで、今回の彼のそもそもの成果とは、「x/(e^x-1)」という関数の級数展開に関するものなんだ。パッと見ただけでは、この関数を級数展開すると何が出てくるのかわからないけど、少なくとも先のe^xの級数展開で、次数0〜無限のxの項が出現する事により、「x/(e^x-1)」も、同じく次数0〜無限のxの項が出現しそうな気はするよね。よって、それぞれの項の係数はわからないけれど、e^xと同様に↓のような級数展開ができそうなわけですよ。(各係数B0〜Bnがベルヌーイ数と言われる数)
x_frac_ex-1_macroling.jpg


今回の彼の成果を一言で書くと、上記のベルヌーイ数の一般式を発見したわけなんだな。通常、高次の添え字のベルヌーイ数は、低次の添え字のベルヌーイ数から漸化式を使って一つずつ計算していたらしいのだけど、一般式の発見により高次のベルヌーイ数を直接計算できるようになったわけですよ。
※:その一般式は、2番目の記事中の写真に掲載されている。



【もうちょっとベルヌーイ数を考察】
ちなみに、奇数次のベルヌーイ数はB1を除き全て0なんですよ。これは「x/(e^x-1)」を連分数にすると自明なんだけど、まずは、連分数について説明しよう。

まず世の中には、数の表し方として「ルート√」とか「小数」とか「分数」があるじゃない?それと同じように「連分数」という数の表し方がある。これは、分数の中に分数が混じるので非常に直感的でない数の表し方なんだけど、実際に以下で小数と連分数で表した√2を見てみよう。
same_value-diffdisp.jpg

ちょっと余談になるけど、これを見れば小数では何の規則もない√2が、連分数では規則的な構造のある事がよくわかるだろう。非常に興味深いところではあるが、話を元に戻す。



x_frac_ex-1_renbun.jpg
ここで上記画像のように、e^xとtanh(x)の性質から「x/(e^x-1)」も連分数展開ができる。(ただし、tanh(x)はハイパボリックタンジェント)
この時、青枠で囲った部分は奇関数、赤枠で囲った部分は偶関数なので、ベルヌーイ数の奇数添え字成分は、B1を除いて全て0である事がわかる。

俺には、偶数添え字成分をどうやって導出したのかまったくわからないけど、これを高校生が独力で解いたって事は、確かに驚愕だよなぁ……。
posted by きらっち at 21:20| Comment(0) | TrackBack(1) | 科学

2009年05月23日

空気で放電 新型燃料電池

【新しい構造の高性能「リチウム−空気電池」を開発】
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2009/pr20090224/pr20090224.html

2月の時点での話なんだけど、これ凄い発明だよなぁ。空気(酸素)で放電する電池なんて、そもそもの発想が思いつかないもんな。


とりあえず、今の段階で大容量化が実現できているので、後は@「安全対策」とA「常時放電をどれだけ抑えられるか」だろうと思うんだよな。

@について、多少化学をかじった人ならば知っていると思うけど、負極にリチウム金属、正極に電解液(水)を使っているので、仮にこのリチウム−空気電池を数十kg搭載した電気自動車が事故等によりリチウム金属と水が接触してしまうと、リチウムが真っ赤な火柱を立てながら燃えて、しかも化学反応で発生した水素に引火して爆発が起きるわけだ。(笑)

そしてAについて、このリチウム-空気電池の放電メカニズムであれば、酸素があるだけどんどん放電反応が進むので、車が止まっている時には放電を止めさせる(酸素の供給を遮断させる)仕組みを作らないと、せっかくの大電気容量が無駄に消費されてしまうわけだ。

この@とAを解決するのには、まだ時間がかかりそうな気がするけど、確かに「負極のカセットパッケージ化」「正極の水は交換」という形であれば、電池切れの時でも長時間の充電作業抜きで現在のガソリンスタンドでも対応できるわけだし、非常に有望な技術なのかもしれない。



ただ、産総研のプレスリリースを見ていてちょっと気になるのは、

「空気極の基準で大容量化(正極放電容量50000mAh/g)を達成した 」
「空気極の質量=(多孔質炭素+触媒+バインダー)」

と書いてある。つまり、この正極側の大電気容量を使い切ろうと思ったら、負極側のリチウム金属もたくさん積まないといけないわけだ。当然、空気極の質量よりも負極側のリチウム金属の質量の方が重いわけで、電池全体の重さで見た場合の単位重量辺り電気容量は、そこまで桁違いに変わるわけではないのでは?

