2009年12月16日

様子を見るという選択肢は?

【「伊丹、将来は廃止」橋下知事が国交省戦略会議で】
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091214/plc0912141341008-n1.htm

【関西3空港で「竜宮城のような議論」と橋下知事 井戸知事は「負け犬の論理」と応酬】
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/091214/biz0912142126026-n1.htm

伊丹空港に関しては、橋下知事のみが廃港論を唱えていて、国や兵庫県は温度差があるものの、基本的には「存続」という方向性を打ち出しています。何故そこまで橋下知事が廃港を主張しているのかを考えてみると、おそらく以下の4つの要因だと思われます。

1.2011年に九州新幹線の開通
これによって、鹿児島中央駅と新大阪駅が約4時間で結ばれる。

2.2045年に名古屋ー大阪間のリニアが開通
これによって、東京ー大阪間が67分で結ばれる。

3.現在の伊丹空港利用客の約40%が伊丹-羽田路線を利用している。

4.関西国際空港の離発着枠にはまだ空きがある。
現在の伊丹空港の全便を関西国際空港に移しても、まだまだ余裕。

この状況から、伊丹空港の利用者は2011年と2045年に、相応の利用者減が見込まれます。特に2045年には現状で40%の利用客がほぼ0になる事は間違い無いので、確かにその頃に伊丹空港の役割を終えることになるのではないでしょうか。
橋下知事は、将来の伊丹空港の需要減を見込んだ上で、伊丹空港を担保にして、関空とのアクセスを良くするための高速鉄道や高速道路の建設を行いたいようですが、彼の在任期間中にでき得る事なんですかね?今から35年後の伊丹空港を担保にした資金確保なんて、あまり実現性があるとも思えないのですが……。

ちなみに伊丹空港は、国が管理する全国26空港の中で一番稼ぎの良い空港(平成18年度の黒字額は43億円)でもあります。この黒字の事実と、地元自治体も伊丹空港廃止には否定的な事から、国土交通省としても「伊丹空港は将来的に廃止」とは言えないと思いますよ。


個人的な私見ですが、今のところ橋下知事の需要予測はそれなりに正しいとは思いますが、現時点で伊丹空港廃止を決定して、それを担保にインフラ整備するのはかなり行き過ぎのような気がします。関西国際空港のアクセスを何とかしなければならない問題は確かにありますが、そのために2045年の伊丹空港廃止を現段階で決定するのは関係者の納得が得られないでしょうし、そもそも2045年の航空需要がどうなるかは現段階でわかりません。今のところはとりあえず、「2011年九州新幹線開通」と「神戸空港の収支の行方」を見ていくのが無難な戦略ではないのでしょうか?
俺の勝手な予想だと、2011年を過ぎればむしろ神戸空港廃止論の出てくるような気がしないでもありません。(↓の記事通り、今でも赤字になるかならないかのところですので、2011年以降は相当厳しい状況に追い込まれるはず)

【利用者減、収支悪化… 神戸空港「視界不良」】
http://sankei.jp.msn.com/politics/local/090214/lcl0902141234002-n1.htm

【神戸空港黒字額、初のゼロ見通し】
http://sankei.jp.msn.com/politics/local/090219/lcl0902191244002-n1.htm


橋下知事も独断専行型の知事ですので、根回しがあまり上手くないように見受けられます。この件に関して彼の主張するところは、それなりに的を得ているところもあるので、ちゃんと根回ししながら時間をかけて議論すればそれなりに賛同者が出て来てもおかしくはないと思うのですが、そもそも「何で2045年の話を今しなければいけないの?」と言われると苦しいところではありますけどね。
確かに現状を打破するために動くのも悪いことだと思いませんが、2045年まではまだまだ時間がありますし、2011年にも九州新幹線の開通があります。今動いて、後で取り返しのつかなくなる事態を避けるためにも、少しずつ周りの理解を得ながらもう少し静観した方が、橋下知事のためにもよろしいのではないかと。



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2009年12月15日

ギリシャやばいの?〜そのB〜

@【ギリシャやばいの?〜その@〜】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/34170531.html

A【ギリシャやばいの?〜そのA〜】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/34170531.html

という事で、↑の@Aでギリシャの「外貨準備高」「国際収支」「GDP」の考察をしましたが、いよいよ今日は「対外債務」について見ていきましょう。
その前に、↑の@Aで説明したポイントを復習しておくと以下のようになります。

1.今のところ外貨準備高が減っていない
→ギリシャは、信用力のあるユーロを自国通貨にしているので、相応の通貨価値下落の起きない事により、為替防衛をする必要がない。ただし、今後ギリシャ国債の利回りが払えなくなれば、外貨準備高を消費して利回りを払うようになるだろうと推測されるので、外貨準備高が減り出す時がいよいよ危険と思われる。

2.恒常的な経常赤字と外国依存の資本収支
→ギリシャの国際収支は、経常収支については慢性的な赤字。貿易赤字が足を引っ張るが、観光国でありながら最も稼げる8月のサービス収支の黒字でも貿易赤字分を取り返せない。一方の資本収支は、外国からの投資により大きく変動している。

3.インフレ経済
→実質GDPはここ3年で大きく増加したわけでもないが、名目GDPは増加している。消費者物価指数もここ3年で10%程度の上昇していて、このインフレを逆手にとって(インフレ最中は借金の実質価値が下がることにより)ギリシャ国債をどんどん発行をしてきた。


greece_external-debt.jpg
では、↑のギリシャの「対外債務」について見ていきましょう。
「ギリシャ政府の債務」と「ギリシャ銀行の債務」についてですが、サブプライム問題の起こった2007年Q2にギリシャ政府の短期債務が一時的に増えましたが、この時は何とかこれでおさまりました。ところがリーマンショックの起こる前の2008年Q2に、ギリシャ政府もギリシャ銀行も、両方で短期債務が突然増えました。これが何に起因するのかちょっとここではわかりませんが、とにかくすでにこの時期に何らかの異変が起こっていた事がわかります。
その後は、ギリシャ政府はばらつきがあるものの、同レベルの短期債務を発行し続けている一方で、ギリシャ銀行の短期債務は増加の一途を辿っていて、資金繰りの状況が多少心配です。2009年Q2の時点で、ギリシャ政府とギリシャ銀行の短期対外債務は500億ドル、長期対外債務は2000億ドルを突破しているのですが、外貨準備高の方はというと2009年6月時点で380億ドル程度なので、実際のところ今すぐヤバイというわけでもないような気がするのですが、短期対外債務の割合がかなり大きいのが気がかりなところです。
ちなみに、2009年Q2の名目GDPは597億ユーロ(年換算だと2388億ユーロ)なので、対外債務残高の名目GDP比はおよそ29%くらいなわけです。実際日本とアメリカの対外債務残高の名目GDP比は、日本が7%、米国が25%程度なので、ギリシャの経済規模を考えると、対外債務残高の名目GDP比が29%というのは、確かに大きいかもしれません。


【ギリシャ、社会保障費1割減 財政再建策を発表】
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20091215AT2M1501C15122009.html

そんな状況でちょうど今日、↑のようにギリシャ政府が財政再建策を発表しました。この記事を見ると、基本的な財政再建策として
「@社会保障費のカット」
「A民間銀行のボーナスに9割課税」
「B脱税の徹底摘発」
という事です。とりあえず、「政府支出削減」と「税収増加」という事で財政再建を図ろうという事ですね。確かによくよく考えてみると、ギリシャはユーロを自国通貨として使っているので、韓国がやったように「自国通貨をギリギリまでウォン安に追い込んだ上で輸出を増加させる」というような為替レートを駆使する裏技が使えないわけです。(その技が使えるなら、夏頃に通貨価値を下げて「観光」一点でサービス収支を激増させるギャンブルもありかなと思うのですが)
通常、国の財政が危なくなれば、自然と通貨価値が下がるので、多かれ少なかれ輸出が増えたり観光客が増えたりするのでしょうけど、おそらく今のギリシャはそうはならない初ケースなわけで、「政府支出削減」と「税収を上げる」だけで何とかなるのか興味があるところです。この状況で政府支出を削ったらギリシャ国内のマネーの流動性が減るために、インフレは抑えられるかもしれませんが、そうなると借金の実質価値も下げることができないため、いずれにしても何らかの稼ぐ方法をギリシャは探さないといけなくなるのではないでしょうか。
勝手な俺の最悪ケース予想では、ギリシャ政府が「政府支出削減」と「税収増加」を上手くできたとしても、世界の余剰な投資資金がギリシャに流入する事により、インフレを止められずに結局ギリシャ経済が行き詰ってしまう可能性です。

まぁ、実際はそこまでひどい事にはならないような気もしますが、ギリシャの目指している方向性は、今の日本の政権と似ています。もちろん、背景の状況は日本とギリシャではまったく違うのですが、ギリシャの緊縮財政&増税に絞るやり方がどうなるかは個人的にも注目しています。



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2009年12月14日

ギリシャやばいの?〜そのA〜

@【ギリシャやばいの?〜その@〜】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/34170531.html