おそらく今回の発明の真の意義は、
@放電が進めば進むほど放電効率の落ちていた事を防ぐ事ができた。
A今までネックだった正極側の大容量化に成功した。
Bカセットパッケージ化が容易で、既存のガソリンスタンドでも取り扱い可能
というところなんじゃないかと思った次第。



とは言え、確かに非常にインパクトのある発明であることには変わらないと思う。日本は、電気自動車の分野で世界市場の覇権を握れる可能性があるだけに、一刻も早く研究段階から実用化段階に移行して欲しい。
posted by きらっち at 08:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学

2009年05月21日

天気予報 的中率だけで予報性能を判断していいのか?

この前、電車で隣に座ったおばちゃん二人組が、「昔と違って最近の天気予報の的中率は高くなったよねぇ」という事を話題にしていた。確かに俺が小さい頃の天気予報なんて、ちょくちょく外れてたような気がするんだけど、最近の天気予報は次の日くらいの予報であればまず外れる事はない。

普通、天気予報の性能指標として「的中率」を思い浮かべる人がほとんどだと思うのだけど、実際のところ「的中率」は天気予報の性能を議論する上で良い指標とはいえない。今日は、その辺のところを条件付確率を使って考察していこう。



entropy_forcast.jpg
さて、今2つの天気予報システムAとBがある。AはC市の天気予報、BはD市の天気予報を管轄しているのだけど、1年間分の実際の天気と予報結果を確率として表にまとめたものが上記の画像である。(実際の結果ではなく、あくまで例ね)
ここでは話を単純化して、「晴れ」か「雨」の2種類の予報をするとしよう。表の中の数字はそれぞれの場合の確率を表していて、Aシステムにおいては、

予報が晴れで実際も晴れた確率(@)は0.64
予報が晴れで実際は雨だった確率(A)は0.16
予報が雨で実際は晴れた確率(B)は0.16
予報が雨で実際も雨だった確率(C)は0.04

とする。また、Bシステムにおいては、

予報が晴れで実際も晴れた確率(D)は0.3
予報が晴れで実際は雨だった確率(E)は0.2
予報が雨で実際は晴れた確率(F)は0.2
予報が雨で実際も雨だった確率(G)は0.3

とする。さて、皆様は「A、Bのどちらの天気予報システムが優れているか?」をこの表を見ただけでどう判断しますかね?ちなみに的中率を考えてみると、

「Aの的中率」=@+C=0.68(68%)
「Bの的中率」=D+G=0.60(60%)

であるので、「Aの方が予測システムとしては性能が良さそう」と、考えられなくもない。

ところが、すでに目の付け所の良い人は気づいていると思うけど、C市の実際に晴れた日の確率(@+B)と、実際に雨だった日の確率(A+C)は、それぞれ0.8と0.2であるのに対して、D市の実際に晴れた日の確率(D+F)と、実際に雨だった日の確率(E+G)は、それぞれ0.5と0.5である。よって、「この2例を同じ的中率という指標で比較するのは不公平ではないか?」と考える人が出てくるわけですよ。