という事で、先日は↑@でここ最近のギリシャの「外貨準備高」と「国際収支」を見ていきましたが、今日はギリシャの「GDP」について見ていきましょう。


greece-GDP.jpg
↑が、ギリシャの「名目GDP」と「実質GDP」になっております。とりあえず、物価変動を考慮に入れた「実質GDP」を見てみましょう。
ギリシャの「最終民間消費支出」は、2007年Q1から2008年Q4までは順調に微増していましたが、やはりリーマンショックの影響からか2009年Q1に前期比で1.77%減少しました。ただし、「最終民間消費支出」は2009年Q1で下げ止まって、Q2とQ3は回復傾向を示しています。
次に「総固定資本形成」を見てみると、サブプライムが表面化した2007年Q2をピークに随分落ち込んでいます。しかも、リーマンショック後の2009年Q1とQ2の落ち込み幅が半端じゃなく、2期続けて10%程度の減少となっていり事がわかります。元々ギリシャは、製造業の盛んな国ではないため、「総固定資本形成」の落ち込みは「設備投資」ではなく「住宅投資」の落ち込みが支配的な要因ではないかと推測されます。スペインと同じように、住宅バブルの崩壊過程を辿っているのでしょうか?2009年Q4に下げ止まったように見えますが、この先も非常に心配です。
その一方で、「政府最終消費支出」は2009年Q1から頑張って他の項目の減少分を支えているわけですが、これが結果として国債の大量発行によってデフォルト懸念を生じているのでしょう。
そして、俺が一番気になっているのが「在庫品増加」です。通常、景気が悪くなると、企業は余計な生産をせずに在庫品をさばくはずなのですが、ギリシャの「在庫品増加」は一向にマイナスにならないわけですよ。最終的に積み上がった在庫をどう処分するのか非常に心配です。

一方で、「名目GDP」の方を見てみましょう。「実質GDP」よりも随分大きい数字の並んでいる事がわかります。ここでの「実質GDP」は、2000年のギリシャ物価に合わせています。そして、「名目GDP」の数字が随分大きいという事は、ギリシャがインフレ傾向である事を示しています。
実際に、「実質GDP」において2007年Q1と2009年Q3の「最終民間消費支出」はほぼ同じ額であるにもかかわらず、「名目GDP」においては10%程度の差があるわけなので、消費者物価がこの2年間で10%上昇している事が読み取れます。
元々ギリシャは財務状況の良い国ではないのですが、ここ数年はずっとインフレ傾向が続いていたため、国債発行もインフレを想定して発行計画を組んでいたのでしょう。欧州では「財政赤字は(名目)GDPの3%以内」という数値目標があるのですが、インフレ傾向のある国では「実質GDP」が上昇しなくても、10%インフレで「名目GDP」もほぼ10%上昇します。ギリシャはこの数値目標を逆手にとって、インフレを許す代わりに国債も相応に発行する戦略を取っていたわけですね。
ところが、インフレによって「名目GDP」を順調に伸ばしてきたギリシャは、2009年Q1の「名目GDP」で前期比を下回ってしまってしまいました。一方で「政府最終支出」だけは、2009年Q1に入っても増え続けてしまったわけで、こりゃ当然ギリシャ政府の財政は悪くなるわけですよ。

「名目GDP」でギリシャが非常に苦しいのは、いくらインフレ傾向とはいえ「最終民間消費支出」が伸び悩む上に、「総固定資本形成」がボロボロな状態なので、「政府最終消費支出」を増やすだけでは到底カバーできないところにあります。
おそらく、ギリシャの「名目GDP」を改善するのに一番手っ取り早い方法は「純輸出」の赤字幅を減少させる事ではないのでしょうか?先日の↑@のエントリーで、「8月がサービス収支の黒字額ピークを迎える」と書きましたが、これは外国人のギリシャ観光によるものです。つまり、通貨高の国や富裕層のたくさんいる国(日本とか中国)に対して「夏以外」のギリシャ観光を推奨するキャンペーン等を行い、更なるサービス収支の黒字を目指すのが一番投資額が少なくて効果の見込める方法なのかなぁ、と思ったりもします。どこか日本の旅行会社が「新婚旅行はギリシャで!」というようなツアーをやり始めたら、ギリシャは泣いて喜ぶかもしれません。(笑)


greece-CPI.jpg
そして、↑にギリシャの消費者物価指数(季節調整無)の推移を調べてみました。これを見ると、非常に面白くてギリシャの消費者物価は、「5月」「12月」にピーク、「2月」「8月」にディップがあるんですね。季節調整の無いデータである事を差し引いても、こんなにも月によって消費者物価が違うのにびっくりです。
いずれにしてもギリシャがインフレ傾向なのは、この画像を見ても一目瞭然です。リーマンショック直後は、一旦インフレも収まったかのように見えますが、2009年9月からは再びインフレの勢いを取り戻しているように思えます。

先日の↑@のエントリーでも書きましたが、EU内でのギリシャの経済規模は非常に小さいために、ギリシャ経済の調子がいくら悪くてもユーロの暴落はありません。通貨暴落が無い代わりに、ギリシャ国内のインフレが進むという事なのでしょうけど、ギリシャが他のユーロ国並に経済状況がすぐに良くなるわけもないので、しばらくはギリシャのインフレは続くと推測されます。よってギリシャは、「インフレを止める」という事ではなく「インフレを見込んだ財政安定策」を考える方が現実的なのかもしれません。


という事で、今日はギリシャの「GDP」について書きました。次回は、いよいよギリシャの「対外債務」の確信に迫ります。



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posted by きらっち at 23:59| Comment(27) | TrackBack(2) | 経済

2009年12月12日

ギリシャやばいの?〜その@〜

@【デフォルト危機、ドバイの次はギリシャ?】
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2264

先月末くらいから↑@の記事のように、ギリシャのデフォルト懸念に対する報道が出てきました。個人的には、「EUグループに入ってる国なんだし、そこまでひどいのかな?」と半信半疑だったので、昨日いろいろと調べてみました。ということで本日のエントリーでは、バルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の時と同じように、「外貨準備高」「国際収支」「GDP」「対外債務」の4つの指標で、ギリシャ経済について2日か3日くらいかけて分析してみましょう。
とりあえず今日は、「外貨準備高」「国際収支」について書いてみます。


greece-ofr.jpg
まずは、↑にギリシャの外貨準備高を見てみます。今回は、外貨準備高の内訳として、「SDR」「金」「その他」で分類してみました。まぁ、「金」については説明の必要は無いとは思いますが、「SDR」については聞きなれない方も多いのではないでしょうか?「SDR」とは、IMFの発行する債券みたいなもので、IMFに加盟する国が外貨不足に陥って、どうにもこうにもならなくなった場合に、「SDR」と「他の加盟国の通貨」を交換できるものなんだ。この「SDR」については、IMFがそれぞれの加盟国にどの程度の金額を割り当てるかを、出資金に応じて決めているものです。
さて、ギリシャは「自国」も「貿易等で関係の深い国」も、ほとんどが同じユーロという通貨を使用しているので、「ドル」とか「円」みたいな外貨をほとんど所有しておらず、外貨準備高のほとんどを「金」で運用している事がわかります。他のユーロを使用している国についてよくわかりませんが、ギリシャと同じように外貨準備高のほとんどを「金」で運用してるんですかね?

通常、デフォルト懸念が出てくると、その国の通貨価値はどんどん下がるわけで、それを食い止めるために、政府が所有する外貨を売って自国通貨を買い戻します(去年の韓国で言うと、ウォン買いドル売りの為替介入)。ところが、ギリシャの場合は自国通貨として非常に信用力のある「ユーロ」を使用しているために、どれだけギリシャの調子が悪くなっても、(次々と他のユーロ使用国もデフォルト懸念が出てこない限り)相応の通貨暴落が起こりません。つまり、ギリシャは為替介入をする必要が無いので、デフォルト懸念が出てきてもすぐに外貨準備高が減る事はないわけです。実際に、デフォルト懸念があるにもかかわらず外貨準備高の増えているのが↑の画像からもわかると思います。
逆に言うと、国債の利回りすら払う事が困難になれば、ギリシャは外貨準備高の「金」を売って利回り支払い用の「ユーロ」を確保するはずなので、ギリシャの外貨準備高が減少しだしたらいよいよ「危ない」というシグナルになると思います。

A【IMF総務会、2500億ドル相当のSDR配分を承認】
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11013920090813

B【日本、IMFへの最大1000億ドルの資金支援で合意文書に調印】
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-36480520090214

ちなみにギリシャの外貨準備高は、2009年8月から突然「SDR」の保有額が大きくなっていますが、これは↑Aの記事に書いてある通り、IMFが「SDR」の再配分を行った事によるもので、特別ギリシャに何かあったものではありません。この時期は、ギリシャ以外の国でも「SDR」が増えているはずです。
ちなみに↑Bの記事の通り、この2500億ドルの原資の大部分は日本がIMFに貸した米国債です。今後円高が進んで米国債の価値が下がるだろう事を逆手に、IMFへ1000億ドルの米国債を貸して「世界貢献」という評価を得たわけで、故中川昭一元財務大臣は良い仕事をしたと思います。


greece-BOP.jpg
そして次は、↑のギリシャの国際収支についてです。ギリシャは慢性的に経常赤字である事がわかります。足を引っ張っているのは貿易収支なのですが、リーマンショック以降は貿易収支の赤字幅の縮小に伴って、経常収支の赤字幅も大きく減少しています。ギリシャは所得収支も常に赤字の状態なので、「国外への投資はあまり盛んではない」のか「そもそも国外に投資できる余力が無い」という事が推測されます。
そんな中で、ギリシャの経常収支を支えているのは「サービス収支」です。毎年、8月に「サービス収支」の黒字額がピークになるので、ギリシャは「観光産業」で他国からお金を稼いでる事が読み取れます。この分だと、ギリシャ国内の消費支出もかなり季節変動がありそうですね。それにしても、ギリシャは稼ぎ時の8月すら経常収支が赤字なので、観光以外にも稼ぐ方法が欲しいですねぇ……。

さて、一方で資本収支の方ですが、月によって変動が激しいので何とも言い難いところなのですが、「証券投資」と「その他投資」はほとんどの月で逆の動きをしている事がわかります。
この国際収支表からではわかりませんが、毎月ギリシャ銀行の発表している国際収支のコメント文を見ると、「海外金融機関」や「海外の機関投資家」による「ギリシャ国内の預金」「レポ取引」「ギリシャ国債の購入/売却」が支配的な要因のようです。
おそらく「海外金融機関」や「海外の機関投資家」が、「ギリシャ国債の購入(証券投資がプラスになる)」をすると「ギリシャ国内の預金が減る(その他投資がマイナスになる)」といったように、「証券投資」と「その他投資」の相反する取引が多いという事だと思われます。つまり、ギリシャの場合は国内からの対外資本取引量が少なく、対外資本取引の大部分が海外によるものと推測されます。もしそうだとすると、(具体的な数字はわかりませんが)ギリシャ国債はかなりの割合が外国保有なんでしょうね。


「GDP」と「対外債務」は、さらに長くなりそうなので「そのA」と「そのB」に回します。申し訳ありません。



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posted by きらっち at 23:28| Comment(7) | TrackBack(0) | 経済

2009年12月09日

仕事はきっちりよろしく

【民主政権、一貫性なき経済政策】
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200912090090a.nwc

まぁ、そりゃそうでしょうな。俺はこの夏に民主党のマニフェストを読んだ段階で「この政党は経済の事をほとんど考えてないな」とは思っていたけど、実際に現政権は未だに成長戦略すら示していないわけですしね。


【クローズアップ2009:7.2兆円経済対策 「前政権継承」ズラリ】
http://mainichi.jp/life/today/news/20091209ddm003020087000c.html

↑しかも、官僚主導で作った今年度の一次補正と似たようなメニューがズラリと並ぶわけで、果たして民主党の経済政策に対するポリシーは何なのか、俺にはよくわかりません。


【ドキュメント・鳩山予算:菅・亀井氏が激論 閣僚委欠席めぐり20分】
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091209ddm002010057000c.html

しかも、↑菅副総理と亀井大臣のケンカまで始まって、非常に面白い展開になってきましたね。今の政権内でリフレ派と思われるのは亀井大臣のみですので、彼の役回りは非常に大きいと思います。何かと問題になる人ではありますが、もう少し暴れて政権を弱体化してくれないかと、内心ひそかに期待しています。(笑)


【在日米軍再編:普天間移設 混迷深まる日米関係 移設先「決定せず」伝達へ】
http://mainichi.jp/select/world/news/20091209ddm001010004000c.html

さらに、どっちつかずの「友愛」の姿勢を貫いてしまったがために、普天間基地の移設でアメリカを怒らせた挙句に、社民党からは連立離脱をほのめかされて、沖縄県からも反発の声が強まっていて大変だとは思いますよ。常識的に考えれば、おそらく社民党と沖縄県には頭を下げることになるとは思うのだけど、さっさと決めていた方が傷を広げずに済んだと思うのですが……。しっかし、アメリカの機嫌を取り戻すには、相当の時間がかかるんじゃないのかなぁ……。


【母から巨額資金、首相「贈与と判断なら納税」】
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091209-OYT1T00584.htm

弟が「納税する」と言った手前、兄は「いや、あれは贈与じゃなくて貸与だ」とは言えなくなってしまったわけですね。う〜ん、何気に弟が兄を追い詰めたのでしょうか。



しかし、本日のエントリーであげたニュースは、全て今日報道されたニュースなんですよね。首相は、1日でこれだけいろんな分野で追い詰められているわけで、八方ふさがりな状況ですねぇ。プライベートを含めていろいろと大変な状況だとは思いますが、本業の仕事がおろそかにならないよう頑張って欲しいです。(個人的にまったく応援はしませんが)



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posted by きらっち at 21:04| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記

2009年12月04日

RSA暗号とは@〜素数判定の処理〜

【郵便会社:顧客12万人分の情報紛失 近畿支社】
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20091204k0000m040082000c.html

支社は「個人情報は暗号化されており、外部漏えいの可能性は低い」としている。
って事で、よくこういう釈明で使われる「可能性は低い」ってどういうことでしょうかね?(笑)

という事で、大抵この手の「暗号化」ってのは「RSA暗号」が使われているのだけど、今日はこの「RSA暗号」の話をします。
「RSA暗号」は現在、世の中で最も広く使われている暗号方式なんだ。ただ、厳密に言うと「RSA暗号」は、暗号を解く事は可能なのだけど、それが数十年とか数百年かかるために、本来俺達がイメージする「原理的に解けない暗号」とは少し異なるかもしれない。後日にこの「RSA暗号」の原理を説明しようと思うのだけど、これも非常に数学の知識が必要な話なので、とりあえず「RSA暗号を解くのに何故そんなに時間がかかるのか?」というポイントを今日は説明します。


とりあえず、例としてこんな問題を考えてみよう。
「12345678909876543210123456789098765432101」は素数か否か?
「そんなもん、スパコン使えばすぐに解けるんじゃない?」と思う方も多いでしょう。ところが、実はスパコンでさえ、この手の素数判定には相応の時間がかかるわけですよ。何故かと言うと、全ての素数を表す一般式が発見されていないので、素数かどうか判定しようとすると、「2で割り切れるか」「3で割り切れるか」「5で割り切れるか」……というように、与えられた数に対して、小さい素数から順々に割り切れるかどうかを、しらみつぶしで探すしかないわけですよ。そして、割り切れる素数が無ければ、その数は素数と認められるわけですが、上記の問題ではどれだけの素数があるかを考えるだけでも嫌になるような数ですねぇ……。

とりあえず、もう少し小さい数で考えて見ましょう。「91」が素数かどうかを考えてみます。

91pn_1st.jpg
まずは、↑のように91までの数で、2の倍数を消していきます。この結果、91は赤く塗りつぶされるわけではないので、2の倍数で無い事がわかります。

91pn_2nd.jpg
次に、↑のように2の次で消されていない数字は3なので、3の倍数を消していきます。この結果、91は3の倍数で無い事がわかります。

91pn_3rd.jpg
次に、↑のように3の次で消されていない数字は5なので、5の倍数を消していきます。この結果、91は5の倍数で無い事がわかります。

91pn_4th.jpg
次に、↑のように5の次で消されていない数字は7なので、7の倍数を消していきます。この結果、91は7の倍数で無い事がわかります。

91pn_5th.jpg
次に、↑のように7の次で消されていない数字は11なので、11の倍数を消していきます。この結果、91は11の倍数で無い事がわかります。(というか、すでに11の倍数で残っているのは11しかないので、非常に無生産な作業っぽいですが)

91pn_6th.jpg
次に、↑のように11の次で消されていない数字は13なので、13の倍数を消していきます。この結果、91が塗りつぶされる(13の倍数)事がわかるので、「91は素数ではない」事が判明しました。


という感じで、今は91という小さい数字で、しかも素数で無い事が判明する例なので大した作業量でもありません。ところが、大きな数字で素数だった場合は、この作業を全てのマスが塗りつぶされるまで延々と続けていくことになります。小さい数字の場合、コンピュータを使えば短時間でこの作業は終わるのですが、非常に大きい数になると計算量が指数的に増えるので、現実的な時間で解くことが難しくなるという事です。

RSA暗号は、素数判定における上記の性質(非常に大きな数字に対する素数判定(素因数分解)に時間が非常にかかる性質)を利用した暗号方式であるので、「現実的な時間では暗号を解けない」という事になります。


実際のRSA暗号の原理ですが、「公開鍵」と「秘密鍵」という二つの数字が暗号を解くために必要な数字になります。また、「フェルマーの最終定理」で有名なフェルマーが、このRSA暗号に深く関係してるのですが、RSA暗号の仕組みと背景にある数学原理は、次の回以降で説明することにしましょう。



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posted by きらっち at 00:00| Comment(307) | TrackBack(0) | 科学

2009年12月03日

北朝鮮デノミ 問題は外貨との交換比率

【インフレ抑制と闇市場対策が狙いか 北朝鮮デノミ】
http://www.asahi.com/international/update/1202/TKY200912020117.html

もともと北朝鮮はちょくちょく通貨交換してたけど、今回は「1新ウォン=100旧ウォン」と、実質の通貨価値を切り下げてしまった上に、「1世帯の交換限度額が10万ウォン」という事で、貯蓄してた北朝鮮国民は涙目でしょうね。しかも、通貨価値の切り下げは50年ぶりなわけで、やはり「北朝鮮国内のインフレがひどい」という事なんでしょうか?
でも突然の通貨切り下げを学習した北朝鮮国民は、今回の件で「自国通貨は持っていても信用ならん」と考えるだろうから、今後は北朝鮮国内の外貨需要が急速に増えるのではないでしょうか。北朝鮮では公の場で自由に外貨取引ができるわけではないので、結果的にますます闇市場が広がってしまいそうな気がします。
ところで、新ウォンと外貨の公式交換比率はどうなるんでしょうかね?公式には、1$=200旧ウォン(実際の闇市場では1$=3000旧ウォン程度)くらいで取引されているみたいですが、公式レートとしても1$=200新ウォンで設定できるとも思えないのですが……。


nkorea_trade-ballance.jpg
ところで、↑は北朝鮮の貿易収支の推移ですが、北朝鮮は恒常的な貿易赤字国です。しかも、北朝鮮の主な輸出品は「石炭、鉱石等」「非鉄金属類」「衣類」「化学・プラスティック製品」「機械類」「電機電子機器」であって、主な輸入品目は「石油」「繊維」「機械・電子機器」「化学工業製品」「プラスチック」との事。もちろん、この輸出・輸入の金額は名目のドル建てであるので、北朝鮮国内の為替レートの影響も加味されています。さて、この状況で1/100のデノミがどのように利いてくるのでしょうか。ここでは、外貨との交換比率も、とりあえず1/100(つまり、1$=20000新ウォン)になるとして考えてみます。