それでは、条件付確率で考えてみよう。まずAの場合、

予報が晴れだった条件の下で
実際に晴れた確率(H)=@/(@+A)=0.8。

一方、予報が晴れだった条件の下で
実際は雨だった確率(I)=A/(@+A)=0.2。

予報が雨だった条件の下で
実際は晴れだった確率(J)=B/(B+C)=0.8。

一方、予報が雨だった条件の下で
実際に雨だった確率(K)=C/(B+C)=0.2。

そしてBの場合、

予報が晴れだった条件の下で
実際に晴れた確率(L)=D/(D+E)=0.6。

一方、予報が晴れだった条件の下で
実際は雨だった確率(M)=E/(D+E)=0.4。

予報が雨だった条件の下で
実際は晴れだった確率(N)=F/(F+G)=0.4。

一方、予報が晴れだった条件の下で
実際に雨だった確率(O)=G/(F+G)=0.6。


さて、ここまで来ればAの天気予報システムが相当に胡散臭い事がわかる。というのも、Aでは晴れと予報して実際に晴れる確率(H)は0.8と高いのだけど、もともと実際の天気が晴れである確率(@+B)は0.8なので、晴れと予報したところでその条件付確率に変化がない。

一方、Bの方はというと、Bで晴れと予報して実際に晴れる確率(L)は0.6であるけれど、もともと実際の天気が晴れである確率(D+F)は0.5であることより、晴れと予報する効果が10%程度の条件付確率上昇という形であらわれるのがわかる。


タネを明かすとAの天気予報システムは、実際の天気にまったく無関係で、常に晴れを0.8、雨を0.2の確率で出力するだけのインチキシステムである。一方、Bの天気予報システムは予報によって条件付確率が上昇することから、きちんとした予報効果のあるシステムであるわけだ。
このように、予測とか予報の性能指標として「的中率」で全て判断するのが適切ではない事がわかるだろう。


ちなみに、この場合の予報性能指標としてどういう指標が最も適切かというと、「実際の天気」と「予報した天気」の「相互情報量」じゃないかと思うのだが、これについては「情報理論」という大学で習う応用数学の分野の話になるので、興味のある方は勉強してはいかがでしょうか?(条件付確率が出来れば高校生でも理解可能な分野だと思われる)
なお、「情報理論」については、エントロピーの話やデータ圧縮の話をするときに必ず話題になるところなので、いずれこのブログにでも書く機会が出てくるだろう。


※ちなみに、俺は気象庁職員ではないので悪しからず。(笑)



【おまけの一言】
本エントリーで書きたかったもう一つの事は、「物事を一つの指標のみで判断しない方が良い」って事なんだ。物事が複雑になればなるほど、全体の評価を一つの指標で表すのは非常に難しくなるのは直感的にもわかる。
例えば、日本経済の調子を貿易黒字だけで判断できるかというと、とてもそんな事ないわけで、「貿易赤字→もう日本経済はダメだ」みたいな話は非常に短絡的だと思うんだよな。

しかも今回みたいに、そもそもの指標が適切でなければその後の判断が大きく変わりかねないわけで、自分の職場とかでもこの手の指標の設定ミスがあるんじゃないかと、ちょっと不安になるわ。(笑)
posted by きらっち at 21:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学

2009年05月08日

テロメア 不老不死の近道

【Dr.中川のがんから死生をみつめる:/1 人間も自然の一部】
http://mainichi.jp/life/health/nakagawa/news/20090407ddm013070162000c.html

【Dr.中川のがんから死生をみつめる:/2 命に限りある理由】
http://mainichi.jp/life/health/nakagawa/news/20090414ddm013070105000c.html

【Dr.中川のがんから死生をみつめる:/3 不老不死の細胞】
http://mainichi.jp/life/health/nakagawa/news/20090421ddm013070140000c.html

【Dr.中川のがんから死生をみつめる:/4 コピーミスの功罪】
http://mainichi.jp/life/health/nakagawa/news/20090428ddm013070157000c.html

【Dr.中川のがんから死生をみつめる:/5 限界ある細胞分裂】
http://mainichi.jp/life/health/nakagawa/news/20090505ddm013070141000c.html

たまたまGWの外出先で見た毎日新聞で、「Dr.中川のがんから死生をみつめる」というシリーズコラムを読んだのだけど、なかなかこのコラムが興味深い。がん細胞は通常の細胞と違って、何回でも細胞分裂ができる事は広く知られているとは思うけど、