輸出品目だけで見ると、北朝鮮は日本/韓国/中国と同じような加工貿易国型のビジネスモデルを採っている事が推測されます。ただし、北朝鮮は「石炭、鉱石等」「非鉄金属類」を輸出する資源国の側面もあります。そしてこの輸出品は材料を輸入するわけでもないので、1/100デノミによって相当な国際競争力をつけるのではないでしょうか。ただし、残念な事に北朝鮮は供給能力を上げられる術を持っていないので、デノミをやったところで生産増加は難しいだろうから、「石炭、鉱石等」「非鉄金属類」で大儲けはできないでしょうね。(笑)
一方で輸入品の「石油」は、1/100デノミで相当に北朝鮮を苦しめることになるでしょう。そもそも、加工貿易をやるためには電力が必要になるわけですが、北朝鮮の電力の大半は火力発電所で作っていたような気がします。(具体的な数字は覚えていませんが、50%以上の電力を火力発電所で賄っていたような……)貴重な電力供給を犠牲にしてまで北朝鮮は1/100デノミを実施したわけで、北朝鮮の今年の冬はさぞかし寒くなりそうですなぁ……。

実際に新ウォンと外貨のレートがどうなるかはわかりませんが、上記の「輸出品目」「輸入品目」「貿易赤字が拡大している事」を踏まえる限り、新ウォンの通貨価値が下がれば下がるほど、輸出の伸びよりも輸入の伸びが大きくなり、むしろますますインフレ引き起こしそうな気がするのですが、どうなんでしょうか?
ところで、このニュースでアメリカは「こりゃ放っておけば、そのうち自滅してくれる」と考えていると思いますよ。むしろ「時間稼ぎ」は、北朝鮮じゃなくアメリカ側の外交戦略になるかもしれません。


【英ファンドが目を付けた、レアメタルの宝庫・北朝鮮】
http://moneyzine.jp/article/detail/26094

そして、↑の記事にもありますが、今回のデノミで外貨建て北朝鮮国債はまだしも、旧ウォン建て北朝鮮国債を所有していた外国ファンドは大損しましたね。またもや「イギリスの金融機関」との事です。先週ドバイで痛い目を見たイギリスの金融機関へのさらなる試練ですなぁ……。(笑)



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posted by きらっち at 00:00| Comment(26) | TrackBack(2) | 経済

2009年12月02日

みんなで一番効果的な消費刺激策を考えよう

【需給ギャップ解消が重要=鳩山首相】
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200911/2009112001044

上記の記事によると、
首相は「コンクリートをどんとやるような、昔風の経済政策ではない、もっと賢いやり方の経済刺激(策)を作りあげていく」と、財政規律を重視する姿勢を強調。「エコポイントなどで、国民の(消費への)関心を高くすることができ、エコ化も実現できている」と述べ、投資効果が大きい対策が必要だとの認識を示した。
との事だけど、やはり菅副総理も鳩山総理もあんまり経済の事をわかっていないのではないでしょうか?二人とも理系出身だけあって、理に適った経済政策を打ってくれるのかと思いきや、どうも斜め上の方向を見てるよなぁ……。
というのも、「食料」とか「日用品」みたいに、1回購入したらすぐに使い切ってしまう「非耐久消費財」ならまだしも、エコポイントの対象になっている「家電」や「自動車」みたいな寿命の長い「耐久消費財」の場合は、「需要の先食い」によって今は消費量が一時的に増えている可能性があるのでは?
おそらく「エコポイント」が政策として、今のところ上手く機能しているのは、まだ始めたばかりというところが大きくて、来年度以降に同じ程度の消費効果が期待できるのかというと、俺は多少の疑問を感じます。そしてこのエコポイントも、制度終了後の一定期間は家電や自動車の買い控えの起こる可能性も考えられるので、「ある程度の出口戦略を考えた方が良いのではないか」と、思ったりもします。

個人的には、日本の家計貯蓄(1400兆円)の大半を抱えている老人達をターゲットにするのが一番効率的に消費を増やせると思うので、若者向けの「家電」「自動車」等の「耐久消費財」にエコポイントを充てるのではなく、「非耐久消費財」にエコポイントを充ててみるのはどうでしょうか?
例えば、スーパー等々などで「地元産の野菜」とか「地元のお土産」等にエコポイントを付けるとかね(商品の輸送等における環境負荷を考えると、地元産の物は間違いなく環境にも良いでしょうしね)。さらにエコポイントで医療費の支払いができる事にしてしまえば、それなりに老人が食いついてくるかなぁ……。いずれにしても、「非耐久消費財」を焦点に当てるのであれば、製品寿命が短いので「需要の先食い効果」も抑えられるのではないでしょうか。(とは言うものの、果たして現実的に可能な施策かどうかという視点も大事なところではありますが……。)


【追加経済対策、「環境」で消費刺激 住宅版エコポイント導入へ】
http://www.nikkei.co.jp/senkyo/2009shuin/elecnews/20091120AS3S2002620112009.html

あとは、↑の住宅版エコポイント制度をやるのであれば、相乗効果の期待できる「家具」等にも、エコポイントや何らかの消費刺激策を考えたらどうでしょうか。この辺りは、むしろ民間業者にアイデアを募らせれば、いろいろと良い意見が取り入れられそうですけどね。
経済や経営に対する知識の無い政治家が独断で決めるよりも、この辺りは民間企業の方がノウハウを持っているだろうから、現政権は「国民」だけでなく「業界」の声も聞いた方が良いとは思うけどなぁ……。



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posted by きらっち at 12:40| Comment(2) | TrackBack(2) | 政治

2009年11月30日

円高で海外投資を後押し

@【大企業2割が海外移転検討 製造業派遣の原則禁止で】
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090918/biz0909181939011-n1.htm

A【日本の海外企業買収3.7倍に/金融危機が追い風に】
http://www.shikoku-np.co.jp/national/main/article.aspx?id=20081108000289

さてさて、ちょっと考えれば当然なのですが、円高になると日本の輸出産業は日本で製品を作っても価格競争力で不利になるために、通貨安の国に工場を建設して生産拠点を移します。世界の景気が良いときは、生産増加が止まるわけではないために日本国内の工場も維持できると思いますが、今の状況だと国内工場は「廃止」か「規模縮小」という事になるので、いずれ失業率上昇という形で跳ね返ってくる事になるでしょう。
今回は、ドル高の要因が見つからない中での円高騒動になっているので、企業は真面目に工場の海外移転を考えているんじゃないかなぁ、と思います。


B【製造業への派遣を原則禁止 労働者派遣法改正案合意で3党共同会見】
http://www.dpj.or.jp/news/?num=16333

そんな中で、現政権は派遣禁止を進めようとしております。もし仮に派遣禁止をやってしまうと、@とAの記事の事を察するに、相当な勢いで製造業の海外移転が始まってしまい、失業率が結構上がってしまうのではないでしょうか?「業界」の味方でなく、「家計」の味方である民主党としての政策判断が難しいところでしょうね。


japan-direct-investment-abroad.jpg
それでは具体的に↑の「対外直接投資」を見て、数字を追っていきましょう。

「対外直接投資」とは、海外子会社(出資割合10%以上)の株取引等の投資に関する統計で、「株式資本」「再投資収益」「その他資本」の3つから構成されています。
「株式資本」は、株取引の収支の事で、日本の会社から海外の子会社への投資はマイナス、海外の会社から日本の子会社への投資はプラスで計上されます。
「再投資収益」とは、海外子会社の株式等による利子や利回りで未配分のものです。つまり、本来本国に送金されるものですが、未送金で海外子会社で留保しているお金とも言えるでしょう。この項目には、収支という概念が無く、単純に日本の海外子会社からの未送金分がマイナスとして経常されます。
「その他資本」とは、株や再投資収益以外のものの収支のことです。具体的にどんな取引が対象になっているのかはわかりませんが、日本から海外子会社への投資はマイナス、海外から日本子会社への投資はプラスで計上されます。

さて、一番左の列の「対外直接投資」を見てみると、少なくとも2007年からは常にマイナスであるために、海外の会社が日本の子会社に投資するよりも、日本の会社が海外の子会社に対して投資している事がわかります。しかも、リーマンショック直後の2008年Q4は、「株式資本」のマイナスが大幅拡大になりました。これは、海外の会社から日本子会社に投資された流入分よりも、日本の会社が海外子会社に投資した流出分が非常に大きかったためで、海外投資に勢いがついたことがわかります。
やはり、円高が海外移転を後押しする事が数字で示されています。


俺が一つ非常に気になるのは、リーマンショック直後の2007年Q4から「再投資収益」のマイナス幅が縮小している事です。

【海外子会社利益の国内還流促進で法人税非課税化へ−来年度税制改正】
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=aB4.KgwKywUI

これは、↑のように前政権で決定した「海外子会社利益の国内還流促進」に関する税制改正による影響が大きいと思います。今の日本は、諸外国よりも法人税が高いために、海外子会社からの還流分は法人税の安い現地に留保させるわけです。この留保分をどんどん日本に還元させるために、前政権が上記の税制改正により海外子会社からの還流分を非課税にしたわけです。
これによって、日本国内で業績の悪くなった自動車会社や電機メーカーの赤字分を、海外子会社の黒字分で穴埋めしているわけです。ただ、これは海外から日本へお金を流入させるわけですから、当然円高要因になります。一説によると、日本の海外子会社が現地で留保している利益は15兆円クラスとも言われているので、仮に全額日本に流入してきたら、とんでもない円高を引き寄せてしまうわけですけどね。


japan-direct-investment-abroad-cb.jpg
さて、↑に「地域別の対外直接投資」をあげました。これを見ると、リーマンショック直後の2008年Q4に海外投資が激増しましたが、地域別で見ると「北米」の投資額が群を抜いた増加率になっています。円高をチャンスとばかりに、アメリカの有力な会社を日本の会社がどんどん買収したわけですね。同様に、2008年Q4は中南米もガツッと買収しています。こちらは、レアメタルとか食料関係の会社を買収したのでしょうかね?一方、日本は「東欧」や「中東」地域はそんなに投資しているわけではなさそうです。地域的に遠いという事もありますが、結果的に「ラトビア」や「ドバイ」に代表されるやばそうな地域を避けているわけで、日本人の安全志向を表しているのかもしれません。


さて、今日は「対外直接投資」の統計を見てきましたが、今のところ日本企業は状況に応じて理に適った海外投資をしているように思います。一つ心配になる事は、今後国内工場を海外移転しすぎる事により、営業利益を海外子会社からの還流分に依存しすぎて、「円高が止まらなくなる」&「輸出産業が過度に為替レートに依存する(参考リンク@)」という可能性がある事です。元々俺は、「長期的な円安トレンドは日本国債の投売りにつながる」(参考リンクA)と思っているのですが、とは言うもののあまりに急速な円高も困るわけで、可能な限り長期的にゆっくり円高を進行させるのが一番望ましいと思っています。

そういう意味で、果たして現政権がどんな円高対策をするのかが楽しみでなりません。(笑)


参考リンク@【黒字転換したホンダの営業利益の中身】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/32061746.html

参考リンクA【国債の利回りさえ払えなくなる日はいつ?】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/32620113.html



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posted by きらっち at 23:59| Comment(3) | TrackBack(0) | 経済

2009年11月29日

ドキッ!同じ職場からのアクセス

本ブログはアクセス解析をしています。俺自身がブログの読者層を知りたいので個人的に調べているだけなのですが、数十人程度は毎日チェックしてくださる方がいるので、この場を借りて御礼申し上げます。今後も可能な限り、経済ネタを中心に「数字」からいろいろな世の中の動きを見ていこうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。


さて、実は最近のアクセス解析結果を見ていると、自分と同じ省庁からのアクセスが増えてきたので、非常にびっくりしております。自分自身は仕事場からのアクセスはしていないので、間違いなく同じ省庁の誰かが本ブログを見ているわけです(それも、おそらく複数の可能性が大)。しかも、深夜の時間帯や土曜日や日曜日のアクセスもたまにあるので、それなりに忙しい部署の方だと思います。可能であればこちらから「お仕事ご苦労様です」と声をかけたいところなんですけど、今もお仕事の最中なんでしょうか……。


ところでサイト開設当初は、「*.ne.jp」「*.go.jp」「*.lg.jp」の方が多かったのですが、最近は「(特に非金融機関の)*.co.jp」からのアクセスが増えてきて、平日の1日で150程度のIPからのアクセスがあるみたいです。
当面は、平日1日当たり200IP程度を目指そうと思っていて、可能な限り更新したいと思います。拙いブログですが、どうぞ皆様今後もよろしくお願いいたします。



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posted by きらっち at 22:19| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記

2009年11月28日

二番底のトリガー?!

【「ドル・キャリー取引」活発 金・原油先物 NYで高騰】
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20091126-OYT8T00527.htm

【外為市場で一時1ドル84円台 対ユーロも円高加速】
http://www.asahi.com/business/update/1127/TKY200911270100.html

どうも米国債新規発行が止まってから、世界の投資マネーの潮目が明らかに変わった感じがします。やはり、今まで米国債に向かっていたマネーが、ドルキャリーを通じてモノや他国に流出しているのでしょう。ただ、これは「ドルの信認低下か?」と言われれば必ずしもそうではなと俺は思います。「超低金利」と「超量的緩和」を導入すれば、必然的に溢れるマネーはどこかに向かうはずですが、今までは新規発行の米国債がマネーの向かい先だっただけです。


【ドバイ政府系企業がデフォルトの危機】
http://www.business-i.jp/news/flash-page/news/200911270089a.nwc

どうもこの一ヶ月で、モノ市場の高騰に加えて、金融危機第2幕が近いうちにありそうな気配が漂ってきました。ユーロ圏では「ラトビア」が一番手でやばそうな感じでしたが、まさかドバイまでヤバイ状態だったとは……。現在のドバイは、原油依存のロシアと違って、GDPに占める原油関係のものはわずか数%程度に過ぎない上に、海外から流入するお金で金融産業を伸ばすビジネスモデルを採用していたために、仮に原油高騰が続いても助からない可能性の方が高そうな気がします。加えて、おそらくドバイみたいに「実はそろそろやばそうです」なんて国がまだまだあるんじゃないかと思うのですが、やはり危ないのは海外からのマネーを集めていた金融立国でしょうね。先進国であるアイルランドとかイギリスとかも真面目に大丈夫なのかなぁ……。


いずれにしても、最終的なマネーの行き先が供給量を自在に調節できない「原油」「金」「レアメタル」等々になってしまうと、インフレに行き着いてしまいます。しかも、株や債券にマネーが行かなくなると企業資金の調達が出来なくなる事により、生産活動も活発にならずいつまでたっても世界景気が回復しなくなるわけです。しかも、それに加えて日本だけは「デフレ」という重荷を背負っているわけで、現政権の経済財政運営は大変とは思いますが、肝心な責任者が↓の調子なので非常に心配です。

【菅副総理、経済オンチ露呈「今ごろ何をトボけたことを…」 】
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/329174/

【「理解が足りないのでは」と菅副総理が反論 経済戦略見えない批判に】
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091127/stt0911271159008-n1.htm

それにしても、↑の下段の記事で副総理は「投資効果のない財政出動を繰り返しても、過去に成功しなかった」と言っているので、「あれだけの財政出勤をしたから、あの程度の景気低迷ですんだ」とは全然思っていない事がわかります。いやぁ、「完全に経済のわかっていない大臣」という事を自分で曝け出しちゃってるなぁ。(笑)とは言うものの、「どこに投資するか」という面では自民党政権が全面的に正しかったわけでもないとは思いますけどね。

それにしても、万が一金融危機第2幕が襲ってくれば二次補正どころの話ではなくなるわけですが、経済財政担当のトップがこの程度の認識なんだから、ある意味恐ろしいですよ。どちらの方の理解が足りないのだか……。

「円高」「需要減」「デフレ」、これらの影響を和らげるためには日本も本格的な量的緩和を今すぐに実行して、補正予算なり来年度予算を拡大すべきなのでしょうけど、まさに自民党と同じようなことをするわけなので、民主党内部での抵抗も大きいのではないでしょうか。アメリカやイギリスは、リーマンショック直後に量的緩和を実施したのに、また日本はぐずぐずしてるうちに「失われた10年」を繰り返しそうな雰囲気です。



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posted by きらっち at 08:44| Comment(0) | TrackBack(5) | 経済

2009年11月27日

必殺仕分け人

先週から仕事がしんどくなってきました。来週末まで、しばらく更新頻度を落とす事になりますが、ご容赦ください。



【「若手育成、未来の投資」 事業仕分けにノーベル賞受賞者ら懸念】
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20091126AT1G2502Z25112009.html

【「2位ではだめなのか」 次世代スーパーコンピュータを「仕分け」した議論】
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0911/15/news002.html

【学力調査「抽出4割多すぎる」 事業仕分けで削減要求】
http://www.asahi.com/national/update/1126/TKY200911260006.html

個人的には、世界の中で日本経済の地位を維持する事を考えれば、「科学技術」とか「人材育成」については絶対に手を抜いちゃいけない分野だと思うし、未来の国力を削ぎ落とす政策に関しては、もっといろいろな場所から批判があっても良いと思うけどなぁ……。
そもそも民主党は、中長期的に日本をどのようにしたいのかあまり考えていない節があるわけで、短期的な仕事(まさに予算削減やマニフェスト実現等々)に没頭しすぎないようにお願いしたい。


【事業仕分けに反撃?文科省、HPで意見募集】
http://www.asahi.com/politics/update/1117/TKY200911170276.html

【経産省も国民の声募る 仕分け対象の34事業】
http://www.asahi.com/politics/update/1120/TKY200911190531.html

そして予算削減される省庁側も、今後の戦略を練るわけですよ。事業仕分けの場では、省庁側の発言は仕分け人の質問に答えるのみでそれ以外の発言はできないし、おそらく事業仕分けの場以外でも完全に役人の意見は聞いてもらえないわけなんだよね。そこで、省庁側としてはオープンな場で意見募集する。そうすれば、予算削減で不利になる業界から間違いなく文句が出てくるわけで、それを「国民の意見」として堂々と財務省や先生方に反論できるわけですよ。
個人的には、事業仕分けが終わる今日以降で、国土交通省とか厚生労働省とかも追随するのかどうか注目しています。


【事業仕分け:「野依さんは非科学的だ」 刷新会議・加藤事務局長が反論】
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091127ddm002010102000c.html

そして、↑の記事のように場外バトルも始まっています。全体のパイを広げる発想の無い民主党の場合、今後も割りを食う分野の人達からいろいろと文句が来るだろうから、組織票もじりじり逃げる展開になるのではないでしょうか。
しっかし、上記の記事の加藤事務局長って、元財務官僚なんだよね。民主党はほんっと、財務省頼みだよなぁ……。



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posted by きらっち at 12:32| Comment(3) | TrackBack(0) | 時事

2009年11月19日

みんな高い点数が欲しいんだなぁ……

【学力テスト1位「秋田に学べ」は大丈夫? 大学進学率は低迷】
http://sankei.jp.msn.com/life/education/081027/edc0810270037000-n1.htm

一年前の記事ですが、非常に面白かったのでご紹介します。「秋田県の全国学力テストの結果が非常に良い」とは聞いていたけど、底上げ政策が上手く機能している一方で、上位層が少ないという典型的な横並び分布になっているらしいんだな。


【秋田県 全国学力学習状況調査の結果(PDF文書) 】
http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1230082599259/files/201225.pdf

そして、↑の市町村毎の結果を見ると、これまた非常に驚くべき結果が出ているわけですよ。俺は「きっと秋田市とか大館市みたいな人口の多い市町村が、平均点の高い傾向が出てくるんだろうな」と勝手に思っていたのだけど、どうやら実情は逆で人口の少ない市町村の方が、良い結果が出ているっぽいんだよね。これについては、これ以上考察はしないけど、現場の先生方はこの事実をどう思っているのか興味深いです。