○俺みたいな20代の成人男性でも、がん細胞が日々5000個程度作られていて、その全てが免疫細胞によって駆逐されている事。

○ソメイヨシノは全てクローン植物であり、種子ができないため自力繁殖ができない事。

○脳や心臓の細胞は、生後は細胞分裂しないため減り続ける事。

等々、一般の人にはなかなか知られていない事がいろいろ書かれている。今のところ、シリーズは第5回まで連載されてるのだけど、話の展開からすると来週はテロメアの話になりそうなので、中川先生よりも先にテロメアについて書いておこうかなと思った次第。(笑)大学時代に、テロメアに関する授業を取っていたので、当時の記憶を思い返し、久しぶりに当時の講義ノートを見ながら執筆するか。



さて、テロメアとは細胞中のDNAの末端部分の事を言う。DNAは、二重螺旋形で鎖状塩基配列を構成して、その両サイドにテロメアという物質が位置している。下の画像のように、このテロメアは細胞分裂時にその一部が切り取られるために、細胞分裂のたびにどんどん短くなるわけだ。
teromea.jpg
このテロメアが無くなるとそれ以上の細胞分裂が行われなくなるため、細胞は死んでしまう。つまり、テロメアは細胞レベルでの寿命をつかさどる物質であり、現在精力的に研究が進められているところらしい。
ちなみに、人間のテロメアは大体50回の細胞分裂分程度の量を確保しているらしく、もし病気や事故で死ななかったとすれば、細胞レベルでは120歳くらいまで生きれるとの事。

もう一つ細胞レベルの寿命に関係する大事な物質として、活性酸素があげられる。活性酸素は、日常の俺達の呼吸時に何らかの原因で生成されるらしいのだけど、この活性酸素が体内に取り込まれたときに遺伝子を傷つけるらしい。遺伝子が傷つけられると、細胞分裂時に通常よりも多くのテロメアを消費するので、「テロメアの量」と「活性酸素」が寿命や老化をほぼ決定しているのではないかと推定されている。

「寿命」という個人差すら、こうやって科学的に説明がつくんだから、すごい世の中になったよなぁ……。



【おまけの考察】

人間の臓器細胞は部位毎に分裂能力が違うらしく、それぞれ以下のように決まっている。

@脳神経、心臓、手足の筋肉の細胞
→これらの細胞は、生後は細胞分裂しないため減り続けるのみ。

A精子や卵子の細胞
→テロメアを再生する能力を持っていて、何回分裂してもテロメアはなくならない。だから、生まれてくる子供の細胞は50回分裂できる。

B血液細胞
→常に消耗と再生をくり返している細胞は、テロメアの消費量を他の細胞より少なくできるらしく、分裂回数が50回よりも全然多いらしい。

Cその他の細胞
→先にも書いたとおり、50回の細胞分裂が終われば死んでいくので、自然に細胞数が減少し臓器の老化が進む。

ちなみに、がん細胞は「テロメアが減らない悪性細胞」なんだけど、A〜Cの箇所のがん(卵巣がん、血液がん(白血病等)、肝臓がん、胃がん等々)は良く聞くじゃん?だけど@の箇所のがん(脳がんとか心臓がん)って聞かないよね。これは、そもそも脳や心臓では細胞分裂しないので、がん細胞が入ってきてもまったく影響を受けないからとの事。


さらに、以前話題になったクローン羊のドリーは、もともと6歳の成羊体細胞を元に作られたわけで、生まれたばかりと言っても細胞レベルでは6歳の羊だったんだよね。その後の研究で、やはりドリーの細胞中のテロメアは同じ歳の通常の羊よりも20%少なかったらしく、今のクローン技術でクローンを生産したとしても、オリジナルよりは寿命が短くなるデメリットの存在がある事がわかったわけだ。


今までの話からすると、不老不死の研究としては

1.テロメアを再生する手法
2.テロメアの消費を著しく抑える手法

の2つのスタンスがあるように思える。それこそ、上記のAとBの細胞から将来何らかのヒントが得られるかもしれない。いやぁ、この手の研究も面白そうだよなぁ……。
posted by きらっち at 20:15| Comment(0) | TrackBack(4) | 科学

2009年04月27日

来るか恐怖のパンデミック!