さて、現状では「小学校」「中学校」は義務教育であって、義務教育に要する費用は俺達の税金から出ています。しかも、俺たちは全員小学校や中学校には通ったわけなので、利用者負担の面から考えれば義務教育制度は非常に理に適っているように思えます。ただし、「高校」に関しては義務教育の制度から外れるので、秋田県の小学校や中学校みたいに「底上げ主義」ではなく、「伸ばす人を伸ばす」という方向に切り替える方が良いように、個人的には思います。

別に、何か根拠があって書くわけではないのですが、秋田県の大学進学率低迷の要因は、小学校や中学校ではなくて「高校」にあるような気がします。もちろん、学歴が無くても食べていける地域性やいろいろと事情があるのかもしれませんが、「底上げ主義」や「平等主義」を、「高校」にも持ち込んでいるのではないでしょうか?(おそらく、秋田県の教育委員会の方針なんですかね)


俺の直感的な感覚ですが、公立の学校の場合「小学校」「中学校」までは秋田県をモデルにしても良いとは思うのだけど、「高校」は秋田県ではなく別の県や別の高校を参考にする方が良いと思います。例えば、学生数に対して東大や京大入学者の多い茨城県とか、ここ数年で飛躍的に進学実績の良くなった公立高校(札幌南高校や富山中部高校)なんかが良いのではないでしょうか。(自分が東日本出身なので、西日本の教育事情はよく知らなくてすみません。)

ただ、最近高校時代の先生と一緒に飲んだのですが、その先生はこんな事を言っていました。
結局は「東大にどれだけ合格させたか」なんだよ。もちろん、東工大/一橋大/公立大学の医学部等々でも素晴らしいのだけど、教育委員会や外部からの評価は、結局その一点なんだよな。
う〜ん、現場の高校教師としては、多少の苦悩があるところなのかもしれません。



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posted by きらっち at 12:28| Comment(1) | TrackBack(1) | 時事

2009年11月17日

GDP発表と共に動き出した経済対策

【7〜9月期実質GDP、年率4.8%成長 設備投資増加に転じる】
http://www.nikkei.co.jp/keiki/gdp/20091116d3s1600i16.html

昨日、日本の2009年Q3のGDPが発表になりました。↑のように、前期比で1.2%の増加(年率換算で4.8%増加)の高い伸びになって万歳としたいところですが、素直に喜べる状況ではありません。というのも、実質GDPは前期比で1.2%増加ですが、名目GDPの方は前期比で0.1%減少になってしまっているからです。これはつまり、物の取引は活発になっているにもかかわらず、流れているお金の量が少なくなっているわけで、物価安が進んでいる事を意味しています。


【日本経済の次なる不安】
http://kiracchi-serendipity.sblo.jp/article/31379515.html

ちょうど3ヶ月前に2009年Q2の日本のGDPについて考察したのですが、↑のエントリーで「今後はデフレを何とかしないといけないんじゃないの?」と懸念した通りの状況に、まさに今なっているわけです。


2009Q3_japan-realGDP.jpg
まぁ、とりあえず今日は2009年Q3の日本の実質GDPを見ていきましょう。↑に実質GDPの推移を出しました。
まずは、「最終民間消費支出」を見てみましょう。Q2に引き続き増加しています。まぁとりあえずは、前政権の補正予算(特に、エコポイントやエコカー補助)の効果が引き続き発揮されているのでは無いでしょうか?

【エコポイント、延長を検討…菅戦略相】
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20091117-OYT8T00736.htm

おそらく、↑のように民主党がエコポイントを継続すると発表したのも、この数字を見た上での判断でしょう。あれだけ前政権の補正予算を批判していたのに、実際の数字を見て手のひらを返してきたわけです。まぁ、責任ある与党としては妥当な判断じゃないでしょうか。

一方、「民間住宅」の下げの止まらない事が非常に心配です。住宅やマンションの購入は、家具等々の追加消費効果が大きいために、景気に大きく影響を与えるのですが、ここのテコ入れも何とかしなければなりません。

【菅氏、住宅版エコポイント検討 17日に補正で閣議決定へ】
http://www.47news.jp/CN/200911/CN2009111601000250.html

↑そんな中で、こんな話も出てきました。間違いなくこれも、GDPの数字を見た上で決めたと思われます。GDPの発表と共にこんなニュースが出るなんて、民主党は良い意味でわかりやすいですね。(笑)

そして、「民間設備投資」もようやく下げ止まりました。おそらく、「最終民間消費支出」と「輸出」が伸びた事により、日本の全体の生産量が上がったからだと思われます。おそらく生産量が増加すればするほど、「民間設備投資」は今後も増えることが期待されるのですが、一方で生産量が増えれば増えるほど物価がどんどん安くなるわけで、ちょっとややこしい事態になりそうです。この辺りについては、もう少しデータが揃ってからいろいろと考察してみます。

「民間在庫品増加」も若干増えました。俺はてっきり、今回の「民間在庫品増加」はマイナスに転じる事になるのではないかと思ったのですが、逆にプラス幅が増えています。「最終民間消費支出」と「輸出」のプラス幅が大きくなっているにもかかわらず、在庫が減らない状況なので、「生産過剰」の状態が続いているとも解釈できます。確かに、こういう指標からもデフレの波を読み取ることができるのかもしれません。

「政府最終消費支出」は堅調に伸びていますが、「公的固定資本形成」は若干減少しました。Q4には、民主党が補正予算の執行を止めた影響も本格的に出てくるでしょうから、「政府最終消費支出」も「公的固定資本形成」もQ3よりは落ちるでしょう。どの程度、GDP減少に効いてくるかはわかりませんが、興味のあるところではあります。

そして、「純輸出」はQ2に引き続き回復しています。「輸入」の増加よりも「輸出」の増加が大きいわけで、これは非常に良い傾向です。とりあえず日本経済が正常の姿に戻るためには、「民間住宅」や「民間企業設備」が全回復するまでは、何とか「最終民間消費支出」「政府最終消費支出」「公的固定資本形成」「純輸出」でGDPを支えていかなくてはなりません。民主党は内需主導で日本経済を回して行こうとしていますが、現在の「最終民間消費支出」を支えているのは、国債発行を原資にした「エコポイント」や「エコカー補助」の政府支出なわけです。つまり逆に政府支出を削れば最後の砦は「純輸出」しかなくなるわけですが、さすがに民主党もそこまでの賭けはできないという事でしょう。結局、官僚に丸め込まれて、官僚の主導する経済対策をやっているように見えるのですが……。


いずれにしても、今後はデフレスパイラルを止めるために、政府は何かしらの手を打つ必要が出てくるでしょう。民主党が日銀と一緒に「量的緩和&大量の国債発行」という手を打てるのかどうかが非常に気になります。

それでは、後日に2009年Q3の各国の「GDP」と「国際収支」の比較をしてみたいと思います。



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posted by きらっち at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 経済

2009年11月13日

ウィルコム 次世代PHSを展開できず

【128kbpsのPCデータ通信が上限5985円で使い放題――ドコモの「パケ・ホーダイ ダブル」で】
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0911/05/news076.html

う〜ん、個人的にはこのニュースで俺は得するのだけど、企業の視点から見ると、このオプションプランによって他社から顧客を奪うのは無理なんじゃないの?
というのも、今までのdocomoのプランでは、13650円払わないとPC接続(7.2Mbps)を含めての定額にはなりませんでしたが、このオプション登場によって低速PC接続(128kbps)であれば5985円で定額になります。
ところが、すでにイーモバイルは4980円で7.2Mbpsの完全定額、ウィルコムは256kbpsで3880円の完全定額プランがあるので、docomoの128kbpsで5985円の定額プランはどういう客層に狙いをつけているのかイマイチ見えないんだよなぁ。
俺みたいに、「携帯電話はdocomo」「データ通信はイーモバイル」という感じで2社に契約している人で、「7.2Mbpsも通信速度は必要無い」という人であれば、今回のオプションプランでdocomoに一本化できて支出を絞れるメリットはあるのだけど、「そもそもウィルコムの3880円の方が安いじゃん?」という事になるわけだしなぁ……。


【ウィルコム、PHS+3.5G対応のスマートフォン「HYBRID W-ZERO3」発表】
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0911/11/news053.html

そして、ウィルコムも「通話はPHS、通信はdocomoの3G」という予想外の端末のプレスリリースがありました。これを見る限り、完全にウィルコムは次世代PHSは諦めムードっぽいですな……もっとも、ウィルコムは経営状態が大ピンチなので、当然次世代PHSがどうのこうのと言っていられる状態ではないはずなのですが……。
「HYBRID W-ZERO3」での通信値段設定がどうなるかは未発表なのですが、端末そのものは無線LANルータやBLUETOOTHルータにもなるので、モバイラーにとっては非常に魅力的な端末ではあります。


おそらくdocomoの戦略としては、7.2Mbpsの定額通信はMVNOの相手先であるウィルコムに任せる代わりに、低速接続は自社で担う腹積もりなのでしょう。一方、ウィルコムはdocomoの3Gネットワークを借りて7.2Mbps定額通信で顧客流出を止めつつ、少しずつ次世代PHSの基地局整備をしていくのでしょうか。docomoはまだしも、ウィルコムが生き残るためには、最低限で東名阪に次世代PHSが使えるようにして、「次世代PHS」「PHS」「docomoの3G」のトライバル端末のスマートフォンくらいをリリースしないと厳しいような感じがするのですが、果たしてそれまで資金が持つのか心配なところです。



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2009年11月12日

ボウリング業界の苦しい現状

この前、同年代の友達と一緒にボウリングをやってきたんだけど、その時に「一時のボウリング再ブームと比較すると、最近ボウリングって聞かなくなったなぁ」なんて話をしていたんだよね。後日に気になって、ボウリング産業の現状を調べたら非常に面白い資料が出てきたので、本日のエントリーで報告します。


service-sales_comparison.jpg
↑の画像が、対個人サービス産業の業種別売上高の対前年同月比です。今回は、「ボウリング」のみでなく「パチンコホール」「劇場・興行場、興行団」「遊園地・テーマパーク」「映画館」「ゴルフ場」の6サービスについて調べてみました。

まず一番気になる「ボウリング」ですが、平成18年1月から対前年同月比がほとんどマイナス推移している事がわかります。(辛うじて平成19年9月のみプラス)つまり、「ボウリング」の売上高がコンスタントに減少してるわけなので、明らかに「ボウリング」が廃れている事がわかります。自分が学生の頃は結構やってたけど今はほとんど行かなくなったので、確かにこの数字を見ると実感できるなぁ……。

そして、「劇場・興行場、興行団」「映画館」は月によって、非常に変動が大きいことがわかります。まぁ、この手の集客は作品に依存するだろうから、確かに安定しないのでしょう。
平成19年9月の「映画館」が急激に伸びたのは、前年にヒット作品に恵まれなかった一方で、HEROがヒットした事に起因するものでしょうか?この月は、「劇場・興行場、興行団」も急伸してるんだけど、何か関係あるのかな?