【豚インフルで米緊急事態宣言、メキシコの死者103人に】
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090427-OYT1T00475.htm

ちなみに、今回の豚インフルエンザは「H1N1型」に近いとの事で、人間にとっては弱毒性のウィルスになる。ちなみに、1918年〜1919年にパンデミックを起こしたスペイン風邪も同じ「H1N1型」に近い型だったらしい。スペイン風邪の時は、人類が始めて経験する「H1N1型」だったらしく、6億人の感染者数(当時の全人類が12億人)に対して、5000万人〜1億人の死者が出たらしい。まぁ、「致死率10%以上」ってところかな?
その後、「H1N1型」はソ連A型として定期的に流行してるので、俺達にも多少の抵抗はあるかもしれないけど、それでも新種と言えば新種だしなぁ……。

ところで、今回の豚インフルは青年期の人の致死率が高いらしい。普通に考えると、幼児とか老人の致死率が高くなりそうなのに、これはどういう事だろう?
どうも、鳥や豚インフルエンザにかかると、免疫に関する情報伝達物質「サイトカイン」が過剰生産されるらしい。このサイトカインは通常、何かの感染症にかかると防御反応のためにもともと人間の体内で生産される物質らしいのだが、鳥や豚インフルエンザに感染した場合は過剰に生産され、正常な細胞すら破壊して多臓器不全に陥る、と言われている。つまり、老人はもともと免疫力が低下しているし、子供は免疫不十分ということで、免疫力の一番強い20代の致死率が一番多くなるらしい。



【豚インフル感染1000人超、死者68人に】
http://www.chunichi.co.jp/article/world/news/CK2009042502000231.html

ちなみに↑の記事では、日本で新型インフルエンザが発生した場合、最大で64万人の死者を見込んでいる。感染率50%、致死率1%ってところか。まぁ実際、メキシコでの統計情報がわかってくれば、おおよその感染率と致死率がわかってくるので、その辺も具体的な数字となって出てくるんだろう。
日本に上陸するのも時間の問題だと思うんだけど、俺も感染しちゃうのかなぁ……。




【おまけ】
ちなみに、スペイン風邪のウィルスが「H1N1型」に近い型であるとわかったのは、わずか10年前。アラスカ凍土で発掘された遺体からウィルスゲノムを解析してわかったらしい。しかも、鳥インフルエンザウィルスに由来する可能性が高く、現在のインフルエンザウィルスよりも増殖スピードが30倍程度早かったらしい。
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2009年04月18日

クォータニオン(四元数)による3次元座標回転計算

クォータニオンは、高校数学でいう「複素数」の発展版みたいな概念で、最初に考案されたのは1840年代。ただし、長らく純粋数学として研究されてきただけで、「何に応用できるのか?」はしばらく議論されていなかった。ところが、ここ20年〜30年くらいで計算機の情報処理能力が大幅に上がり、クォータニオンの持っている可能性が再び注目を集め出した。現在、CGや人工衛星やロケットの姿勢制御等々への応用が進んでおり、3次元座標の回転を取り扱う場合には、欠くことのできない物になっている。


実際クォータニオンとは何かというと、「高校で習った複素平面の多次元化」という位置付けが一番しっくりくる書き方かなぁ……。高校で習った複素平面は、x軸が実数軸でy軸が虚数軸という2次元平面を考えていたのだけど、クォータニオンの場合は、実軸以外に虚数軸が3つある4次元の虚数世界が対象になる。これの面白いところは、クォータニオンそのものは4次元虚数なのだが、通常のXYZ3次元実空間上の「任意の軸回りの座標回転」が、クォータニオンを使うことで少ない計算量で可能になる事なんだ。以下、これについての説明を書く。



通常、3次元回転行列を使って任意の軸回りにある座標を回転しようとすると、以下の計算をする事になる。
any-axis-rotation_matrix.jpg
これを見れば一目瞭然なのだが、3×3行列の掛け算を複数回演算する必要があるため、多大な計算量が必要になる事が直感的にわかる。しかしながら、クォータニオンになるとこの辺りの計算が非常にすっきりする。

クォータニオンqでは、3次元座標(x,y,z)を以下のように表す。高校数学のように複素数が1種類ではないので、i,j,kの複素数間での掛け算は、実数の掛け算のような可換演算ではないところに注意が必要。
quotanion_xyz.jpg
また、任意軸の回転の際に必要な回転クォータニオンrは以下のようにあらわす。
quotanion_rotation.jpg
この時、(x,y,z)の回転はq,rを用いて以下のようなクォータニオン計算で求められる。
quotanion_rotation_operation.jpg
クォータニオンの回転演算を見てみると、実部と3つの虚部に関する積の計算を2回やればいいだけなので、行列の積計算を複数回やるよりは計算量の少ない事が感覚的にわかると思う。



さらに、実際に途中式を計算するとわかるんだけど、ベクトルの外積を匂わすような結果がそれぞれの複素数項でゴロゴロ出てくるので、ベクトル解析やテンソル分野と密接に関係している分野なんだろうなぁ。しかも、回転が掛け算になるという事は、何らかの形でオイラー公式にも関係してそうで、一体背景にある法則性は何なのか、純粋数学という意味で非常に興味深い。

とはいうものの、今日のエントリーは大学院で習うレベルの数学の話なので非常に難解なのだけど、ここまで読んでくれた人がいたら感謝します。





【おまけの考察】
クォータニオンがメジャーになる前の3次元の座標回転は、それぞれX軸、Y軸、Z軸回りの3軸に対する回転角度を指定して、座標を行列計算するやり方が主であった。
ただし、この3軸の回転角指定のやり方だと、「回転順番」を予め決めておく必要があるため無用な混乱の元になるケースが多く見られ、さらに回転に順番があるが故に発生する「ジンバルロック」という現象を回避できない致命的な欠点を持っていた。クォータニオンは、これらの欠点はない優れたやり方ではあるのだが、「ジンバルロックって何?」と思われる方が多いだろうから、これについて説明しよう。

anntena_axis.jpg
写真は、固定電話のアンテナである。このアンテナは写真のように2軸(黄色と水色の矢印部分)の回転機構があるため、理論上は左側の全ての方向にアンテナを向けられる。

zimbal_lock.jpg
多少なりともアンテナをいじった人ならわかると思うけど、最初に水色矢印部分を回転させて、アンテナを黄色矢印部分の回転軸と同じ方向に合わせてしまうと、上記画像のように机の面上からアンテナを起こせなくなる。計算機で回転する座標を計算させる時に、この状況が起こってしまうと回転後の座標が計算不能になってしまうので、極力こういう状況を回避するためにいろいろ考えなければいけないわけだ。

この状況を回避するためには、最初に水色部分の回転軸を回転させるのではなく、黄色部分の回転軸を最初に回転させた後に、水色部分の回転軸を回転する必要性が生じる。このようにある軸を回転した結果、回転対象座標が他の軸に向きに重なってしまうと、回転に対する自由度が減ってしまう事態が生じる。これが「ジンバルロック」という現象である。

ところが、クォータニオンを用いた回転計算であれば、ジンバルロックの起こらない事が保証されている。この事もクォータニオンの普及を後押ししたらしい。




高校時代は、「二乗して-1になる数なんて、どこでどう役に立つんだ?」と思ってたけど、こういうのを説明してくれる先生がいたら、もうちょっと真面目に勉強してたんだけどなぁ……。(笑)
posted by きらっち at 13:41| Comment(1) | TrackBack(0) | 科学