「遊園地・テーマパーク」は、平成21年を除いて平成18年〜平成20年までは、基本的に対前年比がプラス基調である事がわかります。ところが、平成21年4月から8月までマイナス基調が続きました。ちょうど同じ時期に高速道路1000円が始まったので、高速道路1000円で行楽に行く家族連れに客足を奪われたという事が濃厚です。高速道路1000円は、こんなところにまで影響があるのですねぇ。ただし、秋のシルバーウィークでは逆に急伸したことが読み取れます。「GWはむちゃくちゃ渋滞したので、シルバーウィークは近場の遊園地に行くか」って心理ですかね?(笑)おそらく、10月以降は再びマイナス基調が続くと思いますが。

「ゴルフ場」は、2月以外はわりと安定してるのですが、なぜ2月だけが急伸したり急減するのかよくわかりません。天候の影響?

「パチンコホール」は、非常に安定している事がわかります。俺が非常に気になるのは、「パチンコホール」は景気の影響を如実に反映している可能性がある事です。このグラフ上で言うと、平成18年1月〜平成19年10月が景気拡大期で、それ以外の期間が景気減速期なのですが、パチンコホールの売上高の対前年同月比が下降傾向を示しているのが、まさに平成18年1月〜平成19年10月なんですよ。何かの偶然かな?(笑)
しかも平成21年8月からは、再びパチンコホールの売上高の対前年同月比が下降傾向を示しているのですが、つまりここ最近の景気状況が上向いているという事を示唆するものなのでしょうか?ちょっと今後も追いかけてみたくなる指標です。



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2009年11月11日

良くも悪くも目立つ人

【郵便局で「婚活支援」 亀井氏「斬新アイデア」披露】
http://www.j-cast.com/2009/11/10053555.html

【亀井氏「役人は優秀ですよ」 官僚への姿勢も「閣内不一致」】
http://www.j-cast.com/2009/11/06053399.html

【外国人地方参政権、亀井氏が慎重姿勢 「時間をかけて」】
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091107/stt0911071638001-n1.htm

【亀井金融相「特別会計に切り込むべきだ」 財源「20兆、30兆はすぐ出る」】
http://www.j-cast.com/2009/10/16051796.html

やはり、今の鳩山内閣の中では、この亀井大臣は良くも悪くも強烈なアクセントになってるよなぁ。いろんな記事を見る限り、この人の基本的な思想は、

1.大きな政府を推進
2.国債発行について積極的
3.役人とは「対立」でなく「上手く使う」

というところがあげられるでしょうか。さらに今までの亀井大臣の主張(「モラトリアム法案」や「国債発行」等々)からは、彼がリフレを狙っているのではないかと思われます。

確かに、デフレ脱却のために「量的緩和の拡大」&「国債発行」によって政府支出を増やして、日本の需要を増やしつつ、今後経済成長の期待できる分野に投資するという事は、合理的なような気もします。ただ、もし亀井大臣の狙いがそういう事なら、「大きな政府を推進」というポリシーを非常に疑問に思うのは俺だけでしょうか?
というのも基本的に「大きな政府」は、市場介入を行ったり、規制を作ったり、政府が競争性の少ない事業を直接実施したりと、経済成長を阻害する要因を作ってしまいます。経済成長という側面では、「むしろ小さい政府を進める方が理に適ってるのではないか」とも思わなくもありません。もっとも、今みたいに緊急事態の局面では、民間単独ではリスクを背負いきれないので、ある程度国が前面に出て市場介入や規制を作る事も必要だろうとは思いますが。


しかし亀井大臣は、むちゃくちゃ言うけど落とし所はわきまえていて、それなりに計算高い感じを受けます。しかも、さすがに官僚出身の方なので、役人の悪口を言っているところをあまり聞かないですね。↓の記事のように、どこかの大臣とは大違いですな。(笑)

【菅国家戦略相「霞が関は大バカ」…講演で批判】
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091031-OYT1T00859.htm

ちなみに↑の記事には出てないけれど、「経済効果より突っ込んだ話になった途端に大臣の理解が追いつかなかった」なんてオチがあるんじゃないかとも思ったり……



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posted by きらっち at 18:30| Comment(3) | TrackBack(0) | 政治

2009年11月09日

日米金融機関の「投資」に対する考え方

今日は、日本と米国における金融機関のキャッシュフローについて考えたところを書こうと思います。


japan_cashflow1.jpg
まずは日本についてですが、失われた10年以前の通常時のキャッシュフローについて書いた図が↑です。銀行等の金融機関は、俺達顧客の貯金を何かに投資したり誰かに貸したりして資金運用をしているわけです。そこで、今回は「何に投資したらどんな事が起こるのか」という視点で整理してみたのですが、とりあえず今回は「日本国債」「日本の株・債券」「外国の株・債券」「資源」の4種類にカテゴライズしました。
まず「日本国債」に投資する場合ですが、これは円市場の商品なので為替レートには影響を与えません。さらに、国内経済への影響は時の政権の政策次第です。前政権みたいに公共事業をバンバンやるのであれば景気を底支えできますが、現政権みたいに家計支援に重点を置くならば家計の消費次第という事になります。次に「日本の株・債券」に投資する場合ですが、これは当然企業の資本が増えるわけなので、国内の経済活動が活発になります。そして「外国の株・債券」と「資源」に投資する場合ですが、これは円市場ではなくなるので円安を招きます。またお金が国外に出てしまう事になるので、国内経済にはほとんど寄与しません。
失われた10年以前は、今ほど海外投資が盛んだったわけではないので、日本の金融機関は主に日本国債や日本の株・債券等の国内投資で、顧客から預けていた資金を回していた事になります。

japan_cashflow2.jpg
さて、それでは次に「失われた10年時の日本のキャッシュフロー」を↑の画像で見てみましょう。
失われた10年では、景気が上向かない中で家計預金額が一気に100兆円程度増えました。その結果、日本の金融機関もさらに何かへ投資する必要があったのですが、ちょうど政府が景気対策として国債をバンバン発行してた事もあり、「日本の株・債券」を回避して「日本国債」を国内金融機関は購入していました。一方で当時は円キャリートレードが流行していた事や、円安誘導政策(特に日銀砲)が取られていた影響で、日本の海外投資が盛んになりました。この時期の国内金融機関の投資は、本来であれば投資すべき「日本の株・債券」に全然投資されずに日本国債や外国投資へお金が回ったのが、大きな問題であったと言えます。
まぁでも当時の日本は、車や電子機器等の輸出産業の輸出拡大をエンジンにして日本経済を立て直していたので、当然政府は「円安」に誘導しようとするわけです。ところが、それが結果的に「日本の株・債券」へ資金が回らない一つの要因になっていたのだと思われます。「日本を投資立国に導きたい」というのであれば、確かにこの手法もアリだったかもしれませんが、現政権はその辺をどう考えているのでしょうか。今までの経済閣僚の発言から察するに、民主党はおそらく内需主導の経済構造を作りたいと思われますが、だとすれば「外国への投資に課税」とか「円高誘導」等、外国への投資を抑える政策を打つのかどうか、興味のあるところです。


us_cashflow1.jpg
そして、↑に最近のアメリカのキャッシュフローについても見ていきましょう。現在のアメリカも、失われた10年時の日本と同じく家計の預金額が急増中です。ただ、日本の投資と違う点は「ほとんどの資源がドル建て市場」という事です。よって、日本の場合は「円高」「円安」によって資源投資に大きな影響を与えますが、アメリカの金融機関はその辺の影響がほぼありません。
現在のアメリカは米国債が発行できず、バランスシート不況のせいで米国の株や債券への投資も伸び悩んでいて、しかも財政赤字や超金融緩和政策によってドル安が進んでいます。よって、アメリカからの(特に「経済成長率」「金利」の高い発展途上国への)国外投資が増えるのではないでしょうか?もっともアメリカの場合は、ドル安を嫌ってドル資金を国内に滞留させようとしても、これ以上の米国債発行はありませんし、バランスシート不況に入っているので米国株や債券もそもそも発行が少ないとなると、必然的に資金は資源に向かってインフレを起こしそうな気もするのですが……。

アメリカは、「(インフレを避けるために)なるべく国内資金を海外に投資しなければならない」という条件の下で、アメリカ本土の景気も上昇させなくてはならないわけで、こりゃ確かにアメリカの景気回復までには長時間かかるだろうなぁ、と思います。



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posted by きらっち at 21:03| Comment(0) | TrackBack(1) | 経済

2009年11月08日

ランダムウォークとその周辺@

数学の確率や統計の分野で「ランダムウォーク」と呼ばれる分野があります。このランダムウォークは、「賭け事のみならず、株価や為替相場に応用の可能性がある」という事で、経済関係の研究者でも研究対象になっているのだけど、今日を含めて2回か3回程度に分けて、このランダムウォークの基礎になるところを説明しようと思う。