2009年04月14日

人間の直感がどれだけいいかげんか?〜三囚人問題〜

今日は認知心理学の分野でよく出される三囚人問題。「条件付き確率」や「ベイズの定理」を考える上でよく例として出されるんだけど、こんな話↓。


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三人の囚人、A,B,Cがいる。先日の司法会議でこのうち二人の処刑が決まった。三人は同程度の重い罪を犯している事により、処刑を免れる確率はA,B,C共に1/3とする。三人には、「二人が処刑される」と伝えてあるのだが、「どの二人が処刑されるか」は伝えられていない。

その状況で囚人Aは、看守にこう言った。
「BとCのどちらかは必ず処刑されるのだから、処刑される一人を教えてくれないか?それによって俺に情報を与えることにはならないだろう?」
誰が処刑されるかわかっている看守は、囚人Aの言い分に納得してこう答えた。
「Bが処刑される。」
これを聞いて、囚人Aは喜んだ。
「自分の助かる確率は1/3だったが、これを聞いて自分の助かる確率は1/2に上がった」
さて、実際に囚人Aの助かる確率は1/3から1/2に本当に上がったのか?

※ただし、BとCが処刑される場合は、看守はどちらかを1/2の確率で言うとする。
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俺が大学生の時、最初にこの問題を聞いて「ん?」と思い、2時間くらい考えたという思い出のある問題なんだけど、皆様はいかがでしょうか?



受験数学の常套手段として、このくらいの規模の問題であれば、全ての場合をしらみつぶしで探すと答えは出てくるので、表にして考えてみるとそれぞれのケースで以下のような確率となる。
normal_sansyujin.jpg
何も情報が無い時点では@〜Hの可能性があるのだが、看守の言葉「Bが処刑される」という条件の下で考えると、考えられるケースがA(Aが恩赦)とG(Cが恩赦)の場合のみに狭まったことになる。Aが知りたいのは自分が恩赦になる確率という事なので、

Aの確率/(Aの確率+Gの確率) = 1/3

というのが、数学上の答えとなる。つまり、AはBが処刑される情報を得ても、「自分が助かるかどうかにはまったく関係無い」という事が数学的には導かれるわけだ。

ちなみに、この手の条件付き確率の話になると、人間の直感は当てにならない事が多いらしく、「あれ、待てよ?!」と思う人が多かったのではなかろうか?




面白いのは、三囚人問題の発展版である↓の変形三囚人問題。

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三人の囚人、A,B,Cがいる。先日の司法会議でこのうち二人の処刑が決まった。三人は罪の大きさを考慮して、それぞれ恩赦になる確率は1/4,1/4,1/2とする。三人には、「二人が処刑される事とA,B,Cの恩赦の確率」を伝えてあるのだが、「どの二人が処刑されるか」は伝えられていない。

その状況で囚人Aは、看守にこう言った。
「BとCのどちらかは必ず処刑されるのだから、処刑される一人を教えてくれないか?それによって俺に情報を与えることにはならないだろう?」
誰が処刑されるかわかっている看守は、囚人Aの言い分に納得してこう答えた。
「Bが処刑される。」
これを聞いて、囚人Aは喜んだ。
「自分の助かる確率は1/4だったが、これを聞いて自分の助かる確率は上がるだろう。」
さて、実際に囚人Aの助かる確率は本当に上がるのか?

※ただし、BとCが処刑される場合は、看守はどちらかを1/2の確率で言うとする。
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これも、表にして全てのケースをつぶしてみよう。
normal_sansyujin2.jpg
先ほどと同じように、「Bが処刑」という条件付きで考えると、AとGのケースだけ考えればいいので、Aの助かる確率は

Aの確率/(Aの確率+Gの確率) = 1/5

つまりこの場合は、Bの処刑を聞いた事で自分の助かる確率がかえって落ちてしまうわけだ。この事実、「いや、ちょっと待て。本当にそうか?」と思う人の方が多いような気がするんだけど、数学上の確率は確かにそうなんですよ。



このように、条件付き確率になると人間の直感なんて当てにならないわけですよ。胡散臭い儲け話ふっかけて、この当たりを上手く利用すれば騙される人がたくさん出そうな気もするけどなぁ……。(笑)
posted by きらっち at 21:17| Comment(2) | TrackBack(0) | 科学

2009年04月12日

GPSの位置取得原理

最近、携帯電話のGPS機能やポケットGPSを利用した位置情報産業が軌道に乗り始めて、ナビゲーションやグーグルマップと連動するサービス等がますます一般的になってきている。この手の位置情報を利用したサービスの要は、「GPSでの位置取得」と「それを利用する地図や空間情報の整備」だと思うんだけど、今日はGPSで位置を取得する原理について書こうと思う。

さて、俺たちエンドユーザにとっては、GPS端末を持っているだけで位置を取得できるわけだけど、裏ではすごいお金のかかるインフラ(GPS衛星)があるわけですよ。このGPS衛星が、それぞれの衛星の位置情報と時刻情報を俺達の持っているGPS端末に特殊な電波を飛ばしていて、位置を算出してる事になるんだな。(図にすると、↓な感じかな。)

GPS_outline.JPG


GPS端末はそれぞれのGPS衛星の電波を捉えているわけだけど、この電波に入っている衛星の「位置」と「電波照射時刻」から逆算して自身の位置を計算してるわけですよ。つまり、それぞれのGPS衛星の電波到来時間差を利用してるわけだ。ところが、いろいろと特殊要因を考慮しなくてはいけないため、そんなに事は単純ではない。

例えば、あのアインシュタインの相対性理論。実は相対性理論を考慮しないと、正しい位置計算ができない事が実証されている。どういう事かというと、それぞれのGPS衛星は正確な電波照射時刻を求める必要があるので、原子時計を搭載しているわけですよ。しかしながら、地球上から見れば時速数kmで高速周回している上に、地球から受ける重力が地上よりも全然弱いため、時間の進み方が地上よりも速いわけだ。このため、地上のGPS端末では相対性理論による時間の進み方を補正した上で計算しないと、正しい位置が求められないことになる。

さらに、「じゃあGPS衛星の位置はどうやって求めているのか?」というと、これもまた完全に物理の話になるのだが、GPS衛星の運動はケプラーの法則(地球を焦点の一つとする楕円軌道)に従い運動している。この運動は、つまるところ6つのパラメータで表されるので、GPSに搭載した各種センサや地上基準局の軌道追跡などで、これらのパラメータを求めてるわけなんだな。ただし、
○地球が完全な球体ではなく、でこぼこして重力分布がそれぞれの場所で異なる事
○(地上に比べれば全然薄いけど)地球大気との摩擦
○他の天体からの万有引力
○太陽輻射圧
等々によって、もちろん誤差計算は必要ではあるけれど。


まぁ、上記のような誤差要因をいろいろと取り除いてGPSは位置を算出してくれてるわけなんですな。そして、何故俺が上記の絵で4つもGPS衛星を書いたかと言うと、未知変数はGPS端末のX,Y,Zに加えて、それぞれの衛星の持っている時刻を補正しなければいけないので、時刻tも未知変数で考えなければならない。つまり未知数は全部で4つ(X,Y,Z,t)であり、これを全て連立方程式で解こうと思うと式が4本必要なわけなので、最低4つのGPS衛星が必要なわけなんですよ。(4つのGPS衛星に対して、電波到達時間差に関する4本の式を作るわけだ)

まぁ実際は、日本の上空であればGPS衛星は大体の時間で4つ以上補足しているので、5つとか6つのGPS衛星を使ってGPS端末の位置を算出している。(複数のGPS衛星を利用するほうが、最小二乗法等を利用して各種誤差要因を小さくできるため)



きちんとした値段の高いGPSになると、誤差数cmくらいで測位できるようになるんだけど、このシステムを最初に開発したアメリカ軍って、やっぱすごいと思うわ……。相対性理論とケプラーの法則を持ち出すスケールの大きさに、日本人じゃ思いつかないような気がする……。
posted by きらっち at 14:14| Comment(1) | TrackBack(0) | 科学