さて、今日はまず1次元のランダムウォークと逆正弦法則について説明しよう。第一回目からで申し訳ないのだが、早速人間の直感がいかにいい加減かを思い知らされる事になるでしょう。


randam-walk0.jpg
とりあえず最初は「1次元ランダムウォークとは何か?」という事だけど、↑の画像のように数直線があって、まずは「0」の場所に自分がいるとしよう。ここで、サイコロ(ここでは細工の無い公平なサイコロを考える)を振って奇数が出たら+1(→)に動き、偶数が出たら-1(←)に動くとする。つまり、右か左かどちらに行くかはわからないけれど、ランダムに隣へ動き続けることになるわけだ。これが「ランダムウォーク」と呼ばれるもので、例えば右に行くことが「コイントスで表が出る」とか「株価が上がる」事で、左に行くことが「コイントスで裏が出る」とか「株価が下がる」とかに応用できるわけだ。

さて、まずはこのランダムウォークだけど、2回、3回、4回とサイコロを振った後の事を考えてみよう。それぞれのサイコロの目の出方とサイコロを振り終わった後の自分の位置を考えると、以下のようになる事が考えられる。

【2回サイコロを振る場合】
1.→ →(+2の場所に移動)
2.→ ←(0の場所に移動)
3.← →(0の場所に移動)
4.← ←(-2の場所に移動)

2回サイコロを振った後に
「+2」の場所にいる確率1/4
「0」の場所にいる確率2/4
「-2」の場所にいる確率1/4


【3回サイコロを振る場合】
1.→ → →(+3の場所に移動)
2.→ → ←(+1の場所に移動)
3.→ ← →(+1の場所に移動)
4.→ ← ←(-1の場所に移動)
5.← → →(+1の場所に移動)
6.← → ←(-1の場所に移動)
7.← ← →(-1の場所に移動)
8.← ← ←(-3の場所に移動)

3回サイコロを振った後に
「+3」の場所にいる確率1/8
「+1」の場所にいる確率3/8
「-1」の場所にいる確率3/8
「-3」の場所にいる確率1/8


【4回サイコロを振る場合】
1.→ → → →(+4の場所に移動)
2.→ → → ←(+3の場所に移動)
3.→ → ← →(+2の場所に移動)
4.→ → ← ←(0の場所に移動)
5.→ ← → →(+2の場所に移動)
6.→ ← → ←(0の場所に移動)
7.→ ← ← →(0の場所に移動)
8.→ ← ← ←(-2の場所に移動)
9.← → → →(+2の場所に移動)
A.← → → ←(0の場所に移動)
B.← → ← →(0の場所に移動)
C.← → ← ←(-2の場所に移動)
D.← ← → →(0の場所に移動)
E.← ← → ←(-2の場所に移動)
F.← ← ← →(-2の場所に移動)
G.← ← ← ←(-4の場所に移動)

4回サイコロを振った後に
「+4」の場所にいる確率1/16
「+3」の場所にいる確率1/16
「+2」の場所にいる確率3/16
「0」の場所にいる確率6/16
「-2」の場所にいる確率3/16
「-3」の場所にいる確率1/16
「-4」の場所にいる確率1/16

ここでは、2回〜4回までサイコロを振る事しか考えていないけれど、一般的にn回サイコロを振った後に「0」付近に移動する確率が大きそうな気がしますね。確かにその通りで、スタート地点が「0」でサイコロを振るたびにランダムに左右へ動くので、当然「0」近くにいる確率は高くなりそうな気はします。ただし、サイコロを振る回数が100回とか1000回くらいになると、↓のようにサイコロを振った後に「0」近くにいる確率は低くなって、確率分布がだんだん正規分布に従う事になります。(ちなみに、この事象はまさに二項分布そのものです。)
randam-walk1.jpg


さて、ここまでは高校の数学で習っているので、直感的に理解できる人も多いとは思いますが、次は「n回サイコロを振って、n回移動する中でそのうちどのくらいの確率で「0以上の場所にいるか」」を考えます。ちょっとわかりにくいので、具体例として4回サイコロを振ること(n=4)として、それぞれ1.〜G.でどのように移動するかを見てみましょう。

【4回サイコロを振る場合】
1.→ → → →(1 2 3 4)「0以上の場所にいる確率」は4/4
2.→ → → ←(1 2 3 2)「0以上の場所にいる確率」は4/4
3.→ → ← →(1 2 1 2)「0以上の場所にいる確率」は4/4
4.→ → ← ←(1 2 1 0)「0以上の場所にいる確率」は4/4
5.→ ← → →(1 0 1 2)「0以上の場所にいる確率」は4/4
6.→ ← → ←(1 0 1 0)「0以上の場所にいる確率」は4/4
7.→ ← ← →(1 0 -1 0)「0以上の場所にいる確率」は3/4
8.→ ← ← ←(1 0 -1 -2)「0以上の場所にいる確率」は2/4
9.← → → →(-1 0 1 2)「0以上の場所にいる確率」は3/4
A.← → → ←(-1 0 1 0)「0以上の場所にいる確率」は3/4
B.← → ← →(-1 0 -1 0)「0以上の場所にいる確率」は2/4
C.← → ← ←(-1 0 -1 -2)「0以上の場所にいる確率」は1/4
D.← ← → →(-1 -2 -1 0)「0以上の場所にいる確率」は1/4
E.← ← → ←(-1 -2 -1 -2)「0以上の場所にいる確率」は0/4
F.← ← ← →(-1 -2 -3 -2)「0以上の場所にいる確率」は0/4
G.← ← ← ←(-1 -2 -3 -4)「0以上の場所にいる確率」は0/4

「4回サイコロを振って16通りある出方で」
4回の移動後の位置が全て0以上になる確率6/16
4回の移動後の位置が3回で0以上になる確率3/16
2回が0以上になる確率2/16
1回が0以上になる確率2/16
0以上にならない確率3/16

いずれにしても、4回全てが0以上になる確率が6/16と高いわけです。今はn=4の時を考えましたが、nが大きくなるとこの傾向が顕著に出てきて、↓のような分布になります。
randam-walk2.jpg
つまりこれは、コイントスの賭けを何度もした場合、最終的にはどちらかが勝ち(負け)に偏る確率が大きい事を意味しています。これは非常に面白い現象で、要は「今は大きく負けているけど、そのうち取り返せるはず」というギャンブラー特有の心理が、確率計算によって物の見事に否定されている事になります。

「いやいや、1/2で勝負のつくゲームだと期待値はプラスにもマイナスにもならないのではないか?」とか、「さっきの正規分布と矛盾してるのではないか?」と思う人もいるでしょう。俺も、大学で最初にこれを習ったときにはそう思いましたが、当時の先生はこのように説明してくれました。
コイントスは表と裏の出る確率は共に1/2なので、期待値としては勝ち負けがイーブンになると君は思っているのだろう。しかしそれは、「ゲームを一回で終わらせた場合の平均値」という事で、多くの人が誤解している部分だ。確率論で言うところの「期待値が0」という意味は、無限回数のゲームを行えば「勝ち負けの差/ゲーム数」が0になるということに過ぎないわけだよ。勝ち負けの差もゲーム回数が増加するほど大きくはなるが、ゲーム回数に比べればその増加スピードは非常に小さいだけだ。

と、ばっさり切られた記憶があります。ちなみに、この事を確率用語で「逆正弦の法則」と言います。賭け事が好きな人は、覚えておいた方が良いのではないでしょうか。


さて、次回(来週くらいですかねぇ)は1次元ランダムウォークではなく、2次元と3次元ランダムウォークについて説明します。



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posted by きらっち at 02:10| Comment(4) | TrackBack(0) | 科学

2009年11月07日

マニフェストに書かれていない事が何故突然に?

【定住外国人・地方参政権付与、民主がマニフェスト記載見送りへ】
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090531/stt0905311938005-n1.htm

【民主・山岡氏、外国人参政権法案提出の意向 国会延長も】
http://www.asahi.com/politics/update/1106/TKY200911060224.html

民主党はあれだけマニフェスト実現に拘っているくせに、マニフェストへの記載を見送った外国人参政権付与は、今国会会期を延長してまで法案を通そうとしてるみたいですね。今までの彼らのスタンスを考えると、「そんな法案よりもマニフェスト達成のために出さなくてはいけない法案がたくさんあるんじゃないの?」と思うのは、きっと俺だけではないと思うのですが……。そもそも、「外国人参政権付与」がそこまで緊急の案件なんですかねぇ。
何せ今の首相には、お金の出どころのよくわからない偽装献金の問題があるので、これだけ「外国人参政権付与」をやりたいのも、ひょっとすると何か裏があるのでしょうか?普通この手の問題は、時間をかけた議論が必要なのでしょうけど、何でまたこんなに焦ってるんだか……。


【3兆円補正執行停止、GDPを0.2%押し下げ 菅副総理】
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20091106AT3S0600806112009.html

【09年度補正予算:執行停止分、2次補正に 政府検討】
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091106dde001010025000c.html

さらに次は、執行停止した1次補正予算をマニフェスト達成のための財源にするのではなく、2次補正の財源にするというニュース。おいおい、「子供手当て」や「農家の戸別補償」等々の財源はどうするつもりなんだよ?(笑)そもそも、GDPを下げたくないのなら補正予算の執行停止なんてしなければよかったのに。
いずれにしても、今になって民主党のやろうとしていることは、当初の目的とは違う目的で話が進んでるように見えます。最初の「外国人参政権付与」のニュースもそうだけど、どうやら民主党は突然、「マニフェスト実現」を棚上げにするかと疑いたくなるような方針を打ち出していますしね。


う〜ん、今日のこの2つのニュースは今までの民主党の立ち位置を考えると、何か腑に落ちないんだよなぁ。一体誰のどういう意向が働いているのかわかりませんが、民主党がどこに向かおうとしているのか、一国民として非常に心配です。



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posted by きらっち at 00:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治